「おいっ!書類仕事しか取り柄がないんださっさと終わらせろ!」
執務室に、鈍い音が鳴り響く。ああ、また殴られたのか。これで何回目だろう、罵声を浴びせられ暴力を振るわれ身も心もボロボロだ。
もう、嫌だ、限界だ・・・。涙が頬を伝い床に絶え間なくこぼれ落ちる。
「誰か、助けて」
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目を開けるとよく知っている天井があった。寝てしまったんだ私
「さっきのは夢か」
目に残った涙を拭い上半身を起き上がらせると被せてあっであろう白い物がずり落ちた
「これは、提督の上着?なんでこんな所に」
周りを見渡すと、机に腕を組んで寝ている黒の半袖を着た提督の姿があった
「これ、掛けてくれたんだ。暖かい」
夏が終わり秋、夜になると少し肌寒くなり始めるこの季節に半袖では厳しい。でもあの人、提督は半袖で寒いはずなのに私にこれを掛けてくれた。前の提督だったら寝ている時点で酷い目に合わされている。やっぱりこの人は前任とは違うのかな。
そっと寝ている提督に上着を掛けようとしたら背中に文字が書かれていた
『働きたくない』
鼻で少し笑い、なんなんだこの人と思いながら上着を掛ける。
この人はON、OFFがはっきりしている、皆の前ではかしこまった口調で話し、二人きりになると砕けた口調になる。書類仕事中、窓の外を眺めたり、眠そうに欠伸をしたり、本当にやる気があるのだろうかと思ってしまうでも、この人を見て自分に素直な人だと思った。
だからなのかな、さっきの言葉を信じようと思ったのは。
「ん?」
机の上をよく見てみると、あれだけ溜まっていた書類が全て終わっていた
「これ全部1人で片付けるなんて、やる気があるのかないのか・・・ん?、ここ間違ってる、ここもだ。はぁ、1人で無理するからですよ」
提督の頬を指でつつくとこそばゆそうに反対側に顔を背けた
この時間だ起こすのも可愛そうだしそっとしといてあげよう。
ゆっくりと執務室を出て自分の部屋に向かう
翌日
「やばい、体バッキバキだ・・・今何時?」
七〇〇
「執務の開始が八三〇だから、風呂入ろ。そう言えば昨日昼にカロリーメイツ食べてから何も食べてねぇ、腹減った。
この鎮守府に食料はないって大淀が言ってたけど、あいつら何食べてんだ?」
そんなことを考えながら部屋に風呂道具を取りに行き風呂場に行った
「さてさてさーて、さっぱりしたし上がるか」
ガラガラ
「・・・」
ちょっと待って、誰かいる。
やばい生まれたままの姿なんだけど俺。
今思うと、この鎮守府で、大きな風呂、その時点で気付くべきだったこの風呂は男湯ではないと・・・
「な、な、な、なんでクソ提督がいるの!?」
「い、いやこれは、えーとだなそう!朝風呂だ!」
「そういう事を聞いてんじゃないわよ!どーして人間が入渠してんのよ!」
「えっ、ここ風呂じゃないの?」
「確かに、艦娘にとって入渠は、お風呂みたいのものだけど、あなた達が入るお風呂は、部屋の隣にあるでしょ!」
えっ?あったっけそんなの
「と、とりあえず出ていくよ」
早くこの場を切り抜けないと大変なことになる
「ちょっと待って、な、なんでこっちに来るのよ!嫌!こっちに来ないで!」
「うっ」
お腹に強い衝撃を感じた瞬間目の前が真っ暗になった・・・
(なんでかお風呂が綺麗なったから、来たのに何でこいつがいるのよ)
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「んっ、ここは?」
周りには、大小様々な箱が陳列されており、少し埃っぽい。それに異臭がする。一見倉庫だと思ったが、今座っている椅子、回りに置いてある不気味な工具や器具、想像はしたくないがここは尋問部屋だと容易に理解出来た
「やっと目が覚めたかよ」
て、天龍?と誰?まあ、いいか。
だんだん意識がはっきりして来た、俺、殴られて気絶したのか。艦娘って力強いな。
「おはよう天龍、一つ質問いいか?なんで俺は縛られてるんだろうか?」
「はっ!しらばっくれやがって。お前が入渠場に侵入した挙句に、覗きもしたってゆうじゃねぇか」
「俺は覗きなんてしてない!、まだあの娘も服を脱ぐ前だった!」
「どーでもいいそんなの!、提督なら入渠場は風呂みてーなとこだって知ってるだろうが!中に入ってるその時点で女湯に覗きに来たって言っても過言ではねーだろ」
「そうかもしれないが、俺は風呂場があそこしか知らなかったんだ!、それに外に掛けてあった使用中の札をしっかり掛けたぞ!」
「あれは怪我をして、入渠中って意味だ!」
「まじ?」
「なんで、そんなことも知らないで提督に、なれたのか〜不思議ね〜」
「龍田、こいつどうする?ここで切っちまうか?」
「流石に〜それはダメかな〜」
俺、どうなるの?
ガチャ
「長門さん!龍驤!」
「早速、本性を表したようだな」
「まあ、ええんちゃう?見極める手間省けたし。曙には悪いけど」
え?何?見極める?なにを?もう、訳わかんねぇ。確かになにも考えず風呂に入ったのは俺が悪いけどこれは明らかに何かがおかしい。
「見極めるって何をだ?」
「あんたがホンマに信用できるかや」
なるほどね、前任のおかげで人間不信になってるってことか、納得
「で、何が聞きたいんだ?」
「まあまあ、落ち着きーな、ここでルール説明や。まず、嘘ついたり不振な動きをしたら、うちの仲間があんたを殺す」
「ちょっとまっ・・・」
周りの棚から何かを構えるような音が聞こえた。恐らく銃か何かだろう。その音のせいで自分の意見を言いきれなかった。
「だから、落ち着きーゆーたやろ?今体験してもろたように、不要な発言をした時も殺す、ルールはこんなもんや、わかったか?」
俺は、頭を縦に振った
「理解が早くて、助かるわ。とりえあえず一個目の質問や、誰の命令でここに来たんや?」
「江戸川元帥の命令だ」
「なんで君なんや?」
「仲間思いで、暇そうに寝てたからだそうだ」
「なんやそれ」
ケタケタ笑いだしたかと思えば、真顔になり低い声で発声されたその言葉はとても寒気がした
「なんで、その命令を受けたんや?」
「断ったら首チョンパになると思ったから、それと探している人がいる」
「へぇ〜、でおったんかその探し人」
「まだ分からない、全員の顔を見てないからな」
「まあ、ええわ。他になんか言われてないんか?」
「お前らを、救って欲しいと言われた」
その瞬間空気が凍てついた
「お前達がみんなを傷つけたんだろうが!今更何をゆっているんだ!
」
長門が喋るまでの時間は数秒と無かったが、自分にとっては数時間とゆってもいいほどに、時間が長く感じた。それだけこいつらが浮かべていた形相に竦んでいた。
「まあ、落ち着き。で、次や、君何歳や?」
「へ?」
今まで威圧的なプレッシャーを感じてたせいか、余りにも普通の質問に素っ頓狂な声が出てしまった
「なんや自分の歳もわからんのか?」
「恐らく25だ」
「恐らくってなんやねん、そんな若く見られたいんか?」
「そんなじゃない、俺には家族と呼べるものがいないし出生記録もないだから確定出来ない」
「そーゆうことならしゃーないな。わかったじゃ次や、なんでそんな若くで大佐になれるんや?」
「それはだな、まだ艦娘がいない頃、深海棲艦との戦闘が功績されて、大佐になった」
「お前みたいな若造が、簡単になっていい階級じゃないだろう!」
「まあ、そうなんだが、提督になるんだったら、大佐ぐらいがちょうどいいだろうって、元帥が勝手に昇級させた」
「ふーん、なんや汚い事でもしたんと思ったわ」
「そんなことするわけないだろ。めんどくせぇ」
「ははははははは」
龍驤の笑い声がこの部屋に響く、自分はとてもじゃないが笑えなかった
「まあ、今んとこは信用したるわ。それでええな?長門」
「ああ、問題ない。今後はお前次第だ、何かを企む様ならすぐさま貴様を処分する、肝に銘じておけ」
「ああ」
「ということでや、覗きの件どないしよか」
「え」
「当たり前や、乙女の神域入ってんや、何のお咎めも無しやったらあかんやろ?」
「わかった、なんでもゆってくれ、出来る限りのことはする」
「あの〜ひとついいかしら〜」
「なんや龍田」
「さっき、入渠場見たのだけど、凄く綺麗になってたの〜、もしかして提督がしたの〜?」
「汚かったからな」
「へぇ、そんなこともしとったんか、とんだド変態やな」
「違うぞ!ただただ掃除しただけだ!」
「そんなムキにならんでええのに、やったらもうパーでええんちゃう?」
「そんな事でいいのかよ!それにこいつじゃないかもしれねーぜ!」
「確かにそうかもしれんが、みんな疲れ切っている。誰も掃除をしようとは思はないだろう。」
「た、確かにそうかもだけどよ、曙のはいいのかよ!」
「別に、服を脱ぐ前だったからいいわよ」
曙いたんだ、全く気が付かなかった・・・
「本人も許すゆっとるし、今日はここまでや」
「二度と、間違えんなよ!」
「ああ、分かったよ気を付ける」
縛られていた手首のところを擦りながら部屋を出、執務室に行くことにした。うわ、一〇〇〇過ぎてるし・・・大淀に怒られる、はァ
なんというか、こう書きたいって思っても上手く書けない(´;ω;`)