私の名前は那珂
戦争で使われる兵器、艦娘設計計画によって生まれた中の一人が私らしい
那珂と呼んでくれる人は少なくこの場所で女性として扱ってくれる人も少ない
ただ、それは私たち艦娘にとっては当たり前の事だし、みんな慣れだと言っていた
提督「何をぼさっとしている、早く出撃の準備をしないか」
この人が私の提督、私に指示を出す人間様だ
四十くらいの男性で三十くらいに戦場で足を負傷し指揮官という役職についた、車椅子に座っておりたまに立つときのために杖を持っている
那珂「あ、あの……さっきの残党の砲撃を受けて中破しているので休ませて欲しいのですが……」
提督「何を甘ったれた事を言っているんだ貴様は、大破でもないのに中破で根をあげて休みたいなどと、適者の兵器として恥を知れ」
そう言いながら提督は座ったままの状態で杖を振り、私の中破した場所を狙うように杖で殴る
那珂「痛いっ!痛いっ!やめてくださいっ!」
提督「兵器の癖に、指揮官である私に対してなんだその言葉使いはやはり出来損ないは根本的なものが腐っているようだな!」
また振り押そうとした所に若い男が杖を掴み
男「止めたまえ、大切な兵器を傷つけるのは上官である私からすれば、好ましくない」
提督「に、西宮上官殿っ!お見苦しい所を見せてしまい誠に申し訳ありません!」
西宮と呼ばれた男は私の方にも近づいて
西宮「君も君だ、艦娘は歯向かうことなく従順でなければいけない以後気を付けたまえ」
那珂「………はい、西宮上官殿……」
提督「おい、西宮上官殿にそんなみすぼらしい姿を見せるな、早くドックに迎え」
提督は西宮上官殿の顔色をうかがいながら私にそう言った
那珂「……はい、失礼します……」
そう言って私はドックに向かった
私たち艦娘の破損部分はドックで修復する事が出来る
しかし、生傷などは修復するとこはない、武装修復と違い肉体修復はめんどくさいため致命傷でない限り手当てされる事はない
生傷程度で根をあげる兵器など必要ないとの上層部の決定らしい
そんな事を考えながらドックから戻る頃には夜となり私は日課を行うために一人、旧適者防衛ラインに向かっていた
月の光が海面を明るく照らしている静かな夜だった
艦娘になる前、私の夢はアイドルになることだった
綺麗な衣装を着て、華麗に躍りながら歌を歌って声援を受ける、そんなスターになりたかった
お父さんもお母さんも、そんな私の夢を応援してくれていた
そんな時、戦争が始まり徴兵制度が私の住んでいる村にも来た
しかし、徴兵が始まる数日前にお父さんの足が農機具に巻き込まれて負傷し、私はお父さんの代わりに徴兵された
私以外に意外と徴兵された女の子は多くて、左隣の美子ちゃんと右隣の実和子さんと仲良くなった
三人で居ればどんな事にも耐えられる、そんな気がした
ある日、私たち三人は別々の部屋に向かうように言われた
部屋を出れば軍のために役に立つ仕事が待っていると軍人さんからそう伝えられた
私たちはついに戦場に立つ、実和子さんは初めて弱気なことを言った
だから私たちは実和子さんを励ますために必ず三人でもう一度集まって三人で戦争を生き延びようと誓った
そして私たちは別々の部屋に入り気がつくと私は艦娘になっていた
部屋を出ると二人は居なかった
別の部隊に配属になったと聞いた三人がそれぞれ努力し実績を積めば、必ず三人一緒になれると、そう言われてそれを希望にして
提督に殴られたりした辛い夜には好きだった歌をバレないような歌って辛さに耐えた
だから、今晩もまた歌を歌う、お父さんも私も好きだったアイドルの歌を
離れ離れになった二人を思いながら月光がスポットライトのように私を照らす
そんな夜、彼と出会った
私の歌を家族以外で上手いと褒めてくれた初めての人
私の歌を聞いて涙を流した人
私のこぼした笑みを褒めてくれた人
嬉しいような恥ずかしいような妙な気分になった
忠敬……私より結構年上でお父さんに似てる人
私はその夜の事をベッドに入りながら思い出して、その夜は忘れられない夜となった