魔法少女かのん☆マギカ   作:鐘餅

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滅茶苦茶久しぶり…
※挿絵を追加しました


裏舞台・懐

 ――それから。

 

 その後どうなったかっていうと。

 

「あぴゃあ……あぴゃあ……」

「ああ……死にたい……ああ……」

 

 ご覧の通りの有様だ。

 揃ってフリーズしてしまっている。

 やはり親友同士。頭を抱えている様もよく似ているが、まさかここまで効果があるとは……。

 

「おーい?」

 

 しょうがなく家主さんが二人に近づいて、目の前で手を振ってみる。すると反応したのは柘榴さんだった。すぐにハッとして、壊れたテレビを治すみたいにこゆりさんをバンバン叩く。

 

「起きろ、こゆり!!」

「――ッ!? …………………」

 

 そこでこゆりさんも元に戻ったが、今度は私達と目が合うと、さっきまでも堂々とした姿は何処へやら。“素”になったのかシュバっと席を立って柘榴さんの影に隠れた。

 当然、柘榴さんは「おい! 何してんの!?」と言ったが。半ばヤケクソ気味にこゆりさんは小声で答えるのだった。

 

「目を見て話すなんて、む、無理に決まってるでしょ!? あたしの人見知りは筋金入りなのよ!?」

「ちょっと開き直らないでよ!」

「……あ、ああああ……あの、ゆ、結……さん!」

 

 こゆりさんはあえて柘榴さんを無視し、結さんに話しかけた。何故だかガタガタ震えている。

 

「そ、その……色々とご迷惑をおかけして申し訳ないです。後、勝手に住み着いてごめんなさい! すぐ出て行きますんで!」

「え、別に良いけど……放置してた僕も悪いし」

「その子の底無し沼みたいな目がすごく怖いんですって!」

 

 ビシイと。こゆりさんは失礼なことに私を指差した。

 そんなに怖い顔してるんだろうか。

 

 ハハハハハ。

 

「ベツニオコッテナインダケド」

「か、夏音ちゃんの敬語が取れてる……」

 

 家主さんまで絶句してるように驚いてるけど何なんだろう?

 ていうか怒るの当然じゃない? だってさあ、あんな辛い思いして、やっと希望が見えたかなあって思った時にこれだもの……そりゃあ許せないよ。

 

「ハハハハハ。ホント……アハハハハハ」

「ヒィ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 途端にこゆりさんは更に怯えた。

 そこまでされると流石に傷つく。私、多分、ちょっとムッとした顔をしていた思う。まあ、家主さんがそれくらいにしよう、と宥めてくたので、気持ちは落ち着いてきたけれど。

 

 でもそのせいかこゆりさんの調子は戻ってきたらしく、未だに柘榴さんの影に隠れてるくせして、こほんとカッコつけるように咳払いをした。

 

「あ、あの。あたし、この子の言う通り今日のところは引きますんで。いきなり襲いかかったのもありますから」

「……うん」

「また日を置いて会いに来ます。今度は少しずつ、貴女のことを聞かせて下さい。あたしもこちら側のことを話します。“糸使い”の調査内容を、ミズハのことを、もっと」

「……ッ」

 

 するとピクッと、家主さんは眉を動かした。

 こゆりさんはおずおずと続ける。

 

「“糸使い”を見過ごす訳にはいかないですから……それにアイツと顔が似ているのだって、後々何かしらの火種になり得ると思います。“糸使い”の被害に遭ったのが、あたしだけってことは限らないんですよ」

「!?」

「それらしい目撃情報が数件あるんです。確定的ではないけれど、しかし無視出来るものじゃない。正直言って、貴女は噂とは違うように見えるから、それこそ無実なのに巻き込まれでもしたら……ば、馬鹿馬鹿しいじゃないですか。自分を棚に上げて言いますが……」

 

 少し恥ずかしいのか、こゆりさんは最後の方で、しどろもどろになった。

 柘榴さんはこゆりさんの言いたいことが分かっているのか、「勘弁してやってね、この子はこういう子なんです。残念でしょう?」と、諸に雰囲気だけで語っていた。

 まあ実際は真顔な分、かなり不気味でシュールにしか見えないし、しかも何処となく、「でもそこが可愛いんです、ね? ね? 良い子だから誤解しないでやってください」とでも言いたげにしているのも伝わってきて、端的に言えばうざい。

 

 じとっとした目になるのも無理はなかったかもしれない。

 それに何の勘違いをしたのか、こゆりさんは次に私の方に話しかけてきた。

 

「夏音……不安に思ってるだろうけど安心して。結さんのこと誰にも言わないから」

「え?」

「別の地域の子と仲良くしてる子って、実は結構多いのよ? 皆黙ってるだけでね……」

 

 こゆりさんはそう言って、ちょっと困ったように微笑んでみせた。

 そこに私を責めているような色はなかった。柘榴さんさえ同意するくらいだ。

 

「うん。そーだね。私も経験あるから気持ちは分かるよ。――っと……そんじゃ、どーせだからコレを渡しとこっかな」

 

 そして柘榴さんはこゆりさんを引き剥がし(こゆりさんは若干抵抗していた)、椅子から立ち上がると、懐からあるものを取り出し、私に手渡してきた。

 その瞬間、こゆりさんがびっくりして目を見開いた。

 

「ちょっと柘榴、それ――」

「まあ、良いじゃない。どーせ試作段階だったじゃない?」

「だからって……。ハア……後でみいかに怒られても知らないわよ」

 

 こゆりさんは呆れた様子で溜め息をつき、でも、それ以上の反対はしなかった。

 一方で私は理解出来ずキョトンとしている。マジマジと手の中のものを眺めた。

 

「これって――仮面?」

 

 それはマスカレードの時に被るような、道化のようなデザインのシンプルな仮面だった。顔全体を覆うような形状で、手触りは“金属質”でつるりとしているが、とても軽い。正直言ってカッコいいから、一瞬、おお〜等と感嘆の声を心の中で上げたが、しかしさっきも言った通り、訳が分からない。

 一体これは何なのか?

 

 私が首を傾げていると、柘榴さんは口元をわずかに緩めながら、言った。

 

「今回の件について、私と“こゆり”からのお詫びだよ。それで効果は……使ってみてからのお楽しみ♪」

「は、はあ……」

 

 どうやら魔法を込めたアイテム的な何からしい。

 お詫びと言われれば断れない。私は微妙な気持ちを隠しつつも、「ありがとうございます」とお礼を言った。柘榴さんは満足そうにし、こゆりさんは複雑な顔で私の手の中の仮面をじっと見つめていた。

 

「それじゃあ、そろそろ行くよ、私達」

「あ、えと、ご迷惑をおかけしました――失礼します」

 

 そうして、こゆりさん達は荷物をまとめ、走り去っていった。

 これまた柘榴さんが懐から取り出した魔法のアイテムの箱の中から、大型バイクを召喚し、それに二人乗りで嵐のように。

 

 二人は最後まで二人らしかった。

 スカートで運転よく出来るなあとか、そもそも二人乗りって法的に良かったんんだっけ? とか、括りつけてる荷物が落ちそうとか、帰る時も相変わらず喧嘩をして飽きないなあとか。

 

 色々気になるところが多かったからだ。

 

 私と家主さんの顔には、苦笑が浮かんでいた。

 こゆりさん達のことは酷く印象に残っていた。

 

 まあ……とりあえず。

 もうこの拠点は使えないだろう。

 そういう意味でも、これからどうしよか、と私は家主さんと顔を見合わるのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 そしてこれは、後で知った話。

 

 私達と別れた後――いいや。

 家主さんと邂逅した後、こゆりさんと柘榴さんが、その日どういう会話をしたのか、“実際に時間を渡って”確かめて聞いたこと。

 

 多分、この時も同じ内容を話していただろう。

 

 こゆりさんと柘榴さんは、あの後とある喫茶店で食事をしていた。

 バイクで一走りしたので、柘榴さんの提案で休憩したのだ。

 ちなみに食事は柘榴さんの奢りだった。こゆりさんはバツが悪そうにしていたが、柘榴さんは「良いよ良いよ、私が奢りたいんだよ」と軽い調子で言った。

 

 事実、こゆりさんがケーキを頬張り、美味しそうにしているのを見て、柘榴さんはご満悦そうだった。

 ……柘榴さんはやはり、こゆりさんのことが大好きだった。

 すべてを知った後なら分かる。

 柘榴さんはこゆりさんに対し、相方のみいかさんとはまた違う、激しい感情と執着を抱いていた。

 

 劣等感と、親愛と、罪悪感と。

 それから――

 

「こーするのも久しぶりじゃない? 懐かしいよね?」

 

 ――懐古。

 

 そう。

 こゆりさんと柘榴さんは、元々同じチームだったからこそ、色んな思い出を共有していたのだ。特に二人のまとめ役で、牛木草の前リーダー、古鐘歌羽(こがねうがは)のことを話せるのは、お互いにしかいなかった。

 

「ええ。歌羽がよく、連れてってくれてたわね」

 

 そしてこゆりさんもまた、本当に懐かしそうに静かに呟いた。

 この店にしかない、お洒落なカップを手にとると、少し微笑んで。

 

「そういえばアイツ、西洋かぶれだったから、アンティークとか好きだったのよね。こーいうのが好みだったから、ここがお気に入りだったのかしらね」

「まあ……後はあの人がいるからか」

 

 その発言でこゆりさんが視線を動かせば、カウンター奥で一人の男性老人がテキパキと働いているのが見えた。

 店はそこそこ広く、こゆりさん達の席とは距離があるから、会話は聞き辛いだろう。それでも恐らくマスターと思わしきその人を、二人は咎めるような、それでいて複雑そうな、呆れと同情を滲ませる瞳を向けていた。 やがてマスターの方も気付くが、目をさっと逸らし、そそくさと厨房の方に引っ込んでいく。

 

「……変わらない、か」

「そうね。何も教える気はないみたい」

 

 二人は困った顔をして、それから。

 

「けれど、みいかには伝えたの? あの人お爺ちゃんなんでしょ。魔法少女のことも気付いてるって――」

「でもだからって、その選択肢が良いこととは思えない」

 

 しかし、柘榴さんは首を振った。

 

「今更身内が登場するとか、ふじっちゃん的にはそれこそ有り得ない話でしょ。あの子がどれだけお母さんのために尽くしたか……私だってそのために――」

 

 そこで彼女はハッとなった。

 表情があまり動いていないのに、見るからにヤバいという顔で、謝った。

 

「ご、ごめん、こゆり。今のは失言だった。悪かったよ」

「……別に良いわよ。気にし過ぎ。大体、終わった話でしょ。それを含めての、私と柘榴の仲……じゃない」

「……うん。ていうか今デレた?」

「――ッ、一先ず本題に入るわよ」

 

 先程とは一転して、したり顔になっている柘榴さんに対し、恥ずかしそうに話題を先に進めるこゆりさん。

 真剣な眼差しで、

 

「わざわざこんなところに連れてきて、アンタ何か話したいことがあるんでしょ。大方不安があるか、それとも……」

「結さんについて気になる?」

「そう。正確に言えばミズハのことね。だってミズハは、二年前の歌羽とエルの確執に関わっているもの」

 

 それがきっかけで、リーダー、古鐘歌羽は二年前に死んでいるのだ。彼女の死は多くの影響を及ぼし、こゆりさん達の心にも消えない傷跡を残した。

 だからこそ、こゆりさんは苦々しく口元を歪め、柘榴さんに同意するように言った。

 

「あたしとしても、あの時のことは納得してないわ。柘榴、アンタと同じ気持ちよ」

「――こゆり」

「そもそも、あたしはアンタを追い詰めちゃってたからさ。その苦しんでたアンタをエルに利用されて許せる筈ないじゃない。……ほんっと、弟が死んだからって何? 結局のところ歌羽に八つ当たりして、それで何になったの?」

「……」

「あたしはアンタを救えなかった分、エルのこと、ミズハのこと、もっと探っていきたい。……実際、エルの行動には不可解な点が多すぎるわ……アイツの本当の目的って一体……」

 

 そして更に、こゆりさんは悩ましげに眉を顰める。

 

 二年前、牛木草の前々リーダー恵比寿小豆を“殺し”、牛木草を滅茶苦茶にしたエルだが、こゆりさんの調査によって、ある程度の経歴は判明していた。

 

 本名は織部(おりべ)エル。

 この喫茶店のマスター、夜見(よるみ)ミキオの孫娘にして、柘榴さんの相方、藤野みいかの血の繋がった従姉妹。

 両親は旅館を経営していたが、借金地獄により一家は離散。

 エルと弟は親戚中をたらい回しにされ、そこで彼女達はあまり良い扱いを受けなかったようだ。そのためかエルと弟の苗字は違う。

 弟は中学生時、竹林の性を名乗っており、クラスでいじめられたことで自殺した。

 

 エルはそれをきっかけにおかしくなった……気性が荒くなり、周囲の輪を乱すようになったのだ。それこそ一人で魔女に突っ込み、当時所属していたチームを全滅させる程には。

 

 そう……この時エルは魔法少女になっていた。

 取るに足らない願いを叶え、「何故もっと良い願い事をしなかったのだろう」といつも悔やんでいたという。

 そんな彼女がすべてを破壊したい……助けを求めていたのに何もしてくれなかった幼馴染(歌羽)に怒ったのも、仕方のなかったことなのかもしれない。

 

 しかし――しかし、だ。

 些か、復讐対象が違うのではないだろうか。

 

「本当に憎むべきは、自分達を引き取ってくれなかったミキオさん。迎えにきてくれなかった両親。自分達を追い詰めた社会……それに対する報復を何もしなかったのは、素直におかしいと言わざる得ないわ」

 

 それなのに彼女は、“牛木草の魔法少女”に混沌を齎した。

 歌羽に嫌がらせを行い、柘榴に仲間を裏切らせ、そして自身は反牛木草勢力を組織した。

 

「結果が今の状況よ。原因は弟の自殺のキッカケとなったミズハ? だけど彼女はあまり活動なんてしてない。勝手に引きこもって勝手に死んだ。……それでもミズハの死の直後にエルは現れた。チームが全滅した時、一緒に行方不明になったくせに」

 

 だから、元々死亡したとばかり思われていたのだ。

 そもそも前々リーダーの能力により、戦闘内容も、状況も、極めて正確に“エルの一人称の視点から把握”されていたのだから。当時、誰もがエルが生きているなんて信じていなかった。

 だが実際は違った。

 

「柘榴。やっぱりこれって変よね? もし……もし仮によ。エルを利用するために、助けた奴がいたとしたらどうする? その意思が捻じ曲げられていたとしたら?」

「まさか……とは言えないよね。そうなってくるとミズハだってただで死んだとは思えないし」

「ええ。彼女は謂わばトリガーよ。アイツが死んで一気に状況が悪くなった」

 

 その違和感から色んなことを辿れば、この牛木草を取り巻くあらゆる異常も、原因が分かるかもしれない。

 こゆりさん達は、ミズハやエルの影に、“何か”がいるのだと予想していた。

 

 即ち――牛木草を滅茶苦茶にした黒幕が別にいると。

 

「そして今回、ミズハに似た結さんが見つかった……と。結局彼女って何なのかしらね」

「ま、そこは経歴を調べれば分かるんじゃない? 結さんが何も言わなくても、こっそり裏から探るつもりだったんじゃないの? こゆり」

「そうね。素直に待つ必要はないもの」

「だよね〜。いやー私達も昔に比べて大分“アレ”になったねー」

 

 とは言えそれは当たり前の行動だろう。

 牛木草のことを考えれば、強かに行動するのも無理はない。

 

「けど当人同士の確執ってのは、本人に聞かないと分からないわよね。話してくれると良いのだけど……」

「しかも、思いっきり動揺してたしね。アレは確実に何かあるよ」

「まあ、悪印象を与えた分、今は少しずつ信頼関係を築くしかないでしょうね。下手にトラウマでも刺激して魔女化されちゃったら困るし。それを抜きにしたってね……」

 

 とは言え、彼女達も情がない訳ではない。

 こゆりさんと柘榴さんは罪悪感を顔に浮かべていた。

 特にこゆりさんは家主さんに襲いかかったのもあって、ああ、マジでやっちまったよな……という風に遠い目をしてる。

 

「で、それで、気になってる部分って何よ。その肝心のミズハの調査に、結さんがどれだけ協力してくれるかとか?」

 

 そうしてこゆりさんは単刀直入に、逸れていた話題を戻し、柘榴さんに切り込んだ。

 すると柘榴さんは何と言ったらいいかと迷うようにして、

 

「うん。それもあるけど、私は――」

 

 自分の考えていることを、告げた。

 その内容に呆気に取られたこゆりさんは、驚いた顔をし、目を瞬かせる。

 

「…………え? いやいや、ちょっと待って。いくら何でもそれは」

「でもこゆり、私は真剣だよ」

「――、確かにアンタの勘は鋭いけどさ……」

 

 どうやらこゆりさんは少し困惑してるらしかった。

 柘榴さんの言ったことは、それくらい突拍子もないことだったからだ。

 だが、何かを思い出すかのように顎に手をやると、しばらくブツブツ呟く。

 

「しかし歌羽が残してくれた言葉を考えれば……ということはアレの意味はまさか……ってことは一理はある……のか?」

 

 そして、決意を込めた瞳をして、頷いた。

 

「分かったわ。そういうことなら、その線で他の早島の子も調査してみる」

「ありがとう。私も別の側面から探ってみる」

「ええ。苦労かけるわね」

「良いってことよ」

 

 二人は、そこで笑い合った。

 

 ――と。

 その時、バイブ音が響いた。

 携帯の着信音だ。柘榴さんが面倒臭そうに、反対に不思議そうにこゆりさんが聞く。

 

「誰から?」

「ふじっちゃん。メッセージ来てる」

 

 柘榴さんが取り出したスマホの画面を見せると、途端にこゆりさんはピシッと固まった。

 ……不味いという表情だ。

 

「例の件について相談したい、だって。後ついでに、勝手に限定ケーキ食べたこと、根に持ってるみたい。ドンマイ」

「ちょ、ドンマイって! アンタから誘ってきたのに!」

「んー、知らない話ですな」

「なっ……みいかにチクってやるからね!」

 

 プンプン、とこゆりさんは漫画なら擬音がつくくらい、怒った顔をする。それに柘榴さんはカラカラ笑って――ふと、真剣に目を伏せた。

 

「ね、こゆり」

「? 唐突に何よ」

「無茶だけは、あまりしないでね。ただでさえ思い込み激しくって突っ走っちゃうんだから。今回だって結さんに襲いかかるし?」

「うぐ」

 

 そう言われてダメージを受けるこゆりさん。自覚してる分、半ば言い訳するように拗ねる。

 

「ま、まだ言うのそれ? あたしだって反省してるって、ガチで。ていうかそっちこそ暴走娘でしょ。アンタもいきなりいなくなるようことしないでよ? あたし、もういざという時アンタを助けられないんだから……」

「……分かってる」

 

 ――分かっているんだよ。

 答えつつも、しかし願わずにはいられないと。

 きっと、柘榴さんはそんなことを思っていた。

 

 二人は確かに、親友同士だったのだ。

 だがそれは、薄氷の上に立つ絆だった。

 一度すれ違って、再び元の関係に戻った時。もうそれぞれに、一番大切な存在が出来上がっていて。それでも道を違えていることを知りながら、それをどうにか見ないフリして、受け入れて、笑い合う。

 そう意味では、彼女達は本当に強かったし、同時に弱かった。

 でも、心の奥底で深く通じ合っていることは間違いなかった。

 

 早島の船花サチと阿岡入理乃。

 あのコンビとは本当に対照的だと私は思う。

 

 少なくとも、こゆりさんと柘榴さんが、互いに不信感を抱いて幻滅するところを、私は“いくらループ”を重ねても見たことがない。

 だから、だからこそ最後には――

 

「とにかくこれも良い機会かもしれないわね。怒られることを抜きにすれば」

 

 そう呟いたこゆりさんの言葉に、柘榴さんも頷き、彼女達は今後の方針を更に決めていく。

 

 ――二人はこの時から既に、破滅への運命へ足を揃えて踏み出していた。

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