何故か英雄になったけど俺は闇堕ちしない   作:月光法師

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 続くかは未定です

 だって書きたいものが多いんだもんっ!
 はい、すみませんでした。





始まりの英雄

 

 

 

 現代、日本。

 

 この言葉を聞いたとき、諸君は何を思い浮かべる?様々なことを思い浮かべると思う。日本が世界に誇れるものは多いからだ。在野に埋もれている、まだ見ぬ素晴らしいモノも多い。

 

 俺はそんな日本で生まれ育った。

 

 平凡な家庭だった。お金持ちではなかったが、だからと言って貧しかったワケでなく。両親に離婚騒動が起こったこともあったが、無事に収束。不幸はなく、全てが素晴らしいと思える家庭だった。平凡、凡庸、一般的。そんな言葉が当てはまる家族で、そこで生まれ育った俺にもその言葉は当てはまった。年を取る毎に平凡だとか、凡庸だとか、一般的だとか、そういった在り方や言葉の有り難さを知った。

 

 そう、とても幸せ()()()んだ。

 

 「ギャオオオオッ!!!」

 

 大きな咆哮が聞こえる。街を破壊する音と共に。

 

 俺がその音の元へと駆けつければ、そこには家屋程の大きさがある化け物が一体。街中で暴れまわり、人を脅かし、己の欲のままに凶悪はデカイ爪を振るっている。

 

 「俺は捨てられた人形たちの怨念により、魂を得て甦った元怪獣人形だ!俺にカレーを溢したくせに、ウンコみたいな色で汚いとか言った人間のガキめぇ!絶対に許さん!本当なら俺は、可愛い女の子に買われたかったんだ!」

 

 めちゃくちゃ下らない欲望で暴れてた。

 

 こういった化け物たち。人々からは怪人と呼ばれている。人の形じゃないのに。虫っぽいやつも、獣っぽいやつも、全て怪人と呼ばれる。人の形じゃないのに。俺はずっと、めちゃくちゃ気になっているんだからな。なんで怪人って呼んじゃうの?

 

 まぁいいや。俺は一つ溜息を吐いて、身の丈よりも長い刀を抜いた。そして一閃。怪人を縦に両断し、街中へと降り立った。

 

 「キャーッ!!セフィロス様よー!」

 「おおっ!英雄が助けてくれたぞッ!」

 「ありがとう!セフィロス!」

 「今日も格好いいわセフィロス様!」

 「バカ!セフィロス様は美しいのよ!」

 

 周囲で騒ぐ街の人たち。

 

 みんな、もう分かったかな?

 そう、俺はセフィロス・クレシェント。仕事でヒーローをやっているものだ(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まりは、何だったか。

 …………。ちょっと色々と思い起こしたけど特に何もなかった。始まりは突然だったからだ。ほんとクソ。

 

 気がついたらこの怪人と超人が跳梁跋扈する世界にいて、俺は銀髪ショタになっていた。しかもなんか実験施設みたいなところで。

 

 俺、どうやらモルモットだったらしい。

 

 「最強の生命を造り出す」

 

 それが目的だったらしい。研究員みたいのがブツブツといつも言っていた。ゴメン、このセフィロスの体は無駄にハイスペックだったから全部聞こえてたよ。ほんとクソ。

 

 「今日は被検体Sに宇宙からの飛来物体を移植してみよう。まだ見ぬ変化が見られるかもしれない」

 

 おい止めろ。お前が小声でブツブツ言ってること全部聞こえてるからな。っていうか何変なモン移植しようとしてんだ。

 

 そう言いたかった。まあ猿轡を噛ませて自害出来ないようにさせられてたから、俺は何も言えなかったんだけどね。ほんとクソ。

 

 「今日は被検体Sに超能力者の細胞を移植してみよう。超能力者が人工的に増えれば成果は計り知れないぞ」

 

 おい止めろ。この前移植手術したばっかだろうが。正確に言うと3日前。おま、そりゃないだろ。なんかもう完治してるけど、流石に術後経過の観察とかしろよ!えっ、もう終わった?あっはい。

 

 そう言いたかった。けど全身ぐるぐる巻きの俺には成す術がなかった。ほんとクソ。

 

 「素晴らしいモノが手に入ったぞ!これを食えばお前は最強になれる!」

 

 そう言って、なんか気持ち悪い肉を食わされた。メカメカしい機械で無理やりに口を開けさせられ、喉の奥へと突っ込まれた。肉が胃に入った途端、俺は気持ち悪くなり、体が熱を帯びた。少しでも気を抜けば、自分が自分じゃなくなりそうで、必死に抗ったのを覚えている。

 

 気が付けば黒い片翼が背中から生えていた。ほんとクソ。

 

 それからも色々な実験を施された。周囲がどんどんと死んでいき、そんな中で俺だけが生き残った。必然、様々な実験を耐え抜いた俺は、いつの間にか人間を止めていた。

 

 そんな俺だったが、施設から解放されたのは今から10年前。18歳の頃だった。長い間モルモットとして生きてしまった。表情が死んで、仕事をしなくなったのもしょうがないと思う。

 

 本当なら、人間離れした力でさっさと抜け出したかったのだが、それは出来なかった。命を握られていたからだ。心臓と脳に爆弾を埋められることで、反逆したと見なされた場合はすぐに頭ボンのドキがムネムネである。つまり爆発して俺の体がぐちゃぐちゃになって死ぬ。恥ずかしいだろ、言わせんなやい。

 

 助かったのは偶然だった。新しく外から連れてこられたモルモットが暴れたのだ。今までにもそういうことはあった。その度に俺が無理矢理でも押さえ付けるよう命令されていたのだが、今回だけはいつもとは違った。

 

 外から連れてこられ暴れたモルモット。そいつはサイボーグであり、この実験施設を壊すために送り込まれた兵器だったらしい。ようはスパイ兼ヒーロー、といったところか。

 

 しかも俺に命令を送る前に研究員を皆殺しにしてくれたため、俺に何か被害があったわけではない。

 

 そうして、俺はクセーノ博士という老人に助けられた。

 

 クセーノ博士は所謂、天才であった。俺の頭と心臓に埋められた爆弾を取り除いてくれたのだ。更に戸籍のない俺に様々なものを恵んだ。専用の装備なども作ってくれた。ありがとうクセーノ博士。名前は変だけど、めちゃくちゃ良い人だった。あと、クセーノ博士は別に臭くなかった。勝手に臭いんだろうなとか思ってスマンかった。

 

 現在も使っている長刀【正宗】もクセーノ博士の一品だ。なんでも形状記憶合金を応用しているとかで、鞘は小刀ほどだというのに長刀は全て収まってしまう。お陰で持ち運びは楽チンだ。

 

 これだけお世話になったクセーノ博士。俺も何か返さなきゃならない。そう思い、俺は頑張った。何もない俺だが、強さにだけは自信がある。だからこの世界のことを色々と調べて、一つの答えへと至った。賞金首を狩ることだ。賞金の高いやつはウン千万からウン億円も懸けられていたから、俺にはお手軽に稼げる仕事だった。恩を返すために、クセーノ博士の研究費として出資もできる。

 

 それからだ。最悪な日常から救われたと思ったのに、違う意味で最悪な日常が訪れたのは。

 

 まず賞金首を狩る中で、ほぼ100パーセントの確率で誰かが襲われている時に遭遇してしまう。意味が分からない。

 

 そして俺の前によく怪人が出現するようになった。その時には賞金稼ぎで顔と腕が売れていたから、見て見ぬ振りをしては俺の評判に関わる。評判が落ちれば人間関係に亀裂が生まれる。人間関係に亀裂が生まれれば情報収集が捗らない。情報収集が捗らないと賞金稼ぎが難しくなる。あと、クセーノ博士に万が一の迷惑が掛かれば、俺は俺を許せない。

 

 そうと決まれば早かった。

 

 俺の前に現れる怪人をバッサバッサと斬り倒していったんだ。その内、何故か俺は英雄と持て囃されるようになった。

 

 そして運命の日が訪れてしまったんだ。一枚の手紙と共に。

 

 

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 【英雄】セフィロス・クレシェント様へ

 

 

 

 初めまして、セフィロス様。

 私共はヒーロー協会と申します。ヒーロー協会とは、市民を救うためにヒーローを組織、管理することを目的に、この度設立されました。

 それに従いまして、【英雄】と巷で称えられるセフィロス様を是非とも弊協会にてお招きしたいと考えております。

 詳細につきましては、同封の案内をご覧下さい。

 会える日を楽しみにしております。

 

 

 

            差出人 ヒーロー協会より

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 

 

 こんな感じの手紙だった。そして同封されていた案内を読めば、ヒーロー協会は設立されて最初に、俺をヒーローのトップとして協会に所属して欲しい旨が書かれていた。

 

 何よりも俺は、案内に書かれていたお給料の額に目が眩んだ。

 

 これだけ貰えば、毎日毎日賞金首を探す必要がない!クセーノ博士にも毎月安定して研究費を出資出来る!何よりも毎日ダラダラと生活できる!

 

 金に目が眩んだ俺は、二つ返事でヒーロー協会に所属することを決めた。

 

 そして生まれてしまったんだ。

 

 S級1位ヒーロー【英雄】セフィロス・クレシェントが。

 

 最悪の職場に就いてしまった、愚かな社畜が生まれてしまったんだ。

 

 戻れるなら戻りたい。賞金稼ぎとして生きていたあの頃。賞金首を探すのは大変だったけど、自身の自由が確保されていたあの頃に、俺は戻りたいんだッ!

 

 

 

 

 

 


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