どこまでも青い空。燦々と輝く太陽。焼けた白い砂浜。
清らかな潮騒と共に、寄せては引き、引いては寄せ―――千変万化する波の色。
そんなサイネリア島のビーチにグレン達はいた。
「やっほー、システィ~」
ばしゃりと、水着姿のルミアが海から姿を現す。
青と白のストランプが可愛らしい、ビキニ水着姿。
その優雅な曲線を描く艶めかしいボディラインを伝い滴る水。
潮風に乗って舞い上がる水飛沫が太陽の光を受けてきらきらと輝き、手を振って無邪気に笑うルミアを美しく彩った。
「水が気持ちいいよ! システィもリィエルもおいでよ!」
「うん! わかったわ! 今、行く!」
控えめなカーブのラインが清楚な、そのスレンダーな肢体。
腰に巻かれた花柄のパレオがお洒落な、セパレートの水着姿。
元気よく、ルミアが泳いでいる場所へ向かってリィエルの手を持って砂浜を駆けていく。
「…………え、『
女子生徒達の水着姿とその光景を前にカッシュ達は感涙の涙を禁じえなかった。
「…………何言ってるの?」
そんなカッシュ達を氷の中にいるテラスは怪訝そうに首を傾げていた。
「お前こそ…………なんだよ、それ?」
投球状の氷の中にいるテラスの外から声をかけてくるグレン。
「黒魔改【アイス・バリゲート】。冷気の魔術を応用した熱遮蔽です。魔力消費も少なく、中はわりと快適ですよ?」
高い気温に弱いテラスが熱から身を守る為に考案した魔術。
「ほう? それなら俺にも一つ」
「はいはい」
グレンにも【アイス・バリゲート】を使うテラスにその快適さにグレンも満足そうだ。
「おぉ、中々いいじゃねえか!? これならぐっすりと眠れそうだ!」
喜ぶグレン。その隣でテラスもシートに横になろうとする。
「テラスく~ん」
声をかけられて起き上がるテラスにルミアとシスティーナそれにリィエルが駆け寄ってきた。
「貴方ね…………こんなことで魔術を使うなんて…………」
「僕にとっては一大事だよ? ここから出たら熱で倒れるから」
こんな風に日常的に魔術を行使しているテラスにシスティーナは何か言いたげだが、そう言われたらそれ以上は何も言わなかった。
「おうおう、なんともまぁ、眼福な恰好してくれちゃって…………」
その横でグレンがニヤニヤと悪そうに笑った。
「じっ、じろじろ見ないでよ…………」
身体を腕で抱くように隠し、不機嫌そうに身じろぎするシスティーナ。その頬には仄かに赤みが差している。
「…………えっと、どうかな? 似合う?」
「うん、似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう、テラス君」
「白猫、お前もなかなかセンスいいじゃねーか。気に入ったわ」
「う、うるさいわねっ! べっ、別に貴方に見せるために買ったわけじゃ――――」
テラスとグレンは二人に何気ない賛美を送る。
リィエルが一歩グレンの前に出て、意味深にじっと見つめ始めるが、その意図がわからないグレンは首を傾げていた。
「ところで…………お前ら、一体どうした? 皆で遊んでいたんじゃなかったのか?」
「あっ、それがですね。これから皆でビーチバレーでもしようっていう話になって…………二人を誘いに来たんです」
「ビーチバレー?」
いかにも気乗りしないグレンはぼやいた。
「僕は遠慮しておくよ。高い気温は僕にとってきついし、ビーチバレーしたら絶対に倒れるし、それでまたルミアに面倒はかけたくないしね」
テラスは遠慮がちに断りを入れる。
「…………そんなの気にしなくていいのに」
船の上では面倒をかけてしまったルミアに気を遣って断るも、ルミアはそれを気にも止めてはいない。
「…………先生。どうにかできませんか?」
「つーてもなぁ、あいつがこの氷から出るとマジで倒れると思うぞ?」
「そこをなんとかして欲しいんです。テラスをルミアと一緒に遊ばせてあげたくて…………」
二人をどうにかしようとグレンに助力を求めるシスティーナにグレンは面倒そうに頭を掻くも―――
「なぁ、テラス。お前は
「はい……?」
意味深な質問にテラスは首を傾げる。
即席のビーチバレー場にて。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおくたばれっ!!」
雄叫びと共に炸裂するスパイクは真っ直ぐテラスに打ち込まれる。
「《手よ》」
だが、白魔【サイ・テレキネシス】でボールを止めるテラスはスパイクを打ち込んできたカッシュを見るも、カッシュは恨めしそうに舌打ちした。
「チッ、防いだか……」
「僕、何か恨まれるようなことでもしたかな…………?」
「そんなもん…………自分の胸に聞けぇぇええええええええええ――――――――――ッッ!!」
血涙を流さんとばかりのカッシュの漢の叫びが氷に覆われた砂浜に響いた。
テラスの【アイス・バリゲート】をこの砂浜全体を覆い、快適空間のなかでビーチバレーに参加している。
「テラス…………お前には競技祭の時や、昨夜の治療でさんざん面倒をかけてばっかだが―――」
カッシュは震える手を握りしめてチラリとテラスとチームを組んでいるルミアを見て、テラスを指す。
「俺はここでお前を倒すッ! 無念に散った俺達の恨みをお前にぶつけてやる!!」
「全く持って身に覚えがないんだけど…………」
コート外にいる男子生徒が何人かカッシュの言葉に同意するように頷き、それに気付いたルミアは苦笑いを浮かべていた。
当の本人は困ったように頬を掻く。
「…………まぁ、折角なんだから少し面白いものを見せてあげるよ。ルミア、トス!」
「うん!」
ルミアにボールを移動させてルミアの絶妙なトスにテラスは跳び、敵陣地にスパイクを炸裂させる。
「《見えざる手よ》―――――ッ!」
テレサが着地時点を指して【サイ・テレキネシス】の呪文を唱えるも、ボールは右へ曲がって地面に当たった。
「へ、変化球だと…………!?」
驚きの声を上げるカッシュにテラスは得意げに語る。
「白魔【サイ・テレキネシス】は遠隔物質操作。その物質を指定し操る魔術。だけど、動いている物質、今回だとボールがくる場所を予測して指定しなければ魔術は使えない。つまり、どのような変化球がくるかまでも予測して、その場所を的確に指定しなければ操ることは出来ない」
「くっ…………まさか、これほどの実力差があったとは…………ッ! だが、こっちにはリィエルちゃんがいる!」
ボールをトスしてリィエルにスパイクを放たせるも―――
「《手よ》」
そのバカげた威力で放たれるリィエルのスパイクをテラスが拾う。
「リィエルのスパイクはあくまで真っ直ぐ。僕の魔術で容易に捉えられる」
「な、ん、だと…………ッ!」
「ついでに僕の変化球は千変万化。予測不可能な僕の攻撃を拾えるかな?」
自信満々に敵の攻防を無力化させるテラスの技量に背後にいるルミアとウェンディは互いに苦笑い。
「やれやれですわ。テラスも熱にやられたようですわね」
「あはは…………でも、楽しそうだよ?」
「まだだ…………俺は諦めねえ! 行くぞ、二人とも!」
「ルミア! ウェンディ! サポートをお願い!」
勝手に発熱する二人に女性陣は顔を見合わせて苦笑する。
燃え上がるビーチバレーだが、発熱し過ぎたテラスは魔力制御を怠り氷が消えて太陽の陽光を受けたテラスは高い気温と発熱した肉体も合わさり、速攻でダウン。
倒れたテラスは日陰でまたルミアの看病を受ける羽目になった。
「…………結局こうなるのね」
氷嚢を頭に載せてテラスはぼやいた。
吸血鬼というのも案外不便なものだと、今回の遠征学修でそれを知った。