柚希結奈は勇者である   作:松麿

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柚希兄妹のプロフィールです。


柚希結奈
年齢:13歳(2018年7月30日時点) 

生年月日:11月18日 

血液型:A 

身長:158cm 

出身地:鹿児島県 

容姿:黒髪でロングヘアの前髪をヘアピンで垂れ耳状にした髪型が特徴。スタイルは東郷三森に及ばないものの、恵まれている方。青紫色の瞳をしている。 

好きな食べ物:ちゃんぽん(うどんは天ぷら派) 

嫌いな食べ物:そば(アレルギーあり) 

趣味:動物の飼育(よく猫に好かれる) 

「柚希結奈は勇者である」の主人公。内気な性格で表立つ事を苦手としているが、いざという時は人が変わったように凛とした態度で物事に挑む。7・30天災の際、赤い鉄扇を手にして勇者と巫女の力が目覚めた彼女はバーテックスとの戦いに翻弄されることとなる。 


柚希佑哉
年齢:24歳(2018年7月30日時点) 

生年月日:6月24日 

血液型:A 

身長:178cm 

出身地:鹿児島県 

好きな食べ物:豚骨ラーメン 
       (うどんは牛すき釜玉派) 
嫌いな食べ物:なし 

趣味:武器の手入れ 

柚希結奈の兄であり、陸上自衛隊員。鍛え上げた気合と根性で結奈をサポートする。しかし、結奈が前線に出る度に胸を痛めてしまう兄バカでもある。 


二話

2018年7月30日昼。

 

 

7・30天災から3年という月日が流れ、結奈は中学2年生になった。

 

 

彼女は現在兄とともに3年前から桜島へ住み着いており、そこで学生生活を過ごしている。

 

 

桜島への移住はは柚希兄妹に限った話ではなく、桜島へ避難した者ほぼ全員も桜島で生活している。

 

 

と言うのも、桜島が自身を囲むように結界を張ってくれた為にしばらく星屑に襲われる事無く平穏が続いた。

 

 

しかし、結界外となれば話は違ってくる。

 

 

勇者である結奈と佑哉等の自衛隊によって編成された「桜島防衛隊」は桜島の防衛又はバーテックスの戦闘だけでなく、結界外で未だ避難している者達の救助や物資の確保も主な任務としている。

 

 

桜島からの神託を頼りにフェリーを経由して薩摩地方、陸路で大隅地方、そして宮崎や熊本との県境にまで走り回り、自衛隊が難民と物資を桜島に集めるだけ集め、その妨げとなる星屑を結奈が勇者の力を持って殲滅してきた。

 

 

勇者と自衛隊の活躍。

 

 

その吉報で絶望に浸っていた市民や難民達も活気を取り戻し、拠点となる桜島で畑を耕し、家畜を育て、魚を釣り上げ、そして家を建てる等をし、桜島を1つの島国として築き上げた。

 

 

しかし、それでも課題が多く残っている中で重要な問題があった。

 

 

それは某神社にて…。

 

 

結奈「あの敵を倒せるのと神託を受けれるは…。」

 

 

佑哉「結奈だけってどういう事だ!?」

 

 

そう、桜島に人口が一点集中して窮屈な程人はいるのに対し、柚希結奈とは他に勇者や巫女の力を持つ者は…0人という事実。

 

 

こればかりは結奈も佑哉もショックを隠しきれず、目の前にいる神社庁の職員に問い詰める。

 

 

神社庁職員「いや…すまないが、これは明らかな事実だ。3年前、君がその赤い鉄扇の力を発揮して戦ったのを聞いた時は驚いた。もしかすると、勇者や巫女になれる者が他にいるのではと思ってその時から調査を始めて今に至ったのだが…。」

 

 

結奈「どうやって調べたのですか?」

 

 

神社庁職員「勇者に関しては、君が持つ赤い鉄扇とは別の物で候補者に使わせたのだ。」

 

 

佑哉「別の…?」

 

 

2人はそれを聞いて驚く。別の物…つまり、星屑を倒せる力を持つ神器を神社庁が持っているのだ。

 

 

神社庁職員「所有するここの神職から了承を得た上で調査に使ったのだ。それがこれだ。」

 

 

職員は置いていた箱を取り出し、その蓋を開けて中身を2人に見せる。

 

 

結奈「青い鉄扇…?」

 

 

佑哉「色違いの同型か…!」

 

 

そう、佑哉の言う様に同じ形で青く染め上げた鉄扇が箱の中に入っている。

 

 

神社庁職員「結奈君が持つその赤い鉄扇の名前は「ホデリ」。そして、今君達の目の前にあるこの青い鉄扇の名前は「ホオリ」と名付けられている。これで勇者を見つけ出す事はできなかったが、ホデリを扱える君ならホオリも使いこなせるはずだ。」

 

 

結奈「…。」

 

 

結奈はそっとホオリに触れてみる。色違いを除き、自分が持つホデリとは全く同じ形をした鉄扇なのだが、彼女は感じていた。

 

 

結奈「分かります。あの時、ホデリを持った時は暖かな感覚だったのに、こちらは涼しげな感覚が伝わってきて全然違います。」

 

 

佑哉・神社庁職員「…!」

 

 

ホオリを触れてから手に取って持ち出す結奈。ホデリによって馴れた手付きでホオリを開き、振る。

 

 

するとホオリの扇面から水しぶきが表れ、少し飛ばされた所で一部の地面が濡れた。

 

 

佑哉「マジかよ…火の次は水も出せるなんてよ。」

 

 

神社庁職員「やはり結奈君だけしか使えないと言うことか。だが、これである程度は分かってきた。」

 

 

佑哉「分かってきた?」

 

 

神社庁職員「分かった範囲だけだが、君達にも知る権利があるから話そう。敵の正体と、桜島に宿る神の正体も。」

 

 

結奈・佑哉「…!?」

 

 

これを聞かずにはいられない兄妹は再び職員を見る。

 

 

神社庁職員「まず、あの星屑は神によって作られた物だという可能性が高い。」

 

 

結奈「神…?」

 

 

神社庁職員「最初は地球外生命体ではないかと思われたが、奴等は前兆なく襲いかかって来た上にホデリやホオリといった神器でしか通用しなかった。これで神に関係している事から、その説が濃厚になってきたのだ。」

 

 

佑哉「じゃあ俺達の敵は事実上神だってのか?なら結奈の持ってる神器はどう説明できるんだよ?」

 

 

神社庁職員「まるで天と地を別けるかのように人類の敵になる神もいれば、味方になってくれる神もいるのだ。鉄扇本来の持ち主が結奈君に鉄扇と力を与え、シンボルである桜島を選んで宿り、我々を庇う様に結界を張ってくれた。」

 

 

結奈「その、本来の持ち主…桜島に宿る神様はいったい誰なんですか?」

 

 

神社庁職員「 コノハナサクヤヒメ様だと思われる。」

 

 

結奈「コノハナサクヤヒメ…?」

 

 

木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)。

 

 

「木の花(桜の花)」が「咲く」ように美しい女性の意味と「咲いた木の花ぐらいの儚さ」の女性と言う意味を併せ持っており、お淑やかな美人とされる鹿児島産まれの女神である。

 

 

桜島の名は、この女神様から由来されているとか(諸説あり)。

 

 

神社庁職員「恐らく、コノハナサクヤヒメ様はこの地(桜島)で我々を守る為に降りられ、適合者である結奈君を勇者として選んだのだと思う。それを示すかのように天災以降目立った噴火活動は見せないし、火山灰が降って積もる事もしばらく見ていない。」

 

 

結奈「あ…。」

 

 

言われてみたら確かに、と言うように結奈は納得する。

 

 

コノハナサクヤヒメは桜の女神でありながら火と水の双方の力を持つ。

 

 

故に火山という強大な火を制御する霊力を秘めた女神とされている。その為に桜島は勿論、富士山等を中心に各活火山に祀られている。

 

 

つまり、桜島の火山活動が極端に収まっているのはコノハナサクヤヒメが宿っている証となっているのだ。

 

 

神社庁職員「だが、残念な事にコノハナサクヤヒメ様は結奈君だけを選んだ。いや、もしかすると結奈君しかいなかったのかもしれない。こればかりはどうにもならないな。」

 

 

佑哉「クソッ、他に手はないのかよ。」

 

 

職員「県内の神社や神宮を全て回って手に入ったとすれば、結奈君が今着込んでいる装束だけのようだね。」

 

 

結奈「…。」

 

 

結奈が着込んでいる 薄紫の半透明マントと胸元のケープと思われる部分には八重桜の紋章が描かれた桜色中心の幻想的な装束 。

 

 

これは薩摩地方の南さつま市にある神社で見つけたものだ。

 

 

詳細は現在神社庁が調査中だが、神託によればこの装束が結奈の身を守るだけでなく、更なる力を授けてくれるとの事だったので結奈が着込んでいるのだ。

 

 

佑哉「結局結奈の装備が増えて力は増し増しになったのは良いものの、他の勇者を見つけ出す肝心の神器が見つからないんじゃ戦力的にも厳しい。鹿児島で回ってない地域といったら離島ぐらいだけど、そこまで足を伸ばすには無理があるな。」

 

 

一応高速船はあるのだが、各離島へ着くには時間と人、そして結奈がどうしても必要となる。

 

 

おまけに星屑からの攻撃はここ最近徐々に増していき、それらから守る結界は徐々に弱まっていく一方である。

 

 

このような状況で離島へ留守でもすれば、戻ってきた頃には手遅れになりかねない。

 

 

結奈「これからは専守防衛、と言うことですか…。」

 

 

佑哉「だな、離島を除いて鹿児島を走り回った。これからは結界が壊れない様に俺達が星屑の相手をしなきゃならねぇ。」

 

 

県内で回収するだけ物資と難民をかき集めた桜島防衛隊。残るは星屑との戦闘のみとなった。

 

 

神社庁職員「その為にも、まずは腹を満たさなければな。ちょうどいい時間だから飯にしよう。私の奢りだ。」

 

 

職員がパンパンと手拍子を二回鳴らす。すると出前箱を持った店員が表れる。

 

 

結奈「わぁ…!」

 

 

すると出前箱から出したのは結奈の大好物ちゃんぽんだ。

 

 

神社庁職員「君達の活躍は皆の活気に繋がっているし、我々も助けられてばかりだ。だから君達に応えれるよう、我々は全力でサポートする。今後もよろしくお願いしたい。」

 

 

佑哉「結奈がいるからどうにかなってるんですがね。まぁ、やれる所までやろうか。」

 

 

結奈「その前に早く食べちゃいましょう。頂きます!」

 

 

結奈はすっかりチャンポンの事しか考えておらず、我先にと麺を啜っていく。

 

 

これから先の戦いは厳しくなっていくのは誰も予想していた。

 

 

しかし、柚希結奈という勇者であり希望である彼女が生き続ける限り、皆は絶望を抱えることはないだろう。

 

 

神社庁職員と佑哉は同じ気持ちでちゃんぽんに夢中な結奈を見守った。


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