東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─   作:百合好きなmerrick

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さて、お待たせしました。定期テストが終わりましたのでこちらも再開致します。


8話「魔法使いからの贈り物」

 side Renata Scarlet

 

 ──魔法の森

 

 フィオナが紅魔館に来てから数日後。フィオナの部屋も無事、私の部屋近く──具体的には私の部屋の三つ横の部屋──をお姉さまから借りることができた。まだ何もない空間だが、私の部屋以上に広くて過ごしやすい。家具など何を置くのかはまた後日考えるらしい。

 魔法の研究も続けているが、パチュリーの魔法も私の魔法も、ほとんど覚えていしまった。それでも充分凄いが、見様見真似でできてしまうことが恐ろしくも素晴らしい。もはや能力の域にも達しているが、これが能力なのか才能なのかは分からない。そもそも能力は自己申告制なのだから、彼女がそうと言えば能力になるのだが。

 

「魔理沙会うの久しぶりだねー」

「稀に図書館に来てますけどね」

 

 そして今日は、魔理沙の家と地霊殿へ行くことになった。理由は魔法の習得と、久しぶりに会いたいという妹達の願望からだ。もちろんその妹と言うのはフィオナではなくフランとルナのことで、2人も一緒に来ている。

 現在、フィオナの要望で空を飛んで向かっているが、地底は先の異変で妖怪の出入りも自由となっており、通常のルートで行けるようになっている。好き好んで行く妖怪なんて、私達以外は見かけないけど。

 

「魔理沙の家が見えてきたよ。フィオナ、早く行こっ」

「行こう!」

「⋯⋯出会った当初は険悪な感じでしたよね、ルナは」

「気づいたら仲良くなってたよ。でもお姉様もそっちの方がいいでしょう?」

 

 フランには「もちろん」と肯定するも、内心は不思議でたまらない。どちらかと言うと、ルナは恥ずかしがり屋で自分から話しかける方でもないし、フィオナに対して少なからずの敵意を持っていたはずだ。そのルナが出会って数日の今日には仲良くなっているなんて、珍しいにも程がある。フィオナの方も機嫌良く見えるし、2人の間で何かあったのかもしれない。

 

「魔理沙、おひさー」

「おっ、久しぶりだなー。そっちの娘がフィオナだよな? 私は魔理沙。よろしくな!」

「うん、よろしく」

 

 魔理沙は外で快く出迎えてくれた。魔理沙やさとりには昨日のうちに行くことを伝えてあったので、待ちきれなかった魔理沙は外で待っていたのだろう。

 魔理沙の家は魔法の森の中に位置し、『霧雨魔法店』という看板が付けられた一軒家である。看板の名前の通りお店をやっていて、曰く何でも屋を経営しているらしい。儲かっているという話は聞かないが。

 

「魔理沙は何の魔法を使う? 早く見てみたい」

「星の⋯⋯って、それは中でな。外だと冷えるだろ?」

「私は冷えないけどね。吸血鬼だし」

「私らが冷えるんだって」

 

 吸血鬼は人間よりもかなりの熱耐性があるが、フィオナや魔理沙は人並みでしかない。

 もちろん魔法を使えばある程度は大丈夫だが、わざわざ魔力を消費することもないだろう。

 

「そう言えばレナお姉ちゃん。紅の指輪、付けたままでいいよね?」

「紅の? あ、ああ。魔力遮断の指輪ですね。構いませんよ。気に入ったのです?」

「うん。綺麗だから。⋯⋯魔理沙の部屋、散らかってる。掃除してない?」

「ん? めんど⋯⋯時間が無くてな。とりあえず、空いてるところで待っててくれ」

 

 魔理沙は私達を置いて、逃げるように別の部屋へと行ってしまった。

 おそらくはパチュリーのように、魔導具(マジックアイテム)でも取りに行ったのだろう。パチュリーは分かりやすく説明するためでもあったが、フィオナは見様見真似でできてしまう。そのことは魔理沙に伝えているはずだが、何を持ってくる気なのだろう。

 

「オネー様、これ何?」

 

 魔理沙のいない間、その場に散らばる物を漁っていた妹達のうち、ルナが四角い何かを見せてきた。明らかに私の前世にあったゲーム機に見えるが、一体どこで拾ってきたのだろう。

 

「ゲーム機ですね。ほら、家にあるプレ⋯⋯って、勝手に触ってはいけませんよ」

「はーい。フラン、何か面白い物あった?」

「ないねぇ。魔力を帯びてる物はいくらかあるんだけど⋯⋯」

「だから勝手に触っちゃダメですって」

 

 私達は魔理沙が戻ってくるまでこうして暇を潰していた。フランやルナが私の言うことも聞かずに物を漁るが、盗んでいるわけでもないし、というか可愛いから良しとしよう。

 

「待たせたなー。⋯⋯なんか散らかってないか?」

「元からだよ。さ、早く始めようよ。私も見るの楽しみだなー」

「おいフラン。逆に怪しいぞ」

 

 その暇潰しも数分で終わる。戻ってきた魔理沙の手には小さな袋と八角形の香炉のような物──おそらくはミニ八卦炉──が握られている。それからは魔力を感じ、それがマジックアイテムの一つだということは明らかだった。おそらくはフィオナに教えるために用いる物だろうが、そんな危険そうな物をどうやって使うのだろう。

 

「まあいいか。フィオナ。これが何か分かるか?」

「⋯⋯魔力増幅器?」

「残念、ハズレだ。これはミニ八卦炉。具体的に言えば魔力火炉といって、魔力を材料に火を起こす炉だ。これがあれば山火事を起こすことだってできるんだぜ」

 

 少々危ない発言をしているが、本人にその気はないはずだから良しとしよう。

 しかし私やパチュリーも流れで攻撃魔法を教えてしまったとはいえ、魔理沙も攻撃魔法を教えるつもりなのだろうか。確かに魔理沙が攻撃魔法以外に魔法を使っているのはなかなか見たことないけど、一つや二つは使えるはずだ。おそらくだけど。

 

「くれるの?」

「ミニ八卦炉は私の生活必需品だからな。これはあげられないぜ。だが⋯⋯」

 

 ごそごそと袋を漁り、中からネックレスを取り出す。それの先には丸っぽい緑色の宝石が取り付けられ、とても綺麗な装飾品だ。魔力は少なからず感じるため、何かのマジックアイテムであることは分かる。

 

「こっちはプレゼントするぜ! 私は星関連の攻撃魔法しか教えれないからな。せめて攻撃以外で役立つマジックアイテムくらいはプレゼントしないとな」

「ありがとう。⋯⋯これはどういうマジックアイテム?」

「ん? それは⋯⋯」

 

 フィオナの問いに、魔理沙は丁寧に答える。

 曰く、これは魔力を込めることで発動する類いのものらしい。魔力を込めると自分を取り囲むように結界が作られ、込めた魔力の分だけ結界を強く、そして長く保つことができる。要は防御型のマジックアイテム。ちなみにこれを作ったのは霖之助さんらしく、この宝石も元はアレキサンドライトだったようだが、様々な手を加えられて今では宝石のような『何か』となっているようだ。

 

「なるほど。ありがとう、魔理沙。

 ⋯⋯霖之助という人にもお礼を言わないと。明日にでも会いに行こう」

「そんなことしなくてもいいぜ。お礼は私から言っとくからな」

「でも、やっぱり人にお礼を言う時はしっかりと面を向かって言うのがいいと思う」

「そうかあ? 私は気持ちさえ伝わればいいと思うけどなあ」

 

 フィオナはそれを受け入れずに拒否し、そこまで言うのなら、と了承した魔理沙と後日霖之助さんに会いに行くことになった。私が行けるかは分からないが、魔理沙と一緒に行くのなら大丈夫だと許可はしておいた。

 もし何かあったとしても、魔理沙ならその火力で押し切ってくれるだろう。

 

「次は魔法の実演だな。よし、外に出るぞー。おいフラン、ルナ。物漁りはやめて早く来ーい」

「だってフラン。どうする?」

「んー⋯⋯仕方ない。怒られるのも嫌だし行こっか」

「貴方達って本当に仲がいいですよね。いえ、そちらの方が私も嬉しいですけど」

 

 私達は魔理沙に連れられ、外へと出ていく。

 

 魔理沙は自慢の攻撃魔法を見せ、それをフィオナが見様見真似で自分の魔法として取り込んでいく。フィオナに便乗し、フランやルナも魔理沙に魔法の指導を仰ぐ。予定していたよりも時間はかかったが、無事フィオナは魔理沙の魔法を覚えることができた。そしてフランとルナも、多少なりとも魔理沙の魔法を習得したようだった。

 

「お前ら覚えるの早すぎないか? やっぱり凄いなー」

「フィオナほど早くはないよ。ね、フラン」

「そうねぇ。というかフィオナが異常に早いだけな気もするけど」

 

 魔理沙は自分と同じ魔法を使える者が増えて嬉しそうにしていた。

 もちろん悔しがる姿も見せていたが、思うほど悔しがってはいない。

 

「これ終わったら、次は地底?」

「ですね。さとりに会うのも初めてですよね。運が良ければこいしにも会えますよ」

「こいしちゃんにも会いたいねー。私達もなかなか会わないでしょ?」

「あいつは居ても気づかないからなあ。私が初めて会った時も突然声をかけられて驚いたぜ」

 

 こいしは自身の能力により常に誰からも認識されることがない。

 自分ではそれを制御することは難しいらしく、彼女は常に無意識に行動している。私は能力が近いせいか認識することは他人よりもできるが、それでも気づかない時は気づかない。

 

「魔法の練習も終わりましたし、そろそろ行きましょうか」

「地底⋯⋯初めて行くから楽しみ」

「あ、そうだ。魔理沙も一緒に行かない? 地霊殿に」

 

 フランがその場の思いつきで魔理沙に声をかける。

 しかし魔理沙は残念そうに首を振った。

 

「その誘いは有り難いが遠慮するぜ。これからアリスの家に行く予定なんだ。

 思ってたよりもちょっと遅くなったけどな」

「そっかー。じゃあまた遊ぼうね、魔理沙」

「ああ。またなー」

 

 魔理沙に別れを告げて魔理沙の家を後にし、地霊殿のある地底へと向かう。

 もちろんフィオナの要望で空を飛び、地底の大穴から地霊殿へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 幻想郷の地下深くに広がる大きな洞窟世界、旧地獄。通称地底と呼ばれる場所。その中心に地霊殿はある。

 そこに日が差すことはないが以前よりは明るく、住人達が楽しそうに生活を謳歌している。理由は以前まであった地上と地底の相互不可侵の条約が緩くなったため。そして地上との繋がりが増えたことだろう。

 

「綺麗な町。ここが地底? 想像していた場所とは違う」

 

 それが地底に降り立ったフィオナの第一印象だった。彼女にとって、いや人間にとって地底とは暗いイメージが強いだろう。しかしこの地底は至るところで光が輝き、真夜中で輝く都会の町並みのようだ。

 私自身、最後に来た時と風景は違って見え、少し驚いていた。

 

「騒がしくなった。そう思ってるか?」

 

 突然声をかけられ、声の方に振り向くとそこには見知った顔の少女がいた。

 

「え? あ、朱童⋯⋯」

 

 地底に入って最初に出迎えてくれたのは『金熊(かねぐま)朱童(しゅどう)』と呼ばれる伊吹萃香の部下らしい鬼の娘。

 フィオナよりは背が高いが私達姉妹よりも背が低く、長めの金髪と紅色の一本角を持つ。両耳には萃香に合わせたのか、赤色の三角錐の飾り物を付けている。デリカシーはないが力は強く、私を助けてくれたこともある、頼れるかもしれない鬼だ。

 

「⋯⋯失礼なことを考えてる気がした。怒らないから言ってみて」

「怒るのですよね、だから言いません。というか、朱童は萃香と一緒にいないのです?」

「私はここに住んでいるから。萃香様から何かあればどこにでも行くけど。

 それより騒がしくなったと思ってるか?」

 

 繰り返すように彼女は質問する。

 下手すると怒らせそうだと感じ、私は慎重に言葉を選んで返す。

 

「騒がしいというよりは、賑やかですね。みんな楽しそうです」

「そっか。それはよかった。お前やっぱり弱いけど好きだ。いい奴だ」

「褒めてる⋯⋯のですよね? ありがとうございます」

「⋯⋯話を中断させてしまうけど、君は誰?」

 

 フィオナが気になったことを我慢できずに質問する。

 先の異変で共闘したフランとフィオナは知っているようだが、フィオナが朱童に出会うのはこれが初めてなのだ。

 

「私か? 種族は鬼、名は金熊朱童。気安く朱童でいい。お前の名は?」

「フィオナ。ボクもフィオナでいいよ」

「⋯⋯お前は、人間か?」

 

 朱童は訝しげな目をフィオナに向ける。

 まるで人間であることが不思議なように。

 

「うん、人間だよ。君は鬼なんだね。力が強いの?」

「⋯⋯うん、強いよ。吸血鬼よりは断然強い」

「朱童ちゃん、喧嘩売ってるなら買うよ?」

「買って。戦いは好き。ルールは真剣? それともごっこ?」

「朱童もフランもやめてください、周りに壮大な被害をもたらします」

 

 火花を散らす2人を何とかなだめ、ひとまずその場での戦いは収めることに成功した。

 普段は温厚なはずのフランだが、種族をバカにされたと思って頭に来たのだろう。それはともかく、2人とも見た目によらず強大な力を持つのだから自重してほしい。彼女達が本気でやれば、辺りは更地になってもおかしくはない。

 

「それにしても、朱童はどうしてここにいるのです? 町の復興支援とか?」

「⋯⋯ああ、そうだった。お前に話しておくことがある」

「私に? え、私って何か鬼にしました?」

「安心して、私達には何もしてない。ただ⋯⋯」

 

 朱童は言いづらそうに顔を俯かせ、ゆっくりと口を動かす。

 若干朱童の顔は、恥ずかしそうに赤くにもなっていた。

 

「お前を恨んでそうな奴、逃げちゃった」

「⋯⋯えっ? いや、そんな今までの口調崩して可愛く言っても⋯⋯って、誰が逃げたのです?」

「ルネの弟、ジョン。その顔は覚えてなさそうだけど、お前が殺しかけた奴」

「あ、ああー。あの、槍を使う⋯⋯」

 

 以前、地底の異変の際に私と戦った吸血鬼、それがジョンという私の友人の弟である。

 朱童によると、そいつは地底の狂霧異変の時に私に倒され、その後鬼がその身柄を確保したらしい。しかしつい先日、目を離した隙に牢屋から消えていたようだ。ちなみにその時の牢番は朱童だったらしいが、どうせ逃げないだろうと高を括り、見張りを怠っていたようだ。

 

「って、それ一番悪いの朱童ちゃんじゃ⋯⋯」

「いつでも決闘を受けるから、それで許してほしい」

「得をするの、貴方だけですよね? 別にいいですけど。

 私の家族に何かある前に、半殺しにして送り返しますから」

「⋯⋯鬼よりも鬼だな、お前は」

 

 私も吸血鬼だから鬼ではある、と内心で思うも口には出さない。

 そもそも家族に何かするような者を野放しにはできない。見つけ次第、強制(ギアス)誓約(ゲッシュ)でも付けて地底へ送り返そう。私の家族に危害を加える気がないなら野放しでもいいけど。

 

「まあ、用はこれだけ。じゃあね、レナ達」

「ええ。バイバイです」

「⋯⋯あの鬼、面白い魔力だった。真っ直ぐな波。ああいうあく⋯⋯妖怪もいるんだ」

 

 帰っていく朱童の背中を見ながら、思い返すようにフィオナが呟く。どうやら鬼という嘘のつかない真っ直ぐな妖怪を見るのは初めてなのだろう。

 彼女は魔力が少なく妖力が強い朱童に対しても魔力で感情を読み取ることができるらしい。魔力が全くない相手に対しては無理だろうが、少しでもあれば感知することが可能なのだろうか。

 

「フィオナはさ、見たことないの? 鬼みたいな妖怪は」

「うん、ボクは妖怪自体、見たことがないと思う。記憶はないから、本当は分からないけど」

「ふーん⋯⋯そっか。じゃあさとりやこいしみたいな妖怪に会ったら驚くかもねー」

 

 楽しそうにフランは言って、そのままの足取りで地霊殿のある地底の中心部へと歩いていく。

 それに続くようにして私達も付いていく。

 

「そうだ。今度の春、みんなで神社のお花見行かない?

 フィオナも色んな妖怪と会えるだろうしね!」

「いいですね、お花見。さとり達も一緒に行けるといいですねー」

 

 まだ秋だというのに気が早いかもしれないが、それでも楽しみで仕方がない。

 私も少しはお酒を飲めるようになったし、お姉さまに付き合えればいいなあ。

 

 などと春への待ち遠しい思いを胸に秘め、私達は地霊殿を目指して歩みを進める────




役夫之夢

と、オリキャラプロフィールその2。
名前:パンサー
容姿:赤を基調としたメイド服を身に纏い、黄色い短髪と目に、口に薄らと見える白く鋭い牙。背には煙のように不安定で不規則に揺れる翼。何故か付いている猫の耳と尻尾。
一人称:アタシ
その他:お前、呼び捨て
備考:わんぱく、元気、妖怪のような妖精
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