ion-xのとある一日   作:ion-x


原作:PSO2
タグ:オリ主
ion-xのとある一日です。それ以上でもそれ以下でもねぇ!

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ion-xのとある一日

まったく、寒さが身に染みて嫌だな・・・。

というわけで今日の仕事は惑星ナベリウス凍土エリアだ。

え?なにがというわけだ、だって?

そういうめんどくさい説明は過去の俺に任せよう。

ってことで回想シーンどうぞ。

「お姉ちゃんを探してくださいっ!」

今朝、そんな風に依頼に来たのは、小さな女の子だった。

今日は特に用事もないし、丸一日カフェで大して金も使わずのんびりしてる、迷惑な客にでもなろうと思ってたんだが……。

「迷惑だと分かってるのになんでそんなことするんですか……」

子供に呆れられてしまった。

で?どういうことだ?お嬢ちゃんは迷子になったけど、迷子だというのは恥ずかしいから、お姉ちゃんが迷子になったということにしてるめんどくさい子供?

そういうのは、感心しないぞ?いいか、迷子センターならそこをまっすぐ行ってだな……

「違いますっ!」

なんだ違うのか。(子供に食いぎみに否定されてしまった)

んじゃ、一体全体どういうお話なんだ?詳しく話してみろよ

「私のお姉ちゃんは優秀なアークスなんですけど、そのお姉ちゃんが昨日の夜から行方不明なんです。

なので探してください」

いや、どちらにせよ訳わかんねぇよ。

というかなんで俺んとこに来た?

そういうことなら申請を出しておけば、そのうち暇な連中が探しに行くんじゃないか?

第一、優秀だってんなら自力で戻ってきたっておかしくないだろ?

「そのうちじゃ駄目なんです。

……お姉ちゃん最近新人のくせに生意気だって職場で、その、いじめられてる様で、私が話しかけても怒ったり部屋から出てこないこともあって……」

ほーん、そういうことね……。

そりゃ、確かに早く確認しないとまずいわな。

よっしゃ、その依頼請け負った。

てことで今から行ってくるわ。

行方不明になった場所とお姉ちゃんの写真かなんかあるか?

「えっ!?今からですか!?」

なんだよ、早い方が良いって言ったのはそっちだろ?

「そ、それはそうですけど……その、まだ報酬とかが……。」

そんなもん後でいいよ、人の生き死にがかかってるかもしれないんだ。

そんなことに時間かけてる場合じゃないだろ?

で、行方不明になった場所は?

「は、はい。昨日はナベリウスの凍土エリアに行くと言ってました。」

りょーかい。じゃ、ここで待ってな。今日中に解決してきてやるよ。

というわけで、今日の仕事は惑星ナベリウス凍土エリアっていうわけだ。

正直な話、こういう寒いところはどうにも苦手なんだが、子供の願いを無下にするわけにもいかんし、ましてやあんな切実な願いならなおさらだ。

というかまあ子供だらけの教育機関だってんならまだしも大人の職場でいじめなんてのがいまだ行われてるなんてねぇ……。

まあ大人だなんて言ったって、そんなもの年齢に基づいて判断された枠組みにすぎないし、そもそも元来人間なんてものは自分と他人を比べる生き物だからな。

その競争意識のおかげでこれだけの発展があったりもするんだろうが、だからってこんな風に一人の人間が追い込まれるような状態ってのは、なんとなくやるせなさのようなものを感じちまう。

そもそも優秀な奴を落としたって、憂さ晴らし以上の意味なんてないってのにな。

第一、下に見たいってんなら自分の価値をもっと引き上げるってのが正しい競争の形だと思うんだが。

ま、人間の心、特に劣等感や嫉妬心っていうのは厄介極まりないってことだ。

そんなこと言いだしたら、どんな感情もこじらせたらめんどくさいことには変わりないんだけどな。

しかし、今日中に解決してやると啖呵切ってみたはいいけど、最悪の場合もう死んでたっておかしくは無いんだよなぁ……。

その場合、あの子になんて声をかけたらいいのやら・・・、などと考えつつ、アークス側に残された情報で最後に通信が途絶えたポイントにまで俺はやってきた。

ここにヒントが残ってないとあとは虱潰しで探していくしかなくなるんだが。

さてさて、都合のいいことにぎりぎりヒントは残っていた。

これは……、消えかかってはいるが乱れた足跡と、血痕?

はぁ……こりゃ、悪い予感のほうが当たっちまったかな?

俺は、とりあえずは唯一の手掛かりである足跡をたどって移動してみた。

足跡は岩場の間を縫うように残されており、先に進むほど深くなっていってすこしずつ足跡の主に近づいてることがわかる。

しかし一つ、気になることがあった。

ただ移動してるにしては足跡が乱れ過ぎだったんだ。

ほぼ一か所に固まってるところがあると思ったら、とんでもなくまばらに残ってるとこもある……それに加えて複数の血痕……

普通に考えりゃ、会敵してそのまま戦いつつってところなんだろうが、足跡が一種類しかないのはどういうこった?

ありえるのは飛行が出来るエネミーと戦ってるって可能性だが、これまで通ってきた道にゃだいぶ狭い通路もあった。

そういうのは、大型のエネミーか小型のザコしかいない。

前者は狭い通路を戦いながら通り抜けられるとは思えないし、後者じゃこんなに苦戦するはずがないんだが……

そのとき遠くから剣戟の音が響いてきた。

どうやらまだ生きてるようだ。これでなんとか依頼主の涙は見なくてすみそうだと思いつつ、

俺は急いでその音のもとへと駆けつけた。

すこし進むとひらけた場所に出た。

そこには体中傷だらけだが写真で見た通りのツインダガー使いの女性アークスの姿と……

なんだ?あの黒い人影みたいなのは?

黒い人影は彼女と同じツインダガーを、彼女の頭上から振り下ろそうとする。

彼女もそれに反応し受け止めようと動きだしている。

しかし俺はそこに割り込むようにして刀を振るい、人影の攻撃を受け止めた。

なるほどね。こんなのが相手なら確かに足跡は残りそうもないな。

「誰!?」

俺は鍔迫り合いの状況から力を入れて、攻撃をはじき数歩後ろに下がる。

輪郭が曖昧というか、黒い靄のようなものが寄り集まって形を成しているような謎の影のほうも、急に来た俺に対して警戒してるのか、少し下がり止まっている。

あんたが行方知らずだって依頼を受けて、救助しに来た者なんだけどさ。

誰あれ?お友達?だとしたら日焼けしすぎじゃない?将来絶対皮膚がんになるからやめさせた方が良いよ?

「そんなわけないでしょう。というかむしろあたしの方が聞きたいくらいですよ。ダーカーの集団を倒したと思ったらあれが急に現れて襲ってきたんです。」

ふーん、よくわからんがとりあえずあれをなんとかしてあんたを連れ帰れば今回の仕事は終わりってわけだな。

「そう簡単に行くといいですけどね……。」

ん?あんた一人でも戦えてたんだろ?それなら二対一なら簡単に倒せるんじゃないか?

「戦えてなんていませんよ。私は昨夜から何度も殺されかけてるんですから。

……ただ、とどめを刺されると思った瞬間なぜかあいつは攻撃を止めるんです。」

……そいつはまた妙な話だな。

目的は他にあるってことか……?

「といっても逃げようとしたら、容赦なく攻撃してきますからね。いったい私をどうしたいのやら……。」

そのとき再び影が動き出す。

しかし、まっすぐこちらに突っ込んでくる攻撃を受け止めるため構えた俺を躱し、彼女へと攻撃の手を向ける。

てっきり俺に攻撃してくるもんだと思ってたから一瞬驚きで二人とも動きが止まってしまったが、とっさに彼女は攻撃を受け止めた。

このへんは流石小回りの利く武器を使ってるだけあると言ったところか。

俺は攻撃を受け止めるはずの動きから切り替えて、影の背後から斬りつける。しかしその攻撃は相手の実体をとらえずにすり抜けてしまった。

そのことに再び俺が驚いて二撃目に移る動きが止まった瞬間、影は元の位置へと引いていった。

――俺と戦ってる隙に逃げられればとも思ったがどうやら狙いは完全にあんたみたいだな。

「そのようですね。でもどうして……。」

さぁ?なんかこう、変わったものとか拾ったんじゃないの?どっかの秘宝的なやつとかさ。

「そんなもの拾ってるわけないでしょう。第一、それなら私にとどめを刺さない理由がないじゃないですか。」

だろうな。見た目というか、状況から考えるとダーカー関係の『なにか』だろうけど……。

ていうかそもそもあいつって攻撃効かないかんじ?

「気づきましたか?そうです。あいつには武器以外実体のようなものがありません。つまり、倒す方法が現状無い、というわけです。

そのうえ、さっきは引いていきましたがこちらが逃げようとしたらさわれないのを利用して最短距離で攻撃を仕掛けてきます。つまりは勝ちの目は無いということです、いずれはやられます。」

と言ったって別にとどめを刺してくるわけじゃないんだろ?

「今は、というだけかもしれないでしょ?どちらにせよ、逃げられず倒せないなら同じことです。

でも、あなただけならなんとかなります。」

は?

「さっきのであいつの狙いは私だってわかったでしょ?つまり、あなただけなら逃げられるかもしれないということです。」

それであんたはどうするんだよ?まさか一人で戦う気か?それこそ死ぬぞ?

「じゃあ、ここで二人で死にますか?あなたはただの仕事として来ただけでしょ?

……大丈夫ですよ、ちょうど死んでしまいたいと思ってたところなんです、私。

それに私が死んだところで、誰も悲しみませんから……」

その言葉に俺は呆れた表情を向けた。そんな俺の顔を見ず、彼女は続ける。

「職場で居場所を無くした上に、そのことで妹にも当たり散らすような私にはこんな最後がちょうどいいんです。」

……俺がここに来た理由はその妹さんからお願いされたからなんだけど?

「えっ……?」

あんたの妹さんが、一刻も早くあんたを助けたいからって、わざわざ俺に直接依頼しに来たんだよ。

そういう個人の仕事を請け負うのを生業にしてる俺のところにわざわざ来たんだ。行方不明になったって言ったって、まだ一日と経ってないっていうのにな。

だからそんなくだらないこと考えてないで、とっととここから生きて帰るぞ

あと、見殺しにしたら俺の夢見が悪いんだよ。だから俺の為にあんたのことは絶対助けさせてもらう。

「でも……!私はあの子に……」

あんたが、ちょっとでもあの子に申し訳ないと思ってんならちゃんと生きて帰って謝りな。

あんただってそんなことがわからないほど子供じゃないだろ?

「そう、ですね。分かりました、必ず生きて戻りましょう。

しかし、実際問題倒すのも逃げるのも不可能なあいつをどうします?」

それなんだけどさ、俺にちょっと考えがあるんだよね。

とりあえず、もう一回あいつと打ち合ってみない?あいつの狙いはどうせあんただろうから俺が突っ込んでいったら俺を無視してあんたに向かうだろ?

その隙をついて俺がなんとかあいつの体勢を崩すから、そしたらあんたが攻撃する感じで

「なにを考えてるか知りませんが、分かりました。信じていいんですね?」

おう、今のその気持ちをちゃんと意識してれば、五分五分くらいの勝率にはもっていけるさ。

そう言って彼女が構えたのを確認したあと、俺は一気に影の懐へと飛び出す。

同時に影も動く、先程までと同じように俺を躱した後、彼女を攻撃するためだろう。

想定通り影は俺を無視して彼女へと向かう。

影が俺の横を通り抜けた後、俺は身体を反転させそのまま振り向きざまに刀を振るう。

先程まではすり抜けていたその刃が影の実体を捉える。影は俺から逃げるように動いてたため浅い一撃になった。

そのため俺は一歩踏み込みながら突きを放ち影の体勢を完全に崩す。

彼女へと向かっていた勢いに加え俺による二撃を受け体勢の崩れた影はそのまま勢いよく倒れる。

先程まで効いていなかった普通の攻撃が効いた様子に驚いて硬直していた彼女だが、そこは流石に優秀なアークス、すぐに自らの持つダガーに渾身の力をこめ大上段から影へと振り下ろす。

「はぁぁぁぁぁっ!!」

「お姉ちゃん!心配したんだよ!」

「うん、ごめん。ごめんね……。」

とまあ、そんなわけで姉妹は無事に感動の再開を迎えたというわけだ。

やれやれ、折角無事に依頼者の涙を見ること無く解決できたと思ってたのに、結局泣かせてしまった。

ま、嬉し涙だから良しとしよう。

ちなみに最後の彼女の一撃によって影は見事に雲散霧消した。

彼女はどうしてそうなったのか何度も俺に訪ねてきたが、俺はまともに取り合わず、まずは無事に帰ってからだろ。と言って彼女と一緒に戻ってきたというわけだ。

結局あの影がなんだったのかというと「彼女の心」のような物だったのだろうと俺は思っている。

あの影が現れる前に彼女はダーカーの大群を倒していた、それによって残された大量のダーカー因子が疑似的に中途半端な模倣体のようなものを形作ったのだろう。

本来の模倣体であれば、敵であるはずのアークスにとどめを刺さないなどということはありえないだろうが今回のは中途半端ゆえに、その核に彼女の心のありようが大きく反映されたのではないのだろうか。

彼女の死んでしまいたいという思いが影の攻撃であり、彼女の厳しさが逃げようとする自らを許さず、そして奥底で思ってた死にたくないという思いが、影が最終的に攻撃を止めてた理由だろう。

俺の攻撃が最初は効かなかったのも、同じような理屈だ。ただ単に割り込んだだけの赤の他人じゃ「心に響かない」ものだろう。

最後の彼女の攻撃が決め手になったのも「死にたくない」ではなく「生きて戻る」と強く願った彼女の心が、もたらしたというわけだ。

なんて、こんなのは俺が勝手にこじつけただけの、ただの推測に他ならないけどな。

なんにしろ、こうやって彼女たちは無事に再開できたのだ。

その結果だけで十分というものだろう。

ちなみにこれは余談だが、俺は報酬の話をすることなく、煙草を一本取り出し火を付けずに咥え、笑みを浮かべながらそそくさとその場を去った。

姉妹揃って可愛かったし本当なら「今回の報酬は後日デートでもしてくれればいいよ」なーんてお誘いしてしまおうかとも思ったんだが、あんな感動的な場面の後でそれを言い出すのは流石にやめておくことにした。

ま、あんな感動的な場面に立ち会えたわけだし、今回の貴重な体験こそが報酬とでもしておこう。

デートの誘いはまた今度、縁が合った時にでもゆっくり口説かせてもらえればいいさ。

 


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