東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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まだまだ安定はしませんが、今年中にまだ何話かは出すかもしれません。結局はやる気と結果次第になりそうです(


21話「弾幕は自然と赴くままに」

 side Fiona

 

 ──春 紅魔館(フィオナの部屋)

 

 その季節では日差しが暖かくなり、雪は跡形もなく消える。一面真っ白な世界に色が付き、たった数ヶ月で数多の変化が起きた。寒さで凍り付いて流れが遅かった川は、元の水色をした和やかな速さに戻った。冬の間は静まっていた動物達も、今では騒がしく声が聞こえている。寒さを耐え続けていた草木は、春の訪れとともに生き生きと日光を浴びていた。

 

「春ですよー! 春ですよー!」

 

 そしてその名の通り春の訪れを告げる妖精、春告精のホワイトリリーが今日も騒々しく、春を伝えて回っている。最早幻想郷では恒例行事で気にする者もいない。はずだったが、未だに幻想郷の春に慣れていないある者はそれを煩わしく思っていた。

「五月蝿い。まだ四月なのに⋯⋯。吸血鬼という悪魔の居る館にここまで近付き、声を張り上げる妖精の行動は読めない。殺されても『一回休み』があるから大丈夫だと思っている? それとも居ないことを知ってわざと⋯⋯?」

 

 そう、今現在、吸血鬼の館であるはずの紅魔館には吸血鬼が1人もいない。皆宴会の前準備と謳って博麗神社に行っていた。実際に準備を手伝いに行ったメイドや吸血鬼の妹も居れば、ただ遊びに行った吸血鬼の姉も居る。準備で忙しくなると、ずっと一緒にいることも見ることも難しいとなった結果、フィオナは一番安全だと思われるここに残ることになった。魔法使いと魔法少女の合同による結界が張られているため、誰かが出入りしてもすぐに気付ける。だから最悪襲われても大丈夫ということになった。それが決まった時は、フィオナも特段行きたいという気持ちはなかったため不満はなかった。

 

「いや、妖精がそこまで考えてはなさそうだから、きっと前者なのかな。⋯⋯暇」

 

 それに春告精なのだから告げる相手がいなければ意味もない。と、フィオナは考える。

 

 悪気はないとは言え、フィオナの視点は少し上から目線のようだ。記憶がない今、それが記憶を失う前からなのか、それとも記憶を失ってからなのかは定かではない。しかし心のどこかでは、幾らか相手を見下すようにはなっているらしい。

 

「暇とは忌むべきものである。人とは何かに縛られているからこそ、何かを充実に感じる。⋯⋯人は閑暇を犠牲にして幸福を得る。だけど、幸福とは自由な閑暇があってこそはじめて望ましいものとなる。⋯⋯何言っているんだろう、ボクは⋯⋯」

 

 家に居てもやることのないフィオナは時間とともに退屈という気持ちが強くなっていた。フィオナが聞いていた話によるとレナ達が帰ってくるまでまだ数時間以上はあるという。それまで何もせずに過ごせる程、フィオナの好奇心は弱くなかった。

 

「よし、誰もいないな。フィーオナっ! あっそぼーぜー!」

「えっ⋯⋯パンサー?」

 

 フィオナは突然自分の部屋に入ってきたパンサーに対して驚き、さらには咲夜と一緒に準備をしに行ったはずの彼女が何故ここに居るのかと疑問にも思った。パンサーとは新しく入ってきた妖精メイドなのだが、些か態度に問題があるらしく、メイド長である咲夜にはよく注意されている。フィオナとは主従関係に近いのだが、友達とも呼べる間柄だ。

 

「どうしてここに? 宴会の準備は?」

「面倒臭いから帰ってきた! ま、気にすんな! 少し怒られる程度でアタシは遊ぶのを諦めない!」

「そこは諦めよう。仕事だから。それと別に怒られても変わらなさそう。反省しなさそうだから」

「うっわ、酷いなー! アタシだって反省する時はするぞ?」

 

 そう言うパンサーにフィオナは懐疑の目を向ける。数ヶ月という短い間にパンサーと親しくなっていたからか──何となくという曖昧なものだったが──それが嘘だということが分かっていた。確証はなくてもパンサーがそのような性格だと確信していた。

 

「それで、何か用があるの? 暇だったからボクは嬉しい」

「さっきも言った通り遊ぼーぜー! 手伝いやら家事やら面倒なこと多くて飽き飽きしてたんだ」

「メイドとしてそれはどうなのかと⋯⋯」

「だからな、アタシも同じように暇で遊ぼーかと」

 

 明らかに暇ではないし、都合の悪いことは聞こえていない様子のパンサーにフィオナは頭を抱える。しかし同じように暇だったフィオナに、その誘いを断る理由も必要もない。

 

「後で怒らえてもいいなら遊ぼう。何して遊ぶの?」

「そうだなぁ⋯⋯アタシも幻想郷(ここ)に生まれてから日は浅いから、一緒に幻想郷(ここ)を探検しよう!」

「探検? というか、生まれて日が浅いの?」

 

 フィオナは妖精メイドのパンサーを長く生きていると思っていたらしい。確かにメイド長である咲夜がこのようなヤンチャな性格でも認めているものだから、そう思っても仕方はない。それに生まれてすぐメイドになったとしても、時間的に見ればそれはかなり短いだろう。もし生まれつき家事が出来る妖精メイドだとしたら、珍しいにも程がある。

 

「まあな。さ、行こうぜ。誰かに見つかる前にな」

「うーん⋯⋯仕方ない。閑暇を活用できない者に閑暇は持てず。昔誰かが言っていた気がする。だから暇は活用しないと」

 

 フィオナは偉人の言葉を少しズレた解釈をする。それはとりあえず適当な言葉を使い、遊びに行く理由を作っているだけにも思えた。

 

「そうだな! じゃあ行こーぜー」

 

 しかし、その場に二人の歩みを止める者は居ない。そして、誰にも見つからずに外へと出てしまった。──そう、出入りを感知するはずの結界を素通りして。誰にも気付かれることなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンサーとともに外へ出たフィオナが行き着いた先は、すり鉢状の草原に一面に広がる向日葵畑だった。僅かに南向きに斜面になっていて、妖怪の山とは反対方向に位置している。ここに来た理由は二人には特になく、ただ空を飛んでいたらフィオナの方が目に付いて降り立った。しかし、好奇心で降りたはいいものの、春になったばかりのためか咲いている花は少ない。その咲いている花も向日葵ではなく、向日葵畑から少し離れた位置に幾つか咲いているくらいだった。

 

「フィオナー、こんな遠くまで来て言うのもなんだけどさー。ここは夏に来る場所だと思うぞ?」

「いいの。山は天狗が居て入れない、東はレナお姉ちゃん達が居る。だから行ける選択肢はこちら側くらいしかなかった。それでここが目に付いたのは運命だと思う」

「いつも変なこと言うよなー。おじょー様みたいに運命とか言ってさー」

 

 パンサーにとっては面白味のない場所だったのか、つまらなさそうに土を蹴る。そしてフィオナを見つめ、次に周りの風景を眺めてため息をつく。

 

「なあなあ、早く次行かないかー? 魔法の森とか行ってみたいなー」

「魔法の森は魔理沙が居るからお姉ちゃん達にバレそう」

「だけどここでずっと──」

「あら、珍しいわね。この時期に、ここに来るお客さんなんて。何か用かしら」

 

 突然声をかけられ、驚いた2人は振り返る。そこに居たのは、フィオナやパンサーよりも頭一つ分ほど身長は高く、癖のある緑色の髪を持つ女性。目はスカーレット姉妹のような紅色で、雨でもないのに傘を差す。恐らくは日傘なのだろう。服は白いシャツの上にチェック柄のベストを羽織り、赤のロングスカートを穿いている。

 

「誰だ? フィオナ、初対面の奴には気を付けるんだぞ」

「暇つぶし。暇は人を堕落させるから」

「そう、それは初めて聞いたわ。ところで失礼するわね。初対面だからこそ優しく接するものよ」

「そうかあ? アタシは初対面の奴なら結構警戒するぞ? ましてや初めて見る奴とか」

「ボクはフィオナ。これで名乗れば知り合いになる」

 

 警戒心をあらわにするパンサーを余所に、フィオナは話を続ける。フィオナは感情でも読んでいるのか、警戒している素振りは見せない。それを見て緑髪の女性もくすくすと笑い、優しい声で自己紹介を始めた。

 

「風見幽香よ。そちらの妖精さんは?」

「ぐぬぬ⋯⋯。フィオナが名乗ったからには名乗るぞ。妖精メイドのパンサーだ」

「メイド? ああ、妖精のメイドさんね。なら最近できた紅い館の人達かしら?」

「最近? 多分、数年くらい前から建っていると思うけど、紅い館なのは間違いない」

 

 そう話すと幽香はしばらくの間、フィオナをじっと見つめた。そして何かに気付いたらしく、再び幽香はクスッと笑う。

 

「私からしたら数年前も最近よ。それにしても⋯⋯魔力を感じるから魔女だとばかり思っていたけど、どうやら人間のようね。人間の魔法使いにしては天性の魔力を持っているわ」

「昔の記憶がないから分からないけど、血筋か何かだと思う。魔法は忘れているか元々知らなかったから、最近覚えたものが多いけど」

 

 それを聞いた幽香の目つきが変わる。良い退屈しのぎを見つけた、という嬉しそうな目に。

 

「そう言えば暇なのよね?」

「暇ではある。ただ幻想郷の色々な場所を探検したいとも思っている」

「なら時間は取らせないわ。少しだけ一緒に遊びましょう。弾幕ごっこで」

 

 突然の意外な提案にパンサーは驚き、フィオナは平然と首を縦に振り了承する。そして「うん」と、あっさりと申し出を受け入れたフィオナにパンサーは声を上げて二度ビックリしていた。

 

「ってかフィオナ! お前スペルカードないよな? ちなみにアタシは、妖精メイドだから必要ない、って言われて一枚も作ってないぞ」

「何枚か作ってる。お姉ちゃん達に協力してもらって。でも本当に少ない。まだ四枚だけ」

「時間は取らせない、って言ったでしょ? 二枚でいいわ。二枚もあれば実力は測れる、時間は少なく暇もつぶせる。一石二鳥よ」

「分かった。じゃあパンサー。下がってて。咄嗟(とっさ)の時に盾で守れないと思うから」

 

 フィオナがそう言うとパンサーは渋々ながらも向日葵畑から離れた位置に移動する。フィオナと幽香も──主に幽香の提案で──花が傷つかないよう、空高く移動した。そして距離を置き、互いにスペルカードの紙を手に取る。

 

「改めて確認するわよ。スペルカードは二枚。一度でも被弾するか、先にスペルカードを使い切った方の負けよ。手加減はするから威力はないと思うけど、念の為に当たりそうになったら弾幕で守ってもいいわ。被弾には含めないから遠慮なく守りなさい」

「分かった。ありがとう。じゃあお先に失礼」

 

 フィオナはそう言って、スペルカードを高く上げ、演出なのか持っていた紙に火を纏わせて燃やした。そしてそのスペルの名前を大きな声で宣言する。

 

「まずは一枚目のスペルカード。召喚『クロウリーのヘキサグラム』⋯⋯発射準備」

 

 一筆書きで目の前に六芒星を描き、魔法陣を出現させる。そして右手を引き、魔力をそこへと集中させる。幽香は強者の余裕からか何もせずにただ見ているだけだ。その余裕に甘んじて、フィオナは魔力集めに集中する。

 

「それ、しばらくかかるかしら?」

「威力によって変わる。でも今回はこれだけで十分。発射用意。⋯⋯魔力放出!」

 

 右手で魔法陣を押し出すように触れ、そこから弾幕を放出させる。それは魔理沙の『マスタースパーク』のような極太ビームで、更には星型の弾幕も回るようにして発射されていた。それを見てからようやく幽香は行動を開始する。

 

「まるであの魔法使いの弾幕ね。でもちょっと遅いわ」

 

 幽香はフィオナを中心に円を描くようにして回り始めた。一つしか魔法陣を展開していないフィオナはそれを追うように魔法陣を動かすも、幽香に追いつくほど早くはない。そうして当てることなく時間だけが過ぎていき、間もなくスペルカードのタイムリミットが来ようとしている時だった。

 

「そろそろかな⋯⋯。拡散!」

 

 それを合図に一直線だった弾幕は大きくうねり、散弾銃のように無数の小さな弾幕となって拡散した。しかし予期していたのか、幽香は距離を置く。さらには元から周りを回っていたこともあり、密度が薄い弾幕の発射された方向を中心として端の方へと難なく逃れていた。

 

「発想はいいけど、遠ければあまり意味はないわね。拡散しても遅かったから。でもまるで儚い花のようで素敵よ」

「ありがとう。でも後一つしか撃てないから、貴女が終わった後に打とうと思う」

「正直ね。好きよ、そういう娘は。⋯⋯シクラメンかしらね」

「え? シクラメン?」

 

 幽香は小さな声で言ったつもりらしく、正確に言葉を聞き取っていたフィオナに少しばかり驚いた表情を見せる。しかしその表情も一秒にも満たない時間で、いつの間にか元の優しい顔へと戻っていた。

 

「いや、貴女に合いそうな花を想像していたの。本当は終わった後に言うつもりだったのよ」

「なるほど。なら理由は終わったら聞くね」

「そうしてくれると助かるわ。さあ、行くわよ。花苻『幻想郷の開花』」

 

 いよいよ幽香が一枚目のスペルカードを宣言する。宣言とともに幽香を中心として、花を模した黄色い弾幕が広がる。密度は薄いが速度は早く、そして何よりも花を模しただけあり美しさを持つ。

 

 フィオナはそれを見てから避けようとするが、あまりの速さに人間の身体では追いつかず、数発の弾幕を腕に掠めてしまう。しかし幽香は宣言通り手加減してくれていたのか、その部位は痣にもなっていない。

 

「やっぱり妖怪のスペルカード、避けるの難しいね」

「妖怪って気づいていたの?」

「うん。エンパスのようなもの。魔力から感情を読み取れる。でも君の魔力は、人のそれとは違うから。それと魔力も」

「不思議な人間ね。さあ、話は後でいいわね。次は避けれるかしら?」

 

 同じスペルカードの第二、第三波が続く。しかしフィオナも同じ失敗は二度としまいと、予め手を前に出し弾幕に備える動作を見せる。そして弾幕が来た瞬間に呪文を唱える。

 

「アルスター十八盾の一。唸る者、オーハン!」

 

 差し出した手から、黄金の角と覆い四つの盾が召喚される。しかしフィオナは盾を召喚した後も、それを伴いながら逃げ回った。もちろん盾を伴いながら弾幕に当たらないことはなく、大きな音を立てて弾幕が当たる。盾は無傷に見えるが、フィオナの顔は険しくなる。

 

「逃げ回らずに受けていてもいいわよ?」

「避ける練習したい。それにこの盾は三度だけしか守れ──あっ」

「あらら」

 

 会話に気を取られたのか、フィオナ自身、思わぬところで弾幕を受けてしまった。盾で防いだものの、言葉通りなら後一度しかこの盾は持たない。フィオナの顔に僅かばかりの焦りが見え隠れする。だが──

 

「もう少し楽しみたいところだけど、一枚目のスペルはこれでお終いよ」

 

 スペルカードの波は収まり、盾で守る必要もなくなった。それを見て安心した少女は役目を果たし終えた盾を消し去る。

 

「さあ、次は私から行きましょうか? って、盾は要らないの?」

「いいえ。次もボクからやるつもり。色々と試してみたいから」

「あらそう。ではどうぞお先に」

 

 幽香の許可を得て、二枚目のスペルカードを手に取る。もちろんこのカード自体には何の効力もないことを彼女は知っているが、一連の動きを礼儀作法とでも受け取っているらしい。手に取ったカードを高く上げ、その名前を宣言した。

 

「虚無『空間潜航』。あ、見えなくてもボクはここに──」

 

 言い終わらないうちにその場からフィオナの姿が消える。煙のように一瞬で姿形が消えた中、幽香はただ周りを警戒していた。そして、その弾幕ごっこを離れた位置で見ていたパンサーは、フィオナが消えたのをある者に似せた能力だと瞬時に理解できた。

 

 フィオナが消えた数秒後。何の前触れもなく幽香の周りで幾つもの弾幕が発生する。発生した弾幕は球状に広がるも、幽香に干渉できる位置と干渉できない位置があり、それ全てが狙って放った弾幕でないことが分かる。

 

「見えなくても攻撃はできるのね。ならここに居るのは間違いなさそうね」

 

 幽香はそう言ってスペルカードを手に取る。と、明らかに幽香を狙った直線上の弾幕がどこからともなく放たれた。しかし妖怪の超人的な反射神経はそれをいとも容易く(かわ)す。

 

「見てから反応できないとでも思ったのかしら? 幻想『花鳥(かちょう)風月(ふうげつ)嘯風(しょうふう)弄月(ろうげつ)』。見えなくても当たるわよね?」

 

 いたずらっぽく笑い、スペルカードを宣言する。周りを埋め尽くすように花の形をした弾幕を展開し、更には六方向へ直線上に進む弾幕を放つ。六方向に進む弾幕は徐々に動き、一定距離を移動すると消え、また同じ弾幕が発射される。二人の弾幕がぶつかると相殺されたり、花の方も常に出しているわけではないのだが、それでも数では圧倒的に幽香の方が多い。幽香を狙った弾幕も到達する前に花の弾幕でかき消され、ランダムな球状の弾幕も六方向に進む弾幕によって数で圧倒される。

 

 そして、フィオナの弾幕が静かに止んだ。

 

「負けた。もうお終い」

 

 スペルカードが終わると、しばらくして手を挙げたフィオナの姿が現れた。どうやらスペルカードの時間が切れたらしく、負けを認めている。

 

「あらそうなの。(妖怪)相手によく頑張ったわ。それに楽しかったわよ」

「うん。ありがとう、良い練習になったと思う」

「フィオナー。おつかれー!」

 

 終わったのを見てパンサーが急いで近付いてくる。終始心配していたのか、フィオナ達よりも疲れ切っている。

 

「パンサー、大丈夫?」

「腕掠った時は焦ったからな! 今初めて咲夜さん達の気持ちが分かった気がする」

「いつも心配させている方だもんね」

「違うぞー、心配させてないぞー」

 

 今フィオナと一緒に居ることで心配させているのだが、パンサーはそれに気付いていない。何も言わずにフィオナと遊びに出ているのだから、心配されないわけがない。

 

「フィオナ。良い退屈しのぎになったわ。ありがとうね」

「そう? 良かった。それとどうしてシクラメンなの?」

 

 弾幕ごっこ中に話していたことを覚えていたようで、自分に合う花がどうしてシクラメンかを幽香に問いただす。

 

「清純で、良い意味で遠慮がち。それに花言葉ではないけど、優しい花なのよ。シクラメンはね。あとは感覚。見ていたら思い付いたからよ」

「なるほど。でもどうして優しい花?」

「さあ。どうしてかしらね」

 

 明らか知っている風に幽香は笑ってみせる。教えるつもりはないようで、フィオナは諦めた様子で話を続けた。

 

「うーん⋯⋯まあいいや。近いうちに博麗神社で大きな宴会がある。幽香も来る?」

「ええ、行くわよ。私もある魔法使いに誘われてたから。長居はしないけど、会ったらまたお話しましょう」

「うん、約束する」

「じゃ、もういいよな? アタシ達は行くよ。早く次に行こうぜ、フィオナ」

 

 急かすパンサーに手を引っ張られ、フィオナは空へ飛ぶ。背後で手を振る幽香に手を振り返して、太陽の畑を後にした。

 

 

 

 

 

 そうして、しばらくして探検し終えたフィオナ達は出ていたことに気付かれず、何事もなく家へと帰った。パンサーはフィオナの部屋の前で別れると、どこかへ走り去ってしまった。その後どうしたのかはフィオナには分からなかったが、咲夜達が帰ってきた時に怒られているパンサーを見たという────




ちなみにこの後、パンサーは罰として宴会の時に何かやらされることになったとか。
それと幽香の話を聞いて、フィオナは新しいスペルカードを作ったそうな。
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