東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─ 作:百合好きなmerrick
ちなみに、三日目は明日の九時予定。間に合うかは私の頑張り次第ですが(
とにかく、ごゆるりと
side Renata Scarlet
──紅魔館(食堂)
昨日はフラン達と夜遅くまで遊び尽くし、疲れたまま風呂に入ったせいかそのままフランの部屋で寝てしまった。普通は夜に活動する吸血鬼だけど、幻想郷に来て生活リズムを変えた私達は人間のように生活する。ほとんどの理由が霊夢に合わせたお姉さまの影響なのだが。ティアも不思議がっていたが、私達と一緒に遊んでいるうちに気にしなくなった。むしろ姉が一緒に居るならと、その生活を受け入れてすらいた。
ティアに紅魔館の構造を一通り説明し、半日かけて紅魔館を巡ったり、まだティアが会ってないらしい美鈴や咲夜達に会いに行った。みんなに可愛がられ、ご満悦な様子を見れて私も嬉しい。しかし、それと同時に羨ましくも思った。ティアにじゃなく、美鈴や咲夜に対して。あの可愛い顔を間近で見れて、尚且つ撫でれるなんて羨まし過ぎる。まぁ、やろうと思えば私もできるんだけど。⋯⋯自分から言うの、恥ずかしいし。
それはともかく、現在はみんなで夕食を食べている。いつも通り普通に食べて、すぐにお風呂にでも入るかと思っていたが、そこで驚く事が起きた。
「⋯⋯ティアちゃん、胃袋どうなってるの?」
「もごっ⋯⋯え、どうして?」
昨日はろくにご飯を食べてなかったからか、ティアの食欲が凄まじい。ティアの要望に的確に応える咲夜は、チキンにステーキにラム肉に⋯⋯様々な食料を提供した。ティアはその全てを短時間で平らげ、さらに多くの量を求めた。あの小さな身体に、あれ程の量がどうやってあの小さな身体に入るのか分からないが、凄いとしか言えない。
「いやいや。今何品目? 私やルナでもそんなに食べないや」
「こっちのお姉ちゃんも同じ。お腹は小さいのに、よくそんなに入るね、って言われる」
「ふーん⋯⋯栄養が全部胸の方に行ってるのかな。良いなぁ」
「⋯⋯フランはそのままでも良いと思いますが。可愛いですし」
姉としては、妹は小さい方が撫でやすいし、愛でやすくて可愛い。それに、妹の方が大きいと何かとプライドが守れない。妹よりは優位に立ちたいし、姉としては守られるよりも守りたい。だからこそ、妹よりは大きく⋯⋯あ、いや。別に興味は無いけど。そもそも姉妹揃って大きさは全く同じだし⋯⋯。
「子ども扱いされてる気がする。お姉様よりは大人なのに」
「はいはい。早く食べてくださいよ。もちろん、ティアはゆっくりでも良いですからね」
「うん、分かった。でも、急いで食べるね。早くみんなでお風呂に入りたいから」
ティアは食事のペースを上げる。ガツガツと肉を貪り、ごくごくと飲み物を飲み干す。まさに暴飲暴食の申し子だ。それにしても、美味しそうに物を食べる。そして、この光景をしばらく見ていたいくらい可愛い。
「お姉様、ティアちゃんに甘過ぎない?」
「末妹ですから。それに、歳もかなり遠いですし」
「末妹なのは私もなんだけどなぁ」
「だからこそ、いつも言う事聞いてるじゃないですか。もちろん、これからも聞きますから」
「ふーん⋯⋯ま、それなら良いよ。じゃ、落ち着いたら何か聞いてもらおっかなぁ」
おおぅ。何をされるのやら⋯⋯。ティアが帰った後が怖そうだ。お姉様の元にでも避難しておこう。
「ごちそうさま! お姉ちゃん達、お待たせ。行こー」
「おーけー。オネー様、先に行ってる。片付けよろしく」
「マジですか⋯⋯」
「あらあら」
私の返事も待たずに、フランとルナ、そしてフラン達に引っ張られるティアはお風呂へと向かった。この場に残された私とお姉さまはため息をつきながらも、残された食器を手に取る。
「お嬢様、レナ様。良ければ私が。妹様達を待たせてしまいますよ」
「いえいえ、手伝いますよ。咲夜にばっかり任せるのも悪いです」
「そうね。少しくらい遅くなっても大丈夫でしょうし、私も手伝うわ」
そうして、フラン達の分も片付け、ついでに食器を洗った私達は、フラン達の後を追った。
「レナ姉の能力って何?」
フラン達の後を追い、お風呂に入ってすぐの事。隣で身体を洗っていたティアにそう聞かれた。ちょうど身体をシャワーで洗い流したところで、痛そうに少し震えていた。私達吸血鬼にとって流水は通れない、動きを止める程度のはずだけど、世界によって弱点の効き方も違うらしい。後で痣にならないかが心配だ。
「私の能力は『ありとあらゆるものを有耶無耶にする程度の能力』ですよ。それより、流水大丈夫です?」
「うん、大丈夫。ちょっとピリってしただけだから。有耶無耶にするって、要するにどういう事?」
久しぶりに能力の詳細を問われた気がする。確かに、私も有耶無耶と言われてもピンと来ない。そもそも、名付けたのはお姉様だし、私は悪くないけど。
「一言で言えば認識の阻害です。触れてるモノに使うと、その対象をぼかす事ができます。私以外に認識できなくなるだけなので、干渉する事はできますけどね。まぁ、触れてる事すら気付けませんが」
「⋯⋯地味ってよく言われる?」
真っ直ぐと、曇りない眼を向けられる。初めて言われたのが異世界とはいえ妹なのは、心に来るものがある。凄く悲しい。
「言われないですっ。意外と使えますからね。⋯⋯まぁ、魔法の方が好きですけど。使用量も魔法の方が多いですし、色んな事ができますし」
「ふふっ、レナ姉、お揃いだね。私も能力より、魔法をよく使うよ」
「お揃い⋯⋯良いですね、それ。嬉しいです」
笑みを浮かべられ、同じようにそれを返す。知ってか知らずか、ティアは姉の扱いが上手いらしい。一度下げてから上げるなんて、それも純粋無垢な妹にされるなんて、思わなかった。やっぱり、スカーレット家の姉妹はどこの世界でも可愛いらしい。
「ティア。ティアの能力は何です?」
「力を吸収する能力だよ。触れたモノにある力で、自分を強化できそうなモノなら、何だって吸収できるの。あ、でも。吸収した力は10分くらいしか使えないし、お姉ちゃん達には効かないっていう欠点はあるよ。お姉ちゃんに効かないのは別に良いんだけど」
「⋯⋯羨ましいです。めちゃくちゃ使い易そうな能力じゃないですか」
「うーん⋯⋯そう? レナ姉が言うなら、そうなのかな」
魔法の方をよく使うから私みたいな地味な能力かと思えば、思った以上に王道で強そうな能力だった。逆にどうして魔法の方をよく使うのか分からないくらいだ。対象に触れるという前提があるから、使いにくいだけかもしれないけど。
「レナ、ティア。何してるの? 早く貴方達も、一緒に湯に浸かりましょう?」
と、お姉さまが一向に風呂に浸からない私達を見かねてやって来た。⋯⋯毎回思うのだが、姉妹だからと言って、前を隠さないのはどうなのか。目のやり場に困る私の気持ちにもなってほしい。もちろん、そんな事は全く気にしないだろうけど。お姉さまにとって、私はまだまだお子様みたいだし⋯⋯。たまには、一泡吹かせてみたいものだ。
「あ、ティアちゃん。ちょっとタイム。こっち来て」
「どうしたの?」
「ちょっとここに座って。で、足を伸ばして、腕をこうして⋯⋯」
何やらフランが悪巧みをしてる。ティアに湯船の前に座らせ、何かしらのポーズをとらせているようだ。下手に関わって怒らせないように、お姉さまと共にルナの待つ湯に浸かる。身体だけでなく、心まで温もって癒される。まぁ、それは湯の効果というよりは、お姉さまが横に居るからだろうけど。
「うん、こんな感じで良いかな」
「⋯⋯お姉ちゃん?」
「ふふふ。やっぱり、ティアちゃんは可愛いね。言われるがままにしてくれるなんて、純粋で可愛くて好きっ。今すぐにでも食べちゃいたいくらい。けど、それはティアの世界に居る私に悪いだろうしね。あ、もう良いよ。一緒に入ろー」
フランはティアを引き連れて、私の横で湯に浸かる。フランもティアも、気持ち良さそうに気の抜けた笑顔を見せる。それを見て、私もつられて頬が緩む。妹達が幸せそうで何よりだ。だが、あまり見てると自分を抑えれなくなる。可愛い顔、柔らかな肌、小さくも美しい身体。それら全てが私の好みであり、愛すべき対象だ。しかし、自分を抑えるためにも目の前にあっても触る事ができない。もし抑えれなくなれば、それこそ理性を失ってただの悪魔と化す。それだけにはなりたくない。
「吸血の代わりにさ、今日も私の隣で寝ようね」
「フラン、貴女は昨日一緒に寝たんでしょ? 今日は私の番よ」
「レミリアオネー様、違う。今日は私」
「ルナには悪いけど、今日は私だからね?」
いつか見た妹を取り合う光景。懐かしい気もするし、目新しい気もする。だけど、そんな矛盾した感覚は気にならない程微笑ましい光景だ。私もこの輪に入った方が良いのだろうか。⋯⋯いや、どうせなら、このまま行く末を見るというのも⋯⋯ダメか。蚊帳の外になるし、入った方が楽しいだろう。
「ティア、私の隣にしません? 貴女の世界にはお姉さまもフランも居るみたいですし、ね?」
「うん、そう言えばそっか。なら、そうした方が良い?」
「お姉様ずるーい。それだと自動的にお姉様とルナにならない?」
「そうよね。私とフランの事も考えなさいよ」
「あ、え。その⋯⋯」
バラバラだった2つの矛先が私へ向いた。お姉さまとフランは肌が触れ合う程近くに詰め寄り、圧力をかけてくる。危うく屈しそうになったその時、間にティアが割って入った。少し怒ってるようにも見える。
「お姉ちゃん、お姉様。レナ姉困ってる。めっ」
「あ、ティアちゃん。別に喧嘩してるわけじゃ⋯⋯ううん、そうだね。今日は私もお姉ちゃんなんだから、ティアちゃんの好きなようにして良いよ」
「そうねぇ。私も大人気なかったかしら。ティアは誰の隣で寝たいの?」
「うーん⋯⋯レナ姉と白いお姉ちゃんの間。お姉ちゃん達、ごめんね?」
ティアは両手を合わせ、お姉さまとフランにそう謝る。それを見て頷くお姉さまと何故か無言になるフラン。そして、フランはそのまま何も言わずに、ティアに抱き着いた。が、ティアの豊満な胸のせいで、しっかりとは抱き締めれてないけど。
「お姉ちゃん⋯⋯?」
「⋯⋯は! あ、ごめん。可愛過ぎてつい。最近、お姉様が構ってくれないから欲求不満なんだよねー」
「言い方。フラン、言い方に悪意があります」
まるで私がサキュバスか何かみたいな言い方だ。いや、この場合だとサキュバスはフランの方か。⋯⋯あながち間違ってないな。性格も、それ以外諸々全部同じかもしれない。1つ違うとすれば、夢の中に現れない事くらいか。
「だって本当の事じゃん。構ってくれないと、レミリアお姉様に浮気するよ?」
「レナ姉、お姉様と付き合ってるの? 良いなぁ⋯⋯」
「ティア? 勘違いしないでくださいね? ただ仲良いだけですからね?」
誤解が誤解を招く。だけど、ティアは引くどころか羨ましく思ってるようだ。私の知るスカーレット姉妹って、どうしてシスコンばっかりなのだろう。それもガチな。しかし、可愛いから理由は分かる。分かるけど⋯⋯なんだかなぁ。
「え? ならさ、お姉様。レミリアお姉様を私のものにして良いの?」
「はい? 何言ってるのです? それしたら、フランでも許しませんから。もししたら⋯⋯後悔する事になりますよ?」
姉妹としてはお姉さまもフランも変わらないくらい大好きだ。それは同じ姉妹であるミアもルナも変わらない。が、恋愛的な意味なら話は別だ。私が一番愛する人は、昔も今も、そしてこれからも変わらない。お姉さまただ1人だ。それを邪魔するなら、フランでも仲違いしない程度には許さない。⋯⋯もちろん、本気で喧嘩なんて絶対にしたくないから、しないんだけど。まぁ、仲が悪くなるようなら、一層の事みんな仲良しルートを目指すつもりではいる。
「へぇー? 後悔させれたら良いね。というかさ、お姉様もレミリアお姉様も、元から私の⋯⋯」
「はいはい。長くなるからそこまでにしましょうね。それと、逆上せそうだから先に上がっておくわ」
「あ、それなら私も上がります。ティア、行きましょう?」
「うん、分かった」
お姉さまだけ上がるはずが、何故かみんなで上がる事になった。みんなお姉さまが大好きだから仕方無いけど。私のライバル、やはり少し多い気がする。この世界にも、別世界や平行世界にも。
「⋯⋯そう言えば、ティアのサイズに合う下着とかあるの?」
「大丈夫よ。パチェの下着借りてきたから。美鈴だと大きかったし」
「お、流石レミリアお姉様。準備良いねー」
「あの、なんでティアのサイズ知ってるのかという疑問が⋯⋯。別に良いですけど」
お風呂から上がった私達は、いよいよお姉さまの部屋に向かう。長かった1日が、ようやく終わりを告げようとしていた。
「レナ姉、ねぇ、レナ姉起きてる?」
夜遅く、隣で寝ていたティアが眠れないのか話しかけてきた。先ほどまで、みんなではしゃいでたはずなのだが、まだまだ眠くないらしい。ちなみに、私のもう片方の隣には無理を言ってお姉さまにしてもらった。なので、今私はお姉さまに甘えてお姉さまの腕を掴んでいる。温かくて、気持ち良い。いつも一緒に寝てるフランには悪いけど、すんなり受け入れてくれたから良かった。もちろん、後で何か要求されるのだろうけど。
「どうしました?」
「⋯⋯レナ姉、夜に寝るのって、不思議な感じがするね。私達、吸血鬼なのに」
「ええ、そうですね」
ティアは朝に寝て夜に行動する典型的な吸血鬼だから、未だに違和感を覚えてるのだろう。私も昔は夜に行動してたけど、今ではお姉さまの影響で人間のような生活をしている。元々人間だったけど、それも遥か昔の話。忘れてた感覚が戻る事は無いが、長い時間を経て慣れはした。
「⋯⋯私、ここに来て良かったと思う。最初は慌てたけど、楽しいし、こっちのお姉ちゃん達も私のお姉ちゃん達と変わらない優しさを持ってる。だから、良かった。これもそれも、レナ姉と最初に会えたから。ありがとうね」
「ふふっ、別にいいですよ。こちらこそ、会えて良かったです。楽しいし、違う世界でもお姉さまとフランは幸せそうですから。まぁ、ルナやミアが居ないのは⋯⋯仕方無いですけど」
本来は『原作』に居ないキャラだし、恐らくは世界によって存在の有無も違うだろう。特にミアは、私の半身なのだから居る確率の方が少ない。だから、居ないのは仕方無い。だけど、この世界に居てくれる事には感謝という言葉しか浮かばない。ティアも同様に、別の世界で生きて、この世界に来てくれて本当に良かった。あちらの姉妹にも心配をかけるから、長居はできないけど。代わりに、何か面白い事でも⋯⋯そうだ。
「そうだ。明日、幻想郷の楽しい遊びを教えます。楽しみにしてくださいね」
「うん、分かった。楽しみにしてるね」
アレを作るのには時間がかかるだろうけど、作ってからは楽しめるだろう。多分、それが終わったら元の世界に帰る事になるだろうけど。それでも、ティアには大きな楽しみをプレゼントしたい。どれだけ長い間生きていても、忘れられないような楽しい記憶を。
「⋯⋯それじゃぁ、おやすみなさい。レナ姉」
「ええ、ティア、おやすみです」
お姉さまを掴んでいた片方の手でティアの方へと伸ばし、目を瞑った────
ちなみに、お風呂シーンの押絵の完全版はTwitterの方で見れます。見えてはないので健全ですよ!(
ティア主体というよりは、レナ視点だからスカーレット姉妹主体な話となった気がする⋯⋯