東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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お久しぶりです。
最近、今と比べると前作の投稿ペースって信じられないなぁ、とか思っているrickです。

まあそれはともかく20話目です。前作と違い6章の構成となる予定ですが、量的にはあまり変わらなさそうと思い始めている⋯⋯。





20話「序列18番 蒼白公」

 side Alice Margatroid

 

 ──魔法の森(アリスの家)

 

「俺は、こことは異なる世界⋯⋯所謂異世界から来た⋯⋯と思っている」

「異世界から来た、と思っている? 確定ではないのね」

 

 握剌童子の告白にアリスはさほど驚きは見せず、普通では信じられないはずの言葉をすんなりと受け入れた。握剌童子から見ても彼女は嘘だと思っている様子はないらしく、彼は思い描いていた想像と違うためか呆気にとられている。

 

「⋯⋯落ち着いているな。異世界から来た者は珍しくないのか?」

「そんなことないわよ。私も知る限りじゃ1人、それも噂でしか聞いていないから」

 

 今度は逆に握剌童子の方が驚かされた。噂だとは言っても目の前にいるアリスが自分の話を聞いても驚いていないのだから、握剌童子は真実なのだろうと思っているようだ。そして僅かに考える素振りを見せる。

 

「やはりいるのか、俺と同じような奴が。来た経緯は違うだろうが⋯⋯」

「本人に確認していないから詳しくは知らないけど──というか興味もないし──転生という形でこの世界に来たらしいから、貴方とは違うでしょうね。少なくとも、この世界の家族がいるから違うのは確実でしょうけど」

「なるほどな。なら俺が探している奴らとは⋯⋯。ああ、俺の目的を言っていなかったな」

 

 アリスが話についていけないのを見て彼は話を変える。

 

 彼によると、目的は自身の仲間──とは言っても味方か聞かれたらそういうわけでもないらしく──を自身の世界へ連れ戻すことらしい。彼の仲間達は握剌童子も含め()()()()()()()が、とある研究により皆変わってしまったらしい。その研究の原因が彼自身にもあると考えているようで、他の研究対象こと童子達を元の世界に連れ戻し、また可能ならば元へと戻したい、とのことである。

 またここへ来た経緯は自分でも分からないらしく、倒れていたのも疲労が原因だとか。何故疲労していたのかはある男が関係しているらしいが、その正体は彼にも分からないらしい。ただ目的を邪魔する者もいるということだ。

 

「俺の予定通りなら本来は元の世界へ戻れていたはずなんだが⋯⋯ここの住人に邪魔されたり、意味の分からん奴のせいで余計にどこにいるかも分からず、と色々あってな」

「怒るのも無理ないわね。私はその童子達を連れ戻す協力をすればいいのかしら? 話を聞く限り危険な要素は少ない気もするけど」

 

 アリスのその言葉に握剌童子は首を横に振って違うことを示す。

 

「何を言っている。危険しかないぞ。童子達は俺みたく個々の能力を持つ。見てわかる通り俺の左腕は普通じゃない。さっき俺が呪いを()()()()()のを見ただろ? あれが能力だ。遍く掴み握る能力。⋯⋯誰も言うなよ?」

「まず話さなければよかったと思うわ。信用してくれていると受け取るからいいけど」

「そう受け取ってくれて構わない。ここにいる俺の味方はお前くらいだからな」

「⋯⋯貴方も大変ね」

 

 アリスは些か同情の目を向けていたのだが、それに気付いてか気付かないでか少年はベッドから立って窓の外へと目を向ける。そしてしみじみと、昔でも思い出してか懐かしむように暗い空を見上げた。

 

「まあな。だが童子達が変わったのは俺の責任だ。それから目を逸らすわけにはいかねぇ。それに覚悟も決めてきた。──エゴで潰す覚悟を、な」

「⋯⋯あらそう。そう決めているのなら私も手伝いやすいわ。それでこれからはどうするの? 何処にいるか分からないのなら無闇に探すのもいいかもしれないわよ」

「いや、まずはここの地形に慣れたい。だからこの場所を案内してくれ。それに童子が現れれば少なからず騒ぎは起きるはずだ。俺達はそれに気付くだけでいい。もちろんできる限り犠牲は出したくないが⋯⋯仕方あるまい」

 

 彼の覚悟を聞いてアリスは「分かったわ」と一言だけ返す。握剌童子は軽い反応に僅かに驚くも、そういう性格だと納得しているようだった。そしてこれからの方針を決めたアリス達は暗い森の中へと出ていった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side Fiona

 

 ──地底(バティンの隠れ家)

 

 バティンに連れられフィオナがやって来た場所は何処かの家の中だった。見る限りでは窓はなく、生活に必要な最低限のものしかない。そして他の部屋に繋がる扉はあるようだが、外へと繋がるような扉は見当たらない。そこは正しく密室であり、魔法による移動手段か物理的に壁を破壊するしか出ることは叶わない構造のようだった。

 

「ここは? ⋯⋯周りの魔力は変わっていないから地底なのは分かる」

「⋯⋯早いですね。いえ、お気になさらず。お察しの通りここは地底です。誰にも見つかりたくないので外へと通じる道はありません。外から見てもここが分からないように細工もしてます」

「それだけ警戒しているのは、誰が敵か分からないから? それとも敵がどれか分からないから?」

「どっちもです。敵の一部はあまり知らないですし、化けて来るので誰がどれか分からないからです。全員ただ消すだけなら簡単な仕事ですけど」

 

 バティンのその言葉は微塵も傲慢さは感じられず、それが真実なのだと考えさせられるほど平然とした顔だった。それもそのはずで、サタンとも呼ばれるルシファーの側近の二番手であり、実力は本物である。並の悪魔程度が相手なら、何体いても結果は変わらないだろう。

 

 もちろん()()()()()()()()の話だが。

 

「全員消すのは難しいと思う。特に夏だと魔王がいる」

「冗談です。流石に私でも全員を相手取って勝てるとは思っていません。普通ならの話ですけど」

「まるで普通じゃない言い方。どういうこと?」

「召喚の違いです。私達の召喚者は私達の力を均等にはせず、バラバラにして召喚しました。その中でも相手にとって運の悪いことに私は力の強い方になったわけです。実際の力に物凄く近い状態で召喚されました」

 

 平然とした様子でそう語るも、それは裏を返せば実際の力に近い状態で召喚できる相手が敵なのだから安心はできない。とフィオナは静かに考えていた。だが召喚した影響で魔力が落ちている可能性も否定はできず、結局は相手の力量を測ることは難しいとフィオナは結論づけた。

 

「なので安心して守られてください。」

「そうとも言えない。敵は多いから。それにその理屈でいくと強い敵もいると思う」

「それもそうですが、味方もいます。偵察代わりに使っているのでここにはいませんけど。それと改めて自己紹介しておきます。私はバティン。ソロモン七十二柱の序列十八番。特技は耐熱と薬草や宝石の知識があること。そして瞬間移動です」

「空を飛ぶ方が楽しいと思うから、瞬間移動はいらなさそう」

 

 そう真っ直ぐな目を向けるフィオナに残念そうな顔になるバティンだが、フィオナには悟られまいと元の無表情へと戻る。フィオナの方も気付いているかどうかは分からない微妙な表情だが、それについて追求することはなかった。

 

「⋯⋯では既に知っていると思いますが、フィオナ様の敵のことを話しておきます」

 

 そして一瞬の間など、何事もなかったかのように話を再開する。

 

 バティン曰く、知っての通り敵はソロモン七十二柱の悪魔達であるが、私のように敵ではない悪魔も少なからずいるらしい。勢力的には三つに分かれており、一つ目は最も数が多く勢力も大きいであろう召喚主に従うグループ。二つ目は召喚主の考えに背き、フィオナを守るために何体かが手を組んだグループ。そして最後にどちらにも属さず、自由に行動する不確定ながらも確実にいるであろう者達。この内、最後の悪魔達だけは敵か味方かは分からないようで、極力干渉はしない方がいいのだという。

 

「それと最初の悪魔達ですが、共通して奇妙な霧が出るみたいです。色や効果はそれぞれ別ですが、絶対に実体として出てきたら霧が出てきます」

「なるほど。何度か会ったことがある。でもその度に撃退してるから大丈夫?」

「一時的には大丈夫です。ですけど本当の意味で死ぬことはないです。いわゆる本物の部分的な存在ですから。本物が出てきたら最初のフルカスで負けてたと思います」

「見てたの?」

 

 フィオナの「なら何故助けてくれなかったの?」と言わんばかりの問いに、少しだけ顔を俯かせる。悪魔というには幼く弱々しい容姿も相まって、責めることが悪く思えてきそうだ。だがそんなことも考えず、ただ真っ直ぐな疑問を持つフィオナに悪気はない。本当に、見た目の年齢相応に好奇心旺盛なだけなのだから。

 

「見ていたとは少し違いますが、助けに行けたのは間違いないです。ですがその時はまだ味方もいなかったので、吸血鬼の娘に託しました。もしものことがあれば私も行くつもりでしたけど⋯⋯。フィオナ様には悪いですけど吸血鬼は見捨てるつもりでいました」

「どうして? レナお姉ちゃんのこと、嫌い?」

「いえ、違います。好きも嫌いもないです。ただフィオナ様があんなに気に入るとは思っていなかっただけです。⋯⋯それはさておき」

 

 早口で訂正していた以外には慌てた様子もなく、バティンは淡々と話を続けていく。もちろん特段何かに反応する様子もないフィオナは、その場にちょこんと座って続く話を静かに聞いている。

 

「敵が本物でなく召喚されたモノである以上、一番手っ取り早く片付けるには召喚主を倒すしかありません」

「それができたらここまで苦労していないと思う」

「話は最後まで聞いてください。ほんと悪い癖です⋯⋯。私はルシファー様の命令も受けていますからフィオナ様の味方に付いていますけど、あちら側に付いた奴らはそんなこともお構い無しに邪魔してきます。それにまだ召喚主はこの世界に入っていないので、今は素直に対抗する準備を整えることしかできないです」

 

 そう言いながら立ち上がり、部屋にある机の引き出しに手をかける。中から手鏡のような物を取り出すと、しばらくの間、静かに覗き込んでいた。そしてその手鏡に向かって話しかけ、少ない言葉を発した後、元の引き出しへと戻す。

 

「今のままでことが進むと春頃にはこちらに来るそうです。敵は多く、私より劣るとはいえ強いです。⋯⋯春に行われるという宴会には行きたいですよね?」

「うん、行きたい。ボクもレナお姉ちゃんに誘われてるから。好きな人の誘いは断りたくない」

「そうですか⋯⋯。アレのことですから、宴会の時にでも襲ってくる可能性が高いのですけど」

 

 残念そうに、さらには若干悔しそうな表情でバティンは続ける。フィオナに対しての感情が僅かに隠しきれてないが、フィオナは追求しないのでいいと思っているのだろうか。

 

「そうなの? なら宴会はやめた方がいい?」

「⋯⋯いえ。フィオナ様がやりたいのなら止めません。ですけど戦える人の側に居てください。最悪の場合、何人か死にます。または消えます」

「あまり変わらない気がする。それと、召喚主の検討はついている? 敵の動向も詳しいみたいだから、知っててもおかしくないと思う。それにバティンを召喚したのも、召喚主だよね?」

「そうですけど、あまり言いたくない名前です。ですけど、どうしてもと言うなら⋯⋯」

 

 そう言って、フィオナの目を真っ直ぐと見つめて、バティンはその名を口にする。自分でも信じられないが、といった表情で。

 

「魔術の王、ソロモン⋯⋯と彼は名乗りました」

「ソロモン? 確かに悪魔とはいえソロモン七十二柱を軽々しく駒のように使える魔術師は限られている。でもおかしい気もする。ソロモンなのに、みんな強い状態で召喚できないの?」

「フィオナ様の意見は最もです。ですから私も、実際はソロモンではないと思います。魔力もソロモンのようでソロモンのようではないモノですし。ですから、実際はソロモンに似た誰か。もしくはソロモンになりすましている誰かと思います」

 

 結局分からなかった敵の本当の正体。だけど改めて敵のことを知り、いつ動くのかも、反撃するチャンスもフィオナは知った。そして一緒に戦ってくれる仲間の存在も知ることができた。だが、心のどこかで。頭の片隅で。フィオナは密かに疑問を感じていた。何か引っかかるモノがあると感じていた。それが何かはバティンと会話している間に気付くことはなかったが、疑問の正体がソロモンと関わることだとは分かっていた。

 

「フィオナ様。もし万が一にでも相手を倒せずに夏が来たら、()()に気を付けてください。あいつが出てくる時期になったら、貴女のお気に入りの吸血鬼も味方ではなくなっているかもしれませんから」

「それは大丈夫」

「え?」

 

 大丈夫と確信したような微笑みをバティンに向けた。さらにはまるでこの先、何が起きるか分かっているかのように、言葉を発する。

 

「信じているから。仲良くなったみんなのこと。守ってくれたレナお姉ちゃんのこと。それにお姉ちゃん、身体的な成長はもうしないと思うけど、能力と魔法だけは成長しそうだからね」

「ある意味死刑宣告よりも厳しい意見ですね」

「え? でも今のバティンも身──」

「今の状態でも成長します。いいですね?」

「う、うん」

 

 バティンはレインコートの下から尻尾である蛇まで出して威嚇し、半ば無理矢理フィオナにそう言わせる。尻尾の蛇は絵に描いたような緑色で、バティンが操っているのか、それともバティンの意思に反応して自分で動いているのか舌を出してフィオナを威嚇している。

 

 どうして威嚇しているのか気付いていないフィオナだが、今は大人しくした方がいいと察したらしい。その後は下手なことを言わずに、何事もなくレナの下へと送られた──

 

 

 

 

 

 ──紅魔館への帰り道──

 

 レナと合流したフィオナは、湖の上空を飛んでいた。帰るのに魔法による転移を使わないのは、フィオナの空を飛んで帰りたいという要望からだった。断る理由もないレナは潔くそれを引き受け、現在に至る。

 

「どうでした?」

「レナお姉ちゃん、どういうこと?」

 

 家に着くまで後数分というところで、レナはフィオナに尋ねる。しかし何を聞かれているのか分からなかったフィオナはそう聞き返した。

 

「誰かと会ったのですよね? 何を話したとかは聞きませんが、どうです? 楽しかったです?」

「楽しい⋯⋯そういうのは違うと思う。でも分かったことがあった。⋯⋯レナお姉ちゃん」

「どうしました?」

 

 何か話そうと思ったのか、恐る恐る小さな声で名前を呼ぶ。言いたい事はあるが、言うべきか否かで迷っているようにも見えた。そんな気持ちも気付かなかった鈍感なレナは、図らずも優しい口調と顔で答えを待った。

 

「⋯⋯いいえ。宴会楽しみだね。誰が来るか楽しみ。色々な人に会ってみたい」

 

 心配をかけたくないのか、話すべきことは話さずに本心を隠す。口にした言葉も思っていることなのだが、そういう事を言いたかった訳ではなかったのだ。本当は相談するつもりだった。しかし、フィオナはバティンの「これからは見守るから自分のことは秘密にしてほしい」という約束を受けて、何も話さない、良く言えば心配をかけない方を選んだ。信用しているからこそ、そして自衛する力を身につけてしまったがために、心のどこかで余裕を持ってしまっていた。

 

「そうですねー。私は誰かと関わることも少ないですし、宴会の時にでも誰かと仲良くなってみたいです。あ、でもずっとお姉さまの側に居たい気持ちはあります」

「平常運転。⋯⋯本当に楽しみ。宴会までもう少し。でも時間はゆっくりがいいな」

 

 小さくそう呟いたフィオナ。その後は喋ることもなく、ただ空を飛ぶ心地良さだけを感じていた。流れに身を委ねると身体で表現するかのように──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯教えてくれないのは残念かな。でも信用はされているみたいで、幸せそうな人生で良かった。前は短かったしね。吸血鬼だしまだまだ時間はあるけど、半分は切ったよ。多分、今回が一番幸せだから、終わるまでせいぜい楽しみればいいね──レナータ・スカーレット。わたしとしては、次も、またその次も楽しみなんだけども」

 

 それはフィオナ達が家へと帰った後のこと。存在を知られることを望まない彼女は、誰もいないことを確認し、表面に出ることでしか喋れない彼女はポツリと呟いていた。何度も経験はしているも、彼女は()()()本来の自分よりも弱々しい身体を持った。なのに今までの中で最も幸せ道を辿っている。そんな素直に喜べない今の中でも、知覚してしまったのだから、彼女は無気力に楽しもうとしていた────




頂いたオリキャラがもう1人の主人公になりそうな感じになりそうな予感。いっそのこと番外編の主人公にでもしようかなぁ。
頂いたキャラですが、こちらは阿久間嬉嬉様に頂いた方ですね。キャラはかなりの数を頂きました。ちなみに17話に出てきた男性キャラは猿魔様に頂いたキャラです。どちらもハメ作家さんですので、良ければお二人方の作品もどうぞ。
なおまだ詳しい設定はしばらく出せませんが、その時になればちゃんと紹介しようと思います。

さて、久しぶりに顔出して覚えている人も少ないかもだけど、前回少なかったし⋯⋯
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