Fate/Cross Orient × 東方幻聖杯 作:馬の羽根
紅魔館、その出で立ちはまさに悪魔の館。この館の主人たる彼女に相応しい赤よりも紅いその外観は、目にしたものを魅了するかのように
それも、この館に住む者達が影に潜む存在であるからだろう。
鮮血の館に住む物好きな主人は
どんなものであれ力を持つものは何らかの立ち位置に収まる。
あるものは世界を観測し放浪し。
あるものは混沌の先を探求し。
あるものは人類滅亡に抗い。
あるものは自然との調停者として──。
力あるものは求めるか……求められるかのどちらかだ。では彼女はどちらか……レミリア・スカーレットは───。
「私の望み?」
「そうよ、あなたの望み。私にくらい教えてくれてもいいでしょう?」
触媒が置かれた2つの召喚陣。そこにはまだ魔力の奔流は無く。しかし、英霊と比較しても決して負けはしない魔力を持つ2人の少女がいた。
悪魔の館の主、レミリア・スカーレットは随分と前から聖杯戦争への参加表明をしていた。表明はしたもののその意図は誰にも伝えられていなかったのだ。聖杯戦争に参加する以上何らかの願いがあって然るべきである……この悪魔は
「
「あんな協定いつもなら投げ出して、ここを滅茶苦茶に引っ掻き回してから高飛びしてたでしょうに」
「そうさなぁ、いつもだったらそうしたかもね」
そう呟くレミリアの目には普段の無邪気な様子はなく老獪とした意志が宿っていた。瞳がこれから起こす行動に気まぐれなんてものはないと語っていた。
「──私は、私の一族の名に誇りを持っている」
「…………」
「誇り高きスカーレットは失墜した。歴史から姿を消し、人類史からも忘れ去られこの地に流れ着いた。残されたスカーレットは私と……あの子だけ──。
それなら願いなんて、分かるでしょう?」
「そう……そんなありふれた願いでいいの?」
「あれから十年、考えた。いや……一族の未来が閉ざされてからというもの六十年間考えた。
母は死に、父の名誉などとうに消え、信頼していた従者や友もこの幼い手に収まる程しか残らなかった」
五百年生きた、そのうち百年もの時を過ごした友はレミリアの強がりを知っている。それでもこうやって弱音を吐く時は、もう後が無い時であると言うことも理解しているのだ。
「一族の名誉はもう既に手の届かない場所にある。そもそもそんなものにはもう興味はない。堕ちた名も含めて私は誇りに思っているの……。
だから、私の願いはただ一つよ。本当に些細な……
それは敗者が
「私はもう一度、家族と夜明けを見たいんだ」
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──
「マスター、今戻ったよ」
青年の落ち着いた声が本の壁の間を反響する。今までの日常にはなかった事だ、パチュリーは一旦手を止め、背もたれに体重を預ける。
「別に戻ってこなくても良かったのよ? あのままセイバーのマスター達とともに居ても」
「ははは、それも良かったかもしれないね」
「それじゃあ何で戻ってきたのかしら。自由にしていいと命令したはずなのだけれど」
「僕は僕の意志に従ってマスターと共に闘うと決めたんだ」
バーサーカーの願いは、正義を貫くこと。その事は召喚してすぐパチュリーは聞いていた。同時にこちらの願いも彼に伝え……その上で彼がどう動こうが構うまいとしていたのだが。
「状況を単純に見れば、この戦争を激化させようと促しているのは私たちで、決して正義ではないと思うのだけれど? あなたはそれでもこちら側に着くのね」
空を覆い隠す紅い霧、
それを広域に広めているのはこの館の住人であり、善か悪かと問われれば人間にとっては"悪"と断ずるべき行為である。
「正直いってまだ分からない、僕の行為が正しいことなのか。でも、あの願いを聞いた上で裏切るなんてことは……間違っている。分からないことはある……でもこの行動にもう迷いはないんだ。
それに──」
「それに?」
「──それに、この一週間ここで過ごして感じたことは絶対に間違いではなかったから」
「…………それじゃあ、せいぜい負けないように務めなさい。私の使い魔なんだから」
はっきり言ってパチュリーにとってバーサーカーはどうとでもなる駒という認識しかなかった。『
彼の能力は分からない。しかし、自身を補佐し、理性がなく自らの力であればいくらか御しやすいバーサーカーというクラスを選んだ。つまり期待していなかった、そういえば言えば彼に申し訳ないだろうが……その認識は少し変わった。
「ありがとう、マスター。僕は僕のために貴方達の願いを叶えるよ」
どうしようもないお人好し、願わくばこの青年が満足のいく結末になってほしいとほんの少しだけ思った。
「意気込むのは勝手、貴方が戻ってきたなら情報の共有をしなくちゃならないわ。まずはそこからよ」
バーサーカーは先ほどでセイバーのマスター、上白沢慧音とともに行動していた。彼女は一方的に自身が情報を持っているのは不公平だとし、博麗神社で情報を共有していたのだ。
「そうね、じゃあまずは私達とセイバー達を抜かしたクラス。キャスター、アサシン、アーチャー、ライダーについて……」
「そうだね、キャスターの真名はネロ・クラウディウス。暴君として名高い古代ローマ帝国の皇帝、薔薇と黄金の繁栄を極め最期は悲惨な死を遂げた。男性だと思っていたけど女性らしい。それはともかく、敵対者に不利、自身に有利なフィールドを構築する厄介な宝具を持っている」
「本当にすべてがわかるのね彼女は……なら分からないことがないんじゃないかしら?」
「彼女のは期間限定の能力だ、その証拠に彼女が能力が使えなくなった明け方、それ以降に召喚されたと思われるライダーの真名は分からないままだ」
満月が見えなくなってから慧音の能力が使えなくなった。いや厳密に言えば能力が切り替わったと言った方がいいのだが。
「明け方……使い魔越しの映像でも分かるくらいの変化があった頃ね……まるで人狼の類。満月で姿が変わるだなんて」
「次はアサシン、真名は加藤段蔵。ここ日本の忍者と呼ばれていた暗殺者で妙な技を駆使し敵を撹乱しながら動くみたいだ。宝具はその技、忍術と呼ばれるもので複数ある……一番警戒すべきなのはドンギューと言う逸話を昇華した宝具だろうか」
「アサシンならランサーが交戦したらしいわ、戦いにくいとは言ってたけどランサーはまだ余力がありそうだったわ。油断はしない方がいいわね」
「そしてアーチャー、真名は俵藤太。別の名は藤原秀郷と言うらしいね。ここ日本ではドラゴンスレイヤーとして有名みたいだ、少なくともこの幻想郷においては知名度補正の類はあまりないみたいだけど……。
慧音の反応からしてかなり油断ならない相手のようだ、たぶんセイバーとの相性を考えてのことだろう。ランサーにとって分が悪いようだったら彼らが潰し合うよう誘導するのも手かもしれない。
宝具は魔を祓い去る一本の矢、アーチャーらしい宝具だ……」
「アーチャーは正統派に強いって感じかしら、宝具や経歴に癖がない。少なくとも魔の際たるうちのお嬢様には気をつけるように忠告しなくちゃね」
「癖……まあそうだね。戦闘面においては癖がないみたいだ、もうひとつの宝具がかなり……いやこれはよそう戦況に変化を与えるものではないだろうからね」
バーサーカーは少し苦笑して頬を掻いている。そういう反応を見せられると聞きたくなるというものだ。
「なによ、勿体ぶらないで教えなさい。物によっては聖杯戦争をひっくり返しかねないものかもしれないんだから」
「あ、あぁそうだね………。
もうひとつの宝具は……。
えーっと。
無限に米が湧く米俵………らしい」
「…………」
「…………」
聖杯戦争の何をひっくり返すというのか。
「…………」
幻想郷の食事情がひっくり返されるというのだろうか。
「…………ふざけてるの?」
「ふざけてないさ!慧音だって真面目な顔で話してきたんだから……彼女があの状況で冗談をいうような人には思えないだろう!」
「…………」
「こ、この話は一旦置いておこう……一番警戒すべきなのはセイバーだと思うんだけど」
苦しい話題転換だがこれ以上マスターのジトッとした睨みには耐えられない。本筋に無理やり戻す他ないのだ。
「そうね、ドイツ・北欧の英雄ジークフリート。邪龍ファブニールを討った彼の肉体は背中以外は特別なものになりナイフすらも通さなくなった……。ランサーの渾身の槍すらも完全には刺さってはいなかったわね。宝具の呪いを彼女が肩代わりした形だとしてもあの硬度には目を疑ったわ」
彼女もこれ以上突っ込むつもりは無いらしい。ひょっとしたらちょっとした意地悪だったのかもしれない。先程の空気から一転変わり、冷静に分析するパチュリーは魔術師というよりは学者のように見えた。
「鎧の宝具、剣の宝具両方を持ち合わせた最優のセイバーらしいセイバーだ……攻防ともに隙がない。アーチャーと対立するなら問題は無いけど決戦場はここ紅魔館だ。なかなか難しいだろう」
「そうね、あとはマスター次第かしら」
サーヴァントは最大限に警戒すべき相手であるのには変わりない。だがそれを御するのはそれぞれのマスターだ、誰がマスターになりどんな相手なのか、それを知らなくては聖杯戦争を勝ち抜くのは難しいだろう。
「セイバーのマスターは知ってるだろう。上白沢慧音、この聖杯戦争においてほぼ全てを知っている。セイバーを警戒すべきなのは彼女の存在も大きい」
聖杯戦争では情報が多い方が勝つと言っても過言ではない。それは英霊のシステムが影響している。彼女は少なくとも情報においては勝利している。
「アーチャーのマスターは霧の湖に棲む氷精チルノ。すぐ近場であることから1番最初にここにたどり着く可能性が高い。妖精という種族上能力は未知数」
「妖精ならば取るに足らないわね。アーチャーのみを警戒すべきかしら。妖精の特性上始末するのも視野に入れても問題は無いでしょう。誰も恨む者はいない」
妖精は死んでも一回休みになるのみで死にはしない。自然の権化たるそれらは生死という概念があやふやなのだ。
それ故に残酷な手段も問わない、酷い話だが妖精は丁寧に扱ったとしても本来は厄介なものなのだ。
「ライダーは不明、人里では召喚の動きはなかったそうだから恐らく妖怪がマスターの可能性が高い」
パチュリーにとっては一番の懸念だ、使い魔で探ってもそれらしき者はいない。霊体化しているか、使い魔の映像が届かない迷いの竹林に隠れているのか……この聖杯戦争においてはライダーが
「キャスターのマスターは霧雨魔理沙。恐らく唯一の純粋な人間の魔術師らしい」
「使い魔で追っているけど至って普通と言った感じだったわ。そしてアサシンのマスターは……」
「アリス・マーガトロイド、人形遣いの魔術師だ。自分のことを七色の魔法使いと名乗っているらしい」
「ふぅん、魔法使いねぇ」
パチュリーのその態度は何か思うところがあるようで目が何かを語っている。恐らくだが、たかが魔術師が魔法使いを名乗るのに納得が言っていないと言ったところだろうか。ジキルはそう推測する。
「僕が知った情報はこんなところだろうか、あとはマスターたちの動向だけど……」
「わかるわよ。アサシンのマスターの魔法使いさんはどうやらキャスターのマスター、普通の魔術師さんと行動を共にしているみたいよ」
使い魔から送られてくる映像を目の前に投影する。そこには紅魔館に向け霧の湖上空を飛ぶ二人の魔女と一つの人形が映し出されていた。
「うわっぷ!くそう!あの館に近づく度に霧が濃くなってくな」
「障壁くらい貼っときなさいよ、体に悪いわよ」
香霖堂で仮眠を取っていた魔理沙は、外の異変に気づいたキャスターとアリスにたたき起こされ少しだけ不機嫌だった。
それもそのはず、やっとの事でありつけた睡眠を邪魔されたのだから。しかしそんなことは言っていられないと外を見た魔理沙は急いで香霖堂を後にしたのだった。
「全く、起きたら香霖のやつに詳しく話を聞こうと思っていた矢先とんでもない異変が起こるとは思ってもなかったぜ。
なんだよこの魔霧、魔法の森の瘴気といい勝負してるぞ」
「魔力純度が高い分こっちの方が厄介ね、視界も不明瞭なほど真っ赤……疲れる色してるわ」
「色だけなら余好みの真紅なのだが……この霧は気に食わん!無辜なる民に被害を及ぼすなど言語道断だ!それに神秘なる自然に満ち満ちたこの郷が一切見渡せぬではないか!」
霊体化しながらほんの少しだけズレた批判をするのはキャスター。まだ幻想郷の1部も見れていない彼女からしたら害悪でしかないのだろう。実際、害あるものであるから批判の方向性は同じなのだが。
アサシンは霊体化せずに湖を走っている。
「あの館がある島は確かこの辺だった気がするが……もしかして移動してるのか?」
「なんと!移動要塞だとでも言うのか?だとしたら相手は侮れぬな……」
「霧で迷ってるだけでしょうに……それにしてもおおよそ夏とは思えない気温ね。少し肌寒いわ」
香霖堂を出てからというものの魔理沙のボケに天然で返すキャスター、それにツッコミを入れるアリスという構図が出来上がっていた。いや、恐らくキャスターも分かってて乗ってる節はあるだろうが。
「大丈夫、余に任せるが良い!この霧の中でもサーヴァントの位置は概ね感知できる。
こんな大胆な宣戦布告をした者らは恐らくだが徒党を組んでいる可能性が高い。複数のサーヴァントの魔力が感知できる北北西の方角に行けば……」
キャスターの指示に従い北北西に進むとうっすらと陸と館の輪郭が見えてきた。紅霧に紛れその姿を隠す館は悠然と客人を待っているようだった。
「ビンゴだキャスター、霧の出どころはここだ」
「うむ、気を引き締めるのだぞマスター。館の門にどうやら二人、番人が待ち受けている。
敵は大人しく館の中に入れてくれるつもりではないようだ」
少しずつスピードを落としていく。それは臨戦態勢へと変更する合図ともとれる。魔理沙一行は少なくともそのつもりで減速した。
「聖杯戦争の参加者とお見受けする!この館に入りたくば私達を押し退けなさい!」
ゆったりと流れる霧に乗って聞こえる声は警告の言葉。これ以上立ち入るならば殺す、立ち去っても無事では帰らせない。そんな殺気を乗せ飛ばしている言の葉だ。
「そんなのいいから邪魔だよ。通してくれ、ここの番人だろ?」
魔理沙があからさまな挑発を送る、どちらにせよ戦うことになると分かったのだろう。それならばむしろ乗ってやるという風な口の利き方である。
「ハッ、威勢がいいこった。番人だから邪魔すんだ。だから悪く思うなよ、お嬢ちゃん」
暴風が巻き起こる。
それは殺気がこもった一片の風。霊体化を解いたキャスターが真紅の鞴で風を受け止める。
「ふむ、どうやら普通の人間はここの館にはおらぬようだなランサー。貴様同様の殺気をこの館全体から感じるぞ!」
受け止めた風を払う、それは風でなく人型の殺気。紅い霧の中でも溶け込む蒼の狩人。
ランサーとキャスターが再び相見えた。
「アンタも普通のサーヴァントじゃねぇらしいな、剣を使う魔術師なんざ聞いたことねえぞ」
「余は特別だ、何せ万能の天才なのだからな」
「魔理沙、キャスター、そっちは任せたわ。私とアサシンはあっちを……」
アリスはアサシンと自慢の人形を構える。その指の一つ一つは凶器だ、魔術を修めた彼女はその華奢な体以上の力を発揮する。
「さぁ魔術師さん。体術と魔術どっちが強いか試してみましょう」
紅美鈴は静かに拳を構える。その目は冴えていた、普段の朗らかな彼女は鳴りを潜めている。彼女の普段を知るものなら目を疑うことだろう。それほど彼女はこの戦いに、燃えていた。
「キャスター、後ろから援護する。派手にやってくれ」
「良いぞマスター!派手ならば余の得意中の得意だ。余を奏でることを許そう!」
魔理沙は状況を冷静に判断すべく一歩下がった。確実に勝ちに行く、そう決めたのだから。彼女は勝利の歌を奏でるべくキャスターを指揮する。
「アンタがセイバーじゃなかったのはちょっとだけ残念だったがそれはそれさ。
覚悟はいいかキャスター!今度は退かねえ。全力勝負と行こうじゃねえか!!」
ランサーは猛獣のような笑みを浮かべる。この聖杯戦争、全力で戦える相手がいるとわかったのだ、容赦はしない。
敵ならば心ゆくまで戦い食らいつくまで。クランの猛犬は吼えるのだ。
Stage 1 紅色と蒼色の境
〜Scarlet and horizon land
自機 霧雨魔理沙
サーヴァント キャスター
真名 ネロ・クラウディウス
筋力 D 耐久 D
敏捷 B 魔力 B
幸運 A 宝具 EX
騎乗 B
騎乗の才能。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが。魔獣、聖獣の獣は乗りこなせない。
陣地作成 EX
魔術師として有利な陣地を作り上げる。
この聖杯戦争では宝具の影響で規格外のものになっている。
道具作成 A++
魔力を帯びた器具を作成できる。
マスターである魔理沙の影響で滅多なことがなければ奇抜で奇妙なものは作られないが。芸術関連になると規格外に奇妙で魔力が込められた道具が作られる。