仲のいい三姉妹がもっと仲良くなるまでの話   作:テッポウユリ

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『言葉責め』の要素が含まれます。
苦手な方はご注意ください。


日花里、りぷれい

 

 夏らしい蒸し暑いある日、私の部屋にノックの音がした。

 

「どうぞー」

 

 扉を開けて入ってきたのは、お母さんだった。

 

「日花里、今度の面談なんだけど……な、何してんの?」

 

 そして、お母さんは私の方を見た瞬間、固まった。

 

 私はちょうどその時、ベットに腰かけて膝の上にある由佳利の髪を梳いているところだった。由佳利は気持ちがよさそうに目を閉じてウトウトしていて、亜加梨は私の肩に寄りかかって本を読んでいた。

 

 まだこれくらいだったら良かったのだろうけれど……。

 

 なぜか亜加梨の手は私と腕を組む様に手を絡ませているし、由佳利に至っては私のお腹に顔を押し付けてスンスンと鼻を鳴らしている。

 

 外の気温は三十度を越えているというのに、家の中でベタベタしている姉妹は私達です、はい。

 

 お母さんは変なものでも見るように私たちを見ていたが、「ほどほどにね」という念押しと共に要件を済ませて帰っていった。

 

___

 

「というか二人とも暑くないの?」

 

 ドアが閉じたタイミングで口を開いた。

 

「こんなの大したことないよ」

 

 とは真夏でも走り込みを行う吹奏楽部員の言である。亜加梨は辛さを微塵も感じさせない様子で朗らかに笑う。私なんか脂汗で顔がてかっているというのに、亜加梨のそれは何かが違う。僅かにほつれた髪が汗で頬に張り付いて、言い表せない色っぽささを醸し出している。

 

 因みに由佳利は汗一つかいていない。今撫でている額もさらっさらのままだ。すべすべで気持ちいい。

 

 でも私の手汗で少しずつ湿ってきた。いやー、幸せな空間なんだけど、さすがに暑すぎる。

 

 と言う訳で。

 

「ちょっと、シャワー浴びてきてもいい?」

 

 膝の上の由佳利をコロンとベットに転がし立ち上がると、恨みがましい目でじっとりと睨まれた。もう三十分くらい撫で続けてたんだけど、まだ足りないのかい?

 

「あ、じゃあ私も一緒にお風呂入る」

 

 本から顔を上げた亜加梨が満面の笑みで言う。それに釣られるように「私も入る」と由佳利が目を輝かせた。

 

「えっ、洗ってくれるの?」

 

 冗談めかして笑いかけると、

 

「いいよ、洗ってあげる」

 

「私も洗うー」

 

 と同意の返事が返ってきた。おう、マジか。『妹たちに体を洗ってもらう』という長年の夢がこんなあっさり叶ってしまうのか……。

 

 そのまま着替えを取りに行った二人を見送り、私もタンスに手を伸ばした。

 

___

 

 

「お姉ちゃんは先入っててね」

 

 私は服を脱ぎだすが、亜加梨と由佳利は互いに恥ずかしそうに身体を見つめ合っていて、一向に脱ごうとしない。仕舞には脱衣所から追い出され、浴室に押し込まれた。

 

 じろじろ見てたのが悪かったのだろうか。まあ、多感な思春期の子だからしょうがないか。

 

 中に入っても、洗ってもらうという約束なのに、先に洗いだすわけにもいかず、シャワーだけを浴びて二人を待つ。

 

 二人はなかなかやって来ず、私が焦れてきた頃にようやく浴室の扉が開いた。

 

 同性同士で入るというのに、二人ともしっかりタオルを体に巻き付けていた。だが甘い。私みたいな人間は、妄想を掻き立てられる方がイケない気持ちになりやすいというのに。

 

「お姉ちゃん、じゃあ髪から洗ってあげるね」

 

 亜加梨がにっこりと笑顔を浮かべて言った。隣で由佳利もコクコクと首を縦に振る。亜加梨は堂々とした足取りで歩いてくるのに対して、由佳利の方は恥ずかしげに最近意識することの多くなった小柄な胸をタオルの上からしっかり押さえて歩いている。

 

 超かわいい。

 天使だ。天使が二人もいる……。

 

「じゃあ、お願いね」

 

 二人は顔を見合わせると、何かを決心したかのように同時に頷いて、シャンプーを泡立て始めた。

 

「痒いとこないですかー」

 

「ないですかー」

 

 程よい力で生え際を擦られる。

 

 ふぃー、極楽極楽。

 

 思わず力が抜けて垂れそうになった涎をこっそり啜る。これはヤバい。本当に天国へ行っちゃいそう。

 

「ひか姉、気持ちいい?」

 

 耳元で由佳利が言う。気の抜けた私は「きもちーよー」と間延びした返事しか返せないが、その答えに嬉しそうに笑った声がした。

 

 くすくすという笑い声が、前からも聞こえる。でもそれはどこか嘲るような響きを含んでいて――。

 

「お姉ちゃんってさ、本当に――変態、だよね」

 

 …………?

 

 ……え!?

 

 空気が凍った気がした。

 

「何、変な妄想して涎垂らしてんの」

 

 クスクスクス。

 

「ほら、こうやって妹に裸で体洗ってもらうのが夢だったんでしょ」

 

 えっ、ちょっ、何っ。

 

 急展開過ぎて、着いていけないんだけど! 

 確かに夢ではあったけど!

 

 いきなり妖艶な笑みを浮かべ、滑らかに言葉を紡ぐ亜加梨。

 

「あーあ、こんなのが姉とか、情けないわぁ」

 

 一瞬途切れる言葉。そして最後に――

 

「この、変態」

 

 最後に顔を私の耳に寄せて囁いた。

 

 背筋がゾクッとなり、緩んだ顔が凍り付いた。身体の芯が震え、どこかキュッとなる。

 

「ほら、次は由佳利の番だよ」

 

 亜加梨が促すと、由佳利は視線を左右に向けた。そして、意を決したように、

 

「ひ、ひか姉の変態! 馬鹿っ、えーと、えーと、おたんこなす?」

 

と叫んだ。

 

 由佳利は顔を真っ赤にして、今にも泣きそうな顔でこちらの様子を伺っている。

 

 何これかわいい。凍り付いていた表情が再び緩みだした。ていうかおたんこなすなんて死語どこで知ったのかしら。亜加梨は隣で「まったくもう」と口をとがらせている。

 

「まあ、今のは冗談なんだけどね」

 

 な、なんだ~、冗談か……。つまらなそうにネタばらしをする亜加梨を見て、ほっとした。

 

 お姉ちゃん、慌てちゃったよ……。

 

「でも――」

 

 もう一度右耳に顔が近づいてくる。

 

「こうやって罵られるの、好きでしょ?」

 

 ヒュンっと心臓が動く。

 

 クスクスクスと笑い声が聞こえた。

 

「変態」

 

 はうっ。心臓がばっくんばっくん音を立てている。いつの間にか右腕が絡めとられていて、立ち上がれないようにされている。

 

 助けを求めるように由佳利を見ると、愕然とした表情を浮かべているのが目に入った。

 

「ホ、ホントにこーゆーのが好きなの……?」

 

 ち、違っ。

 

「ひか姉のへんたい……」

 

 先ほどと違い、心の底から思ってそうな声色で呟かれたその言葉は、私の心を深く突き刺した。だが、同時にカッと顔が熱くなる。

 

 

 あ、今、完全に何かの扉を開いた気がする。

 

 

 腰が抜けたようで足に力が入らない。

 

 呆けた私を見て、由佳利は確信を深めたようだった。軽蔑の色を瞳に写し、おずおずと腰を下ろすと、亜加梨と同じように腕を絡める。

 

 それを見た亜加梨がにっこりと小悪魔な笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「ほんと、妹に罵られて喜ぶとかありえないよねー」

 

「変態」

 

「そのくせ高校生にものなって胸ちっちゃいし」

 

「貧乳」

 

「うわ、顔赤くなってきた」

 

「淫乱」

 

 右、左、右、左と来る罵倒の言葉に圧倒されて、目の前がくらくらする。同時に囁き声に反応して背筋がゾクゾクした。さらには両側からの香りとほのかな温かさに体の芯が熱くなる。

 

「お姉ちゃんみたいな人間は、こうやって体が隠れてた方が妄想を掻き立てられて興奮するんでしょ」

 

「えっ」

 

 亜加梨がいたずらっぽく目元を緩めタオルの裾をヒラヒラさせると、合いの手を入れていた由佳利がつっかえた声を出した。恐る恐る理解できない何かを見る目を向けられて、内ももをキュッと締める。

 

 と言うか亜加梨には色々バレてたのか……。

 

 普通だったら長く続けられると心が折れてしまいそうだけれど、二人は私の心が萎びてきたタイミングを見計らって、

 

「嘘嘘。お姉ちゃん大好きだよ」

 

「私もひか姉、好き」

 

 と囁いた。

 

 結局それからは裸でイチャイチャし続けた。

 

 夏なのに一時間近く風呂から出てこなかった私達は、最後にお母さんからつまみ出されることで決着となった。

 

 

 

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