東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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今回も短め。まあ、それでもいい方はお暇な時にでもどうぞ。


13話「荒れ狂わぬ炎の霧」

 side Renata Scarlet

 

 ──紅魔館(ミアの部屋)

 

 ヒメが去った翌日。私はミアを呼んで、ソロモン七十二柱に対抗するための作戦会議場として図書館に来ていた。ミアを呼んだのは私達よりもそういう話に詳しいからである。お姉さまや咲夜は例のごとく仕事で忙しく、フィオナはフランやルナとともに霧の湖に遊びに行っているらしい。そのため集まれたのは私達だけだった。フラン達のことは3人だけで大丈夫か心配ではあるが、フランに子ども扱いしないで、と言われてたので仕方なく遊びに行かせている。⋯⋯最悪場所は分かっているのだから、彼女達の場所へ急いで向かえばいいだけだし、問題はないだろう。

 

「いつ見ても大きな図書館だよねー。まあ、だから飽きないんだけど」

 

 昨日帰ってきたばかりのミアを呼んできたのだが、彼女の機嫌は良いらしい。

 稀に何か大変なことでもあったのか、機嫌が悪い時もある。

 

「ミア、今回は何処に行ってたのです?」

「んー? 京⋯⋯ううん。レナにも秘密よー」

「⋯⋯?」

 

 いつもは言ってくれるのに、今回は何故か教えてくれない。

 それにしても「京」から始まる場所なんて幻想郷にあっただろうか。

 

「それよりもさー。私に聞きたいことがあるんでしょ? 早くお話しようよ。久しぶりだよね、こうして会話するのも。ごめんね、いつも私が旅しているせいでなかなか話す機会が無くて寂しいよね。レナはシスコンだからお姉ちゃんが1人いないだけでも嫌だろうし。だからこそ私が──」

「あ、あの! 確かミアってソロモン七十二柱のこと詳しいですよね?」

 

 機嫌が良すぎて淀みなく喋るミアに気圧されそうになるも、意を決して話を切り出す。

 私の質問に顎に手を触れるような考える仕草を見せ、数秒の沈黙の後に口を開く。

 

「全員の名前を言えるのと、それぞれのできることがちょっと分かるくらいかな。

 どうしてそんなことを聞くの? もしかして私のいない間に何か大変なことでも起きた?」

「大変なことというか⋯⋯フィオナを狙う奴らがいるのですが、その狙っている奴らがソロモン七十二柱の魔神達らしいのです。おそらく、ですけど」

「⋯⋯⋯⋯。いやいや。そんなわけないじゃん。あいつら相当ヤバい奴らよ?」

 

 流石に突然言われても信じる様子はない。

 しかし私が確証に至った経緯や襲ってきた敵の特徴などを詳しく話すと、ミアは真剣に話を聞いてくれた。そして再び考え込んだ後に、何か決めたように話し出す。

 

「はぁ。やっぱり面倒事に巻き込まれやすい体質だよね、レナって。⋯⋯実を言うと知ってたんだよね。地底異変の前に私が行方不明になった時あったでしょ? あの時もある奴にあってるんだよ、私は。多分ルネが探しに行ったのと同じ奴らなんだよねぇ。魔神とか言ってたけど」

 

 衝撃の告白に、一瞬言葉を失った。

 どちらか言えば私の方が驚かせる側だったので、私が驚かせられるとは思っていなかった。というか、どうして私に言ってくれなかったのだろう。もしかしてまだ信用されていないとか⋯⋯。

 

「あー! また失礼なこと考えてる顔ー。私は心配をかけないように、って思っただけだからね? レナのことも姉妹とは認めてるし⋯⋯好きなのは好きだし」

「⋯⋯そうですか。すいません、ミア。勘違いしてました」

「ふふん、別にいいよ」

「ミアが好きなのはお姉さまだけだと思ってました。お姉さまは遊びだったのですね」

「違うよね? そうじゃないよね? というか誤解を招く言い方しないでー」

 

 ミアをからかうと、照れ隠しかポコポコと叩いてくる。

 まるで妹のようで可愛い。⋯⋯いや妹なんだけど。

 

「ゴホン。楽しそうなところで悪いけど、話してもいいかしら?」

「あ、ごめんなさい。私はいいよー」

「すいませんです。もちろんいいですよ」

 

 パチュリーに呆れられ、ミアとのじゃれ合いをやめる。

 終わったのを見ると、パチュリーは考えていたであろうことの確認を始めた。

 

「まず聞きたいことがあるんだけど⋯⋯彼らの中で最も危険な悪魔は誰かしら?」

「うーん⋯⋯基本みんな危険なのよね。だから一番、ってなると難しいなぁ。私的には王に危険な奴が多いと思うけど、フェネクスとかいう不死の奴や、戦略に長けたハルファスとかも危険だし⋯⋯。何より、弱点が不明な奴が多いのよね」

「⋯⋯対策は難しいのね。ひとまず龍姫様の話から召喚主はまだ幻想郷に来ていないみたいよ。だからまだ元凶から叩く、というのはできないわ。⋯⋯まあ、それが難しい相手だから入れないようにしているんだと思うけど」

 

 パチュリーの言う通り、紫が簡単に倒せる敵なら入れる前に対処することも可能だろう。しかしそうはしないと言うことは、紫にとっても相手しにくい、または相手にできないほど強い敵。それを私達に相手できる気はしない。

 だが弱体化しているらしい悪魔なら、私達でも何とかなるかもしれない。

 

「そう言えば霧が出るんだよね? ソロモン七十二柱の悪魔が出た時に」

「はい、統一性は無さそうですが、フィオナを襲った敵は皆霧とともに⋯⋯。あ、いえ。フィオナを狙った敵で1人だけ出てない人がいましたね。烏になる財宝好きな奴です」

「⋯⋯ラウムかな? でも最初に襲ってきた奴は多分序列50位のフルカスだろうし⋯⋯どうして霧なんかが出るんだろうね?」

 

 確かにソロモン七十二柱の悪魔が出る時に霧が出るなんて話は聞いたことがない。

 それにフィオナを狙う敵で霧が出ない奴がいることも不可解だ。

 

「悪魔が弱体化しているのに関係があるのかもしれないわね。もしくは敵の中でも何か⋯⋯」

「アハハハハ! 呼んだかしら!」

「⋯⋯誰?」

 

 何の前触れもなく幼い女性の声が聞こえた。

 そして本棚に囲まれる空間の中、私達の目の前で空中に炎が燃え盛る。それと同時に知覚することも難しいほど薄い霧──というよりは煙のような白いものが炎の周りに現れた。

 

「もう知ってるみたいだから言うわね! わたしはソロモン七十二柱の序列58位、アミー!」

 

 その炎が段々と形を変えていく。まるで人のような姿になったかと思うと、それははっきりと人となる。炎そのもののような長く赤い髪に、ところどころ燃えているようなワンピース。私より身長は高いとはいえ、身長に見合わない長槍を手に持っている。

 しかしどことなく幼く、本当にソロモン七十二柱の悪魔なのか疑うほど魔力も少ない。

 

「ふふふふ。どお? 驚いた? わたしの名前にいふを抱くでしょ!」

「ま、まあ⋯⋯確かに畏怖は抱くけど⋯⋯。何よりもまず、アミーって男じゃなかった?」

「女ですー! どこをどう見ても可愛くてきひんあふれる女性ですー!」

 

 どうやら意地っぱりらしい。

 それから小声でブツブツと文句を言っているようだ。その時、器用に槍を振り回している辺り、技量は失われてはいないようだ。

 

「ねぇねぇ。生首持ってるって聞いたことがあるんだけど?」

「そんなこわいの持つわけないじゃない!」

「⋯⋯本当にアミー?」

「アミーよ! 何ならわたしの炎を食らいなさい!」

 

 自らの炎を纏わせた槍を頭の上で回し、炎を集中し始めた。

 自分よりも大きな炎となった瞬間に槍をミアの方へ向け、炎を弾き飛ばす。

 

「炎ねぇ⋯⋯火を消すもの⋯⋯うちわ? やっぱ扇で。『炎を打ち消す扇』ね、ほりゃー!」

 

 ミアは扇のようなものを召喚し、それを勢いよく炎へ向けて振った。

 すると炎は強風に吹かれたように小さくなり、跡形も無く消えてしまった。

 

「なっ⋯⋯! なんで!? わたしの炎、普通だったらアインちゃんにも負けないのに⋯⋯」

「アイン⋯⋯アイムのこと? まあ、私はどんな炎でも消せるよ。炎以外に水とかもね」

 

 ミアの本来の能力は私と同じ『ありとあらゆるものを有耶無耶にする程度の能力』だ。しかし私が召喚魔法を得意としているように、ミアも概念付与という魔法を得意としている。私が召喚している武器も要はミアの真似事なのだ。

 

 彼女は概念──意味内容を自分で作り出したものに付与することができる。おそらく今回の場合は『火を消すことができる扇』と言ったところだろう。もちろん彼女の言うことはハッタリで、全ての炎を消せるわけではない。大火事ともなれば確実に無理だし、自分1人で可能な範囲、が限界となるのだ。

 

「うー⋯⋯! こうなったら、わたしの槍で殺られてもらうんだから!」

「私ってば狙われすぎぃ! 別にいいんだけどね。ケーリュケイオン」

 

 炎が無駄だと理解した彼女は矛先をミアに向け、考え無しに真っ直ぐと突撃する。

 相手が子どもだからといって油断しないミアは手に持つ扇を消し去り、次は杖を召喚した。

 

「パチュリー、拘束代わりの水魔法用意しといて。レナは私が失敗した時用に待機で!」

「分かったわ」

「えぇ!? せめて作戦⋯⋯って、行っちゃった。ってかパチュリーの理解早いですね」

 

 ミアは返事も待たずに飛び出し、アミー相手に真正面から受ける構えを取る。

 

「久しぶりに遊ぶけど、腕は落ちないからねッ!」

「え──っ!?」

 

 真っ直ぐ放たれた槍はいとも簡単にミアに空いている方の手で受け流されてしまう。

 

 そして受け流したと同時にもう片方の手に持つ杖を優しくアミーの頭に当てた。

 

「何を⋯⋯あ、あれ⋯⋯?」

「概念付与は睡眠。⋯⋯今の貴方くらいだったら結構眠るかかもね」

 

 アミーはまるで糸が切れてしまった人形のように地面へと落ちていく。

 地面スレスレでミアに拾われ、無事傷を負わずに回収された。

 

「アミーは⋯⋯ソロモン様の、願いを⋯⋯叶えな、いと⋯⋯ダメなのに⋯⋯」

 

 ミアが連れてきた時には、人畜無害な顔で安らかに眠っていた。

 しかしミアの方が小さいからか、妹に抱かれるお姉ちゃんに見える。

 

「いやぁー、弱くない? この娘」

「⋯⋯まだ騎士の方が強かったですよ。というか本当に弱体化されているみたいですね。特にこの娘はかなり弱まっているみたいです」

「そうね。とりあえず炎対策として水の檻に閉じ込めればいいのかしら」

「お願いね、パチュリー。⋯⋯話を聞く必要もあるだろうしね。見た目も性格も子どもだから、酷いことはしないけど」

 

 ミアと同じように私も小さい娘に酷いことをするのは気が進まない。

 フランやフィオナと同様に、彼女も守るべき対象のように見える。

 

「⋯⋯はっ! な、何が⋯⋯。あっ、わ、わたしは何も喋らないもん!」

「ふぁっ!? アミーちゃん落ち着いてー!」

 

 と、水の檻に入れる前に起きてしまった。彼女を抱いているミアはこれほど早く起きるとは思っていなかったようで少し慌てている。しかし筋力で適わないようで、ミアの拘束からも逃れられないようだ。

 

「⋯⋯まあ、少し聞きたいこともあるから最初に聞いておきましょうか。どうやって紅魔館に入ったのかしら。ここには私の張った結界が何重にもあるはずだけど?」

「それはもちろん、ウォレ⋯⋯って、言わないから! 絶対にね!」

「そう言えば泥棒関連の能力持ってそうな奴いたし、そいつが手伝ったのかもね」

 

 ミアの言葉にアミーはビクッと身体を震わせ反応する。どうやら図星らしい。

 それにしてもどうしてこんなにも幼く、弱くなっているのだろう。

 

「⋯⋯それじゃあ聞きたいことをもう一つだけ。後はゆっくり聞くことにするわ。

 貴方、どうしてここに来たの? フィオナを狙っているはずじゃないの?」

「そ、そんなの答えるわけ⋯⋯」

「早く言わないと水の檻に入れて溺死させるわよ」

「ひぃっ⋯⋯!」

 

 アミーは容赦のない声に年相応の反応を見せ、黙ることを諦めたように、怒られた子どものような小さな声で言葉を話していく。

 

「だって、ブエルの奴がオレに任せてお前は足止めしてろ、って言うんだもん⋯⋯」

「あ、足止め? も、もしかして⋯⋯」

「今頃、ブエルが捕まえてるんじゃないかな⋯⋯。で、でもわたしは悪くないからね! ソロモン様の願いを叶えるためなんだから!」

「──ミア! 少しこの娘を任せますね!」

 

 アミーの言葉に突き動かされるように、急いで移動用の魔法陣を展開する。

 

「れ、レナ!? ちょっとくらい待っ──」

 

 ミアの静止する言葉も聞かずに地面に大穴を開き、急いでそこへと落ちていく────

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