ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか 作:日本人
自分もベルくんにほかのアヴェンジャーの能力付けたいとは思ってるんですけどねぇ⋯⋯付けるとしたら新アヴェかエドモンか⋯⋯アンリでもいいかな?
時系列的には1巻の冒頭ら辺。そして義手の下りが結構無理やりになっちまった⋯⋯⋯。
おかしかった部分を修正しました。
「ハァッ⋯⋯ハァッ⋯⋯⋯クソッ!!」
十階層で三体のミノタウロスと遭遇して早1時間、僕は未だにダンジョン内を走り続けていた。────あれから上がった階層数は6。モンスター達との戦闘を避けながら登っているのでかなりの時間が掛かってしまった。今現在、四階層の一角を走っている僕の後方にかじりついているのはミノタウロス達。彼我の距離は段々と縮まってきている。
「ハァッ⋯⋯ハァッ⋯⋯⋯ッ!執拗いんだよッ!!」
思わず悪態をつくがそれで状況が改善される訳でも無い。
────ガクッ
「!!?」
不味い!?走り続けていたツケが回ってきたのか足から力が抜け、立ち止まってしまう。
「ブモォォォォォオ!!」ブゥン!
「ガっ!?」
ミノタウロスの剛腕から放たれた一撃をモロに喰らう。僕は吹き飛ばされて床に当たって跳ね、すこし転がってから止まる。
「⋯⋯⋯ァガァア⋯⋯⋯!?」
────体が動かない、呼吸ができない、このままじゃ────死────
不吉な一文字が脳裏をよぎる。⋯⋯ふざけるな、こんな所で死ぬ?たかだかミノタウロス程度にやられて?何度でも言ってやる、ふざけるな、僕は、ベル・クラネルは、まだ何も成していない!だから────
「────死んで、たまるかぁ!!」
僕は疲れ、傷ついた体に鞭打って走り続ける。ミノタウロス達も必死で、諦めること無く僕を追ってくる。僕は時間を稼ぐためにマントを先頭の1体の顔に被せる。突然の事に驚いたのかその場で立ち止まり、暴れるミノタウロス。後方の2体も巻き込まれまいと立ち止まり、そのスキを突いて全力で走る。やがて僕は三階層、二階層と上がっていく。時たまモンスターが飛びだして来るが速攻で叩き潰す。そんな中でも相変わらずミノタウロスは追ってきている。少しは離れているがこのままでは────そんな時、前方に5人の冒険者で構成されたパーティが見える。彼らは僕の後方にいるミノタウロス達を信じられないといった顔で呆然と見ていた。⋯⋯⋯心苦しいが仕方が無い。僕の目的の為に生贄になってくれ、名も知らない冒険者達よ。僕はダンジョン内でのモンスターの譲渡────
「ッ!?しまっ!?」
気づいた時にはもう遅い。僕は彼らに心の中で謝りながらその場を離れる。
「(せめて、助けを────!)」
猛牛の咆哮を背に僕はその場を走り去った────
「────ダンジョン上層にミノタウロスッ!?」
ギルド職員、エイナ・チュールは混乱の極みにあった。
────ミノタウロスの上層進出────
それはLv1冒険者達にとっては死刑宣告の様なものだった。このままでは新人冒険者を中心に大きな被害が出る。普段ならLv2以上の冒険者に討伐を依頼するのだが────
「何でこんな時に誰もいないのっ!?」
────そう、何故かギルド内にはLv1冒険者しかいなかった。Lv2は一人もいない、
「────おいアンタ。ベル・クラネルって知ってるか?」
その口から放たれた名前に身体を凍りつかせる。顔を青ざめさせてゆっくりと男の方を向く。
「貴方は⋯⋯」
「俺はベルの専属鍛冶師のヴェルフ・クロッゾ。こっちはディアンケヒト様。ベルに義手制作を依頼された」
「すまんなハーフエルフの受付嬢よ。先程ミノタウロスが上層出たと聞いてな。ロキに聞いたところ今日はダンジョンに潜っていると聞いたのでな」
「ベルくん⋯⋯⋯そう言えば見てない⋯?」
────まさかダンジョンでミノタウロスの餌食に?そんな訳ないと首を振り、ふと、先程の会話の違和感に気付く。
「⋯⋯
「?あぁ、アイツ昔モンスターにやられたらしくてな、隻眼隻腕なんだ。それで義手を俺達が作ってたんだが⋯⋯」
「完成したはいいものの、ベル本人に付けてもらわないことには始まらぬからな。取り敢えずロキ・ファミリアのホームを訪れたのだが⋯⋯ロキにベルはダンジョンに潜っていると言われてな」
────それはつまり、
「ベルくんは五体不満足の状態でダンジョンに⋯⋯⋯?」
それを聞いて苦々しい顔をするヴェルフ。ディアンケヒトも同様である。
「俺がせめて一緒にいれば⋯⋯」
「ヴェルフよ、それはお主と共に義手造りに熱中しておった儂にも責任がある。余り気負うな」
「しかし⋯⋯⋯」
そんな会話が交わされる隣で、エイナは顔を更に青ざめさせていた。
「(嘘⋯⋯ベルは五体不満足で⋯⋯⋯ミノタウロスもいて⋯⋯⋯まさか、もう⋯⋯⋯)」
最悪の考えが頭に浮かんでくる。今にもエイナが崩れ落ちそうになっている時────
「────エイナさぁぁぁぁあんっ!!!」
少年の叫びが響き渡る。ダンジョンの入口付近を振り返ると、マントが脱げ、その隻腕と隻眼が顕になった白髪紅眼の少年────ベルがこちらに走って来ていた。口から血を滴らせながらこちらに走ってくる姿に、エイナは思わず駆け寄る。
「ベルくん!!無事!?」
「ゴホッ!⋯⋯ハァー⋯⋯!ハァー⋯⋯!ッ!エイナさん!ミノタウロスが⋯⋯ミノタウロスが上層に!!」
「もしかして遭遇したの!?」
「⋯⋯はい!ミノタウロスの数は3体、今は二階層に!」
「────そんなっ!?」
ミノタウロスが地上近くまで⋯⋯!?その言葉を聞き、エイナだけでなくギルドの職員やLv1の冒険者達に緊張が走る。
「アイツらは僕を追ってきたんです⋯⋯!このままじゃ被害が出ます!ミノタウロスに対抗出来るだけの冒険者を投入してください!」
「無理だよ⋯⋯Lv2以上の冒険者はみんな出払っちゃってる⋯⋯」
「そんな────ッ!?」
ならば自分が押し付けたミノタウロスにあの冒険者達は殺されるしか無い────!?思わずベルは拳を壁に打ち付ける。
「ちくしょう!!何か!何かないんですか!?」
「落ち着けベル!?一体どうしたんだよ!?」
ヴェルフがそれを止め、ダンジョンでの詳細をベルから聞く。話を聞いたヴェルフは、
「ベル、それは仕方ねぇ事だ。怪物進呈は誰でもやってる事だ。そいつらは運が悪かっだけ、お前が気にすることじゃねぇ」
「だけど⋯⋯ッ!!」
ベルはどうしようもない現実に歯噛みする。
────もう、どうしようもないのか⋯⋯?
そんな考えが頭をよぎった瞬間────
「────ベルよ、お前はまだ行けるか?」
ディアンケヒトが唐突にベルに問いかける。
「行けるって⋯⋯」
「言い方を変えよう、
「ッ!?それは⋯⋯⋯」
言葉に詰まるベル。構わずディアンケヒトは続ける。
「聞けばミノタウロスが上層に上がってきたのはお前にも原因がある様だ。ならば、お前が責任を持つべきだ」
厳しい顔でディアンケヒトは告げる。
「責任⋯⋯
「安心せい、
そう言って布に包まった何かを差し出すディアンケヒト。
「それ⋯⋯まさか⋯!?」
「お主に依頼された義手だ、これを付けて行け」
「でも⋯⋯⋯」
「ベル」
なおも渋るベルにディアンケヒトは一言────
「────男が、逃げてどうする?」
その一言が、ベルに火を付けた。
────そうだ、何をやってる!?
────他人に押し付けて、逃げ出して、
────あの日、決めただろう!?
────
────こんな体たらくで
ベルの瞳に再び火が灯る。ベルは立ち上がりディアンケヒトを向き、
「お願いします!!」
そう、告げた。
「────よし、ヴェルフ!接続を手伝えい!」
「!?ディアンケヒト様正気ですか!?こいつを付けるにしても先ず肩から先を切り落とさなけりゃ────」
そう、その義手は肩から手先までの一体型。本来こういった場合は麻酔を掛けてから切り落とし、接続するのだがここにそんなものは無い。ヴェルフがその事を言うと、
「ッッッッッッ!!!!」ズシャッ! ボトッ⋯
「なっ!?」
何の迷いもなく肩から先を切り落とすベル。辺りが騒然とする中、
「早く!!」
ただ一言そう言ってヴェルフを見つめる。
「〜〜〜〜〜〜!!!あぁちくしょう!!やってやるさ!!」
そう言ってヴェルフはディアンケヒトと共に作業を始めるヴェルフ。ベルは二人の作業が終わるの待つ。────やがて二人が離れ、ベルの右側に
「これが⋯⋯⋯!」
「多少注文とは違ってしまったが強度は折り紙付きだ、安心せい」
ベルは暫く腕と鉤爪の調子を確かめる様に動かしていたが、やがて二人の方を向き、
「ありがとうございます、二人共。これで、戦えます」
そう意気込むベル。その目は、確かに輝いて見えた。
「────ベル、これはおまけだ」
ディアンケヒトがそう言い、ベルの口に何かを突っ込む。
「!!??」
「安心せい、エリクサーじゃ。そのまま飲め」
言葉通りに飲み干すと、気づ付いたベルの体は完治していた。────エリクサー、ディアンケヒト・ファミリアが誇る最高のポーション。その効力は絶大で、死んでいなければ何とかなると言われるほどのレベルの代物である。さらにディアンケヒトはエクリサーが大量に入ったポーチをベルに渡す。
「使ってやれ」
「⋯⋯⋯ッ!ハイッ!」
ベルはポーチを左手に持ち、駆けて行った────
「神ディアンケヒト!?何であんな事を!?」
ベルが去った後、ハッとなったエイナはディアンケヒトに詰め寄る。当然だろう、Lv1のベルでは死にに行くようなものである。ディアンケヒトは悪びれた様子もなく、
「クハハっ!気にするな!ベルならばやれる!」
そんな事を自信満々に言う。その様子にイラついたエイナはディアンケヒトを睨みつける。
「⋯⋯ッ!だいたい、何であんな焚きつけるような事を!?」
「ふむ、儂は神友の言葉を借りただけだ。決めたのはベル自身。我らが口出しする様な事ではない」
「っ、それでも!?」
「安心せい────」
ディアンケヒトはニヤリと笑みを浮かべる。
「────彼奴は負けんよ」
そう自信満々に告げるディアンケヒト。エイナは疑いの視線を向ける。
「⋯⋯その根拠は?」
「なに────」
────神の勘だ
「キャア!?」
「ッ!千草ァ!!早く下がれ!!」
「桜花殿っ、っっ!このままでは⋯っ!?」
「わかってる!!」
ダンジョン二階層、先程ベルが押し付けたミノタウロスと戦っているのはタケミカヅチ・ファミリアの団員達。Lv2の団長、カシマ・桜花を中心に戦い、何とか一体は倒したものの、既に3人が倒れ、桜花自身も決して軽くは無い傷を負っている。さらにゴブリンやコボルドなどのモンスター達がミノタウロスの合間を縫うように襲って来る。何とかミノタウロスの攻撃を防ぎ、倒れた仲間を守る二人。かなり奮戦しているが、そんな彼らももう限界だった。
「(そんな⋯⋯⋯!?こんな所で⋯!?)」
団員の一人、ヤマト・命は絶望的な気持ちだった。さらに湧き上がってくるのは怒り。その怒りは自分達にミノタウロスを押し付けた冒険者に向かっている。
「(ッ!!よくも我々に⋯⋯ッ!)」
ギリギリと歯噛みする命。合わせて一瞬モンスターから意識が逸れる。それを見逃すミノタウロスでは無かった。瞬時に命に向かって剛腕を振り下ろすミノタウロス。
「あ⋯⋯」
「命ォ!!?」
命の視界いっぱいに広がる無慈悲な死。命の脳内にはこれまでの人生が走馬灯のように巡り来る。
「(申し訳ございません⋯⋯ッ!タケミカヅチ様っ!春姫殿っ!)」
最後に脳内で主神と親友に謝罪し、目を瞑る命。涙が溢れる。────
────幾ら時間が経とうとも命に死が訪れることは無かった。訝しげに思い、恐る恐る目を開ける命。そこには────
────腕を斬り飛ばされ、隻腕になったミノタウロスの正面に立つ銀腕の少年だった
「ッ!?貴方は⋯⋯先程の!?」
彼が自身にミノタウロスを押し付けた冒険者だと命は察する。────だが何故腕が⋯⋯?命は話し掛けようとしたが、少年はポーチを命に渡して一言────
「────ごめんなさい、あとは、僕がやります」
それだけ言って少年────ベルはミノタウロスを始めとしたモンスターの群れに突っ込んで行った────