────2日後────
断ったら首チョンパされそうだったので提督になってみる事にした、マジで首チョンパは避けたい・・・
けど、いきなり提督になったのは良いもののどうしたらいいんだろうか?
元々私物がゲームぐらいしかなかったのであれからすぐに寮を追い出され、車で二日かけてここまで来たからケツがさらに割れそう。冗談抜きに。
なんか、訳ありとは聞いたけど自分なんかで大丈夫だろうか。前提督は1ヶ月前から行方不明らしいし・・・
色々と考えていたらすげー不安になってきた。
「そろそろ到着するので準備なさって下さい」
「あ、はい」
やっと、このケツの痛みとおさらば出来ると考えると涙が、いかんいかん男がそう簡単に泣くもんじゃない。
「取り敢えず準備するか」
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車を降りて、はち切れんばかりに身体を思っきり伸ばす。ケツの痛みがだんだん痺れに変わってきてムズムズする。
「くぅ〜、やっぱり地面が一番落ち着くわ〜」
運転手さんが荷物ここに置いときますねと言いこっちに爽やかな笑顔を向けて、ちょっと気恥ずかしい気もした。
「わざわざここまで、送っていたただき有難うございます」
運転手さんは礼をして車に乗り来た道を帰っていった。
「さぁて、ケツの痛みも引いてきたところで気合入れていきますか!」
気合を入れ直し、鎮守府に続く道を歩くと門が見えてきた。門の横にある表札は長年潮風に晒され随分と風化していてなんて書いてある変わらないがここが鎮守府であるのは間違いない。だって、運転手さんがここで降ろしてくれたもん。
門を通って敷地内に続く道を歩いていたら何処かで見た事があるような建物が見えてきた。外観自体は、何処か壊れてるわけでもなく小さくも大きくもなく至って普通だ。
あっ、思い出した!ここの建物学校に似てる!。艦娘には小学生ぐらいの娘が居るらしいし、というか殆どが学生ぐらいの年だそうだから学校風にしたのかもしれないな。
「取り敢えず執務室にこの荷物を置きに行って、その後に軽く挨拶して回るか・・・
てか、執務室どこ?周りには見た感じ誰もいないし、どうしよ」
建物内には入ってみたがどうも埃っぽい、今日は少し曇っているせいか廊下が薄暗くて少し気味が悪い、というか本当に誰か住んでんのか?てか、迷子になった。
今は、前の秘書艦の方が指揮を執ってると、江戸川元帥言ってたから今日来る事は事前に知らされているはずなので出迎えの1人でも来てはおかしく無いはずだが、出迎えどころか人っ子一人と見当たらない。
まるで世界で自分一人になったような感じがした。そんな雰囲気の中あてもなく執務室探していて廊下の曲がり角を曲がろうとした瞬間、何かを振り下ろした様な風切り音がきこえた。
「うわっ!、なんか鋭いものが目の前を通った!」
チッ
?なんか今舌打ちしたような音がしたような。今さっきまで自分が立っていた所に一人の少女が刀らしきものを手にして立っていた。
風切り音の正体は刀だった、なんとか避けることは出来たがもし、避けれなかったら今頃俺は二人に増えていただろう、と考えるだけでもゾッとする。
「クソッ、外しちまった、あんまり動くんじゃねぇ綺麗にその首落とせねぇじゃねえか」
と物騒な物を片手に物騒なことを言ってきた。てか、目が怖い、感情がないというかなんて言うか、ハイライトが無い。
「お、俺は敵じゃない!今日からここに提督として着任する事になった凪だ!ほらコレ書類!てか、縦に刀降って首を落とすって相当難しいと思うぞ?」
まず、敵じゃない事を彼女に伝える為、俺の事が書かれた書類を見せそして、この場を少しでも和ませようと彼女の太刀筋にツッコミを入れてみた。反応は最悪だった。
「うるせぇ!」
彼女は聞く耳を持たず攻撃してきた。今度は俺の首を狙って大きく横に刀を振ってきてそれを、ギリギリで躱し取り敢えず会話を試みる。
「それどういう事だよっ!提督ってわかったら普通攻撃してこないだろ!」
彼女の攻撃をギリギリで躱してるが、このまま躱し続けるのは不利だ取り敢えず武器を奪うか。
相手の攻撃に上手く合わせ刀だけを躱して手首を軽く叩き武器を奪った。
「くそっ!俺の刀返せ!」
刀を取られ激おこだった。
「なんで攻撃するんだ!俺達に戦い合う理由なんてないだろ!」
あっ、このセリフ漫画とかに出てくる主人公が仲間に裏切られた時にいうセリフだ。
でも、裏切った仲間は大抵大切な人を人質を取られて嫌々してることが多いな、てかこんな事考えてる暇じゃねぇ!この状況をどうにかしねぇと。
「はっ!何を言うかと思えばそんなことかよ、こっちはお前
怒鳴りながら思っきり殴りかかってきた。全く、喋るか殴るかどっちかにして欲しいもんだ。これ以上彼女と会話しても意味が無いと感じたので、取り敢えず無力化することにした。
女の子に手を出すのは気が進まないが仕方ない、ごめんなさい許してください。彼女の右ストレートを左へ避け俺の右の拳を彼女の腹に当て気絶させた。
「っ!」
このまま廊下に寝させるのは些か気が引けるので、倒れかかってきた彼女を背中に乗せ執務室を目指すことにした。
せ、背中に何か柔らかいものが・・・
ダメだダメだ!無心、心を無にするのだ。
ダメだ頭の中柔らかい二つのお山でいっぱいだ。二十を越えて尚、未だに右手がガールフレンドな俺にとっては刺激が強いすぎた。
少し前かがみになりながら執務室を目指して歩き出す。
────歩くこと数分
「ここが執務室だな・・・
てかここあの子が襲って来たすぐ近くじゃん!はぁ、さっきの事といい歩き回ったせいでクタクタだ、早く寝たい」
全く、灯台元暮らしもいいとこだ。なんて考えながら執務室のドアノブに手をやる
ガチャッ
ドアを開けると、真正面に提督が事務仕事をするであろう大きな机があり、そこに眼鏡をかけた女性が座っていた。
「入る時は、ノックをしてくださいといつも言ってるじゃないですか天龍さん、それと作戦は」
「すまん、中に誰かいるとは思わなくて後、見たらわかるが俺は天龍じゃない、もしかして俺が背負ってるこの娘が天龍か?、俺が、いや廊下で寝てたからか、風邪でも引いたら大変だと思って連れてきた。
その、お、俺は今日からここの鎮守府の提督になった凪だ、まだ就任したばかりで右も左も分からないが今後共よろしく頼む。」
俺が殴って気絶させたとか言ったら第一印象最悪になり兼ねんので咄嗟に嘘を付いたがうまく騙せたと思う。というか、秘書艦が運営してるから居るのも当然か、もう眠気で頭が正常に働いてくれない。
それに、ニッコリと微笑みながらざっくりと自己紹介をする。初対面の印象次第でこの後どうなるか決まると言っても過言では無いので笑顔は大切だ。でも、彼女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてる。
うーん、やっぱり廊下で寝るとかはありえんよな、ましては女の子だぞ。
と、考えてるうちに目の前の眼鏡の娘が口を開いた。
「は、初めまして、軽巡大淀、戦列に加わりました。艦隊指揮、運営はどうぞお任せください。」
な、なんでこの人が此処に!?ま、まさか天龍さんが背負われてるって事は作戦が失敗したってこと?
そ、そんなまさか艦娘が人間に負けるなんて、そんな事ありえない!私達艦娘は、見た目自体は人間そのものだが根本的に違う。
そもそも人間に『砲門』なんて出せないし海の上を走ることさえ出来ない、しかも私達は『艦』の生まれ代わりだ。例え偽装をはずしていようとも私達と力比べをしようものなら負ける筈ない。
なのに天龍さんはこの人の背中で伸びている
「取り敢えず天龍さんをそこのソファーに降ろしてあげて下さい。そして、提督はこちらに書類の確認と部屋の場所を伝えます」