――色梨こゆり。
牛木草最強の魔法少女。
彼女を一言で語るなら忠犬だろう。
こゆりさんはとある魔法少女に仕えている。
名は白亜日華。
通称、狼王――文字通りその人は牛木草の王だ。
数多の縄張りを独占し続ける彼女は、多くのグループを傘下に従え、日々勢力を拡大している。
しかし白亜日華の仲間は、こゆりさんただ一人だけだ。
こゆりさんは彼女の手となり足となり戦い続けている。
だからこそ遭遇したらすぐに逃げろ――それが牛木草の魔法少女の常識。日華への忠誠心は半端ではないらしく、フラフラと出没する“風来坊”のくせに、日華の命令であれば即座に動くという。
そんなヤバい魔法少女が目の前にいて――尚且つ、酔っ払いながら敵意を剥き出しにしている。
一体何が起きているのだろうか。
突っ込みどころが多過ぎて意味不明だ。
とにかく分かるのは、逃げ場がないということ。そして現状をどうにかしなければいけないことだけだ。
しかし、私に出来ることなどたかが知れている。
私はどうすれば――
「夏音ちゃん、とりあえず下がってて!」
そう色々考えていた時、家主さんが叫んだ。私は思わずギョッとする。そんな訳には行かない。
「でも私だって!」
「でもじゃないからっ!」
叱責され、私は固まる。家主さんの声は真剣そのものだ。
「ここで君に出られても邪魔なだけなんだよ!! 危ないからひっこん出て!」
「……ッ!」
家主さんの言うことは正論だった。何より私の体は……震えていた。まだ戦うことそのものが怖いというのか?
「っ……分かりました」
悔しさから拳を握り締め、大人しく後ろに下がる。勿論、巻き込まれないよう鉄線の檻のギリギリのラインまで。
その私を見て、こゆりさんは冷ややかな目だ。
「ふうん。他にも羽虫がいたの」
「……」
「わざわざ庇うなんて殊勝なことね……“糸使い”」
瞬間、こゆりさんが勢いよく大剣を振り下ろした。
刃の形状が変化する。溶けながら伸び――刹那、ジャラリラと擦れた金属音。刀身が鎖に。切先が棘付きの鉄球になっていた。
モーニングスターだ。
「!?」
突然武器の姿が変わったことに、家主さんは目を見開いた。
だが流石はベテランか。ジャンプして横に避ける。それをこゆりさんは追撃する。鎖が蛇のように踊った。
「どうしたの? 反撃しないの?」
「ちッ!」
鉄球が縦横無尽に襲い掛かり、家主さんはやはり逃げざる得ない。
苦し紛れに召喚した剣鉈を投げ付け続けても、こゆりさんは涼しい顔だ。
まるで事前に分かっているかのように最小限の動作でかわす。
例えば頭――首をちょっと傾けるだけ。
例えば肘――僅かに腕を上げるだけ。
それだけの動作で鉈の軌道上から外れていた。
まさに神技と言っていい。なんせ鎖を操作しながらだ。人はここまであり得ない動きをするのか――
「ほら、ほら、ほら――」
そしてそのまま、ジャラン、ジャラララ、ジャラリラ。
尚も挑発するように鉄の蛇は鳴き続ける。
鉄球を防ぎ、防ぎ、防ぎ……、
「距離をとってもキリがない!」
だからこそ、あえて家主さんは接近することを選んだようだ。
前進。家主さんはこゆりさんへ向けて走り出す。
今度はこゆりさんが下がった。でも冷静な感じだ。
モーニングスターの鎖を巧みに操る。
――薙ぎ払う。
鉄の尾が、大きな大きな弧を描いて音速をも超える速度で迫る。
その鎖を。
「コンニャロ!」
家主さんは、なんと弾いた。鉈も反動で取りこぼしたが。
「せぇーのー!!」
それすらも気にせず、次に腕を振り上げた。
空中に生み出されたのは大量の剣鉈。ミサイルのようにすべて飛んでいく。こゆりさんはそれでも無言で溜息をついて。
「……なんて生温い攻撃なの」
足をタンと、踏み鳴らした。
彼女の目の前に金属の壁が迫り上がる。
鉈を全部防いだ。けれど家主さんは、その頃にはもう既に壁の向こうへ回り込んでいる。
「ふっ――!!」
地を割るほどに踏みこんで、家主さんは跳び膝蹴りを繰り出す。こゆりさんは何故か先程とは違い防御しなかった。
そのまま腹部に当たる……が、その足はボキリと折れて。家主さんが息を飲んだ隙に、こゆりさんもお返しにローキックをお見舞いした――血飛沫が、舞った。
その靴の裏には、液体金属で作りあげただろうびっしり生えたスパイク。
「家主さん!」
私は思わず叫ぶ。アレは確実にヤバい。現に家主さんは吹っ飛ばされて血塗れだ。普通だったら起き上がれるはずも無い……。
「フヒ……大丈夫!」
だが、家主さんは回復力が桁外れだった。なんとか足を治癒し、フラフラと立って、体勢を立て直す。
けれど何で何だろう。
やっぱり痛いはずなのに。苦しいはずなのに。平然としてる……いや、これは笑顔?
どうして?
「……」
私は家主さんが怖くなった。家主さんは血に染まったまま、ニタニタ、ニタニタ、不気味に笑っている。
さっきのこゆりさんに一体何が起こったのか。家主さんはおかしそうに尋ねた。
「ハハ! 何それ、すごいねえ! やけに固かったけど…… 鉄板でも仕込んでるのかなぁ!?」
「違うわよ。でもあたしの固有魔法は金属操作――なら答えは単純よ」
ほら、なんてご丁寧に、こゆりさんが片腕を広げる。その袖の一部が鉄のように銀色に変色し、硬化した。
「つまり……お前は服までも金属にすることが出来るってのか!」
家主さんはいかにも褒めるように言う。
だが、厳密にはそれどころの話じゃなかった。
「あたしの魔法少女服は全身、金属の繊維で出来ているのよ。そんじゃそこらの攻撃でどうこうできるもんじゃないわよ」
ようは常に鎧を纏っているようなものなのである。
こゆりさんは防御力も高い。恐らく家主さんの攻撃は……まともな方法では届かない。
「それよりもやっと本性を見せてくれたわね」
こゆりさんは憎々し気に呟く。
「お前はあの時も笑ってた――血塗れになりながら」
「はあ?」
家主さんは、本当に意味が分からん、という風に首を傾げた。
そりゃそうだろう。家主さんには全く心当たりがなさそうだ。
だからか、こゆりさんは泣き出しそうな、複雑そうな表情をして。
「二年前よ……知らない? あたしには双子の妹がいたの。さゆりっていうんだけどね」
「――――」
「似てなかったけど半身みたいで、助けたかった。守りたかった。あたしの唯一の味方だった。それを……“糸使い”はあたしの目の前でわざわざミンチにしたの」
「……!?」
「そいつは首を切っても、腹を切っても死ななかった。訳あって思い出したのはつい最近のことで……でもそれ以来、あの時の顔がこびりついて仕方がない。あの時の、アイツのニヤニヤ笑う顔が……」
最早、憎しみと恐怖が止まらないって感じの表情だ。
ようやく事情が見えてきたが、確かにそれなら、誤解しない方が無理な気がしてきた。だってさっきの話を聞く限り、こゆりさんからしてみれば妹の命を奪った化け物がいきなり目の前に現れたようなものなのだ。そりゃあ混乱してもおかしくないし、しかも今の彼女は酔っていて正気ではない。
――たとえ無関係でも、怒りが湧き出るのだ。
「さあ、さっさと“糸使い”の情報を吐きなさい!」
容赦なくこゆりさんは攻撃を再開させた。
ブオン!! と空気を穿ちながら迫る棘付きボール。
家主さんは退避。固有魔法で傷は治っていく。こゆりさんはギリリと歯噛みをした。モーニングスターでは意味がないと思ったのか、それをドロドロに溶かし、違う武器を錬成する。
取り回しが効きそうなサイズの弓だった。
「答えなさい――何故あたしの大事な人達を奪った!」
ワイヤーで出来た弦を引っ張り、こゆりさんは魔法で生み出した金属の矢を番る。いつの間にか頬は赤くなり、かなり興奮しているようだ。
もう色んな意味で見ていられない。やはり――何もせずにいるのは駄目だ。恐怖はあるが、それ以上に後悔はしたくない!!
『家主さん!!』
『……ッ!?』
テレパシーで話しかければ、家主さんはよっぽど驚いたらしい。まるで咎めるように、私のことをチラリと見る。
『何!? なんか用!?』
『……』
でも、怯んでいる場合じゃない。私は変身し、ハルバードを構え、意を決して言った。
『家主さん。こゆりさんには絶対に勝てません。ここは逃げましょう』
『――どうやって?』
家主さんは怪訝な顔だ。最初に言った通り、出来ることなどないとばかりに――けれどこんな私にだってやれることはあるはずだ。幸い近くにいることだし。
『私が……この檻を破壊します!』
「成る程。そういうこと」
私達が目配せしているのを見て、大体会話の内容を察せられたようだ。
こゆりさんは不快そうにして。
「羽虫風情が。ブンブンうるさくされちゃ困るわ。ここは――」
「アハハハハハ……やらせないよ!」
瞬間、家主さんがこゆりさんに飛び掛かる。腕は再生している。
速い――瞬く間に零距離まで接近。二丁の剣鉈を高速で突く。狙うは白いソウルジェム。よく見ればこゆりさんの腰にはベルトがあり、そのバックルには丸い宝石がついているのだ。
「……!」
こゆりさんは苦々しく表情を歪めた。勿論、対抗できない訳がない。
イナバウアーのように体を逸らして回避。逆立ちの要領で剣鉈を蹴り上げ、弾き、後方へくるりと大きく一回転。そのまま飛び上がり、矢を撃つも、家主さんだってその矢を撃ち落とした。
着地したこゆりさんは悔しそうだ。
「本気なのね。何故……そこまでするの。命を弄ぶくせに、あの羽虫はお前にとって何なんだ」
「さあ……何だろうね?」
家主さんは肩をすくめる仕草をした。
「まあ、でも先輩としては、後輩が勇気を出したことには報いなきゃでしょ?」
「? そりゃあそうだろうけど……?」
さっきとは逆に、こゆりさんの方が首を傾げる。だが、気にしても関係がないと思ったらしく。
「……どうでも良いわね。あたしがやることは、何も変わらない」
「――ッ!!」
こゆりさんが再び矢を撃ってきた。
しかもそれとは別に、私狙いで鉄塊をバカスカ飛ばしてくるし、なんなのこれ。まるで流星のよう――当たったら即死する、死の星雨。
「ぐ……、……ッ、おりゃあッ……!」
けれども家主さんが必死に防いでくれている。
剣鉈で矢を、鉄塊を、切る、切る、切りまくる――!!
「夏音ちゃん!!」
「はい!」
だから、私はその必死の献身に報いなければいけなかった。
が、さっきから何度も切り付けてるのに、鉄線の檻は異常な硬さでハルバードを跳ね除ける。どうして破れないのだろう。私じゃ役不足なの?
「くそ、くそ、くそ!!」
段々やけくそになってくる。
そして私は私自身が持つ唯一の“力”を思う。
死んだあの子は――赤いオーラの魔法をどんな風に使ってた?
ふと、脳内で蘇るとある日の記憶。
『そう言えば先輩! オーラで強化されるのって、筋力もみたいなんですよ? ほら、こうやって――』
――そうだ。
私はあの子の魔法を一番近くで見ていた。ならばやれる筈だ。所詮猿真似だろうとも。
「ああああああああああああ!!」
私は後輩がしていたのと同じように、ハルバードにも腕にもオーラを宿し、力を倍加させる。ソルジェムが濁りきるのも覚悟で、思いっきり魔力を乗せてハルバードを叩きつけた。
「あ……」
すると、だ。
鉄線の一部に、切れ込みが入った。本当に小さな切れ込みが。
こゆりさんが目を見開いている。
それが影響したのか、ほんの少しだけ動きが止まった。その隙を見逃さない家主さんではない。
「やっ!」
家主さんは剣鉈を投擲した。
ざくりと刺さった――何処に?
肌の露出している部分……即ちこゆりさんの左手首だ。こうなるとこゆりさんは鈍くなる。
「ようやく一撃いられられた」
家主さんは大きくバックステップしながら、次々と鉈を放る。こゆりさんは仕方なさそうに矢を撃つのを中断、弓を変形させ、大盾にして身を守る。
それはチャンスを意味していた。邪魔されないその間に、私はハルバードを押し込める。あらん限りのすべてで――そして鉄線は完全に切れた。その勢いで私は外に出る。
「家主さん!」
私が名前を呼ぶ前に、足が速い家主さんも滑べるように鉄線の切れ間から一瞬で飛び出ていた。ある物をこゆりさんに投げつけながら。
それは、
「グリーフシード……!!」
「僕からの置き土産だよ。喜んでくれると嬉しいな」
黒い魔女の卵が一斉に孵化する。一個だけじゃなく、二、三、四、五つも。家主さんは出し惜しみしなかったようだ。そうして、巻き込まれないよう、反応するより先に私を雑に担ぎ上げ、とんずらをこいた。
「ええ!?」
当然、私は混乱したが。
何を勘違いしたのか、家主さんは叫んだ。
「大丈夫だって。あの化け物があの程度で死ぬ訳ないじゃん!?」
どうやらグリーフシードの件を言っているようだった。
まあ確かに悔しいが同意見だ。アレでもこゆりさんはまだ余力があるとみるべきだ。なんせ日華さんに仕えている身である。確実に魔力を回復するストックは持っている筈だ。
「そんな奴が襲いかかってくるなんて、まったくとんだ厄日だよ」
走りながら家主さんは嘆息。それから。
「とにかく今は飛ばすよ!」
「――!?」
更にスピードアップした。
思わず悲鳴が喉から飛び出、風景が流れるように過ぎていく。
人間業とは思えないような動きで、家主さんは建物の壁の出っ張りや階段に跳び移ってを繰り返し、人に見つからないような道を進んでいく。
そうやって最終的に行き着いたのは何処かのビルの上だった。
廃駅から二キロぐらいは離れているだろう。
ここまで来ればきっと大丈夫な筈だ。多分。
「ふぅ」
そこで家主さんは私を降ろした。疲れたように額の汗を拭い、よっぽど焦っていたのか、次には気が抜けたようにどかりと座り、屋上の柵に背を預ける。
「はあ……夏音ちゃん大丈夫〜」
「うえ……」
で、私は大丈夫じゃなかった。
何でかって言われると酔ったからだ。頭の耳鳴りが酷い。
もう少し優しく運んで欲しかったが、文句を言う資格は私にはないだろう。
「ありがとうございます……うぷ」
なんとか感謝を伝えれば、「いやあ、ハハ……ごめん」と家主さんは反省するように頭を掻いた。
「……」
「……」
そっからは無言だ。お互い体力も気力も限界なのだ。
実に数十分もそのままボーとしていた。
「あ、そう言えば家主さん」
私はふと家主さんに声をかけた。
気になったことがあったからだ。
「ソウルジェムの穢れは大丈夫ですか? さっきグリーフシードを投げましたけど」
「いいや」
家主さんは首を振った。
「魔力を強制的に与えて無理やり孵化させただけだし……手持ちはアレで全部かな」
その顔に浮かぶのは苦笑だった。本当にあの戦いがギリギリだったことがよく分かる。
私は懐を探った。
実は一個だけちゃんとグリーフシードを取っていたのだ。
まだ魔力には余裕があるし家主さんに渡す。
「使って下さい」
「――。うん」
家主さんは素直に受け取ってソウルジェムを綺麗にした。
「色々とありがとね、夏音ちゃん」
そしてお礼を言われ、私は柔らかな笑みを作る。
「当然のことをしたまでですよ。むしろ早めに動いていればこんなことには……」
「良いんだよ」
でも家主さんは私を咎めることはしなかった。
私の罪悪感を和らげるように。自らを責めるように。
「こっちこそ悪いことをしたと思うから。あんな気持ちの悪い……」
「……?」
「ねえ、夏音ちゃん。僕のこと怖いって思った?」
そうして図星を付くようなことを言われて私は驚く。
どうしてって思う前に、家主さんは歪に見える少しの喜びを、だけどそれ以上の辛さを顔に出していて。
「“あの姿”を見せてごめん、夏音ちゃん。君を追い詰めることを、僕はしたくないと思ってる。でも違う形で出会っていれば、きっと僕は君に酷いことをしてたと思うんだ」
「家主さん?」
「……本当に難しくて上手く言えないんだけどね。君がボロボロになってるのを見てたからさ。これ以上はちょっとと考えて――」
「……」
その時、私は家主さんが顔を伏せていたので、それを追って視線を少し下げていた。それで、違和感を持てたのだ。
――何か。家主さんの魔法少女衣装についているような。角度のせいか、ピカっと反射しているようにも見えた。
これは……、
「……まさかッ!」
私は即座に家主さんに近づき、その服についていたものをとった。
え? 何? って顔をしている家主さんを他所に、手の中のそれを観察する。
小さな針だった。金属の。そして金属操作と言えばこゆりさんの固有魔法である。
「一体いつの間に――!?」
タイミングはいつか分からない。だがこゆりさんは私達が逃げ出した時のこともちゃんと考えていたのだ。
言われてみれば当たり前だ。
私達は二人もいて。それぞれ役割分担をすることくらい、いくらでも想像がつく。それを見越した上で、こゆりさんは行動していたのだ。
“自身の魔力”を探知出来るように。
「ッ!?」
そして、ざわり。
案の定、禍々しいとさえ思える魔力反応の気配がする。転瞬、バサバサッ、と羽ばたきの音が聞こえ、ビル下から大きな大きな影がこちらまで“飛んで”上がってきた。
「……、色梨こゆり……!」
「あら? 羽虫のくせに意外と勘が鋭いのね」
それは空に浮かび上がる、液体金属で形作られた巨大な狼だった。背には翼。ゴエティアに記載される悪魔マルコシアスのようだ。そしてその上には当然こゆりさんが乗っているのである。
流石に五体の魔女を相手にするのは苦労したらしく、若干ボロボロになっていたけれども。
それでも目は鋭く、剣呑な雰囲気は変わらない。そのこゆりさんに家主さんは驚きを隠せないようだった。
「嘘でしょ!? こんな短時間で!?」
が、こゆりさんはなんてことないように答える。
「あたしを誰だと思ってるの? 雑魚ばっかりでつまんなかったわよ」
「……やっぱり化け物じゃん」
「なんとでも言うが良いわ――それよりも良い加減ちょこまかと目障りなのよ。“糸使い”!!」
悲痛な叫びに呼応し、狼の口が開く。魔法陣が浮かび上がる。鋭く極太の金属針が口の前で生成されていき――打ち出される、その前に。
「ストーップ!! ストップ、ストップ、ストーップ!!」
棒読みながら大きな声が聞こえてきた。
「柘榴?」
こゆりさんが動揺したみたいに止まる。ふっと金属針が掻き消えて、同時に横の建物からピョンと人影が飛んできた。
「何やってんのさ! こゆり!」
抑揚ない声で赤髪の少女が私達の眼前に降り立つ。
不服そうなこゆりさんに対し、彼女は咎めるように人差し指を突きつけた。
「ほんっとこんなところで弱いものイジメして! こんなことやって恥ずかしくないの!? 馬鹿、隠キャ、ついでにメンタル超不安定暴走列車脳筋女!!」
そうして怒号の悪口にこゆりさんはと言うと……素直にダメージを喰らったようで、「……うぐッ……」と呻いたのだった。