その内『ミラー・ワールド2.0』とか出るやつ
GM神崎がPL(仮面ライダー)達を招集した。
使える武器はサイコロのみ。
作られた舞台、作られた駒、GMの設定した力を用いてライダーバトルに勝利せよ!
力で全てのライダーを倒し勝利者となるも良し!
全てのライダーと交渉し平和的勝利を目指すも良し!
黒幕の企みを暴くも良し!
勝利の形は、
セッションに勝利したプレイヤーは、ライダーバトルの勝利者として超仮面ライダー英雄ポイントをゲット!
ポイントを消費して願いを叶えよう!
「英雄?」
「タイガ(PL名)、座ってろ」
さあ、まずはキャラメイクだ!
「GM神崎、ちょっといいか?」
「何かねシザース君(PL名)」
「キャラクリ(キャラクタークリエイトの略)振り直しするわ。
最初のステータス決定ダイスが腐った。
10面なのに5以上がほとんど出ない……これ振り直ししないと死ぬから」
「無いぞ」
「えっ」
「俺のTRPGに振り直しはない」
「うそやろ」
「このTRPGでダイス振り直し権を持ってるのはGMの俺だけだ!」
「なんてゲームにしやがったんだこのGM! シザースのステータスが死ぬゥ!」
例を挙げよう。
龍騎はAP5000を基本値として、剣のソードベント、距離を問わず使いやすいストライクベント、盾のガードベント、後付け強化アイテムのサバイブに、遠距離に対応できるシュートベント、何が起こるか分からないストレンジベントとこれでもかと盛っている。
王蛇もAP5000が基本値、ソードベントに敵武器を奪うスチールベント、三枚の契約カード、それが転じた三枚のアドベントカード、合体のユナイトベントまである破壊力に長けた構成だ。
ガイですら弱くはない。
基本値AP4000、基本武器のストライクベントに、相手のカードをファイナルベントであろうとも消せるコンファインベントを『二枚』も備えている。
仮面ライダーはAP6000のゾルダが凄まじいだけで、AP5000など三人しかおらず、AP4000はそこまで極端に不利になる要素ではないのだ。
なお、シザースの基本値はAP3000。
所持カードはストライクベントとガードベントのみ。
カードの設定防御力は特に高くなく平均的で、カードの設定攻撃力は他のライダーの半分程度に設定されている。明らかにダイスが腐っていた。
キャラクリダイスが腐ったライダーは雑魚の中の雑魚である。
シザース君はライダーバトル開始直後に虚しく散った。
他ライダーを全滅させればとりあえずセッション終了・キャンペーン勝利までは行けるので、ゾルダのプレイヤーのように、隙あらば皆殺しを狙ってくるプレイヤーも居る。
「ファイナルベント宣言。判定無しで成功、攻撃範囲には全員捉えてるな」
「こいつ全滅エンドと優勝者勝利狙ってやがる!」
「うわーここで成功判定上げるアイテム使ってくるとか」
「ねーわー」
ファイナルベントを固定値で当てようとしてくるゾルダ(PL名)とかいう外道。
固定値は大正義。
運に頼る者に勝利なし。
各々が回避を諦めて生存のためにスキル使用宣言をする中、王蛇(PL名)が近くに居る敵か味方を掴んで盾にするスキルの使用宣言をする。
「GM神崎、捕縛盾。対象はガイだ。近くに居たお前が悪い」
掴みの判定は成功。ガイ(PL名)はさあっと顔を青くして、逃げの手を打った。
「GM神崎! 回避と逃走判定!」
「ダイス振れ。ええと、今のステータスだと……
2D6で9以上出せたら回避して逃げ切れたってことで」
「来い来い来い……来た!
『ガイは王蛇の腕を回避して逃げ切り、王蛇を鼻で笑った』!」
「こいつノリノリでロールプレイを……」
ふははははと笑うガイの横で、王蛇が淡々とスキル宣言を行う。
「GM神崎、ダブルアクション宣言」
「ダイスどうぞ」
「は?」
「通常アクションと汎用アクションを同時に行えるスキルだ。
移動とスキル使用の併用も、まあできるな。
ガイの傍に移動、同時に捕縛盾発動。判定サイコロ振って……はい、成功」
余計なロールプレイをしない、GMにちゃんと確認を取る、淡々と周りを殺しまくるダイスを振っていく、王蛇はTRPGプレイヤーの鑑。
「近くに居たお前が悪い」
「テメーが自分から近寄って来たからこうなってんだろうが!」
「ガイ君生命力判定振って。失敗したらキャラロスな」
「クソGMゥ! 見てろよ即キャラロスなんて絶対避けて……ああああああああッ!?」
キャラロスト。ガイ君のキャラシートはGMに回収された。
GM神崎はクソGMである。主に吟遊で。
「神崎優衣の美貌に仮面ライダー達は心奪われた。彼女の髪、目、鼻、唇、肌、全てが形容し難い美しさで構成されていた。彼女の美しさは人の目を引くものであり、それは国民的アイドルや歴史に名を残す大女優が持つものと同じであった。ライダー達は目を奪われ、心を奪われる。ああ、なんという美しい人なのだろう。僕はとてもこの人を傷付けられそうにない。いや、この人に好かれたい。僕らの生涯はこの人のためにあったのだ。この人のために命を捧げても僕らはきっと後悔しない……不思議と、ライダー達は揃ってそう思うようになっていた。神崎優衣が傍に居るだけで胸が高鳴る。神崎優衣以上の女性がいるだろうか? そう思って記憶を探っても、神崎優衣以上の女性など居ようはずもなかった。女性ライダーのファムですらもそう思ったのだ。神崎優衣の美しさが性別を超えたものであることは明らかだった。だが神崎優衣の美しさは外見ではなく中身にこそ宿っているということを、この時のライダー達は理性で理解してはいなかった。その心は、初めて優衣を見た時から気付いていたというのに。その心の動きを素直に受け入れた仮面ライダー達は優衣に好感を持った。だがその心の動きを理性で否定してしまった仮面ライダー達は、俗に言うツンデレのような思考をし、優衣へ辛く当たらざるを得なかった。だがそれも長続きはしないだろう。優衣のような理想の妹を嫌ったままでいられる人間などいるはずもない。彼らはいつか必ず優衣を好ましく思う運命にあった。それは未来にて必ずやって来る事柄、すなわち運命。優衣はその心も容姿も女神そのものである。女神の姿を彫ろうとした彫刻は多くあり、女神そのものだと賞賛された彫刻もある。だがその全てが優衣には遠く及ばない。所詮は架空にして創造の女神を石ころに掘り出したものだ。天然の美しさを内外に宿す優衣には遠く及ばない。優衣はその美しき在り方ゆえにあらゆるものより価値があり、その生存はあらゆる命の生存に優先され、だからこそ何を生贄に捧げようとも彼女の健在を維持する必要がある。それは仮面ライダー達全員にも共通する認識でもあった。仮面ライダー達は自らの命を捧げても優衣だけは生かさねばと決意し―――」
「おい吟遊GMいい加減にしろ」
「シナリオ進めろ」
「なんで毎回神崎優衣の登場シーンでパターンの違う長台詞聞かされにゃならんのだ」
語りが長い。妹の部分だけ。
しかも所々で判定させず、プレイヤーに意志を仰がず、時々NPC『オーディン』を投入して邪魔なプレイヤーを攻撃し、強制的にキャラロストに追い込むのである。
「オーディン攻撃判定。ダイスロール」
「このクソGM!」
「くたばれ!」
「ダイス振らなくてもこれなら固定値で死ぬのにわざわざ振りやがって!」
「『PLの敵は敵キャラであってPLとGMは敵じゃない』の格言を知らんのか!」
「炎上祭りの場所はここかぁ?」
「王蛇ー! 王蛇がオーディンのファイナルベントで死んだー!」
攻防ともにクソな判定が待ち受けている。そこに龍騎が攻撃を仕掛けた。
「えーと、んじゃ龍騎サバイブファイナルベントで、オーディンを攻撃します」
「はい、命中判定。
十面ダイス振って、9出したらクリティカルで命中。
8から1で攻撃は命中せず。
0出したらファンブルで以後の判定無しにキャラロストだ、振りたまえ」
「はい、9。命中」
「……ダメージ判定。
9が出たらダメージ上乗せ、もう一回ダイスを振れ。
9以外が出たらその時点で連続ロールは終了。その時点での加算ダメージを計算する」
「ほいほい。あ、9出た」
「連続9!? 嘘だろ龍騎こいつなんだコレ……
いや待て、オーディンはHPを過剰に高く設定している。
9を連続で十回出そうが二十回出そうが、オーディンは倒しきれない設定なのだ!」
「9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9」
「え」
「9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9」
「おい」
「9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9」
「ちょっと」
「9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9」
「待て」
「9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9、9」
「待てと言っとろうが! GM権限だそのダイス寄越せ! 絶対グラサイだろ!」
「いやこれGM神崎が持って来たダイスじゃん。調べる?」
「うぐっ」
「あ、8だ、残念。
9今何回出た? 100回?
確率としちゃ1%くらいの低確率になんのかなこれ?
へへっ、ここぞという時はちょっと運が良い俺、TRPGに向いてるかもな!」
「龍騎くんお前頭おかしいよ……なあナイト(PL名)」
「ゾルダ(PL名)、おかしいのは運じゃないのかコレ」
オーディンは一撃で蒸発した。
クソGM神崎の妹がシナリオに参加することもある。
「お兄ちゃんそれ以上横暴すると私のキャラが自害するよ」
「!?」
NPCじゃない時の神崎優衣は、積極的に自殺する。これでもかと自殺する。多種多様に自殺していくもんだから、GM神崎としては自殺要因をどけていくしかない。
それでも妹さんの発想力は大したもので、GM神崎が気付くと神崎優衣が手をシュレッダーの中に突っ込んでいるなど日常茶飯事である。
「やれるものならやってみるがいい。
今回のセッションは人間の耐久力を高めにしてある!
TRPGでキャラが一回切られれば死ぬなら、ゲームは成立しない!
それがRPGだ!
だからこそTRPGには、生身の人間が切られても即死しない独自の判定と進行がある!
優衣が持っているそのナイフの攻撃力設定値は決して高くない!
優衣の耐久力判定と生存判定があれば、首に刺したくらいで死にはしないのだ!」
「命中判定は無しでいいよね? じゃ、ダメージ判定ダイス振るよ」
「どうぞ」
「クリティカルクリティカルクリティカル」
「あぎゃー!」
「神崎優衣、自殺成功!
じゃあお兄ちゃん、頑張って私が死ぬこと想定してなかったシナリオ修正してね」
「妹さんすげーよな」
「やってることは兄とあんま変わんないけどな」
「GMのシナリオ崩壊させることに全力尽くしてるだけだもんね」
GM神崎はキレた。
「きぃぃぃぃぃしゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
ゲーム盤を投げ飛ばし、手作りマップを引きちぎり、皆のキャラシートを奪ってビリビリに引きちぎっていく。
シナリオ作成・必要な道具や紙の準備・全体の準備と進行を神崎が一人で担っているからこそ許される、世界のリセット能力であった。
「ウィー! ウィー! タイムベントォー! この世界線は存在しませんでした! 以上!」
「これがタイムベントちゃんですか」
そうです。
「よしもっかいキャラクリするか」
「今度はコアミラーシナリオやろうぜ」
そして皆はまた、慣れた様子でキャラクリを始めるのであった。
コアミラーシナリオの方は『戦い続ける』『戦いを止める』のどちらかをダイスで決めることになったが、なんやかんや戦いを続けるエンドになったという。
けれどGM神崎が龍騎(ナイト)を追い詰めたものの、サバイブでストレンジベントをゲットした龍騎が、ストレンジベントダイスでタイムベントを引き当てたため、龍騎に都合のいい感じにふわっと時間改変されてしまい、またGMがガチギレしたそうな。
「ジェダイは最近の若い人には受けが悪い」
「最近の若い人はもっと楽で稼げる仕事に流れてる」
「後継者不足、なり手が居ない」
「伝統の技術がここで絶えることは物悲しい」
「また一つ京都から京都らしさが消えると思うと」
「時代の流れ、ってやつでしょうね……」
とNHKドキュメンタリーで語るルーク・スカイウォーカーさんの映像を再編集した『最後のジェダイ』っていつ劇場で公開されるんでしょうか