東方紅転録2部 ─NAMELESS MIST─ 作:百合好きなmerrick
side Renata Scarlet
──地霊殿
幻想郷よりも広大な地下空間。その中心に位置する地霊殿へ私は、妹達を連れてやってきた。そこでは私達の友人であり、地霊殿の主でもある覚妖怪の古明地さとり、さとりの妹であるこいし、そしてそのペット達が住んでいる。さとりは灼熱地獄跡の管理を任されているようだがペット達に任せっきりで、妹であるこいしも能力によるものか幻想郷を自由気ままに放浪している。彼女達とは他の幻想郷の勢力よりも仲が良く、互いの家に泊まることもある。逆に仲の悪い人なんて元吸血鬼の仲間を除いていないのだけど。
「ようこそ、地霊殿へ。お久しぶりですね、皆さん」
「おひさー。ここに来るの、二週間ぶりな気がするなあ」
地霊殿へ着くと、笑顔でさとりが出迎えてくれた。
普段は一週間に一度はここへ遊びに来るが、最近は忙しくてなかなか顔を出すことができなかった。もちろんフィオナと出会って初めてここに来て、彼女がさとり達と出会うのも初めてだ。
「初めまして。ボクはフィオナ。よろしくね」
「ご存知のようですが、さとりと言います。よろしくお願いします」
「うん。⋯⋯穏やかな波。大人しい人? レナお姉ちゃんみたい」
「ええ、どちらかというと大人しい方だと思います。⋯⋯なるほど、魔力で感情を読み取れると」
私かフィオナの考えを読み取ったらしく、納得した様子でさとりは答える。
ちなみにさとりは数少ない、私が転生者だと知っている人物だがあまり意味は分かっていないらしい。地底の異変が落ち着いた後に詳しく説明はしたのだが、分かりやすく話すのは難しかった。
「知っているみたいですが一応言います。私は人の心を読むことができます。
⋯⋯それでも、大丈夫でしょうか?」
さとりは恐る恐るフィオナへ問う。私も慣れるのに時間はかかったが、前から知っていたこと、そもそも彼女に隠すようなことがあまり無かったことですぐに慣れた。さとり曰く、ここまで無頓着なのも恐ろしい、とか。褒められていいはずなのに、少し悲しい。
「大丈夫。私も感情を読む。だからお互い様だよ。さとり」
「⋯⋯ふふ、そうですか。ありがとうございます。
さあ、もう夕暮れですからダイニングに行きましょう」
「ダイニング? お姉様、今日はここで食べるの?」
フランが歩きながらも不思議な顔をして私に質問する。
今思えばお姉さまや咲夜には伝えたものの、彼女達には何も伝えていなかった。
「今日はお泊まりですよ。あれ、言ってませんでした?」
言った覚えがないが、反応見たさにあえてすっとぼける。
しかしフランもフィオナも「へー」と軽い反応で、ルナも嬉しそうにするくらいで大した反応は見せなかった。フィオナは性格として、あとの2人は私と長い間いるせいで、突然の出来事も対応できるようになったのだろう。
そんな私の思考を見てか、さとりは面白そうに微笑んでいた。
「さとり、こいしちゃんはいないの?」
「こいしは残念ながらいません。最近はあまり帰ってなくて⋯⋯」
「そっかぁ⋯⋯。ま、仕方ないか」
「ねえ、さとり。動物がいっぱいいる。どうして?」
フィオナが辺りで彷徨くたくさんの動物を見て聞いた。
確かにあまり気にしていなかったが、入り口で出迎えてくれた時も、烏や犬、猫など様々な動物を至るところで見つけた。こうして移動している最中でさえも、見つけた動物は凶暴なものから可愛いものまで多種多様だ。
「私にもよく分かりません。ですが、私が動物の声も聞くことができるから、自然と気持ちを理解してほしい動物達が集まってきたのだと思います。動物は⋯⋯話せない方が多いですから」
「そっか。動物にも魔力多い子はいるのにね。ここにいる動物はみんな多めだし」
「それは怨霊や妖怪を食べさせているからだと思いますよ。それで強力な動物妖怪になる者もいますから。お燐やお空はそのいい例です」
初耳だ。そして多少の恐怖を抱いた。よく考えれば妖怪としては普通の発想なのだろうが、人間が聞いたら私以上に恐怖を抱くだろう。それでもさとりのことは苦手になれないし、いつまでも友達として一緒にいたいが。
「⋯⋯はあ。さて、着きましたよ、ダイニングルームに」
さとりが一瞬だけ悲しそうな表情になるも、すぐに普段通りの顔を見せて言った。
そんな表情に気づくこともなく、妹2人は楽しそうに慌ただしく中へ入っていく。
「レナお姉ちゃん、どうしたの? 早く早く」
「⋯⋯はい、それにしても楽しみですねー。お燐が作っているのですよね?」
「はい。料理の腕は保証しますよ。⋯⋯私が任せっきりにした結果、ここで料理ができるのお燐だけになった、という方が正しいですが」
さとりの告白に、お燐に同情せざるを得ない。
お燐の負担を減らすために、今度料理教室でも開こうかな。
「それは有り難いですね。⋯⋯いえ、無理はしなくてもいいですからね」
「お姉様にさとりー。早くしないとご飯冷めるよー?」
廊下で話していた私達に、フランが語りかける。
フランは食事をとる時はみんな一緒が好きなのだ。もちろん、それは私も同じく好きだ。
「今行きますよ。さとり、食べながらでもお話しましょうか」
「⋯⋯ええ、そうですね」
こうしてさとりと一緒にダイニングへ入り、ともに楽しい時間を過ごす。
時間は過ぎ、地底から見えない陽は落ちて、私達は地霊殿のお風呂を借りていた。
服は忘れてきたが、空間魔法で紅魔館から取り寄せたので何とかなった。
「はあー⋯⋯。いい湯ねえ」
「そうだね⋯⋯」
すでに体を洗い終え、みんなで浴槽に浸かっていた。
紅魔館ほど広くはないものの、地霊殿も充分普通の家よりは広くて快適だ。
「皆さん、湯加減はどうですか?」
「丁度いいですよ、さとり様ー」
「ああはい、そうですか。⋯⋯他の皆さんも大丈夫、と」
フランの要望により、さとりとお燐も一緒に入ることになった。
フランの考えることは分からないが、みんな一緒の方が楽しいのは分かる。
「発育が一番いいの、やっぱりお燐かなあ。フィオナはまだ子どもだから別として、さとりも何気に私達より年下でしょ? だからまだ希望はある。それに比べて私達はどうなんだろ。特にお姉様が。ある程度までいったら化けたりするのかなあ」
「⋯⋯はい?」
みんなを見ていると思ったら、唐突にフランが呟く。
まさか、そんなことを気にしているなんて。まだ子どもなのだから、そんなこと気にすることないのに。いずれは身長くらい伸びるに決まっている。
「そんなこと、気にするまでもないじゃないですか。フランもいつかは⋯⋯」
「だってさあ、百年以上も身長変わらないんだよ? 1、2cmは変わってるかもしれないけど」
「⋯⋯私も百年近く変わっていませんよ。お燐は元からこれですけど」
「何それ凄っ。お燐ー、成長する秘訣とか知ってるー?」
「ごめんね、特にないかなぁ」
フランは興味深そうにお燐に話を求めるも、特に収穫は得られなかったようで落胆していた。
私自身、もし私やお姉さまが成長したら、とは気になる。しかし何百年後の未来か分からないし、その時になれば気にもしないだろう。それに、お姉さまの魅力は絶対に変わりはしない。それどころか上がっているはずだから気にするだけ無駄だ。
ただ、魔力がどれほど増えているか、どれくらい魔法を覚えているか。それは知りたい。
「成長、か⋯⋯」
フィオナが懐かしむように思いにふけていたのだが、この時の私は気にもしなかった。
「ねえねえ、オネー様。オネー様は、大きいのか小さいの、どっちが好き?」
「私です? 別にどっちが好きとかはないですよ。ただ、貴女はどっちでも大好きですよ」
「ふふん。私の扱い方分かってきた? ⋯⋯ま、ありがとう、オネー様」
「長年一緒にいますからね」
「お姉様、私はー?」
話を聞いていたのか、肌が触れ合うほど近くにフランが寄ってきた。
この娘に恥じらいというものは無いらしく、肌が触れようとも気にしている様子はない。
「フランも好きですよ。ですから離れてください」
「えぇー! 好きな人に言う言葉じゃないよー? それにルナは大好きなのに、私は好きなの?」
「どっちも同じです。というか分かってて言ってますよね?」
「のぼせてしまいそうなのでお先に失礼しますね。⋯⋯それにしても、仲のいい姉妹ですね」
と、さとりが顔を赤くしながら浴室から出ていった。
やはり運動不足で身体が弱いのだろうか。それとも思考を読み取って⋯⋯。
「さとり様が出るなら、あたいも先に出とくね。何かあれば、厨房にいますんでー」
「⋯⋯なるほど、そういうノリか。レナお姉ちゃん、楽しんでね」
「いやいやいや! 何がですか!? というかフラン、ひっつきすぎです」
「そう? ⋯⋯まあ、今は友だちの家だしもういっかぁ。じゃ、私達も上がろー」
こうしてフランに引き連られ、私達もさとりの後を追うように浴室を後にする。
風呂から上がり、フィオナ達とともにさとりを追って、今日の寝室であるさとりの部屋へ向かっている最中のこと。私達が地霊殿の廊下を歩いている時に、真っ黒な烏と出会った。
「入り口にいた鳥だね。多分
その烏はまるで懐いているかのようにフィオナの肩に乗り、頬を
フィオナの方も好かれるのは満更ではないようで、烏の頭を撫でていた。
「さとりのペットだろうね。フィオナいいなぁ。私、動物に懐かれることなんてないよ」
「そう? ⋯⋯いっぱい食べている烏みたい?」
「みたいですね。もしかしたら人型になれたりします?」
「⋯⋯えっ?」
フランとルナは気づいていないが、この烏の妖力と魔力は普通の動物の比でない。
下手したら、お燐やお空よりも強いかもしれない。
「⋯⋯よく気づいたねぇ。お姉さん、悲しいよ。驚かせなくてねぇ」
「し、喋った!?」
烏はフィオナの肩から降り、私達の目の前で姿が変わり始めた。
見る見る間に人の形をとり、最終的に黒髪ロングの女性の姿になった。身長は170cmほどで、背には烏の黒い翼を生やしているが、それ以外は人間と同じ姿だ。服は黒いノースリーブにミニスカート、そして宝石で装飾された髪飾りやバングルなどを付けている。
「アンタ達は初めまして、かな? お姉さんは烏の⋯⋯まあ、ここで言うと妖怪。
名前はクロウ。姉は知らないと思うが、こいしちゃんのペットをしているよ」
「こいしの? そうなんだ。私はフラン、こっちは妹のルナ、姉のレナ。そして⋯⋯」
「フィオナ。よろしくね、カラスお姉さん」
「ああ、そう。そういう名前ね。ありがと」
クロウは感謝の言葉を伝えたその刹那、目の前から姿を消す。
そして、それに反応するよりも早く、背後で声が聞こえた。
「ごめんね、お姉さん嘘ついちゃった。実はこいしちゃんのペットじゃないんだ。
それに、アンタ達の敵なのよねぇ。ってか、何も分からないの? 自称フィオナちゃん」
「ボク⋯⋯?」
「え──はぁっ!」
妹達の危険を感じ、とっさに振り返って背後を爪で切り裂く。
しかし切ったのは空のみで、そこにクロウの姿はなかった。
「好戦的ねぇ。しかしシラをきっている風には見えない。本当に分からないの?
じゃあいいかなぁ。覚えていないなら好都合よ。その力が欲しいから奪⋯⋯っ!」
「きゅっとして──」
ルナがクロウを見つめてその拳を握ろうとするも、再び目の前から消え、次はルナの前へと移動していた。クロウはその拳を握らせまいと手を掴み取り、片方の手で子ども扱いするようにしゃがんでルナの頭を撫でていた。
「速っ、強っ。⋯⋯離して? というかやめて?」
「ダメよ。潰す気でしょ? それとアタシは好きなのよ、財宝と可愛い子」
「ルナから離れなさい。いえ、最初に殺そうとしたルナもルナですけど。
⋯⋯というか、戦う気です? それともフィオナを奪うために私達を殺す気です?」
「うーん、どっちも変わらないね、それ。アタシはね、他と違ってゆっくりでいいんだ」
そう言いながら、クロウは撫でるのをやめて立ち上がり、私とフィオナを交互に見つめた。
その目は悲しそうでもあり、嬉しそうでもある。
「召喚主様のせいでアタシには大した予知もできないけど、一つだけ教えてあげるよ。
レナちゃん、よね? 今日は遊び感覚だったからもう帰ると約束するけど、またいつか会うと思うからよろしくね。その時は確実に戦うことになるよ。それと、アタシ以外にも狙う子がいるけど、そいつらに捕まらないでね? アタシが貰うから。フィオナちゃんついでに君もね」
背筋が寒くなるような視線を受けて身構えるも、すでにそこにクロウはいなかった。
彼女の魔力を追うも、凄い速度で離れていくのが分かる。
「ま、また消えた? いや移動した?」
「ですね。ひとまずは安全でしょうか。悪魔である私に約束していきましたし。
契約を破れるほど強い妖怪なら危ないですけど、寝ている間に結界やら障壁を⋯⋯」
「⋯⋯いいえ、大丈夫。何故かは分からないけど、そんな気がする」
「確かに根はいい人そうですけど⋯⋯」
殺る気だと思えば遊び感覚だと言って帰ったり、気分屋みたいで読めない妖怪だ。
しかしフィオナが大丈夫と言っても油断はできない。ひとまず地霊殿全域に侵入者感知用の結界だけでも張っておこう。そして寝室には障壁も⋯⋯。
様々なことを考えながら、さとりのいる寝室へと急ぐ。
そしてこの夜は案の定何事もなく、平和に過ぎていった────
次回はモチベの関係でこっちの方が早いかも。
浮雲朝露
と、オリキャラプロフィールその3。
名前:シュヴァハ
容姿:銀髪(長髪)赤目の美人。右目には涙ボクロがある。黒白のメイド服。背中には天使のような白い翼が生えている。
一人称:私
その他:貴方、〇〇様
備考:臆病で慎重な妖精メイド。弾幕ごっこなどでもすぐに負ける。しかし一方で家事は一番上手。