東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─ 作:百合好きなmerrick
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これは、真っ直ぐではなく並行に繋がるお話。
どこかの世界、いつかの未来、何かの縁。ただ、その地球はどういうわけか凍っていた。何も無い世界で生き残った、ただ2人の物語。
ちなみに誕生日押絵もあるよ!(前描いてたアレから変わらず)
ある日、外の世界が氷に包まれ、人類は滅亡した。その前触れはあったのだが、その時は誰も気づくことはなかった。
地続きで繋がっている幻想郷も氷に覆われ、人間も妖怪も生命を多く失った。残された者達は淡い光が残る暗い地底へ逃げ込んだ。そこは地上より狭いが温暖で、地上が氷に覆われた今となっては、生物がかろうじて暮らすことのできる唯一の場所になる。しかし極小数の植物しか育たず、食料も極わずかな中、そこですら生き長らえるのは容易ではなかった。
初めのうちは住み慣れた地上から離れ、不憫な地底で暮らすことに不満を持つ者も多かったが、それも数年経たないうちにいなくなり、不満を持つ者はいなくなっていた。不満を持つ暇もなくなっていた。そして十年もすれば人間が消えた。耐え切れなくなった妖怪達が全てを喰らった。その妖怪達は人間の命や希望を残さず食い荒らした。希望は潰え、次に百年を待たずして人喰い妖怪達は飢えで死んだ。人を喰らう絶望も失せ、残った一部の者達も年々その姿を消していった。地底も地上と同様、虚無に満たされていく。人間の未来は潰え、人間を食べる捕食者も失せ、虚無だけが存在する。
数百年もすれば地上は生者の代わりに、死者が埋め尽くした。希望も絶望も、喜びも怒りも哀しみも楽しみも、有象無象も森羅万象も、何もかもが次第には消えていく。生命の終わりは、地球の終わりはすぐ近くまで来ていた。
「お母さん。また悪いお化けがいるよー」
──しかし。そんな世界にも、残っている命がある。
何もないはずの地上で動く影。死者ではなくしっかりと生きている者であり、小さな黒いワンピースを着こなす気品溢れる幼い少女。血のように真っ赤なサイドテールと目。人ならざる紅い翼を生やした彼女は、亡霊を見つめて楽しそうにはしゃいでる。
「そうね。1人で大丈夫? 無理そうなら手伝うわよ」
そしてもう1人。少女と同じ紅い髪と目を持つ高校生ほどの女性。翼は大小の2枚が重なり、少女と違って肌は白く、髪は背中辺りまで伸びている。紅いミニドレスを身に纏い、その首には紅い宝石の付いたネックレスを付けている。
「大丈夫よ。お母さんはそこで見ていてね。すぐに消すから」
少女は亡霊を観察するように見つめ、ゆっくりと近づいていく。
名も無き亡霊は少女を見つけると、鋭い爪を露わにして襲いかかった。
しかし少女はその攻撃をひらりと躱すと、燃え盛る剣を召喚する。そのまま隙を与えぬほど早く剣を振り、亡霊を横一文字に切り裂いた。
亡霊は嘆きとも叫びともつかない大きな声をあげ、幻だったかのように消え失せる。
「終わったよ。ふふん、私ってば凄いでしょ?」
「ええ、凄いわ。とってもお上手ね。私の魔法を見様見真似でできるなんて、流石私の娘」
「えへへー。私はお母さんといつも一緒にいるからね!」
褒められたことで少女は嬉しそうに剣を振り回す。
しかし、その次には「危ないからやめなさい」と止められ、一気に意気消沈としてしまった。
そんな娘を見た女性は、ため息をつくと少女の頭を撫でる。
「はあ、全く⋯⋯。そこまで落ち込むことないでしょう? ⋯⋯今日は久々に、帰ったら何か食べましょうか。自分の魔力ばっかりじゃ飽きるでしょうしね」
「本当に!? じゃあさ、何にするー?」
「何でもいいわよ。貴方の希望に任せるわ」
少女は「うーん」と考え込み、一分ほど経つと突然顔を上げた。
その顔は期待に満ち溢れており、想像を楽しむように笑顔になっている。
「ハンバーグがいい! あっ、でもお肉って手に入る?」
「ふふっ、心配しなくてもいいわ。それくらいなら大丈夫よ」
「うわーい! ありがとうね、お母さん!」
子どもらしく無邪気に喜び、少女は母親に満面の笑みを見せる。
母親の方も嬉しく思ったのか、つられて笑っていた。
「ええ。⋯⋯さあ、帰りましょうか」
「うん!」
少女は母親の手を取ると、彼女達は仲睦まじく自らの住まいへと戻っていった────
一応、三話まで続きます。