東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─ 作:百合好きなmerrick
side Frandre Scarlet
──霧の湖近くの森
ルナとフィオナを連れて、霧の湖近くの森までやって来た。理由は何かと聞かれれば、ただ彼女達と遊びたかった。そして何より、神経を張り詰め通しているお姉様に少しは休んでほしかった。フィオナを連れ出すことで幾分か抑えれると思ったけど、本当に効果があったのかは帰ってみないと分からない。だから効果が現れるように少しでも長い間お姉様と引き離す。
もちろん、自分のためじゃなくてお姉様のために。
「フラン、それは何?」
「⋯⋯⋯⋯」
「フラン?」
「あっ、ごめん。何か言った?」
フィオナの声を聞き取れず、私はもう一度聞き返した。
つい姉のことを考えていると、考え過ぎて周りの声が聞こえなくなる。考え過ぎると逆にこっちの方が気が抜けなくなる。平静を装って、気にかけられないようにしないと。誰にも、特に
「それは何、って言ったの。意識が旅立っていたみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。それにしても面白い言い回しするね。
でね、これも弾幕だよ。私のはお姉様みたいに魔力と妖力の複合だけどね」
最初は鬼ごっこやかくれんぼなど普通の遊びをしていたけど、いつの間にかフィオナに教える弾幕ごっこ講座になっていた。そうなったのはルナの負けが続いたことが主な原因だと思う。ルナは負け続けて拗ねてしまい、それを見たフィオナがみんな仲良くできるようにと思ったのか弾幕ごっこを教えてほしいと言った。
「私も使えるよ。オネー様とフランみたいに、魔法も、弾幕も!」
その成果もあってかルナの機嫌は元に戻り、教えることを心から楽しんでいるみたい。
妹の可愛い姿を見ていると、こっちまで嬉しい気持ちになってくる。
こんな幸せな日々がずっと続いてほしい。けど、フィオナを狙う奴らがいる限りは⋯⋯。
「⋯⋯フラン、大丈夫? 魔力が揺らいでいる。緊張? それとも考え事?」
「ん、考え事だよ。気にしなくても大丈夫だよ」
さとりとまで行かずとも感情を読み取るフィオナは本当に厄介だ。
隠したいことまでも読まれそうで、少しだけ緊張する。
「⋯⋯フラン、フィオナ。何か感じない?」
「⋯⋯霧の湖だから霧が出ているのは当たり前。でもいつもより濃い気がする。でも変な魔力は感じない。もしかしたら魔法で遮断されているだけかもしれない」
「せっかくの休みだったのになあ。⋯⋯禁忌『レーヴァテイン』」
悪態をつながらも戦いの準備を整える。
燃え盛る剣レーヴァテインを作り出し、何も見えない霧を見据えて構える。
「私も⋯⋯禁忌『
ルナも私を真似してか私のレーヴァテインと対になる剣、
ルナの剣は私のと同じく、とても剣とは呼べない形状をしていて、炎の代わりに雷を纏っている。それ以外は全くと言っていいほど私の武器とほとんど同じ性能を持っているとか。まあ、私の双子のような娘だし、当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
「炎と雷⋯⋯? 炎と氷じゃなくて?」
「ごめんね、ちょっと分からないかなあ。⋯⋯って、のんびり雑談なんてできないからね?
敵が来るかもしれないんだよ。早く警戒を⋯⋯」
「なんや? オレのダチ倒した、って言うから来てみたら⋯⋯まだ子どもやんけ。
アイツら、なんで負けたんや?」
偶然にも私が警戒していた方向からそれはやって来た。
宙に浮き、大きくて凶暴そうな動物の頭にそこから毛の付いた動物の足が5本生えている。まさに妖怪といった姿で、気味の悪い奴だ。
本当にどうして綺麗だったり、可愛い姿じゃないんだろう。
「⋯⋯誰?」
「は? ⋯⋯ホンマに記憶なくなってるんか。こら手間省けるわ」
敵の魔力が高まると同時に霧が殺意を伴って濃くなっていく。
それが私達を包み込むと、敵の気配が、魔力すらも曖昧になる。
「霧が私達の感知能力を鈍らせているらしい。目の前にいるはずの彼の魔力も分からない」
「せやろ? これは召喚主が模したモノらしいで。詳しくは知らんけど」
「⋯⋯
「え? ルナ、待っ──」
私の静止する声も聞かずに、ルナが殺られる前に殺れと言わんばかりに突撃する。
「切り裂け、カラドボルグ!」
敵にある程度近付くと、ルナはカラドボルグの力を使った。
その力とは、お姉様曰く名前の元にした神話でもある力で、瞬時に剣のリーチが伸びるというもの。敵の不意をつくことができ、さらには斬れ味も抜群だから山でも斬れるとか。もちろんルナが言っているだけで、本当に試したことは一度もないけど。
「遅いわ! もっとはよ攻撃せな当たるか!」
しかし掠りもせずに雷に刀身だけが伸びていった。
「お返しや、貰って逝き!」
敵はその隙を逃さず、避けたと同時に槍のような鋭い弾幕を放つ。
「あ──ぶっ!?」
それはルナの顔の真横を通過し、彼女の頬に鋭い傷を付けた。
いくら治癒力が高いとは言え恐怖を感じたらしく、すぐさま私達の近くまで戻ってきた。
「だから待って、って言ったじゃない。もう1人で行かないでよ。心配なんだから」
「うー⋯⋯分かった。次は大丈夫」
落胆して顔を俯かせていたが、一秒足らずで気を取り直したルナは再び剣を握りしめる。
ルナを守るように少し前に出て、私も自身の剣を構え直した。
「フィオナ、強化魔法とかできない?」
「風を纏わせたり、土で装甲を作って身を守る程度なら可能。でも正当な強化魔法は知らない。まだそういう魔法を見たことがないのもあるけど、研究してないから」
「おーけー。じゃあ私とルナに風を纏わせて、貴女は結界とかで自分の身を守ってて。
こいつは、私とルナでやっつける。だからフィオナは自分の身を優先してね」
フィオナが「うん」と返事すると、間を置かずに暖かな風を感じた。
それは霧を阻むような壁として視ることができている。
「フハッ、アハハハハ!」
私達のやり取りを手を出さずに聞いていた敵は、奇妙にも突然笑い声をあげた。
馬鹿にされている気がしてちょっと怒りそう。
「オマエらホンマにおもろいなあ! ええで。そういうの好きやから冥土ノ土産にオレの名前教えたるわ。オレはソロモン七十二柱の序列10位。大総裁のブエルや!」
敵⋯⋯ブエルは自分以外を見下すように声高に宣言していた。
やはりこういった敵には、身の程をわきまえてもらわないと。
「やっぱり知らない妖怪⋯⋯あっ、悪魔さんだった?」
「⋯⋯ホンマに忘れてんやなあ。それすら知らん奴もダチにはおるけど、やっぱオレは悲しいわ」
「悪魔、覚悟しなよ。⋯⋯お姉様の友だちは私の友だち。だから手出しはさせない。
それが本人が嫌で、無理矢理なら尚更ね」
「ほー、そっか。やっぱ何も⋯⋯まあええわ。結局は死んで終わりやからなあ!」
ブエルの周囲に弾幕のような魔力弾が広がる。
それはすぐには動かず、私達が向かってくるのを待っているみたいだった。
「さあ来てみ! オマエらがオレを倒せるかな!?」
「⋯⋯ルナ、一緒に行こう。私が先行して囮になるから。最後は決めて」
「分かった。でも──伸びて!」
最初にルナが仕掛ける。カラドボルグはブエルの方向へ真っ直ぐと突き進む。しかし不意打ちにすらならないそれは容易く避けられ、それに反応してかブエルの弾幕はルナへと向かっていく。
──
「レーヴァ⋯⋯テイン!」
ルナの前に出て剣を振り回し、ブエルの弾幕を切り裂いてかき消す。
そのままブエルと突進し、力強く剣を斬りつけた──
「無理や、って」
「ちっ⋯⋯!」
が、5本ある内の1本の足に受け止められた。
その足は異様に硬く、まるで同じ剣で止められたみたいだった。
やっぱり口だけじゃなく、意外と強い⋯⋯。
「⋯⋯無理って、決めつけないで!」
剣を引き、振り上げ、全ての力を加えて振り下ろ──
「遅いわ!」
──すことができずに、腹部に鈍い痛みが走り、私の中で鈍い音がした。
その勢いのまま飛ばされたらしく、何かにぶつかったのか背中にも大きな痛みを感じた。どうやら足で蹴り飛ばされた挙句、木にぶつかって落ちたらしい。幸い風の防壁により木に当たった衝撃は少なかったが、最初の一撃で骨でも折れたのか、腹部が凄く痛い。
「あっ⋯⋯い、ったいなぁ、もう⋯⋯!」
だけどそれで諦める私じゃない。ルナとフィオナのためにも、本気で倒す。
そう心に誓い、急いで剣を構え直した。だけど視界はブレ、腹や背中が凄く痛む。それでも無理矢理にでも立とうと、剣を杖がわりに立ち上がると、目の前にはルナが立っていた。
「フランに、触れるな!」
ルナは迫り来る弾幕を弾き返し、切り裂き、私を守っていた。
姉は、私の方だと言うのに。お姉様みたいに、守るのは私の方だと言うのに。
「フラン、大丈夫!?」
「⋯⋯うん、大丈夫。骨が折れたかもしれないけど、もう痛くないから大丈夫。
あいつの足硬すぎ。まるで鋼みたいだった」
「⋯⋯それ大丈夫じゃないよね。やっぱり囮はダメ。一緒に殺そう」
さらっと物騒なことを言ってるけど、誰に似たんだろ。
でも⋯⋯私のためと言ってくれるのは嫌いじゃない。
密かにそう考えながらも守ってくれるルナの後ろで武器を構え、体勢を立て直す。
「⋯⋯ま、殺す殺さないは置いといて、久しぶりに一緒にアソボっか」
「うん、そうだね。お姉様以来だね。⋯⋯うっ、思い出したらなんだか嫌に⋯⋯」
「なんや? まだおもろいことできんか?」
ゲラゲラと笑いながら煽ってくるブエルを他所に、剣の切っ先を悪魔に向ける。
ルナも迫り来る弾幕を斬り終えると私の真似をした。
「面白いことはしないよ。だから⋯⋯さっさと倒れてね」
私の言葉を合図に全員が動き出した。
「魔理沙の必殺⋯⋯恋弾『スカーレットスパーク』!」
ルナの剣から魔理沙の『マスタースパーク』に似た紅い極太ビームが星を伴って発射された。
これは以前フィオナやお姉様と一緒に魔理沙の家に行った時に覚えた技で、一応私も使えることには使える。だけどパワー調整が難しく辺りの被害を一切考慮しないため、通常では使えない禁忌の技だ。
「これは⋯⋯おもろいなあ! ええで! 強いヤツは好きやわ!
けどなあ! オレも負けらへんに決まっとるやろ!」
ブエルは即座に口の前で魔力のようなものを集め、一気に放出する。
エネルギーの塊は互いにぶつかり合い、煙を伴って爆発する。
「フラン、今!」
ルナの掛け声に、私はブエルの背後で飛び上がった。
もちろん、何も言わなくても伝わっているのは双子のように考えていることが似ているから。
それに妹のことくらい、私が姉なんだから──
「──分かってる、って!」
剣を振り下ろそうとブエルを見据えた途端、視界の端に何かが映った。
それがブエルの足で、私に向かってきているなんてことは、嫌でも理解できた。
「また無理やったなあ」
見下すように小さな声が聞こえ、風を切る音が近くまで聞こえてくる。
──ああ、これは間に合わないか。
そう思った刹那、風を感じなくなった。
「な、なんや⋯⋯!?」
「⋯⋯アルスター十八盾の六。勝利、コスクラハ!」
気付くと、私に迫ってきていた足は宙に浮く盾で受け止められていた。
その盾の主とはもちろんフィオナで、遠い場所から召喚したみたいだった。
「フラン、早く!」
「うん──燃えて切れろ。レーヴァテイン!」
一刀両断。ブエルの頭という名の身体はそのままの意味で真っ二つに切れた。
足の硬さと比べ物にならないくらい、その頭は脆かった。
ブエルの身体は地に落ち、足は微動だにしなくなった。
しかし口と目だけは、活発に動いている。
「はぁ⋯⋯。なんや終いか。早かったなあ⋯⋯。やっぱり不完全な召喚は割に合わんわ」
「⋯⋯まだ生きてるんだ」
「そら悪魔やからな。ホンマは頭切れたくらいで死なんけど、今回はこれで終わりやで。
はぁ⋯⋯頭ももうちょっとだけ硬くしてもらうんやったわ」
そう嘆きながら、だけど後悔している様子は見せずに塵となって消えていく。
彼が完全に消え去ると、周りにあった霧も元の状態へと戻っていった。
「⋯⋯ふぅ、疲れたー! あっ、フィオナ。さっきはありがとうね」
「いいえ。フランが無事でよかった」
「フラン、フィオナ、ルナ! 大丈夫ですか!?」
と、安堵しているとお姉様が慌てた様子で飛んできた。
今頃来るとか遅すぎ。なんて思ったけど、心配してくれてるみたいで嬉しい。
「おっそい! もう敵は倒しちゃったよ! だから大丈夫、何も問題は──」
「って、フラン! 服が所々擦れたり破けてます! け、怪我は⋯⋯」
「だから大丈夫だって。ほら、この通り何ともないから」
そう言って飛び跳ねたり腕を回して見せ、無事なことを確認させる。
お姉様は本当に心配症過ぎる。もう少し余裕を持って⋯⋯。
「本当、みたいですね。⋯⋯よかった⋯⋯。ごめんなさい、貴方達だけにしてしまって。
もう貴方達に危険な目に遭わせませんから⋯⋯」
お姉様は涙目になりながらも、優しく包み込むように抱きしめてくれた。
とっても暖かい。それに心配症な姉が情けないと思う反面、なんだか嬉しい。
「むぅ、またフランだけ⋯⋯」
「はい、もちろんルナもします」
「え? あ、ありがと⋯⋯」
私から離れると、次はルナにも同じように抱きしめていた。
無事を祝うように、心から喜ぶように。
やっぱり、優しい姉でよかったと思える。私達のために泣いて、喜んでくれる人でよかった。
「⋯⋯あ、フィオナもします?」
「いいえ、後ででいいよ。まずは家に帰りたい。早く安全な場所でゆっくりしたい」
「わ、分かりました。では皆さん、すぐに抜け穴を作りますので、しばらくお待ちを⋯⋯」
フィオナに今は拒否され、悲しそうに帰る準備を進める姉の背中を見て、少し面白く感じた。
それにしてもブエルとかいう奴は、フィオナの何を知っていたんだろう。
この時の私は、あまり気にもとめなかった────
side Renata Scarlet
──紅魔館(ミアの部屋)
フラン達を連れ帰ってから十数分後。
フィオナを狙ってきたアミーという悪魔が捕まっているらしいミアの部屋へやって来た。
ミアの部屋は他の部屋よりも飾りが多い。明らかに外の世界の物やどこから持ってきたのか全く分からない物まである。この部屋だけ世界が違うと思わせるほど異質なのだ。逆に私の部屋は何もなく、質素過ぎるのだが。
しかしどうしてミアは自分の部屋に連れて行ったのだろう。確かに紅魔館に牢屋なんてないが、わざわざ自分の部屋に連れて行く必要はなかったはずだ。それにパチュリーによると、ミアはもっと簡単でアミー自身も嫌がらないという拘束があるからと、水の拘束も解いているらしい。
疑問に感じながらもミアの部屋に到着すると、すぐにその扉を開けた。
「ミアさん、これはどうやって使うもの?」
「これは投げて使う物だよ。で、投げたら持ち主の場所に返ってくるようになっているんだー。
って、レナいつの間に? ちゃんとノックしてよねー」
「あっ、すいません」
そこには団欒とした和やかな空気が流れていた。
先ほどまで殺そうとしていたり、戦っていたとは思えない。それに些か懐きすぎな気もする。
「⋯⋯って、今はどういう状況です?」
「見ての通り、遊びに付き合ってるんだよー」
アミーの相手をしながらも、ミアはいつもの調子で話す。
まるで緊張感がなく、アミーには目立った拘束具が付いていないように見える。
「⋯⋯拘束具は見たところ付けていないようですが、大丈夫なのです?」
「大丈夫。ちょっとアミーちゃんごめんね。ほらこれ、見て」
「⋯⋯イヤリング?」
アミーの耳には金色のイヤリングのような物が付いていた。
わざわざ見せるということは何かあるのだろうし、何より微かな魔力を感じる。おそらくは魔法アイテム的な何かだろう。
「ピアスね。制約のピアス。ちなみに穴を空けなくても付けれるノンホールピアスだよ。
これを付けていると私達に危害を加えることができず、またこれを外すことはできない」
「アミーはそれでもよかったのです?」
「み、水の檻かこっちか選べって言われて、楽な方にしたとかそういうのじゃないからね!」
「⋯⋯この娘、本当にソロモン七十二柱の1柱ですよね?」
「そ、そうよ! わたしはアミー。さいきょうのソロモン七十二柱の1人なんだから!」
あまりにも幼くて弱く、脆そうに見える少女はソロモン七十二柱には見えない。
本当に彼女があのアミーなのだろうか。
「ではソロモンが何故フィオナを狙うか教えていただけます?」
「⋯⋯知らないもん。ソロモン様、何も教えてくれないから⋯⋯。でも、ソロモン様が君ならできる、って言ってくれたから頑張ったの!」
「いやそれ素直に言ったらダメなやつだと思いますけど」
「言わせたのはあなたなのに⋯⋯」
「ちょっとレナぁ?」
落ち込むアミーを見たミアに睨みつけられる。
半分本気じゃないだろうけど、わざわざそんな目で見なくても。
「もう⋯⋯。ごめんなさい、アミー」
「う、ううん! 謝ってくれるだけでいいよ!」
「あ、はい。⋯⋯ソロモンについて何か教えてくれません?
私達、全くと言っていいほど何も知りませんから」
そう聞くとアミーは顔を俯かせ、静かになる。
しばらくの間そうしているかと思えば、意を決して言葉を発する。
「何も教えなたくない。ソロモン様はわたしの召喚主だから。
だからぜったいに裏切らないもん。⋯⋯でも、ソロモン様に召喚されなかった子もいるの。みんな、一緒の方が楽しいのに⋯⋯」
「召喚されなかった子⋯⋯? 拒否したとかでしょうか?」
「分かんない。でもわたしは不完全な召喚だということは分かったよ。だから全員召喚することは難しいとか⋯⋯。あっ、ソロモン様は誰にも負けないけどね!」
何も教えないと言っている割には、意外と色々教えてくれる。
やっぱりこの娘、チョロ⋯⋯いや、そんなことを思っていたらミアに怒られるか。
「⋯⋯それと」
「あ、まだ何かありました?」
「うん。ソロモン様が『そろそろ春だね。頃合いかもしれない』って」
「春? 確かにそろそろ春ですけど⋯⋯」
春に何かあるのだろうか。そう言えばまだ召喚主──ソロモンは入ってきていないらしい。
もしや春頃には入れる、ということか。もしくは諦める⋯⋯なんてことはないか。
「⋯⋯春といえば、宴会にフィオナを連れて行くんでしょ?」
「え、ええ。もちろん連れて行きますよ」
「ふーん⋯⋯気を付けなよ、宴会の時もね。私もこの娘を1人にできないからしばらくは放浪止めてここに居るし、宴会も一緒に行くけどさ。どうせずっと守るつもりなんでしょ? なら元凶を叩かないと平穏は訪れないよ」
「そ、それはそうですけど⋯⋯」
珍しいミアの真顔に圧倒され、上手く言葉を発せない。
そんなことは分かっていても、私に守る以外、どうすればいいと⋯⋯。
「何かあったら遠慮なく頼っていいから、平穏を手に入れるために頑張ろうね。
まあ、今はゆっくりフィオナやフラン、ルナ達と遊んでなよ。⋯⋯平和なうちにね」
どこか遠くを見つめるミアの目は、なんだか悲しそうに見えた。
だけど今の私は何も分からず、ただ言われるがままにフラン達の場所へと戻った────
次回から2章の始まりです。
ちなみに募集で頂いたオリキャラ達は次章から登場します