魔法少女かのん☆マギカ   作:鐘餅

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久しぶりだけど短い


“菊名夏音”という少女 6

 ――すべてが、呆然とする中で動いていく。

 

 訳が分からない。訳が分からない。

 あの魔女がミズハ? 何故入理乃は戦わされている?

 

「やめろ……やめてくれッ!!」

 

 ミズハの魔女を見ていたくなくて、結は叫ぶ。

 だが現実は変わってくれない。入理乃は悲痛な顔で魔女を攻撃していく。魔女は逃げられないようで、炎で応戦するも、傷がつき始めた。

 相性は最悪なはずだが、彼女を操るっている者は只者ではない。その潜在能力を引き出し、的確なタイミングで回避や迎撃をさせている。

 

 やがて魔女はトドメを刺され、戦闘は十数分で終わった。

 結界が消え、コロンとグリーフシードが落ちた。

 

(ミズハ……)

 

 結は受け入れた難い気持ちで、絶望に支配された。入理乃も顔を蒼白させ、掠れた声を漏らす。

 

「あっ……ああ……」

 

 しかしそんな状態であっても、嘆きの種に必死に手を伸ばそうとしているようだった。

 だが、それは許されていない。入理乃は縛られて突っ立っているのみ。

 代わりに少女の影が遠慮なくグリーフシードを拾い上げた。

 

「これは私がもらっていく。お前が触れて良いものではない」

「ッ、返せ、返してよ!」

 

 入理乃は怒鳴るが、少女の影は不気味に見ているだけだった。

 

「じゃあな。我が愛おしき妹――阿岡入理乃よ。せいぜい束の間の夢を見ると良い」

 

 そして少女の影が消えると同時、いつの間にか遠くから足音が聞こえてきた。

 船花サチ。あの影が呼んだのだろうか。

 何処か焦ったような顔をしていて。

 

「入理乃! あのメールはどういうことだ! 一体何が――ッ!?」

 

 入理乃の側に来ると、サチは驚いたように固まった。

 その彼女のソウルジェムは、

 

「おい、どうしてそんな真っ黒に……」

 

 輝きが見えないほど、穢れに侵食されていた。

 こうなるともう、後は堕ちるだけ。

 

「船花ちゃん。私――」

 

 入理乃は何か言いかけるも、その時パチンと、無常に魂は砕けて。

 ――新たな魔女が孵化した。

 

(そんな……)

 

 それを、結は悲しみと共に眺めているしかなかった。

 ずっと、ずっと――

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……それでも。

 記憶は容赦なく続いていくのだ。

 この過去を見る旅も終わりが見えない。しかも今度はいつも通り、夏音の視点に戻っていた。ミズハのことが気になるのに。

 

「はあ、まったく。どうしてこんなことに」

 

 夏音はやはり、何も覚えていないようで、ベットの中で悪態をついていた。彼女は倒れていたこともあり、病院に入院しているらしい。警察の事情聴取もあったが、答えられることいったら特になく、彼女にとっては煩わしいだけだったようだ。

 

 何度も何度も溜息をついては、現実逃避をするかのように携帯をいじっている。実際に考えるのが怖いのだろう。

 一体何が起こったのか。何故倒れていたのか。魔女を知っていることもあり、嫌な予感でいっぱいに違いなかった。

 

(そうか。この子は何も知らないんだな……)

 

 ふと結はそう思った。

 そして一旦そう思ってしまえば、何とも言い難い気持ちになる。

 だってこれじゃあまるで、あの影の少女の操り人形だ。彼女が望む通りに、夏音は変化していっている。

 

「君は、これからどうなるんだ?」

 

 そのせいか余計に怖くなって、結は呟いてしまった。

 誰にも届かないだろうに。

 

(僕はこれまで君のことを見てきたんだ。君のことを全然知らなかった)

 

 元は普通の少女で、兄に嫉妬をしていることも。

 寂しがりやな女の子なことも。

 初めて知った。知ったからには、放って置けない。そりゃあ、まだ死にたいという気持ちはあるけれど。

 

(どうにも僕は、君のことを嫌いになれないらしい……過去の君に、教えてあげられるなら教えてあげたい)

 

 今まで見守ってきた一部始終、そのすべてを。

 

(きっと君は、あの影の奴の身代わりだ)

 

 そこには何かとんでもない秘密があるのだろう。夏音にも、あいつにも。その正体はきっと――

 

「夏音、来たぞ」

 

 と、その時だ。

 コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。夏音は顔を上げ、やがて嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「兄さん……!」

 

 兄を呼んだのと同時に扉が開かれる。夏音とよく似た男性が、病室の中に入ってきた。

 

「ごめんな、夏音。なかなか仕事が休めなくてな」

「ううん。良いんです」

 

 夏音はやけに上機嫌で答えた。兄は林檎の詰め合わせを持ってきたようで、それを机の側に置いてから椅子に座った。

 

「しばらくは入院なんだってな。体の調子はどうか?」

「ええ。何処も問題ありません」

 

 むしろ「元気が良いくらいですよ」と夏音は言ってみせる。

 検査もあっただろうが、異常はないらしい(それ自体が異常なのだが)。それに対して、夏音の兄はホッとしたように息を吐いた。

 

「良かった。無事で何よりだよ」

「えへへ。兄さんが心配する程じゃありませんよ」

 

 夏音はおちゃらけて言うが、兄の方はムッとしていた。

 

「そんなことは言わないでくれ。こっちは真剣なんだ」

「……」

「遅くまであまり出歩かないでほしい。一人で辛いのは分かるけど、万が一のことがあったら……」

 

 兄が夏音の手を握る。本当に本当に、心配そうな顔で。

 

「夏音、危ないことはしないでくれ。もう二度と、あんなところに行かないでくれよ?」

「はい」

 

 夏音は頷くが、きっと形だけなのは結にも分かった。力への憧れが止められないのだ。彼女の兄も何となく察したようで、不安げな表情をしている。しかし言いすぎるのも良くないと思ったのか、

 

「にしても、母さんも父さんもこんな時だっていうのに、出張で来ないなんてな」

 

 と手を離しながら話題を変えた。

 すると、さっと夏音の顔色が変化する。まるで思い出したくないと言わんばかりだ。

 

「薄情だよな」

 

 しかし兄はそれに気づかず、少し怒ったように眉根を寄せる。

 

「お前だってずっと寂しいだろう。責めたって良いんだぞ」

「別に――」

 

 夏音は複雑そうに俯く。乾いたような瞳、その反面期待を抱きたいというような表情。必ずしも両親を嫌っているわけではなさそうで、しばらくして仕方なさそうに、

 

「別に寂しくありませんよ。だって後で来てくれるでしょ? それで十分です」

 

 そう言ってのけた。でも、やっぱり兄は納得していない。

 

「そんなんで良いはずがないだろう。俺達は家族なんだ。家族である以上、今すぐ駆けつけなきゃ駄目だ」

 

 兄ははっきりした口調で言った。

 

「今までの分も怒れよ、夏音。遠慮している必要なんてないんだぞ。いくら何でもほったらかし過ぎだ」

「遠慮……?」

 

 その時、夏音が何を思ったのか分からない。しかし、そこで何かを言いかけたようだった。

 なら、どうして。

 

 どうして私を、兄さんは――

 

「……」

 

 けれど、途中で黙ってしまった。申し訳無さそうに、罪悪感塗れの顔で、

 

「……いえ。私はいらない子ですから。一度だって母さん達に怒る権利はありません。むしろ私より、兄さんこそ怒るべきでは?」

「!」

 

 兄はハッとしたように目を見開いた。言葉の意味を悟ったからだろう。そちらこそ、これまで自分のことを両親から押し付けられてきたではないか、と彼女は言ったのだ。

 そして、それで何も思わない兄ではない。一瞬図星を突かれたように息を飲み、次には謝った。

 

「夏音、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだ」

「謝る必要はありません。兄さんは……私に構わなくても良いんですよ」

 

 その曖昧な笑みに、兄は首を振った。

 

「そんな訳にはいかない。お前は大事な妹だ」

「……、それを言うなら私もです。貴方が大事です」

 

 苦しげに眉を下げると、瞳を伏せた。

 

「だから私のことは気にしないで下さい。兄さんは自分のことだけ考えて」

「夏音」

「すみません。せっかく来てくれたのにこんなこと言ってしまって。こんなんじゃガキみたいです」

「そうは言っても、まだ子供だろ……」

「いいえ。みっともないのに変わりないです。でも兄さん、心配してくれてありがとう。それだけで私は大丈夫。大丈夫だから――」

 

 そして夏音は再び兄へと視線を戻し――首を傾げた。

 

「……?」

 

 何か違和感を持ったらしい。どうして気になったのかは分からない。分からないが、彼女はポツリと言った。

 

「兄さんって着物着てましたっけ?」

「? いいや? 冗談か何かか?」

 

 勿論、夏音の兄はキョトンとしている。

 だが夏音は訝しがるようにパチりパチりと目を瞬かせ、

 

「いえ、何故だが妙に黒く見えてしまって……」

 

 そのせいか、無意識に瞳を赤く光らせてしまった。

 

 すると――化けの皮が外れるように、夏音の兄の姿が揺らぐ。いつの間にかそこにいたのは、烏の頭部を持つ、死装束を着た人形だった。

 

「ッ!?」

 

 ガタンっ!

 

 唐突なことに、夏音はベットの端まで後ずさる。結もあまりの事態に一歩下がった。

 

(は――?)

 

 思考が追いつかない中、さっきまで夏音の兄だった人形は、訳の分からない言葉を話しながら夏音に手を伸ばす。

 

「mfこkrkおえーーs?」

「ひっ!」

 

 当然、夏音は怯えて拒絶する。もうそれは兄ではなく、化け物でしかなかった。

 

「んっけーAえっぇーぇ? mどどpめl」

 

 しかし、その人形はまるで自分が兄だと言わんばかりに、自分を指差すのである。そして夏音は“それ”が言っていることを理解しているようで、半狂乱で否定した。

 

「何を言っているんだ! お前は兄さんなんかじゃない! ふざけるな!」

「mflろぇーえfーf」

「だから違うって!! 何なのよお前!!」

 

 夏音は果敢にも睨みつけるが、人形には効果がなかった。

 しかも遂にはベットにまで乗り込んできた。少しずつ近づいていき、口をパカリと開ける。だから夏音がやったことは、本当に咄嗟のことだろう。

 

「とにかくあっちに行ってよ!」

 

 彼女は思わずと言ったように人差し指を向けた。

 途端その瞬間――指先に魔法陣が浮かび上がり、赤黒い雷が放たれた。

 

「え?」

 

 夏音が呆然とする間もなく雷は直撃。人形を丸こげの物体に変えた。

 おまけにそれなりに大きな音がしたので、外がざわつく気配がした。

 でも、夏音はそれどころじゃない。信じられないように手を見下ろす。

 

「わ、私――」

 

 けれど。

 その手が一瞬、白い毛並みに覆われたように見えたのは気のせいだろうか。見覚えのある手。結は……戦慄し、息を飲んだ。

 

 そんな中である。

 

「あーあ、やっちゃったみたいだね」

 

 軽快な声が一つ。窓をすり抜け、獣が侵入する。途端、ガチん、と音がして、外が静かになった。

 夏音は白い獣に気付き、呟いた。

 

「キュゥべえ」

「やあ、菊名夏音。順調に力が目覚めているようだね」

 

 キュゥべえはベットの真ん中に降り立つ。夏音は呆けたように固まっていたが、少しすると質問した。

 

「兄さんは? 兄さんはどうなったんですか?」

「兄さん?」

 

 キュゥべえは嘲笑うように繰り返した。

 

「ああ、キミのお兄様のことか。いや、お兄様なんて始めからいやしないよ? そいつは偽物だ」

「偽……物?」

 

 別の意味で、夏音は再度震えた。冷や汗をダラダラ溢し、「そんなはずが無い」と言う。

 

「だって兄さんは今まで通りでした! ずっとずっと、これまでだって!」

「うん。でも、キミのお兄様は邪魔だったから。神様が消して人形にしたんだよ。人格や姿を完全に再現したコピーさ」

「……有り得ない」

 

 夏音は一筋涙を溢す。こんなもの、はいそうですかと飲み込めるわけが無い。しかもそれを認めてしまうと、今まで化け物と暮らしていたことになる。夏音は怒り任せに、キュゥべえの首を掴み、締め上げた。

 

「馬鹿なこと言わないで! 兄さんはちゃんと生きていたの! 生きていたのよ!」

「やはり、そこで怒るか」

 

 キュゥべえは構わず目を鋭くさせた。なんとも思っていないらしい。

 

「あのなあ、夏音。キミ、兄が憎かったんだろ? それなのに今更怒るなんて滑稽じゃないのか?」

「何処が!」

「いや、矛盾してるなって。だって兄を見下して、マウント取って、兄の全部を奪いたかったんだろうが。いっそいなくなればなんて、いつも考えてたことじゃない」

「ッ!」

 

 夏音は何も言えず、手を緩めてしまった。

 キュゥべえはそこから逃げると、

 

「ま、所詮、お前はガキでしかないってことなんだよ」

 

 冷たい顔で非難した。

 

「甘ったれて、兄のことも理解せず、自分のことしか考えてない。そのくせ自分に向き合おうともせず、欲しいものが手に入らないと納得出来ない我儘女。後悔しても後の祭りってやつだ……まるで玉と同じだな」

 

 そして次に、わざとらしい悲しげな表情で笑った。今度は夏音が睨みつける番だ。

 

「うるさい……何で貴方にそんなこと言われなきゃいけないの! やっぱり貴方、性格最悪です!」

「アハハハ、言ったことあるだろう?」

「何を知って、何を隠しているんだ! 全部言えよ、今すぐに!」

 

 夏音は人形にやったみたいに、キュゥべえへと指を向ける。

 生み出された魔法陣から、バチバチと嫌な音が立った。

 

「おおう。怖い怖い」

 

 それにキュゥべえは肩をすくめる様に怖がるふりをして、

 

「じゃ、そう言うなら言っちゃおうか。実はもう一つニュースがあるんだ」

 

 すると、キュゥべえはワントーン声を低くさせた。

 

「――昨日、阿岡入理乃が死んだ。キミのせいだ」

「!?」

 

 目を見開き、夏音は手を下ろして魔法陣を消した。縋るようにキュゥべえを見る。

 

「キ、キュゥべえ! 今すぐ契約を! 阿岡さんを生き帰らせて!」

「出来ない」

「!? どうして!」

 

 キュゥべえが拒否をするので、夏音はますます詰め寄った。

 

「何故です! 何でも願いを叶えてくれるんじゃないんですか!?」

「ああ。しかし、このタイミングで願いを叶えて良いのかい?」

「は?」

「そもそも何で死んだのか。キミは知らないよね?」

 

 圧を感じさせる物言いに、夏音は気まずそうに瞳を震わせた。

 

「……それはそうだけど」

「キミは覚えてないかもしれないけど、魔女結界に入り込んだんだ。そこを入理乃が……」

「まさか身代わりに? 船花サチがいるじゃないですか」

「だがキミも知っているだろう? 彼女達は時々別々でパトロールしている。今頃、世間は入理乃が行方不明で大騒ぎだろうね」

「……」

 

 キュゥべえの白々しい嘘を信じたらしく、夏音は絶句していた。

 スマホでサチに電話をかける。しかし出ない。何度電話をかけても、出ない。やがて人形の亡骸を見て、夏音は絶叫した。

 

「違う! 何もかも全部違うんだ! お前の言うことは出鱈目だ!!」

「ふーん。でも現実は何も変わっちゃくれないぞ?」

「黙ってよ!」

 

 ついに夏音はキュゥベえを叩いた。キュゥべえはその勢いでベットから落ちるが、やれやれと体勢を治し、

 

「それよりも良いのかい、夏音。東順那から紙をもらっただろう。後日来るようにって」

「……それが何なの」

「さっきので分かっただろう? キミは神の力に目覚め始めている。魔法が使えたのもその証拠だ」

「え……いや、でも……」

 

 戸惑う夏音に対し、キュゥべえは赤い目で見つめながら、

 

「もし入理乃のことで後悔しているなら、キミは本物の神になるしかない。そして東順那は広実一族の血統だ。彼女は神と通じる巫女でもある」

「巫女……」

「契約して、それで本当に救われるなら良いかもしれない。しかし早島やキミの兄を救うには不十分だ。神について知りたいなら、順那に聞いてみるべきだよ」

 

 そう言われ、夏音は納得出来ないように顔を顰めた。しかし、無視できる訳でもないようだった。たとえ、誘導されていると分かっていても。

 

「気になります。……分かりました。抜け出してでも行きますよ」

 

 そうして夏音は立ち上がり、窓の方へ視線をやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 丸こげの人形を、取り敢えず部屋の隅に隠すとして(夏音は何度も吐きそうな顔をしていたが)。

 ……そこから病室を抜け出すのは容易だったみたいだ。

 今の夏音は魔法を使える。魔法が使えたなら、後は誤魔化すのはどうとでもなるのだ。

 そうして病院服から普段着に着替え、向かった先は、大きな神社だった。

 名前は――

 

「富枝神社……」

 

 ある意味早島市で一番権威ある神社だ。

 今日は珍しく参拝客はいない。

 結は色んなことを思い出して顔を顰めた。それにこんなところに来て一体何をしようと言うのか……まったくもって分からなかったのだ。

 

 でも、順那は待ち合わせ時間ぴったりにやってきた。

 普段では絶対に着ない様な、粗末な着物を着て。

 

「とうちゃん……」

 

 そんな順那に、渾名で呼ぶ夏音の顔は困惑に満ちていた。

 順那はじっと彼女を見ていて、普段とは比べ物にならない程、深く落ち着いた声で言った。

 

「やあ、来たんだね、菊名夏音。嬉しいよ。素直に会いにてきてくれて」

「……その格好」

「ああ……普段のゴスロリも良いけど、神社だと合わないじゃない? だから昔の服を引っ張ってきた。どうだろうか」

 

 そう言って、順那はその場でくるっと回ってみせる。

 不思議と様になっていて、夏音はしばしの間見惚れたようだった。

 

「……。何だか妙にに着慣れてますね」

「さっき言ったでしょう。昔はこんな服装だったんだよ」

 

(そんなはずが無い)

 

 結は即座に頭の中で否定する。

 少なくとも順那は小さい頃からゴスロリや洋服しか着なかったはずだ。確か――「自由な服装が許されている時代なのに、好きな格好をしない理由がない」とかで。結構な執着ぶりが見受けられたが。

 

(その順那が着物を着ているということは、何か意味あるだろうか?)

 

 そう思っていると、順那が腰に手を当て、答えを言ってくれた。

 

「ま、神について真実を話すんだ。それなら少しでも、当時の服装の方が話しやすいのさ」

「よく分からないですけど。でも、やはり神の存在について知ってたんですね」

 

 夏音は軽く睨む。そこに友達を信じるような色はない。

 しかし順那は飄々とした態度を崩さなかった。

 

「そうだね。私はずっと神を監視してきた。謂わば私は巫女だ」

「巫女……それってあの白いチンチクリンも言ってた奴ですか。一体何なんです?」

 

 お前、キュゥべえも知っているんだろう? というニュアンスも含めて質問する夏音。順那は誤魔化すこともなく、

 

「それをこれから話すのさ。っていうか、キュゥべえは連れてないんだ? 何で?」

 

 と返した。

 

 ――そう。夏音の側にキュゥべえはいなかったのだ。

 なんでもサチが心配だから見てくるとかで。

 夏音もそれを了承し、一人でここにきたのである。

 そして彼女のそのことを説明すると……順那は納得したような顔をした。

 

「成る程ね。入理乃が死んだニュースは私も聞いているよ」

「……じゃあ嘘じゃないんですね」

「同じ魔法少女としては驚きだけどね。彼女は強かったもの」

 

 すると夏音は複雑そうに眉根を寄せた。

 これも予想していたことだろうが、いざ本人の口から聞くと、思うところもあるのだろう。

 

「じゃあ着いてくると良いよ。こっちだよ」

 

 それから順那は背をくるりと向けて歩き出した。それを、ただ黙って夏音は追いかけた。

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