東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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はい、コラボ二話目です。


コラボ中編「夢現、紡ぐは過去から」

side Renata Scarlet

 

さとりさんと出会った初日の夜。

 

白玉楼から戻り、紅魔館に帰ってきてからのこと。

特段話すこともなくなった、私達は紅魔館の廊下を歩いていた。

 

「そういえば私の泊まる部屋ってどこですか?」

 

思い出したかのようにさとりさんは尋ねてきた。

そう言えば私も忘れていたが、どうしようか。とりあえず客室か私の部屋に居てもらおう。こういう風に私が誰かを連れてくることなんて無かったため、そのような配慮を一切していなかった。これを教訓に、これからは誰かが来ても一夜を過ごせる程度にはしておこう。

 

「私の部屋でもいいですし、無駄に広いので客室もありますよ。

夕食も咲夜が作ってくれると思いますので気にしなくても大丈夫でしょう」

「そうですか…じゃあ折角ですしあなたの部屋に泊まります」

 

さとりの目が少しだけ細まる。

何か悪いことでも言ってしまっただろうか。いや、大丈夫なはずだ。

 

「分かりました。枕をもう一つ用意しておきますね。

あ、他に何かいるものとかあります?」

「うーんそれじゃあ裁縫セットと布と糸…お願いできますか?後は空いた時間に厨房を貸していただけます?」

「大丈夫ですよ。咲夜に言っておきますね」

「ありがとうございます」

 

私の知っているさとりと違って、かなり家庭的だ。

それにしても何故か目線が下に行っている気がする。どうかしたのだろうか。

 

「⋯⋯? どうしました?」

「いえ…なんでもないです」

「そ、そうですか。

では早速夕食に向かいます? お腹空きましたし」

「そうですね……私自身は別に食事を食べたり寝たりしなくても活動可能なんですけどね……」

 

何か影のある言い方だ。だが聞くのは気が引ける。

こういう顔をする人は、暗い過去を持つ人が多い。

 

「そういえば紅魔館って浴槽つきの風呂ありますか?」

「大浴場ならありますよ。温泉みたいなお風呂場です。

逆に1人でゆっくり入れるようなものはないですけど⋯⋯」

「大浴場はあるのですね……あ、そろそろ食堂じゃないですか?」

「あ、そうですね。そろそろ着きますね」

 

さとりさんを引き連れ、食堂へと向かった。

そして私達は団欒としたひと時を過ごし、一日目を終える。

 

 

 

少女睡眠中

 

 

 

「ふわっ、ふわぁぁぁぁ⋯⋯。あ、おはようございます⋯⋯」

「おはようございます。あ、朝食ならもう出来ているようですよ」

 

話を聞く限り咲夜と一緒に作ったらしい。

本当に何でもできるんだなあ、と思いながらも眠気を感じて目を擦る。

 

「あ⋯⋯ありがとうございます。

さとりさん、お料理や裁縫もできて凄いですね。なんというか⋯⋯良妻とかになれそうですね」

「良妻だなんて……妬み嫌われる能力を持つこの私なんか誰ももらってくれませんよ」

「あ⋯⋯いえ。きっといつかは受け入れてくれる人ができますよ」

 

暗い話になるのを避けようと慌てて言葉を繋ぐ。

悲しい話で暗くなるのは普通に苦手で、避けたい気持ちが多い。

 

「さて! 今日も異変探索ですかね。今日はどこへ行きましょうか」

「まずご飯を食べて身なりを整えてください」

「分かりました。⋯⋯お母様みたいです」

「服徹夜で作ったのですが……水着型普段着」

 

思い出したようにビキニ水着のような露出の高い服を渡された。

完全に普段着ていたら恥ずかしいとしか言いようがない服だ。

 

「って、もうそれ水着ですよね!?

でも夏に着たいと思いますので有り難く戴きますね。普段着としては申し訳ないですが着たくないです」

「弾水性ゼロですし冷水に浸かると溶けるんですけどね。まあそんな失敗作は置いておきまして、こっちが渡したいものです」

 

次に出したものは普通のフリルがついた黒と赤のラインが入ったスカート、黒をベースにしたシャツと赤いリボンだった。

貰った瞬間は意味が分からず疑問がわいたが、意味が分かった瞬間、それは喜びに変わった。

 

「え⋯⋯? あ、あの、本当に貰ってもいいのです? かなりの出来だと思いますけど」

「色々とお世話になっているお礼ですよ。受け取ってください」

「そ、そうですか⋯⋯。では、有り難く戴きますね。ありがとうございます、さとりさん」

「普通にさとりって呼んでいただいて結構ですよ」

 

嬉しさでも伝わったのか、珍しくさとりさん⋯⋯。いや、さとりは笑顔を見せた。

それを見た私はより一層、嬉しくなった。

 

「⋯⋯はい、ありがとうございます。さとり。

こうしてプレゼントを貰ったわけですし、元の世界までしっかりと案内しないといけませんね。

では早速ご飯を食べ終えてから、向かいましょうか!」

「そうですね。行きましょうか」

 

 

 

少女食事中

 

 

 

「さとりの料理も美味しかったです。また機会があれば作ってほしいくらい⋯⋯。

あ、今日はどこへ向かいます? 正直これといったあてはありませんが⋯⋯」

 

食事が終わった後、さとりに今日の行き先を聞いていた。

それにしてもさとりの料理、咲夜に引けを取らないくらい美味しかったなあ。

 

「そうですね……行くとしたら人里ですかね。あそこなら情報もかなり集まっていそうですけれど」

「なるほど、情報収集ですね。苦手分野ですが、頑張ります!」

「あんまり張り切らないでくださいね……私の存在が少しでも明るみになったらまずいですからね。後観光もできませんし……」

 

ボソッと本音が聞こえたような気がするが、気にしないようにしよう。

さとりも()の景色は今しか見れないのだから。

 

「あ、了解です。

穏便に、慎重に、ですね。それなら得意分野ですよ」

「それでは……見せてもらおうか昨日言っていた転移魔法とやらの性能ってヤツを」

「ふふん、もちろんです。

まあ、面白くもない地味な魔法ですけどね」

 

そう言って素早く呪文を唱え、そのまま地面に手を触れる。

すると人一人が入れるほど大きな黒い穴が作られた。

 

「この穴に落ちればすぐに人里ですよ。私は翼とか有耶無耶にしてから入るのでお先にどうぞ」

「ではお先に失礼いたします」

 

さとりはヒョイと穴の中へと落ちていった。

私も翼を消し、自分の姿を人に似せてから後へ続く。

 

「⋯⋯とまあ、移動は一瞬です。作るのは数秒ほどかかりますが」

 

繋いだ場所は人里の人通りの少ない道だった。

誰にも姿は見られていないようでホッとする。

 

「⋯⋯さて、聞き込みですね。人里で怪しい場所なんて限られていますが」

「そうですね…検討はある程度つけていますよ。まずは妖魔本を扱う鈴奈庵に行ってその後に茶屋で一服。その後今日行われるこころの能劇を見ましょう。ああそうだ。リボンとかがあればそれも」

「⋯⋯ふふ、楽しそうで何よりです。⋯⋯少し無表情なことが多いみたいですし」

 

目的が完全に違うが、楽しそうで私も嬉しい。

 

「無表情なのは仕方ないですよ。表情筋が仕事しないらしいので基本的に表情を作ることができないんです」

「そ、そうなのですか⋯⋯。

あ、いえ。鈴奈庵へ行きましょうか。私も初めて行くので楽しみです」

「ええ、もやしにいきましょうか」

「も、もやし? わ、分かりました」

「燃やすのは冗談ですよ。取り敢えずいきましょうか」

 

 

 

少女移動中

 

 

 

「お邪魔します」

「いらっしゃいませー。今日はどうされましたか?」

 

そう言って出迎えてくれたのは紅色と薄紅色の市松模様の着物と若草色のスカートに、クリーム色のフリルエプロンをその上から身につけている少女だった。彼女は本居小鈴、前世の記憶によると、俗に言うトラブルメーカーのような子だったはずだ。

 

「本を見に来ました。なるべく空間に関する書物をお願いできますか?」

「空間に関するですか?分かりました。ちょっと待っててくださいねすぐ見つけますので」

 

そう言って小鈴は店の奥へと戻っていった。

しかし私は前世の記憶からか、少しだけ心配が残る。

 

「⋯⋯見つけてきた本が妖魔本だった、なんて展開がありそうで怖いです⋯⋯」

「その時は燃やすだけですから大丈夫ですよ」

「なるほど、その手がありましたか。⋯⋯いやこの流れは全焼確実ですからやめましょう」

「こちらが空間に関する書物です」

 

そんな話をしていると、小鈴が奥から戻ってきた。

それもかなりの量の本を持ってきて。

 

「どっさり持ってきましたね…一部巻物もあるのですが…」

「流石にこれを全て調べるのは⋯⋯大変そうです⋯⋯」

「あ…後そこの恋愛小説とQって言う作家のものも…」

 

何かおかしい気もするが、気にしないでおこう。

彼女も今の時代を楽しみたいのだろうから。

 

「け…結構ありますけど…よければ読書用の部屋貸しますよ?」

「さとり、本来の目的からズレてます。

まあ、ゆっくり読みたいですし、お借りしましょうか。⋯⋯これだけの本、読み切れるか分かりませんが」

「大丈夫気合いで読むんです」

「心配しかありません」

 

そんな雑談を交わしながら、小鈴に案内されて部屋へと向かう。

 

 

 

少女読書中

 

 

 

「いやー沢山買っちゃいました」

「⋯⋯今月のお小遣い、もう無くなりそうです。

って、そんなことは置いといて。ここでもめぼしい情報はありませんでしたね。これからどうしましょうか⋯⋯」

 

結局さとりがこちらへ来た理由は分からず、山ほどの本を買っただけに終わった。

そろそろ財布の中身も底を突き始めている。またお姉さまに貰わなければならない。

 

「こころさんの能劇見て……どこかでご飯にしましょうか」

「あっはい。

⋯⋯まあ、たまにはこういうこともいいですね。でもこころさんですか⋯⋯。異変もまだ起きてませんし、初めて会いますねー」

「あまり人里には来ないんですか?」

「私はなかなか来ませんね。食料品などのおつかいや、妹達と買い物に来る時くらいです。

まあ、たまに一人で来る時もありますが⋯⋯本当に稀にしか来ません」

 

どこぞのミアのように、放浪が好きでもあまり旅には出ない。

だってお姉さまの側から離れたくないから。

 

「やはり……妖怪ってそんな感じなのですね……人間とはなんだか価値観が違いますね」

「そうですね。私もこの人間の姿でないと怖がられますからね。特に吸血鬼は悪評高いみたいですから⋯⋯」

「さとり妖怪よりかはまだ良い方ですよ……世界を敵に回してますから。まあそれでも人里には結構長い合間住んでいましたけれどね」

「せ、世界を⋯⋯?

あ、あの、気を悪くさせてしまったらすいません。貴方達のことを考えていない発言でした⋯⋯」

 

よく考えればさとり達はその能力故に他の種族から差別を受けているのだった。

それはどの並行線でも変わらないらしい。⋯⋯彼女に悪いことを言ってしまった。

 

 

「あ、お気になさらず。基本的にさとり妖怪とばれなければ何ら問題もないですから。ばれたら居場所消えるんですけどね」

「は、はあ⋯⋯。

あ、なんだか賑わってきましたね。そろそろでしょうか?」

「そのようですね……そういえばさっき屋台で買った団子食べます?」

 

いつの間に買っていたのか、団子を差し出しくれた。

とても美味しそうだが、一体どこのお店で買ったのだろう。

 

「戴きます。私、甘いのは好きですから」

「一個だけ激辛にしてますので」

「え、まさかのロシアンルーレットです!? い、一体どれが激辛⋯⋯」

 

見た目では全く見分けがつかない。

もしや全部激辛⋯⋯なんてことも考えたが、それでは面白みがないから大丈夫かな?

 

「食べればわかりますよ〜まあ…わさび入れたくらいですから多分大丈夫ですよ」

「わさびもダメなのですよね、私。

どういうわけか、味覚は見た目相応なのです⋯⋯。

まあ、運試しに一つ⋯⋯」

 

団子を一つ手に取り、口に放り込む。

食べた感じは柔らかく、一度噛むと甘い風味が口の中に広がった。

 

──うん、これは⋯⋯当たりだ。

 

「⋯⋯ん、あ。美味しいです! 良かった、当たりだったみたいですね!」

「……なかなか可愛いところがあるんですね」

「え? ど、どういうことです?」

 

その言葉の意図は分からず、また意味が分からなかった。

一体どういうことかと、さとりに聞き返した。

 

「なんだか可愛いのでつい……あ、頬にあんこ付いてますよ」

 

悩んでいるとさとりはそう言って、頬を舐めた。

少しドキッとしたが、すぐさま表情を悟らせないよう顔を下げる。

 

「え、あ⋯⋯ありがとうございます。⋯⋯誰かに舐められたの、フラン以来です」

「そうなんですか。あ、始まったみたいですよ」

 

さとりに促され、騒がしい方へと目を向ける。

そこではさとりと同じように無表情な少女が舞台に立っていた。

 

 

 

少女観戦中

 

 

 

「⋯⋯能劇というものは初めて見ましたが、意外と面白かったですね」

 

能劇の主役⋯⋯表情豊かなポーカーフェイスこと秦こころの力量によるものも大きいだろうが、意外と楽しめた。こうやって能劇で楽しめるなんて前世では想像もつかなかったが、歳をとったせいで価値観でも変わったのだろうか。まだ吸血鬼からしてみれば子どもなのだが。

 

「ですね〜あ、だんご一個だけ残ってますけどどうするのです?」

「あ、食べてもいいです? いいのならもらいますね」

「良いですよ。ロシアンルーレット……ですけど」

「⋯⋯あ。す、すいません。やっぱり止めておきます。

なるほど、これが想起⋯⋯」

 

流石さとりと言うべきか、一瞬にして忘れていた過去を思い出してしまった。

これがさとりの能力⋯⋯なわけないか。目を隠しているしね。だけど精神的に強い方なのは間違いないと思っている。

 

「私は何にも能力を使っていませんよ。そもそもサードアイは服の中ですし」

 

そう言いながら最後の一つを口に入れ、モグモグと咀嚼する。

最後の一つなら辛いのは確かなはずだが、嫌な顔一つしていない。

 

「⋯⋯さとりって、辛いのも食べれるのですね。なんだか意外です」

「辛くはないですよだって辛いやつなんて入ってませんから」

「⋯⋯え? それってもしかして⋯⋯えー!? てっきり本当のことだと思ってました⋯⋯」

 

嘘だと気付いて、少しばかり悲しくなる。

でも思ったよりも感情は豊かそうで、少し嬉しくもなった。

 

「ごめんなさいね。なんだか反応が可愛いからちょっといじりたくなっちゃって」

「う、うー⋯⋯。色々と悲しいというか、恥ずかしいです⋯⋯」

「許してヒヤシンス」

 

やっぱりお茶目なところもあるらしい。

だけど表情が全く変わらないせいで少し怖い⋯⋯。

 

「むぅ、まあいいですよ。今回だけですからね」

「そろそろ…日が暮れそうですけれど…一度戻りましょうか」

「おっと、気付けばもうこんな時間ですか⋯⋯。そうですね。戻りましょうか」

 

楽しいことがあれば時間が経つのは早く感じる。

本当にその言葉通り、時間は知らない間に過ぎ去っていたらしい。

 

物思いにふけながらも、紅魔館へと引き返していった。

 

 

 

少女移動中

 

 

 

「ちょっとレナ。帰りが遅いわよ」

 

家に帰るとすぐ、お姉さまが険しい顔で出迎えてくれた。

その顔には心配という感情が強く表に出ており、心配させて申し訳ないという気持ちが出てきた。

 

「あ、お姉さま⋯⋯。

すいません、心配をかけてしまいました⋯⋯。次からは心配をかけないようにもう少し早く帰ってきます。⋯⋯心配をかけてごめんなさいです」

「気をつけなさいよ。物騒なんだから」

「あ…じゃあ私はキッチン借りますね」

 

重い空気を取り除こうとしたのか、さとりが唐突にそう話す。

何かとさとりも心配してくれているようで、有り難くも思った。

 

「待ちなさいよ。これから夕食よ?」

「エクレア作るんですからレミレミは黙っててください」

「レミレミ⋯⋯。あ、さとり。私も手伝いましょうか?」

「いえいえ、レナさんはまってて大丈夫ですよ」

「気配が消え⋯⋯まさかさとりってJapaneseNinja?」

 

目を離した一瞬の隙、いや瞬きという一秒にも満たない瞬間にさとりの姿はそこから消え失せた。

全く音を出さず、気配も感じなくなってしまった。一体どういう技を⋯⋯。

 

「ドーモ…って私はニンジャじゃないですよ?」

「ふぁいわ!?

き、急に驚かせないでください。心臓が止まるかと思いました⋯⋯」

 

突然背後から声をかけられ、変な声を上げてしまった。

さっきまで気配を感じなかったはずだが、どうして急に⋯⋯。

 

「まあ遊びはここまでにして…ではまた後で!」

「行ってらっしゃいです。⋯⋯気長に待つとしましょうか。

さて、夕食ですねー」

 

さとりを見送り、何もすることがない私は一人、食堂へと向かっていった。

 

 

 

少女食事中

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

食事が終わったと同時に扉を勢いよく開かれ、さとりが入ってきた。

彼女の横にはエクレアの乗ったワゴンがある。

 

「凄いダイナミックに⋯⋯。

おかえりです。要らぬ心配だと思いますが、大丈夫でした?」

「大丈夫でしたよ。咲夜さんに不審者と勘違いされて腕切り落とされましたけど」

 

相変わらず見た目に変化はないが、とても恐ろしい目に遭っていたようだ。

それにしても咲夜が間違うだなんて、一体何をしていたのだろう⋯⋯。

 

「怖っ。というかそれ大丈夫ではないですよね? 見た目は大丈夫みたいですけど」

「だって再生させましたから」

 

いつぞやのフラン以上の再生力だ。元より幻想郷の妖怪達は四肢がもがれても回復するほど再生力が強いらしいが、さとりは明らかに群を抜いている。やっぱりこちらのさとりとは完全に別人の存在らしい。

 

「吸血鬼以上の再生能力ってヤバいですね。

それにしても美味しそうですね。⋯⋯食べてもいいです?」

「もちろんですよあなた達のために作って来たんですから」

「え? あ、ありがとうございます!

ではお一つ⋯⋯とても美味しいですね。こんなに美味しい物をありがとうございますね、さとり」

 

団子とは違った強い甘味を感じ、ほっぺが落ちそうになる。

さとりも咲夜と同じく、本当に何でも作れるらしい。

 

「甘いものが好きって言ってたんで作ってみたのですが良かったです。記憶にもある味だとは思いますよ。好きかどうかはわかりませんけど」

「いえいえ。私は甘いものが大好きですから。⋯⋯うん。やっぱりとても美味しいですよ」

「レミリア達の分も残してくださいよ。ってか残してくださいね。ロシアンルーレットにしてるんですから」

 

続けて二個目を口に入れると、さとりに注意された。

それにしてもロシアンルーレットとは⋯⋯意外とイタズラ好きなのだろうか。

 

「え、あ、はい⋯⋯」

「……一個だけ激甘なんですよね。もちろん美味しく食べられる程度の激甘ですけど」

「激甘? ⋯⋯あ、ええ⋯⋯。なんだか怖いです」

「深読みしすぎですよ。美味しく食べられるレベルですからね」

 

目を隠し、能力を使っていないはずなのに心を読まれている。

私ってそんなに感情を読まれやすい顔でもしているのだろうか。

 

「ロシアンルーレットカッコガチはたこ焼きでさっき作りました。小悪魔さんに毒味させたら……お察しください」

「こあ、ヤムチャしてしまいましたか⋯⋯。まあそれはそれとして。

みんなで食べる物ほど美味しい物はないですよね。⋯⋯ですからさとりも食べません? もちろん強要はしませんが」

「そうしますね……あ、やっぱりあまい」

「ふふふ。良かったです」

 

さとりもあまりの美味しさにか、表情が無から微笑みへと変わる。

やっぱり嬉しい時は笑えるんだなあ、と私も嬉しく感じた。

 

「自分で作っていてあれですが……そうだレミレミも呼んで来ましょう」

「ええ、そうしましょう。お姉さまもきっと喜んでくれると思いますしね」

「というわけで……マイクテストの時間だオラァ」

 

時間は進み、お姉さまの部屋へ着いたとともに何故かグラサンをかけたさとりが部屋へ突入する。

 

「ひゃ!? しゃ、さとり!?

急に入って大声出したらビックリしゅるじゃない!」

「⋯⋯お姉さまも稀にしますけどね。ええ、稀に⋯⋯」

 

お姉さまは突然のことに驚き、呂律も回らないようだった。

そんなお姉さまでも私は可愛いと思うのだが。

 

「じゃあ静かに入り直しますね」

 

と、さとりは部屋へ出ていったはずだが、どういうわけか気が付くとお姉さまの背後から手を伸ばしていた。ホラーでよくありそうなその行為は、お姉さまをさらに驚かすには充分だった。

 

「なっ⋯⋯そ、それも怖いから!」

「え⋯⋯。今目の前にいたはずなのに、いつの間にかお姉さまの背後にいた⋯⋯何を言っているのか以下略。というか本当に凄いですね。主に怖さが⋯⋯」

 

私自身も怖く、体験した本人であるお姉さまはしばらく絶句するほどだった。

その後すぐに喋っている辺り、怖さを紛れさそうとしているようだ。

 

「……まあ良いです。とりあえすエクレア作ったのですがレミレミも一緒にどうですか?後フランさんも」

「エクレア⋯⋯? ふーん、さとりが作ったの?

ああ、フランのところには後で持っていくから大丈夫よ。多分」

「⋯⋯後で怒られそうですけどね。あの人達には」

 

フラン達に知らせず、みんなで一緒に食べたとバレたら後で怒られるだろう。

それもまた可愛いのだが、それが原因でギクシャクするのは御免こうりたい。結局は仲がいいのが一番なのだから、喧嘩などせずに済むのが最善だ。

 

「後これ……たこ焼きです。良ければフランさんと二人で(強調)食べてくださいね」

 

そう言ってたこ焼きを差し出した。状況から察するに、ロシアンルーレットのたこ焼きだろう。

わざわざ『二人で』という部分を強調し、さとりは今ここで怒られない状況を作り出している。

 

なかなかの策士だが、この状況だと私も怒られる気しかしない。とりあえずここは逃げ────

 

「なになに?私の知らないところでおやつ?」

 

逃げる時間もなく、扉の向こうでフランの声が聞こえた。

ああ、これは諦めるか、それとも今のうちに逃げようか。

 

それを充分に考える間もなく、扉は開かれた────




ちなみに次に上がるのは本編だと思います。そして二章はコラボ編の次の話に出てくると思います。
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