東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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今回は『古明地さとりは覚り妖怪である』の鹿尾菜さんとコラボさせていただきました( ´ ▽ ` )
ちなみに書き方の違いはそれぞれの書き方なので、気にはしないようにお願いします()

それとどちらの本編とは関わりのない番外編です。気を楽にして、こういう一面もあるんだなあ、とお読みください。


番外編
コラボ前編「夢現、紡ぐは過去から」


 side Renata Scarlet

 

 ──霧の湖近くの森

 

 地底の異変から数ヶ月。平穏とは言い難いが平和は訪れた。私達を⋯⋯特にお姉さまを恨む者は無事捕まり、幻想郷の転覆を狙う奴もいなくなり、これから先は平和な日々が一生続くことだろう。もう何も、因縁はないのだから。

 

 それからと言うもの、身近な場所で争いは起きず、悠々とした静かな生活が続いていた。そのせいか、姉は今までサボっていた当主の仕事に手を出し始め、妹達は自由に遊ぶようになっていた。もちろん普段と変わらず本を読み漁ったり、門前で寝ている人もいるのだが。それはそれで幸せな日々が続いている証拠だろう。

 

「⋯⋯暇ですねー」

 

 だけど私は退屈していた。いや、だからこそ退屈していたのかもしれない。

 体を動かせずに退屈していたり、吸血鬼という種族の性質故に争いを好んでいるからではない。逆に私は平穏や静かな生活の方が好きだと思う。

 ただ最近忙しそうで相手にしてくれない姉妹と遊べなくてつまらないだけだ。魔法の練習や研究ができない訳ではないが、それも飽きてしまった。でもこれは一時の飽きだろうし、何も問題はない。

 それよりも問題なのは、長く生き過ぎたために本当に退屈で死ぬんじゃないか、という思いが大きいことだ。お姉さまに言ったらバカらしいと笑われるだろうし、自分でもバカらしいと思う。

 

「やっぱり⋯⋯こういう時は誰かさんみたいに放浪するのもいいですね」

 

 というわけでだ。そんな憂鬱な気分を発散させるためにあてもなく一人歩きしていた。

 本当に意味なんてない。誰の影響か、孤独に旅することも楽しいと感じている。もしかしたら誰の影響もなく、元から私自身、そういう癖があった可能性もあるが。

 

「あれ、人? ⋯⋯さとり?」

 

 そんな時、霧の湖近くで倒れるさとりを見つけた。

 いつものさとりと違い、服装がフリルが付いたあの服ではなく和服のようだったり、髪が長かったりと様子が違い過ぎるが、紛れもなくあれはさとりだ。内向的な私の数少ない友だちなのだから、間違う道理は絶対にない。

 

 と、考え事で頭がいっぱいだった私は我に返って、慌てて彼女に近寄った。

 

「って、え!? ど、どうして⋯⋯寝てる? さ、さとり? 大丈夫です? い、生きてますよね?」

「う…ん……返事がないただの屍のようだ」

「あ、良かった。生きて⋯⋯る? ⋯⋯か、回復魔法とか使った方がいいです? ⋯⋯下手ですけど」

 

 いつもと反応が違うが、さとりの声で間違いない。

 それにしてもどうしたのだろう。やっぱり怪我でもしているとか⋯⋯?

 

「あ…いえ、大丈夫です…外傷はないですから」

 

 さとりは体を起こしながらそう言った。

 良かった、とひとまず安堵するも、素朴な疑問が浮かび上がる。

 

「そ、そうですか。でもさとりはどうしてこんな場所で⋯⋯寝ていたのです?」

「えっと……まず一つ聞きたいのですがあなたは一体誰でしょうか?私のことを知っているようですけれど…初対面ですよね?」

 

 不思議そうな顔を見せるさとりに、戸惑いと悲しみの感情が湧き出る。

 記憶喪失的な何かで私のことを忘れてしまったのでは、と思ったのだ。

 

「え⋯⋯? レナですよ? レナータ・スカーレット。

 何度か会ったり、家にお邪魔させてもらったりしましたよね? ⋯⋯というか古明地さとりで合ってますよね?」

「レナータ……該当しませんね。私の記憶は正常だと認識していますけれど…もしかして記憶喪失の一種でしょうか?でもピンポイントで忘れることなんて……ってスカーレット?」

「はい、スカーレット。私は紅魔館の現当主、レミリア・スカーレットの妹、レナです。⋯⋯もしかしてそれも忘れてしまったとか?」

 

 さとりの反応した姿を見て、もしやと思い話してみる。

 これをきっかけに私のことを思い出してくれれば、とも思ったがどうやら何かが違うらしい。

 

「あれ?レミリアの妹ってフランだけじゃなかったのですか?あれ…まず紅魔館って幻想郷入りしてましたっけ?」

「いえ、私含めてフランだけではありませんよ。

 紅魔館は数年ほど前に幻想入りしてます。外の世界の年で言うと、入ってきたのは2000年辺りでしたっけ。まあ、それはともかく割と最近入ってきましたね」

 

 丁寧に説明していくも、不思議そうな顔のままだ。

 やはり私の知っているさとりとどこか様子が違う気がする。⋯⋯数分前まで見栄を張って間違う道理はないとは言ったが、間違えているかもという不安が大きくなっていった。

 

「……へ?あの…もしかして…私って死んでるんじゃないの?」

「⋯⋯」

 

 いつもフラン達にやるような調子でさとりの肌に触れ、実体があるかを確認する。

 やっぱり幽霊とかそういう類ではないようだ。

 

「実体はあるみたいですから大丈夫です、問題ありません」

「ふぇ…あ…ありがとうございます。あの…少しいいですか? 古明地さとりって普段フリルのついた感じの服着て地霊殿に引きこもってませんか?」

 

 もしかして自分のことも忘れてしまったとか⋯⋯?

 

 その質問を受け、そんなことを考えながらもしっかり説明しようとゆっくりと考えて言った。

 

「引きこもっているかいないかで言えば、かなり引きこもっていますね。おそらくはこの100年の間で、外に出たのは私の家に遊びに来た時のみ。⋯⋯それも実際に歩いたり飛んで来たわけじゃないから⋯⋯って、どうしてそんなことを?」

「ああ…いえ…記憶喪失だったら良かったのにと思ったのですがそれよりもっとひどい事態だったようです」

「え、えーっと⋯⋯。要するに、どういうことです?」

 

 落胆した様子を見て、何のことかと頭を悩ます。

 どういうことか、この時の私は全く気付くことができなかったのだ。

 

「多分……私は古明地さとりであっても古明地さとりではない…いえ、あなたにとってみれば同一人物ですけれど全く別の人物でもある。いわば全く別の古明地さとりのようです」

「⋯⋯え、並行世界とか、そのような類の⋯⋯えぇ!? さ、さとり⋯⋯いえ、さとりさんが⋯⋯?」

「にわかには信じ難いですが……多分」

 

 本当に信じられない出来事だが、確かによく考えれば違うところが多い。

 嘘のような話だが、私自身異世界転生した訳だし、嘘でもないように思う。

 

「そうですか⋯⋯。これも何かの異変でしょうか? いえ、明らかに異変ではありますけど」

「あ…一応こっちでも異変ってあるんですね……」

 

 ホッとした様子を見るに、さとりさんの世界はこことそう変わらない世界なのだろう。

 その世界でもさとりという人物がいるのだから、そうそう大きな変化はないと思うが。

 

「ありますよ。最近も地底の異変とか⋯⋯。って、これが異変だとして、誰かの仕業によるものなのでしょうか? さとりさんは心当たりとかあります?」

「えー…いや分かるはずないじゃないですか。そもそも私はまだ結界で閉じられる前の幻想郷にいたんですから」

「ですよねー⋯⋯。

 というかかなり昔から転移⋯⋯いえタイムスリップ? とにかく凄い異変ですね。咲夜でも時間の跳躍とかできないのに⋯⋯。

 あっと、立って話すのもなんですし、私の家に来ます? 行くあてが無ければですけど⋯⋯」

 

 全く以て不思議なさとりさんだが、放っておくわけにもいかない。

 というか私が見つけたのだから、見つけた責任を取らないといけない気がする。

 

「ええ、そうしましょうか。それにしても…お人好しですね…私がもし嘘を言っていたらどうするつもりだったんですか」

「嘘を言っていたとしても、困っている人を放ってはおけませんから。それに過去の人や別世界の人だとしても、さとりさんはさとりと似ていますし⋯⋯尚更放っておけません」

「やっぱりお人好しですね……まあそういうの嫌いじゃないです」

 

 私の知っているさとりよりも無表情キャラな人だけど、善意で言ってくれていることは何となく分かる。こっちのさとりさんとは初対面なわけだが、私の知っているさとりと根は変わらないと思うから。

 

 それにしても少しややこしい気がする。まあ大丈夫か。

 

「そ、そうなのですか。⋯⋯まあ、ここにいて妖怪におそわれても嫌ですし、早く家に行きましょうか」

「そうですね…」

 

 

 

 少女移動中

 

 

 

「着きましたね。

 あ、初めて見るかもしれませんので紹介しますね。この気味悪いくらいに真っ赤な建物が紅魔館です。それとあの門の前で立って寝ているのは、一応門番の美鈴です」

「やっぱり真っ赤ですね。それに門番も寝てますね」

 

 少し引っかかる言い方をしているが、もしかして私と同じ転生者だったりして。

 なんて密かに思いながらも原作キャラだしそれはない、と自分で自分を否定する。

 

 

「そう言えば私の素性どうしましょうか……異世界から来たって言っても信じてもらえるかどうか」

「まあ言っても冗談だと思うかもしれませんが⋯⋯私自身、元は⋯⋯いえ。きっと信じてくれると思いますよ。特にお姉さまは優しい人ですから」

 

 私のことも転生者だと信じ、受け入れてくれたお姉さまなら、きっとさとりさんのことも受け入れてくれるだろう。それに転生者だからといって無下にするお姉さまなら、私が好きになっていない。

 

「あなた自身……どうしたのですか?」

「それこそ信じてくれないかもしれませんが、私は転生者なんです。この世界がゲームとして存在する世界から。⋯⋯あ、もちろん信じなくても大丈夫ですよ」

 

 何故か話した方がいい気がし、自分のことを話す。

 本来は隠した方がいいかもしれないが、別に損するようなことはないから大丈夫だろう。

 

「なるほど……じゃあ、バルス!」

「目が目がぁぁぁぁ!

 って、え? えっ!?」

 

 不意の言葉に思わず反応してしまった。

 そして我に返り、その言葉の意味に気付いた私は言葉が出なかった。

 

「なるほど……知識は残っているのですね。あ、私がどうして知っているかは…禁則事項です」

 

 さとりさんはかなり悪い顔⋯⋯もとい意味有り気な含み笑いをする。

 私の予想は当たっていたのだろうが、問いただす気にはなれなかった。⋯⋯顔が少し怖くて。

 

「あ、はい。では深くは聞かないようにします。

 前世の記憶はあまりないですけどね。この世界の記憶も地底異変より先のことはほとんど消えてますし⋯⋯」

「地底異変というとお空が暴走するやつですよね。まあ、それは置いておいて……屋敷に入りましょうか」

 

 さとりに促されるまま家へと入る。

 私の家なのに客であるさとりさんに言われてるなんて、恥ずかしい気持ちがある。

 

「ですね。⋯⋯ただいま。

 さて、談話室にでも行きましょうか。それとも一応お姉さまと会っておきます? 多分さとりだと思って接すると思いますが」

「家長に挨拶くらいはしましょう……さてなんと言い訳をしましょうか。最悪武力行使も考えなければ」

「ふぁい!?ほ、本当にやめてくださいね、お願いしますから⋯⋯」

 

 物騒にも刀をちらつかせるさとりさんを見て、慌てて止める。

 本当にやりそうな気がして、彼女に恐怖を感じる。⋯⋯まあ、流石に冗談だと思うけど。

 

 そうして考えながらも、お姉さまの部屋へと向かっていく。

 

 

 

 少女移動中

 

 

 

「お姉さま、入りますよ」

「ええ、いいわよ。⋯⋯あら、さとりじゃない。どうかしたの?」

 

 部屋をノックし、部屋へ入るとそこには悠々と椅子に座るお姉さまの姿があった。

 いつも通りの姿だが、カッコつけているようにも見える。

 

「あ…どうもです。ちょっと色々ありまして尋ねみたのですけど少しお邪魔させていただけませんか?少なくとも数日……だめって言ったら斬るんで」

 

 そして相変わらずさとりさんは無表情で怖い。

 その言動も怖いが、何より顔が怖い。お姉さまもいつもと違うさとりさんに混乱しているようだった。

 

「そ、それは別に構わないけれど⋯⋯あ、貴女さとりよね?」

「お姉さま⋯⋯」

 

 あまりにも知っている彼女と違い過ぎたのか、声が震えている。

 それにしても可愛いお姉さまである。

 

「ええ、さとりですよ?眼は隠してますから心は見えませんけど」

 

 さとりはそう言ってフードを脱ぎ、素顔を見せる。

 いつものさとりよりも髪が長いさとりさんを見て、お姉さまは不思議そうな顔を見せた。

 

「⋯⋯髪伸びたわね。まあいいわ、好きにしてくれて。

 レナが連れてきたのなら、大丈夫でしょ。⋯⋯誰かを連れてくるなんてなかなか無いけれど」

「多分誰かを連れてきたことなんて無いですけどね」

 

 そう考えると私って友達が少な過ぎる気がする。

 友達を家に連れてこない妹なんて、やっぱり心配されるだろうか⋯⋯。

 

「では、これにて失礼しますね」

「ちょ、ちょっと。開けないでよ? 太陽とか本当に苦手なんだから。当たらなければどうということないけれど」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 と、窓に近付いていくさとりさんをお姉さまが引き止める。

 私は外から帰ってきてそのままだからフードつきロングマントがあるので問題ない。

 

「え……退室するだけですけど」

「ちゃんと扉から出なさい。

 レナ、貴女の客人なんだから最後まで面倒見てなさいよ」

 

 お姉さまの言葉に頷き、外へ向かいながらも答えを出す。

 

「最初からそのつもりですけどね。

 ではさとりさん。異変解決、行きます? 心当たりが一つだけありますよ」

「......心当たりですか、分かりました」

「では白玉楼へ向かいましょう。

 この手の異変の黒幕そうな胡散臭い⋯⋯いえ、賢者の妖怪の友人がいますからね、ええ」

 

 外へ出て、歩きながら話を再開する。

 白玉楼には苦手な人もいるが、一番黒幕らしい者が居そうな場所でもある。

 

「なるほど……紫の友人なら知らなそうで知っていそうですね。あ、そう言えばあなたの能力ってなんなのですか?」

「ありとあらゆるものを有耶無耶にする程度の能力ですよ。私が触れたものの存在を有耶無耶にします。

 まあ、使える機会は限られてますので、主に使うものは召喚などの魔法です。ほら、魔法少女ってカッコよくないです?」

 

 さとりさんの問いに自分の思っていることをそのまま伝えた。

 でも本当は魔法少女に憧れているというか、フランに憧れている。彼女は原作でも魔法少女らしく、彼女に憧れたからこそ魔法が好きになったのだと思う。

 

「それって境界も意識と無意識の境も結界も有耶無耶に出来そうですね。それにしても魔法少女ですか……結末が残酷なことになる確定…」

「そこまで試したことはありませんが、私の能力は有耶無耶にしても有るものと無いものは変えれないので、難しいかもしれません。

 魔法少女でわがままなら願いを叶えやすいと聞いたので、きっと大丈夫ですよ」

「難しい能力ですね。そう言えば魔法少女で思い出したのですけど……僕と契約して魔法少女になってよ」

 

 そう言って私の肩に手を置き、その無表情な顔を近付けてきた。

 無表情で迫ってくるというのはホラーのようで普通に怖い。

 

「魔法少女(自由な)ならいいですよ。

 というかその白い生物だったりステッキだったり、その手にはろくな方がいません⋯⋯」

「うーん……まあいいです。それで、白玉楼まで後どのくらいですか」

「ぶっちゃけ転移系統の魔法があるので地面とかあれば一種で行けますよ。冥界は異世界みたいなものですが、結界が緩いせいか行けるようですので」

 

 さとりに言われるまで忘れていたが、私には転移系魔法があるのだった。

 それを話すと無表情でも呆れといったものが伝わってくる。

 

「それ……移動中に言います?なんかここまで移動した気力が一気に反動でくるのですけど」

「ほ、ほら、空を飛ぶのって気持ちいい風を感じれてイイジャナイデスカ」

 

 話していると怖くなり、つい視線を逸らしてしまう。

 自分でも悪い癖だと思うが、こればっかりは仕方ないと思う。

 

 ──だって怖いんだもん。

 

「あまりしたくないのですが……想起してもいいですよね、ってかさせなさい。色々見てあげますから」

「ヤメテクダサイ」

「冗談ですよ。それにこうしてのんびり景色を見るのも良いですからね」

「⋯⋯今の幻想郷と昔の幻想郷って、やっぱり違います?」

 

 幻想郷の景色を見渡し、感慨深く話すさとりさんを見て、聞きたくなった。

 ただ、どうしてか悲しい気持ちにもなる。その理由は全く分からないが。

 

「あまり変わりはないですけど…こっちの方がどことなく賑わいがあります」

「そうなのです? ⋯⋯あ、そろそろ着きますね。白玉楼、冥界に続く扉が。⋯⋯あれは開かず、上を飛び越えるらしいですけどね」

 

 話しながらもいつも通り無断で入っていく。

 人の敷地内に無断で押し入るのもどうかと思うが、幻想郷だから常識に囚われてはいけない。要は非常識である方がいいということ。よって大丈夫だろう。⋯⋯我ながら酷い理論だ。

 

「勝手に入って大丈夫なんでしょうか…庭師に斬られそうなんですが」

「大丈夫ですよ。妖夢とは何度か会って──」

「斬り捨て御免」

 

 と、話している最中に殺気を感じ、慌てて後ろへ飛び退く。

 私が先ほどまで立っていた場所を切り裂いたその人物は、半人半霊の庭師、魂魄妖夢だった。

 

「うわっ、危なっ!? え? 幽々子さんって知り合いでも斬るように言ってます!?」

「言っています。⋯⋯あれ、そちらの方は⋯⋯初対面の人ですね」

「訳あって素性は言えませんが……妖夢さんここを通してくれませんか?さもなければ斬る」

「いいでしょう。⋯⋯通していいかは、斬れば分かります!」

 

 互いに刀を抜き、殺伐とした空気が流れ始める。

 慌てて割って入り、未だに殺気を放つ妖夢に対して必死に止める。

 

「斬っても分かりませんから! というか落ち着いてください、争い事はできる限りおやめください」

「ちなみに斬るのはレナさんの服です。妖夢さん……」

 

 気持ちが伝わったのか初めから本気ではなかったのか、さとりさんはそう言いながら刀を収めた。

 落ち着いたところを見てホッとするも、未だに妖夢は刀を収めていない。

 

「後レナさん、もう少し丈の長いスカート履いてくださいよ」

「何故私!? それとフランからパク⋯⋯借りているものなので、これ以上長いスカートはないですね。必要とあれば作りますけど」

「⋯⋯変な人達ですね。でも通しませんよ。幽々子様から許可が降りない限り⋯⋯」

「あらあら〜。吸血鬼の妹に地底のお嬢さまじゃない。どういったご要件でここへ来たの〜?」

「......」

 

 いざこざを止めるためにか、幽々子が屋敷の奥から歩いてきた。

 表情を悟られないようにか、口元を扇子で隠している。

 

「初めまして幽々子様。少しお話がありましてこちらに参りました」

「あらそうなのなら部屋に入りましょう」

「幽々子様⁉︎」

 

 妖夢の声にも反応を示さず、幽々子はそそくさと屋敷内へと入っていった。

 本当に警戒心がない人だ。元より必要が無いだけかもしれないが。

 

「妖夢、お茶お願いね」

「⋯⋯いつも思いますが、緩いですね、警戒とか色々」

「あら。どうかしたかしら、レナちゃん?」

「あ、いえ⋯⋯」

 

 声をかけられ、反射的に目を背けてしまう。

 この人はどうしても慣れない。性格のせいだろうか。とにかく分からないが苦手だ。

 

「仕方ありません……今回ばかりは見逃します」

「……レナさん白でしたね」

「そういうあなたは何色なのかしらね。すごく気になるわ」

「幽々子さん、知らなくて良いこと沢山ありますよ。私みたいに知ってしまう体質じゃないのなら知らない方が良いですよ」

「え? 白は清潔を表すとか言うらし⋯⋯ふぇ!? いつの間に!? というか見ないでくださいね!」

 

 一瞬何のことか分からなかったが、すぐに気付いてスカートを押さえる。

 いつ見られたのか分からないが、絶対に今日は白だった。

 

「ご、ごほんっ! ⋯⋯本題に入っていいですよね? さとりさんももう何もないですよね? いえ、(調べ)なくていいですけどっ」

「え……私は服の色を言ったのに……なんでそんなに慌ててるんですかねえ」

「え⋯⋯ぐぬぬ⋯⋯」

 

 あ、上手い具合に嵌められた。

 唸ってみせるも全く相手にされてはない。うん、普通に悔しい。

 

「まあ良いです。それでは本題に入りましょうか。幽々子さん、単刀直入に聞きますけど…空間を歪めたりすることに心当たりはありますか?」

「紫がそういうの得意だった気がするわ。でもどうしてかしら?」

「あまり私に能力を使わせないでくださいね……分かっているのですよね。でなければ私がさとりだとどうして気がつくんですか?」

「あらあら。もう少し可愛い顔した方がいいわよ〜。

 でもね、今回は本当に私は関係ないわ。これは本当よ」

 

 さとりの真っ黒で覗き込めば恐怖すら感じる眼に幽々子は臆さない。

 それも疑問にしっかりと返してはいないというほど、メンタルは強いらしい。

 

「……幽々子さんが本当に知らないのは信じます。取り乱してすいませんでした」

「いいのよ、別に〜」

「まあ、幽々子さんって怪しさ全開ですし⋯⋯あ。

 でもそうだとしたら一体何のせいで⋯⋯」

「私は分からないけど紫に聞けばいいんじゃないかしら」

 

 私の素朴な疑問に、幽々子は在り来りな答えを出す。

 確かに答えには近付けそうだが、あの胡散臭い妖怪に聞くのも癪だ。

 

「紫に……ええ…彼女の方に借りを作るの嫌なんですけど…なるべく打てる手を打ってから相談したいです…」

 

 さとりも同じ気持ちらしく、紫に会うことに嫌そうな顔をしてみせる。

 どの世界でも、あの妖怪は胡散臭いのだろうか。

 

「あらそうなの? まあ頑張りなさい。応援しているわよ」

「⋯⋯本当にここではないみたいですし、仕方ありません。一度帰って作戦会議ですね。時間も遅いですし。

 あてが外れてすいません、さとりさん」

「いえ、あなたに非はないですよ。幽々子さん突然尋ねたりしてすいませんでした」

 

 私のせいで徒労に終わったというのに、さとりさんは怒らずに許してくれた。

 明らかに非は私にあるというのに。

 

「気にしないで〜こういう時くらいしかおかし食べられないから」

「幽々子様、それは客人用のお菓子だからですよ」

 

 幽々子達も突然お邪魔したことを気にせず、元通りの生活へと戻っている。

 本当に気ままな人達だ。⋯⋯いや、幻想郷なのだから、これが当たり前か。

 

「お邪魔しました、です」

 

 勝手に押し入ったことを悪く思いながらも白玉楼を後にする。

 ああ。それにしても久しぶりに来たけど、冥界の景色も悪くない。

 今度、誰かと来てみようかな────

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