東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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お待たせいたしました。

ちなみに今回は結構前に頂いたオリキャラの紹介のような回。
まあ、お暇な時にでもごゆっくりと。


17話「事件の前触れ」

 side Renata Scarlet

 

 ──迷いの竹林

 

 ミアの誘いでミスティアの屋台に行き、ミアの奢りで食事をしたその帰り。

 私達は道に迷わないよう、妹紅の案内で出口を目指していた。

 

 この竹林は単調な風景や僅かな傾斜で斜めに生えた竹による平衡感覚の異常などで、余程の運がなければ出れないといった、その名の通り迷いやすい地形となっているらしい。

 最悪飛べば迷わないと思うのだが、どうやらそれでも迷う時が多いとか。

 

「ねぇ、妹紅。出口まで後どれくらいかかるのかしら?」

 

 歩き続けて十数分くらい経った時、お姉さまが妹紅にそう聞いた。

 

 歩き方もぞんざいになっているため、どうやら歩くのに退屈したらしい。飽きやすい性格はいつもだからか慣れているため、それに対して不快な思いをすることはない。そもそも、それくらいで優しい姉を嫌いになるわけないが。

 

「後数分で着くからそう急かすな。暗くなる前には帰れる」

「そう、それならいいけど⋯⋯」

「お姉ちゃん、暇なら私達とクイズで遊ぶー?」

「あら、いいじゃない。どんなクイズ?」

 

 退屈している姉に、アミーとクイズで遊んでいたミアが誘いかける。

 

 密かに聞いていたが、とても普通のクイズではなかったと思う。

 

「えーっと、クイズというか診断に近いんだけど⋯⋯ある男が刃物で人を殺す計画を立てました。犯行に使う刃物を買いに行ったところ、安くて切れにくい刃物と高くて切れやすい刃物が売っていたの。で、その男は安い方の刃物を買いました。いったい何故でしょう?」

「安い刃物を買った理由を当てろってこと? そんなのいくらでもあるじゃない」

「違うよー。分かりやすく最初にクイズって言ったけど、診断に近いからね」

「ふーん⋯⋯変なの。とりあえず理由を考えればいいのね」

 

 お姉さまはそう言って考え込む。

 しばらく考え続けているとミアが「直感で一番最初に出た答えでいいよ」と話し、それによって一つの答えを選んだらしく口を開いた。

 

 ちなみに私はその診断の意図も答えも知っている。昔、本か何かで見たことがあるのだ。

 

「とりあえず一番最初に思い浮かんだ答えは、実はその計画で他にもお金が必要だからお金を節約した、かしらね。それ以外だと切れ味の悪い刃物をわざと選んで苦しませるために殺したとか⋯⋯」

「うわぁ⋯⋯」

「えっ、レナ? どうしてそんな顔するの?」

「微妙な答えだよね⋯⋯。でも、これは最初の方優先でいいよね。うん、だからセーフ」

 

 ミアは若干引き気味ながらも、1人で納得すると続けて次の質問へと移る。

 

「あら、答えは?」

「つ、次の診断の後に一気に言うね。同じようなやつだから」

「ふーん⋯⋯まあいいわ。早く出しなさい」

「はーい。あ、ちなみにアミーもしたけど、2つともセーフだったよ」

 

 ミアはそう言って一呼吸置くと、次の診断へと移る。

 

 それにしてもアミーが診断でセーフだったのが意外だ。彼女達悪魔が必ずしもアウトだというのもおかしな話だが、それでも私は意外に感じたのだ。

 

「じゃあ次ね。貴女が家に帰ると死体がありました。さて、どうします?」

「死体? 死体ねぇ⋯⋯。質問だけど、それは人間のよね? それと血液型は?」

「は、はい? え、えっと⋯⋯多分人間だね。血液型はお姉ちゃんが自由に決めていいよ」

「分かったわ。ならそうねぇ⋯⋯」

 

 再び考える仕草を見せるも、次はものの数秒ほどで顔を上げる。

 

 まあ私は長年一緒にいたこともあり、質問した辺りから言うことくらい分かるのだが。

 

「食料にするわね。そもそも家に死体があるくらい普通じゃない? うちにだって備蓄くらいあるわよ。貧乏じゃないんだから」

「うーん⋯⋯セーフなようでアウト⋯⋯」

「私なら人里に届けるな。犯人だと疑われるかもしれんが、放っておくよりはマシだろ」

「やっぱり妹紅は思考が人間寄りだね。でもちょっと違うかな?」

「人間よりもずっと長く生きているからな」

 

 妹紅の何気ない一言に、一瞬だけその場の空気が固まる。

 本人や何も知らないアミーは気にしなかったり疑問に思ったりだったため、その場の空気が再び動き始めるのにそう時間はかからなかった。

 

「ああ、そう言えば私達よりも長生きしてたわね」

「ああ、そうだな。だが長生きしても良いことばっかりってわけじゃないぞ。私はそれをこの地球上の誰よりも自覚しているだろう」

「んー、まあ人間なら妹紅くらいだろうねぇ。もしかしたら始皇帝とかも不老不死になってたりするかもだけどね」

「へぇー、私以外にも不老不死の人間がいるかもしれないのか。一度くらいは会ってみたいな」

 

 期待している様子を見せず、遠いところを見るように妹紅はそう呟いた。

 

 始皇帝と言えば中国で最初の皇帝のことだろうが、不老不死とは水銀を飲んだアレのことだろうか。でもあれはただの伝承だし、何かきっかけがない限りは幻想入りすることはないだろう。いや、もしかしたら幻想入りしていたりするかもしれないが。

 

「それはそうと、さっきの診断は結局なんだったの? 早く答えを言いなさいよ」

「あ、ごめん。完全に忘れたよー。あれはね、別に正しい答えがあるとかじゃないんだ。でもその答えによって──」

「話の途中に悪いが、殺気だ。狙われてるな」

 

 妹紅のその言葉と同時に辺りに青く濃い霧が立ち込める。

 そして目の前から一つの影が近付いてきた。

 

「そ、ソロモン様⋯⋯?」

「⋯⋯もう。また霧だよ。次は誰? 狙いはアミー? 一応捕虜なんだから渡さないよ!」

「いいえ、ソロモンではありませんよ。私はアムドゥスキアス。以後お見知りおきを」

 

 丁寧な物言いと引き込まれるかのような錯覚に陥る音楽とともに現れたのは、下半身が馬のケンタウロスのような女性だった。額には一本の角を持ち、上半身は白くゆったりとしたワンピースのような服を着ている。手には音楽の発生源らしいハープを持ち、奏でている。

 

「アムドゥスが⋯⋯助けに来てくれたの?」

「可能なら、助けましょう。しかし私の目的は邪魔者の排除。1人でも多く殺せば次に活かせるでしょうから。といっても、私よりも強く設定されたはずのブエルが負けた時点で難しいですけど」

「あら、ならどうして姿を見せたのかしら?」

 

 お姉さまがそう問いかけるも、彼女は黙り込んで答えようとしない。

 

 おそらくは何かの時間稼ぎだろうが、フィオナやフラン、ルナ達は固まっている。だから心配はないはずだ。それにこの時間なら家に帰っているだろうし、そもそも私の魔法が発動していないからフィオナに危険は迫っていない。

 

「⋯⋯だんまりね。まあそれもいいわよ。楽に逝かせてあげるわ!」

「ミアはここでアミーを守ってください。私はお姉さまを」

「え? り、了解! アミーちゃん、ちょっと拘束するけど、動かないでね」

「うぅ⋯⋯」

 

 アミーをミアに任せ、お得意のグングニルを装備して先制するお姉さまの援護に回る。

 

「貫け、グン──きゃっ!?」

「おね⋯⋯あぅ!」

 

 しかしグングニルの攻撃が当たる前に、お姉さまは私の視界から姿を消した。

 そして痛みと同時に私の視界もいつの間にか逆転し、背中に別の鈍い痛みが生じる。

 

「滑稽ですね。ここで襲いかかった理由をお教えしましょう。それは私自身、ここが戦いやすいから。私は木々を曲げることができ、草も多少は操れます。それは竹も同じで、木よりも細くて扱いやすい竹は武器になりやすい」

「いったいわねぇ⋯⋯? 少し油断したけど、もう手加減しないわよ?」

 

 ようやく見つけたお姉さまは近くで仰向けに倒れていたようで、怒りに顔を赤くさせていた。

 顔から見ても分かる通りかなりムカついたようで、グングニルを強く握りしめている。

 

「怖いですね。こういう時は落ち着いて⋯⋯打たれなさい」

 

 再び襲いかかる竹に対して、私達は次はしっかりと注意しながら回避していく。

 弾幕ごっこに慣れていたのもあり、この手の回避はお手の物だ。

 

「当たらないですね。ならこちらを先に⋯⋯!」

「あ、こっち!?」

「ミア!」

 

 私達には当たらないと察したアムドゥスキアスは、狙いをミア達に変更させる。

 彼女達の周囲の竹を一斉に使い、囲むようにして攻撃を繰り出した。

 

「アミー、貴女だけでも攻撃に当たらないようにしゃがんで──」

焰符(えんふ)自滅火焰(じめつかえん)大旋風(だいせんぷう)』!」

 

 しかし竹は命中することなく、高温の炎によって焼き払われた。

 妹紅が命中する寸前に、炎の盾を作り出して彼女達を守ったらしい。

 

「あ、つ──ありがとう!」

「いいってことよ。でも燃え広がるかもしれないからあまり多用はできないんだよな⋯⋯」

「雨降らす?」

「ああ頼む。ちょっと炎が強すぎて竹林全体が燃えちまいそうだ」

 

 遠目から見ても「ちょっと」なんてレベルじゃなかったが、どうやらあちらは大丈夫らしい。

 炎を使えなくして、二度目の攻撃に対応できるかは分からないが。

 

「今度こそ──グングニル!」

「いつの間に⋯⋯っ!」

 

 ミア達の方に気を取られていた私と違い、お姉さまはアムドゥスキアスへ槍を向けていた。

 その槍は手を掠め、音源であるハープを手放させるも、大事に至るような傷ではない。

 

「き、キサマァァァ⋯⋯! 私の大切な、大切なモノを⋯⋯!」

「お姉さまに、近付くな!」

 

 姉に向けた殺気を感じ取り、自然と身体が動いていた。

 手にクラウ・ソラスを召喚させると、真正面から斬り付けていた。

 

「っ⋯⋯、キサマもか、私に傷を⋯⋯!」

「本性を現したわね、流石悪魔! でも妹に手を出させないわよ?」

 

 アムドゥスキアスは私の方へ怪しげに手を近付けるも、割り込んできたお姉さまによって阻止される。そして続けざまに攻撃される前に敵は後退し、再び手にハープのような物を召喚させて持つ。

 

「もう遊びは終わりよ。これから先は憤怒。キサマ達を殺すための憤怒の──」

「るせぇ。そいつらは俺の獲物だ。あんたの物語()はもう幕引きだ。お終いなんだよ」

 

 どこからか男性の声が聞こえた。

 そして次の瞬間、上空から降ってきた何者かによって、アムドゥスキアスは切り裂かれる。

 

「な、に⋯⋯?」

「くたばれ、悪魔め」

 

 憎しみや怒りに近い感情が篭ったその声が吐き捨てられたとともに、アムドゥスキアスは崩れ落ちる。まだ生きてはいるようだが、長く持つような軽い傷ではない。

 

「⋯⋯吸血鬼? いや、違うわね。誰よ?」

 

 お姉さまが見やる方向に、その切り裂いた者がいた。

 

 癖のある白い短髪に青い瞳。明らかに悪魔を嫌う文字が描かれたTシャツを着て、あちこちが破れた黒いジーンズを履いた高身長の男性。黒と赤のスニーカーを履き、右腕には肘まである長い手袋を付けている。私達の中で一番背が高い妹紅でも持つことが難しそうな大剣を背負っている。また首には紅いアミュレットを掲げている。

 

「はっ、俺はあんたらを憎む者だ、一緒にするな!」

「キサマ⋯⋯ソロモンに雇われておきながら、歯向かうのか⋯⋯!?」

「あんな奴、いつでも殺せるさ。それよりもあんたは自分の命の心配をした方がいいぜ? もうすぐ死ぬんだからなぁ!」

「死ぬ⋯⋯? 我ら七十二柱の魔神に、死という概念は存在しない⋯⋯。召喚されれば応じ、命令に従う⋯⋯。そしてソロモンに勝てるなどと思わないことだ。キサマらもだ⋯⋯!」

 

 アムドゥスキアスは最後の力を振り絞るように私達の方へ向く。

 もう命も短いというのに、死ぬことを怖がっていないようだ。

 

 彼女が豪語するように、死という概念が存在しないことが本当なのかもしれないが。

 

「誰も、例え万能であったとしても、未来が見えたとしても、()()ソロモンに適うことはない。それこそソロモンと同じような力を持つ者にしかね⋯⋯」

「言いたいことはそれだけか? なら死ね」

 

 首を男の持つ大剣によって切り落とされ、今度こそアムドゥスキアスは絶命した。

 霧は消え去り、またその死体も霧と同じように消えてしまう。

 

「⋯⋯で、貴女は一体誰なのよ。それに──」

「答える義理はねぇなぁ。だが一つだけ言っておこう。次あった時は殺す。恨むならあんたの親か種族を恨め! そして潔く苦しみながら死にやがれ!」

 

 男は私達に向かって中指を立ててそう言い残し、上空へと去っていく。

 命を救われたようにも取れるが、少し腹が立つ奴だ。

 

「⋯⋯お姉さまを馬鹿にするなんて、誰なんでしょうね、あの人」

「さぁ? 分からないわ。でも恨まれる心当たりはたくさん⋯⋯って、レナ? どうしたの?」

「はい? 何がです?」

 

 ぐいっとお姉さまに顔を寄せられ、鼻が当たりそうなくらい顔が近付いて少し緊張する。

 今の私は、胸に触れなくても鼓動が聞こえるくらい、緊張している。

 

「⋯⋯いえ、気のせいだわ。一瞬色が変わったような気がしただけよ」

「色が、変わる?」

「いいのよ、気にしなくて。それよりも手伝ってくれてありがとうね。妹紅もミア達を守ってくれてありがとう。今度何かごちそうするわよ」

「いいや、遠慮しとくよ。人間が悪魔と関わっているなんて噂になったら困るんでね」

 

 そう言いながらも褒められたのは素直に嬉しいらしく、顔が赤くなっている。

 

 いや、もしかしたら私と同じように⋯⋯なんて訳はないか。

 彼女には寺子屋の教師や蓬莱人がいるし。

 

「さぁ、早く帰りましょう。フラン達が心配だわ」

「そうだね。もう動けるから安心してね、アミー」

「う、うん⋯⋯」

 

 そうして妹紅の案内により、数分後には外へと出れた。そして家へと帰るも、フランやフィオナ達は無事で、私達はひとまず安堵する────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side Alice Margatroid

 

 ──魔法の森

 

 魔法の森。そこは茸は食用となる物もあるものの、化物茸や幻覚作用のある茸も多数生息しているため耐えることのできない一般人が住めるような土地ではない。しかし逆に言えばその瘴気に耐えられる者にとっては隠れ蓑となる安全な場所だった。魔法の森と呼ばれるようになったのも、この幻覚作用のため。この幻覚作用が魔力を高めるということで、この森に住む魔法使いも少なくない。

 

 そしてそんな魔法使いの一人、アリス・マーガトロイドは人里で行う人形劇の帰りの最中だった。

 

「⋯⋯どうしましょうか」

 

 彼女は一人、悩んでいた。

 今、彼女の目の前には青年が気絶していた。身長は190後半といったところで、髪はところどころ白が混ざった灰色。服は一枚の大きな布を二回巻いた程度のもので、顔には犬歯の長い霊長類を模した『ヘッドギア風』の物を付けているが額辺りしか覆っていないため顔はほとんど見えるという、奇妙な格好だ。

 しかし何よりも目に付くのが異形な左腕。朱色と紺色の二色に染まっている腕は、一見すると生々しさのある手甲のようにも見える造形で、何よりも普通の腕よりも大きい。人間一人程度なら鷲掴みできそうなほど大きい。

 

「⋯⋯とりあえず家にでも連れて帰ろうかしら。こんな場所に置いておくわけにもいかないし」

 

 アリスはそう考えると人形に指示を出し、手馴れた様子で人形達に青年を抱えさせる。

 そしてそのまま、森の奥へと連れていったのだった────




ちなみにちゃんとした紹介は全員出てから最後にします。

それと受験によりしばらく低浮上となり、投稿ペースが格段に落ちます(具体的には2週間に一話、一ヶ月に一話程度)。ご了承ください。
ついでですが、活動報告にて番外編(2章終了次第こちらへ移行)もありますので、お暇な方はどうぞ。何故か一話は本編と違って押し絵が二枚もあるという贅沢ぶりです()
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