東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─ 作:百合好きなmerrick
しかし割と重要だったりゲフンゲフン。
ではまあ、お暇な時にでもごゆっくりどうぞ。
side Renata Scarlet
──紅魔館(レミリアの書斎)
人里の騒動から数十分後、竜となったヒメの背に乗って紅魔館まで戻ってきた。
詳しい説明を話してくれると言うので、お姉さまに無理を言い、さらには頼れる人も集めてお姉さまの書斎に集まっている。フラン達は美鈴に任せ、今ここにいるのは私、フィオナ、ヒメ、お姉さま、咲夜、パチュリーの6人だけだ。
「⋯⋯で、人里で偶然にも龍神様と出会った、ってわけ?
レナも物好きねぇ。いっつも変な人を連れてくるんだから」
ヒメと出会った経緯を話すと、お姉さまは呆れた顔でそう言った。
これまで誰かを連れてきたことなど、数回しかないのに言うのはどうかと思う。
「正しく言うと貴方達が想像する龍神様ではありません。まだ竜という動物に近いですから、
「態度がデカいわね⋯⋯」
「態度がデカいのではなく、位が高いのです。そうですね、改めて自己紹介をしましょう。
ヒメは龍神様の娘とは思えないほど親しみやすい笑顔で話す。
かと言って完全に気を許しているようには見えず、わざとらしい感じもする。
「で、龍神様の娘がわざわざ出向くなんて、何か大変なことが起きているのかしら?」
「概括するとそうですね。
「⋯⋯フィオナのことです? フィオナが邪悪なる者と関係あると?」
確かに敵の黒幕と関係あるなら、霧の妖怪達に彼女が狙われる理由も分かる。
しかし記憶がない今、どうして狙われるのだろうか。
「記憶がないことを知らない、もしくはないからこそ狙っているのでしょう。
どちらかは敵に聞かないと分かりませんね」
「ところでレナの考えていることが分かるらしいけど、どうしてなの?」
「⋯⋯同族だから、とだけ言っておきます。詳しいことを話す気はありません。
ですがその気になれば幻想郷の住民である貴方達の考えることも分かりますよ」
ヒメはそう言うとお姉さまをじっと見つめる。
しばらくそうしていると唐突に口を開ける。
「嘘をついている、と思っていましたか。それと妹の心配⋯⋯これは言わない方がいいですか」
「確かに少しは思ったけど⋯⋯何の能力? さとりのような読心?」
「いえ、ここでの
理屈や過程を飛ばし、『そうだからそうなる』といった実現可能な結果をもたらします」
「心を読むのは実現可能じゃないと思うけど?」
お姉さまの真っ当な疑問にヒメは首を振る。
私もそうだと思うのだけど、何かが違うらしい。
「
ですから心を読むと言っても、そう思っている気がする、程度しか分かりません」
「まあ、確かにそれくらいなら⋯⋯」
「人里で炎を消したのも同じ力です。本当に簡単なことしかできないですけど」
そうだとしてもかなり便利な能力な気がする。
実現可能がどの範囲までかは分からないが、様々なことができると思う。
「そうでしょうか⋯⋯? やはり貴方に褒められて悪い気はしませんね。
同族は好きですよ。今の貴方はともかく、昔は⋯⋯いえ。喋りすぎました。本題に戻ります」
「レナったら前世でも何かしてきたの?」
「前世の記憶は薄いですが、龍神様にも動物の竜にも会ったことはないと思います」
もちろん記憶が正しければ、の話だけど。
しかしそんなファンタジーな世界に生きた記憶はない。もっと普通の⋯⋯現代的だったはずだ。
「ところで同族の貴方。敵の正体には気付いていますか?
「はぁ? それなら何故敵の目的は分からないの?」
「逆です。気付いたからこそ分かりません。で、同族の貴方はどうですか?」
「⋯⋯何となく分かりました。パチュリー、炎を扱うアインという者を知りません?」
この中で一番その手の知識が多そうな者を頼ってみる。
パチュリーは少し考える素振りを見せ、口を開く。
「さぁ? 聞いたことないわ」
「ではアイムではどうでしょう? さらにはその者が地獄の悪魔というのも含めて⋯⋯」
フィオナと初めて出会った時、彼女は私のことを『悪魔さん』と呼んだ。そして人里の妖怪は自身のことをアインと呼ぶ以外に、自分の使う炎を地獄の炎と言っていた。
「それなら分かったわ。あまり詳しくはないけど⋯⋯火炎公のことよね」
「ええ、人里を襲った妖怪の言葉を信じるならその火炎公かと」
「火炎公⋯⋯? ちょっと、レナ。私達にも分かるように話なさいよ」
一応は同じ悪魔だと言うのに、お姉さまは気付いていないようだった。
だけど私も信じたくはない。それが相手だとすれば、私達だけじゃ太刀打ちできるわけがない。
「⋯⋯同族の貴方、その心配はないですよ。だって何体かは倒しているんですよね?
それはおそらく、不完全な召喚により弱体化しているからだと思います」
「弱体化? た、確かにそれだと頷けます。しかし不完全なのは何故でしょうか?」
ヒメに質問すると彼女は考え込むように頭を下げる。
しばらく静寂が続き、お姉さまの我慢が限界に近づく前に彼女は顔を上げた。
「やはり、召喚主の方が不完全だから。もしくは⋯⋯幻想郷相手に遊んでいるのでしょう。相手が想像する人で間違いなければ、遊んでいても勝てる可能性はあります。⋯⋯性格から違うと思いますが」
「あー、もうっ! じれったいわね!? その黒幕は一体誰だと言うの?」
「我慢弱いですね、お姉さまって。まあ⋯⋯一言で言えばソロモンです。
ソロモン七十二柱と呼ばれる悪魔達を使役したことで有名な、古代イスラエルの王様です」
流石にその名前には聞き覚えがあるらしく、目を見開いていた。
人里の妖怪、いや悪魔アイムも、最初に襲ってきた青ざめた馬に乗った老人も、ケンタロスのような者も、確証はないが彼らは全員ソロモン七十二柱の悪魔達だろう。何故霧を伴って出てくるのか分からないし、フィオナを狙う理由も不明だが、アイムのことから確実にそうだろう。
ソロモンの指輪を使う私だが、詳しいことはミアの方がよく知っているという。
「⋯⋯む、昔の人間が幻想入りしたってこと?」
「それは考えられません。幻想入りするためにはまず世界から忘れ去られることが条件です。
だから何らかの方法で直接ここへ来たのだと思います。⋯⋯フィオナ、何か分かりません?」
「ボクがここに来たのと何か繋がりがあるのかもしれないけど⋯⋯それ以上は分からない」
「敵はそれで間違いないと思います。最悪七十二柱全員が襲ってくるかもしれませんね」
冗談で言っているのだろうが冗談に聞こえず、それを想像すると恐怖を感じる。
出会った敵は皆自分の手柄にしたいと目論んでいたから倒すことができた。しかし協力されて10人がかりで襲われれば⋯⋯それは想像に難くない。
「冗談だから同族の貴方は気にしないでください。可能性はもちろんありますけど」
「⋯⋯話は変わるけど、どうして竜の時と口調が変わっているの?」
「藪から棒ですね」
ヒメはそう言うものの、質問してくれることは満更でもないようだ。
もしかしたら目立ちたがり屋な性格なのかもしれない。
「誰がですか。同族とはいえ怒りますよ。
「⋯⋯要は自分ではない性格になるということ?」
フィオナがそう思うのも分かる。竜としての性格と人としての性格は明らかに別人だった。
傲慢だった性格はあの強力な竜からして見れば相応のものだろう。
「どちらも間違いなく
「なるほど⋯⋯」
「⋯⋯話はこれくらいでいいでしょうか。
別れを惜しむような悲しい笑みを浮かべ、ヒメはそう言った。
私にとっては会って間もない初対面に近い人だが、彼女にとってはそうでもないらしい。もしかしたら私は転生を何度も繰り返していて、そのどれかで彼女のいる世界に転生した⋯⋯なんてこともあったかもしれない。
だけど今の私はそんな記憶もないし、ヒメが私達のことを⋯⋯ん? 私達?
「えっ、ちょっと待ってください。その貴方達って私以外にフィオナのことも──」
「お姉様! 私達を除け者にしようたってそうはいかないからね!」
何の前触れもなく、扉が勢いよく開かれた。
開けたのはフランらしく、その後ろでは遠慮気味のルナと、止められなかったことを悔やんでいるのか、申し訳なさそうに立つ美鈴がいる。
「って、誰その人?」
「⋯⋯先の質問にお答えしましょう。白い子も含まれていますよ。それと──」
「え? な、なに?」
ヒメはフランを見つめて近付くと、どういうわけか頭を撫でた。
その時のヒメの顔は、何故か寂しそうにも見える。
「──いえ、何でもありません。ただ懐かしいと思っただけです。それと理解しました。
貴方達が何であるか。これからどうなるかも。辛い時が来ますが、諦めずに生きてください。
ヒメは安心したかのように落ち着いた表情になった。
そして何もない空間に紫のような裂け目を作り、そこへ足を踏み入れる。
「ああ、そうでした。幻想郷の最高神として賢者とは話をつけています。しかし黒幕を入れないように仕事を与えていますので、なかなか協力してくれないと思います。ですから何かあった時は博麗の巫女を頼ってくださいね」
「黒幕を入れないように、って⋯⋯。ちょ、ちょっとヒメ!」
呼び止める声も聞かずに裂け目へと入っていく。
明らかに全てを言わずに、ヒメは空間の裂け目とともに消えてしまった────
竜瞳鳳頸。
忘れていたオリキャラプロフィールその5
名前:ヒメ(龍姫様)、本名不詳
人時
容姿:白を基調とした着物を纏う銀髪褐色肌で赤目の少女。頭には黒い角が生えている。
一人称:
その他:お前、貴方(親しい者のみ)
竜時
容姿:西洋でよく見る四本足の赤黒い竜。翼は身体よりも大きい。
一人称:妾
その他:貴様、お主(親しい者のみ)
備考:竜娘、初の褐色娘、