東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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やっぱりこっちが早かった。
というわけでまぁ、暇な時にでもゆっくりどうぞ。


10話「雪が降って、霧が立ち込め」

 side Renata Scarlet

 

 ──霧の湖近くの森

 

 冬が来た報せのように、しんしんと雪が降り積もった次の日の、満月が綺麗に見える夜。

 

 記憶を失ったせいか初めて雪を見たというフィオナのために外へ出ていた。もちろん私はフィオナを連れていたが、妹達は忙しいらしく、今日は珍しくフランやルナとは一緒ではない。代わりにフィオナの友だちになった優れた妖精メイドのパンサー、シュヴァハ、マルバーの3人。そして、その保護者兼監視役の咲夜と一緒に来ていた。

 

 しかし私も遊びには加わらず、見て楽しむという半ば保護者のような役目になっている。

 実のところ、これはフィオナが友だちと仲良くなるためでもあった。

 

「フィオナ、行くぞー! ほれっ!」

 

 現在、フィオナ達は雪合戦で遊んでいる。

 フィオナは人間のはずだが、身体能力で勝っているはずの妖精達に引けを取らない。

 

「アルスター十八盾の三。手に疾き、ダーヴタバド!」

 

 その理由とはもちろん魔法を使っているからである。

 ただの遊びだというのに、盾を召喚して雪玉から身を守ったり、雪玉を遠隔操作したり⋯⋯とにかく遠慮しない。妖精相手だから、というよりは負けず嫌いな性格だからだろう。

 

「フィオナ様、盾では防げない強力な攻撃をする敵が現れる時が来るかもしれません。ですから避ける練習も兼ねて避けるのもいいかと」

「分かった。身体強化魔法はまだ覚えてないけど、頑張ってみる」

 

 チーム戦なのか、フィオナ達は二組に別れて遊んでいる。

 フィオナは堅実なマルバーと組み、遊びながらも戦闘の練習をしている。遊びという方向性を大きく間違えているが、楽しそうなので放っておいても大丈夫だろう。

 

「シュヴァハ、マルバーのヤツの相手を頼んだ! アタシはフィオナの相手な!」

「えぇっ!? ま、マルバーちゃんの相手なんて私なんかじゃ⋯⋯」

「大丈夫だって! お前だってやればできるから!」

 

 一方で陽気なパンサーは内気なシュヴァハと一緒に行動し、元気付けたりしながらリーダーのように彼女を引っ張っている。咲夜によるとシュヴァハは戦闘が全くダメらしいので、それを克服させるためにも一緒に行動しているようだ。

 

「レナ様。見張りは私に任せて、遊んでくださっても⋯⋯」

「いえ、やはり同じ年頃の友だちで遊んだ方がいいと思いますから。それに私は吸血鬼。妖精や人間とは身体能力の基礎が違いますからね」

 

 と言ってはみるも、数で負けているから慢心すれば勝負でも負けることは目に見えている。しかし負けるから遊ばないのではなく、地霊殿で出会った烏の妖怪らしき女性、クロウが言っていたことを危惧していた。

 理由は不明だが、クロウ以外にもフィオナを狙う者がいること。フィオナと初めて会った時に襲ってきた老人も、私の指輪で気付かなかっただけで、もしかしたら狙いはフィオナだったかもしれない。そう考えると、保護者である私が遊ぶわけにもいかない。

 

「⋯⋯レナ様、あまり気を張りすぎてもいけません。たまには休養も必要ですよ」

「お姉さまや咲夜ほどじゃないですよ。それに咲夜、一番休養が必要なのは貴女だと⋯⋯」

「私は見えないところで休んでいますので。それに先日もお嬢様から休暇をもらいました」

 

 休暇をもらっても働いているのだから、休暇では無いと思う。

 自分の体調管理はしっかりとしているとしても、働きすぎにしか見えないからたまには目に見えるところで休んでほしい。無意味に終わるかもしれないがお姉さまに言ってみよう。咲夜が働きすぎだから休んでほしい、と。

 

「それにしても楽しそうですね、彼女達は」

「普通、あの年頃の娘達はこうして遊ぶものですよ。咲夜も外の世界でなら、ああやって⋯⋯。

 いえ、貴女は外の世界でも働きそうです。もしくは勉学に励むでしょうね⋯⋯」

「自分でもそうすると思います。私はお嬢様に身を捧げた従者ですから」

 

 笑顔でそう言われ、咲夜もやはり普通の人間ではないと理解する。

 彼女も妖怪に囲まれて育ったせいで少し世間からズレているのだろう。

 

「レナ様、失礼なことをお考えで?」

「はひっ!? い、いえ、何も考えていませんよ?」

「本当にお嬢様にそっくりですね。レナ様、お顔にも出ていますよ」

 

 咲夜の言葉に慌てて顔に触れて確認する。

 しかし見ないと分からない違いなのか、触れただけでは確認はできない。

 

「ふふっ。すいません、レナ様。嘘です。

 表情に出てはいません。しかし⋯⋯お嬢様にそっくりではありますよ」

「お姉さまに? それなら、その違いも別に⋯⋯って、分かってて言ってます?」

「あら、気付いちゃいました?」

 

 珍しく従者という堅苦しい枠組みから外れ、少女らしい笑みを浮かべた。

 

「咲夜も変わりましたね。いつの間に変わったのです?」

「はい? 何がでしょうか?」

 

 咲夜自身はその変化に気付いていないらしい。

 喜ばしいことだし、気付かないからといって問題はないから言わなくてもいいだろう。

 それに、気付いていない方が可愛くて面白いし。

 

「⋯⋯いえ、何でもないですよ。そのままで大丈夫です」

「は、はあ⋯⋯?」

 

 咲夜は不思議そうに頭を傾げる。

 私も咲夜のように変われているだろうか。いや、きっと変わっているに──

 

「霧⋯⋯? 珍しいですね、霧の湖が近いとはいえ、ここまで霧が広がるなんて」

 

 何の前触れもなく、周囲に霧が立ち込める。

 月明かりが遮られ、辺りは闇で染め上げられる。吸血鬼の目を以てしても見えにくい闇だ。

 

「あれ? こういうの、前にも一度⋯⋯。っ!」

 

 体験したことだから気付くことができた。

 これは月明かりが遮られたせいではなく、黒い霧のせいで見えないのだ、と。

 辺りの霧はそこまで濃くはない。しかしどういうわけか上空だけ雲のように霧が集まり、辺りが見づらくなっている。

 

「あれっ。月が消えたか?」

「き、霧のせいで見えないだけじゃないかな?」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 妖精達は雪玉を作る手を止めても特に取り乱す姿を見せない。

 逆にそれは好都合だった。下手に慌てさせ、統率を乱させるわけにもいかなかった。

 

「レナお姉ちゃん。この霧、おかしい。気味の悪い魔力を含んでいる。

 まるで、前に襲ってきた妖怪の時と同じ霧⋯⋯」

 

 しかしフィオナだけは私に近付き、気付いたことを口にした。

 彼女の小さな不安がみんなに伝達するのに、そう時間はかからなかった。

 

「パンサー、マルバー! 周囲を警戒しなさい! シュヴァハは私から離れないように!」

 

 危険を感じ取った咲夜が妖精メイドに指示を出す。

 

「お、おう! じゃなかった。り、了解です!」

「⋯⋯前方に人影複数確認しました。敵対を確認次第、攻撃に移ります」

 

 誰よりも早く、マルバーがそう言って手に妖力を集め、攻撃準備に移る。

 その言葉にみんなが反応し、彼女の見つめる方に注目を集めた。

 

「クックックッ。よく気付いたね、優秀な人かな!? どうでもいいけどね!」

 

 大量の人影の中、一つだけ他とは違った奇妙な影が現れる。

 それはしわがれた声を上げ、少なくとも会話ができる者だとは理解できた。

 

「⋯⋯私達に何か用?」

 

 咲夜が声をかけると、それは意味も分からず笑って話を続ける。

 霧の中、その姿形がはっきりと目に映ると、私達はさらに警戒を強めた。

 

 上半身は人型で下半身は馬そのもの。まさにケンタウロスという言葉が正しいだろう。下半身は青っぽい馬で、顔はよく見えないが上半身は肩までかかる青い髪を持つ人間だと分かった。

 

「お前達、というよりはそこの白髪の少女だね。俺らも先行隊とはいえ、やっぱり欲しいから。

 ⋯⋯ってか、そこにいるの吸血鬼? アハッ! 面白い組み合わせだね。全く以て!」

「フィオナに何の用です? 返答次第では⋯⋯半殺しで帰ってもらいます」

 

 手に召喚した神の槍、ブリューナクと輝く剣、クラウ・ソラスを両手に持って構える。

 まだ敵と決まったわけではないが、家族(フィオナ)を狙う相手に容赦はしない。

 

「半殺し? 殺せはしないから半殺しもないね。

 悪いことは言わないから、その子だけ置いて帰って、どうぞ」

「どうしてフィオナを狙うのです?」

「どうして⋯⋯。殺して、自由になる。もしくは力を手に入れる。理由はなんだっていいじゃないか。どっちにしろ、渡せば逃がしてもらえる。渡さなければ⋯⋯仲良死(なかよし)だね!」

 

 大きな声を上げたと同時に、敵の大将の後ろから複数の影が襲いかかってきた。

 とっさにフィオナを後ろへ下げ、それらを薙ぎ払う。

 私の攻撃を合図に、妖精メイドや咲夜達も近付く何かに攻撃を開始する。

 

「容赦ないね! 俺らよりずっと悪魔だ!」

「守りたい人のために、人でもない何かを犠牲にしているだけですよ」

 

 その人影は近付いてもまるで影そのもののように真っ黒で、斬った感触も人のそれではない。

 俗に言うあやつり人形のようなものだろうか。

 

「その考え! 人格が悪魔に支配されている! ひとまず第二陣から後も続きな!」

「パンサー、フィオナ様をお守りに! マルバーは私の援護を!」

「了解! このっ、フィオナに近づくんじゃねぇ!」

 

 パンサーはフィオナに近付く敵へ弾幕を浴びせ、マルバーは咲夜の攻撃に合わせて攻撃を放つ。

 

「ありがとう、パンサー。でもこれくらい、盾で防げるよ」

「素直にありがとうだけでいいっての! あんま動いちゃダメだからな、フィオナ!」

 

 みんな苦戦している様子はなく、一体ずつは大したことはないが敵の数が多い。

 時間をかけすぎれば危なくなるのはこっちだ。

 

「咲夜、三秒だけ敵の大将の気を引いてください。油断したところで大将を撃破します」

「了解です。──幻世『ザ・ワールド』!」

 

 咲夜に小声で話すと同時に、横にいたはずの咲夜の気配が消える。

 いつの間にか咲夜は数歩先に移動し、そして敵の大将の周りには大量のナイフが浮かんでいた。

 

「ふぁっ!? って、言うと思ったか!」

 

 大将は両手を広げると、まるで壁ができたかのようにナイフが弾かれる。

 次の瞬間、大将は咲夜を見つめて手を伸ばして魔力弾のようなものを放つ──

 

「残念。まだ私の時間よ」

 

 ──が、それは空振りに終わった。

 咲夜の姿は再び消え、次は大将の真上に現れていた。

 

「私はこっちよ」

「んなっ!? なんだそれ!?」

 

 大将は真上にいる咲夜に見やり、再び魔力弾を放とうと手を伸ばす。

 

「⋯⋯時止めって、三秒という短い時間も狂いません?

 まあ⋯⋯ありがとうございます。貫け、神槍『ブリューナク』!」

 

 咲夜に気を取られる大将を狙い、力強く槍を投げた。

 

「アハッ! 気付かないわけがないよね!」

 

 しかし投擲に気付いた大将は魔力弾を放つ方向を槍に変え、勢いよく放つ。

 それらはぶつかると同時に煙を伴って破裂した。

 

「クックックッ! この勢いで──うぐっ、がはっ⋯⋯!?」

 

 が、その隙に自身を有耶無耶にして背後に回り、剣で大将の胸を突き刺した。

 暗いがその大将から血が流れたことは、その手に伝わる。

 

「油断し過ぎです。投擲だけでは終わりませんよ。

 ⋯⋯名前も知りませんが、おやすみなさいです」

「は⋯⋯っ?」

 

 そのまま剣を引き抜き、容赦なく首を狙って横一文字に切り裂いた。

 理解不能といった顔のまま、血しぶきを上げて首だけ転がり落ちる。

 

「──は、ははは。クックックッ! 本当に油断し過ぎたようだ!」

「うわっ!?」

 

 しかし首だけでも口を動かすのはやめず、それは私を見て語りかける。

 その時だけ、顔がはっきりと目に映った。生者ではないと示すかのように、髑髏の形をとる頭。髪は付いているが、どう見ても人間には見えない。

 

「だが、次に召喚された時はそうはいかない! 覚えておけ、私の名はガ⋯⋯あっ」

「で、ですからおやすみなさいです。まさか首だけでも喋るとは⋯⋯」

 

 恐怖を押し殺して急いでそれに近付き、遠慮なく剣を振り下ろした。

 流石に頭を砕かれたそれは喋ることをやめ、塵のように砕けていった。

 

「おぉ! 霧が晴れたぜ! それに影も全部消えたな!」

 

 パンサーの嬉しそうな大きな声が響く。

 おそらくは元凶である敵の大将が消えたことで、連動して全て消えたのだろう。

 

「お疲れ様です、レナ様。しかし今の敵は一体⋯⋯」

「⋯⋯何となくは理解できました。ですがひとまずは家に帰りましょう。

 安全で、安らげて、みんながいる家に」

「⋯⋯ええ、そうですね」

 

 雪遊びを切り上げ、私達は安否確認のために家へと帰る。

 

 しかし家に被害はなく、お姉さまに心配されるだけとなった。

 こうして霧は晴れたが、私の中にある不安が消えることはなかった────




鏡花水月。
オリキャラプロフィールその4。

名前:マルバー
容姿:オレンジ色のサイドテール。黒い目でトンボのような透明な翼を持つ。メイド服姿。他よりも10cmほど背が高い。
一人称:私(わたくし)
その他:貴方様
備考:堅実で真面目な子。文武両道。



たまにはオリキャラでも募集しようかな、というわけで、明日くらいに活動報告の方で募集をします。
募集する作品は東方紅転録NMとFGO/BV、そしてオリジナルの作品からにします。
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