【悲報】俺氏、死体に慣れる。   作:めんたんてん困難

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目に見えた死

 目が覚めた。目の前には相変わらずの病院の天井。腕につながれている点滴のパックの量がさっきより一つ多い。

 今日だけで何回気を失わなくてはいけないんだろうか。確か人間は気絶しすぎると気絶しやすくなる癖がつくとかそんな噂を聞いたことある。気絶癖とかマジ勘弁。

 

 取り敢えず上半身だけを起こして病室内を見回す。さっきと違ってコナンと博士の姿は無い。時計を見る限り俺が気を失ってたのは一時間程といったところか。

 

 目が覚めた時には夜になってて例の爆破予告事件も解決してました、みたいな展開が良かったんだけど、そうは問屋が卸さないらしい。

 

 まさか本当にこの病院に爆弾が仕掛けられるとは。江戸川コナン恐るべし。

 あれだけ辛い思いを我慢して病院に行くのを渋ってたのに結局コレでは意味がない。俺のあの苦痛の三日間は何だったんだ。しかも理由がタバコを買いに行く途中に倒れて入院ってアホか。もうアレかな。神様が俺に禁煙しろって言ってるのかな。

 まあそもそもこの病院から生きて帰れるかわからないから禁煙云々の話なんてできるレベルじゃないんだけども。

 

 さっきから廊下の方が騒がしい。警察が総動員で爆弾でも探してるのか? それとも看護師や医者、患者が避難でも始めているのだろうか。でもこういうのって大体がパニックを避けるためにギリギリまで一般人には公開しないんじゃなかったか。そこらへんは曖昧だが、もし公開されていないとしても俺はこの病院に爆弾が仕掛けられていることを知っているんだ。

 

 —————ん? これはもはやチャンスなのでは?

 

 他の一般人がこのことを知ったら確実にこの病院の出入り口は混雑する。そうなると後ろの方とか逃げ遅れる。だからそうなる前にとっととこの場からトンズラすれば爆破事件に巻き込まれることなく華麗に自宅へ帰還することができる。

 

 完璧や。完璧やで小々波漣斗。

 

 そうと決まれば即行動。善は急げ。爆弾魔は待ってくれないぞ。

 

 さっきの失敗を生かし取り敢えず点滴は腕に刺したまま、病院を出るギリギリまで変な機械ごとガラガラと押していけばいい。入院費や医療費なんかは払わんでいいだろ。病院が爆発したら元も子もないしな。もし奇跡的に事件が無事解決したら大人しく病室に戻ってベッドに寝てれば良いし。

 

 今回のこの作戦、成功するかどうかは道中でコナンに会うか会わないかに掛かっている。見つかるとこの病室に強制送還される。つか今回"も"だな。ぶっちゃけ俺が生きるか死ぬかは日常生活でコナンに会うか会わないかで変わってくるとこあるしな。俺の運命背負ってるよアイツ。

 

 兎にも角にも気がついたら病院もろとも木っ端微塵に消し飛んでましたみたいなオチにはならないようにしよう。

 

「目標は自宅への帰還。敵(?)は江戸川コナン。小々波漣斗、行っきまーす」

 

 謎のノリと掛け声で無理やりテンションを上げ、俺は思い切りスライド式のドアを開け放ち周囲を警戒しながら廊下へ出た。

 

 よし。コナンに扉の前で出待ちされてはいないな。

 

 キョロキョロを周りを見回しながら病院の出口へ向かう。

 

 トイレの入り口に『採尿後はよく洗って戻しておいてください』と書いたラベルが貼ってあった。病院というところはやたらに何にでも貼り紙がしてある気がする。もう『丸メガネを掛けた小学一年生の男の子に注意』とか書いて貼り付けとけよマジで。

 

 それにしても思った以上に体が重い。頭はクラクラするし足元はおぼつかない。流石に点滴を打たなくてはいけないだけはあるようだ。

 例の事件以降の三日間特に何も食べてなかったってのもあるし倒れた原因は栄養失調ってところか? それとも寝不足かもしくはその両方か。酒の飲み過ぎってのもあるかもしれない。

 

 —————まあ多分一番の原因はタバコの吸い過ぎなんだろうけど。もう少し本数控えたほうがいいかな。早死にはしたくないし。

 

 自身の今後の健康について軽く考えつつ、廊下を歩く事数分。受付や待合室などがあるロビーまでたどり着いた。クーラーの効いたロビーは外来の患者でごった返している。

 多くの患者や看護婦が行き交う中、一部の医者達が随分慌てている様子だ。多分この病院に爆弾が仕掛けられていることを知っている人間と言ったところか。これは周りの人間に広まりパニックになるのも時間の問題か。大体こういうのは口止めしてても絶対に何処かから漏れてしまうものだ。現に博士も知った理由が立ち聞きだったし。

 

 医者の慌てふためく様子を見て、いずれこの病院に訪れる大惨事に俺は急いでここを出ようと改めて決意を固める。

 

 幸いなことに未だコナンの姿は見えないし、これは上手いこと脱出できるんじゃないかと俺の胸に希望が湧き上がる。

 

 しかし現実はうまくいかない。そんな俺の元に新たな災いが降りかかってくる。

 

 丁度角を曲がったところ。あと少しで出入り口というところ。向かい側から歩いてくる、褐色肌で明るい髪色が特徴の高身長のイケメンを見つけてしまった。その男はなにかを探しているらしくキョロキョロ周りを見回しながら俺の横を過ぎ去った。

 

「うげ……安室透」

「え?」

 

 やってしまった。ついうっかりボソッと呟いたのを褐色肌の男————安室透に聞かれてしまった。

 

「えっと、どこかでお会いしました?」

 

 俺の横を通り過ぎた後、案の定そのまま見逃してくれることはなく安室透は振り返り俺に言葉を投げかけた。

 

 まずいまずいまずい。完全なる自滅。あと少しでここから脱出できることに喜びを感じすぎて気が緩んでいた。コナンばかりに気を取られてギリギリまで安室透に気がつかなかったのもあるが、本来安室は俺のことを知らないのだから適当に流しとけば接触するなんて事には至らなかった筈だ。要するにこれは俺のただの凡ミス。

 

 あと少しだったのに! クソッタレが! 

 やっぱり安室透登場回だったよ今回の話。爆弾処理のためにコナンあたりに呼ばれたんだろうな……。

 

 一か八かこのまま適当に流せるか?

 

「あ、お構いなくー」

「僕のことはどこでお知りに?」

 

 無理でした(絶望)

 これは返答次第によってはめちゃくちゃ怪しまれる奴だわ。つかどんどん主要キャラと絡んでねーか俺。おかしいなあおかしいなあ。黒の組織に潜入捜査してる公安の知り合いとかいらねーからマジ。もう存在が地雷。

 このままいくといつかジンとかベルモットとかとメル友になれそうな勢いだぞ(白目)

 

「えっと、あのー、コナン……くんに少々お話を聞きまして」

「コナンくんとお知り合いなんですか?」

「違います」

 

 いや、なに言ってんだ俺。言ってることめちゃくちゃだぞ。咄嗟にすぐバレそうな嘘をついたにも関わらず、俺の中のナニカがコナンと知り合いであることを拒否してしまった。いやまあ知り合いなんかじゃ無いんだけどね。

 

「え……、知り合いでも無いのに僕の話を彼から聞いたんですか?」

 

 ほら安室さん滅茶苦茶不思議そうな顔しとるやん。ここはどうにかうまく誤魔化さないとマジで取り返しがつかないことになるな。

 

 俺は頭をフル回転させて思いつく限りの最高の言い訳を彼に披露した。

 

「いや、ポアロで働く安室さんを一目見てからすごい気になってて、どうしてもお名前を知りたかったんです。でも本人に聞くのはちょっと恥ずかしくってポアロの隣に住んでる小学生の子なら名前知ってるんじゃないかと思って彼に聞いたんですよ」

 

 ん、待てよ。なんかおかしいな。これよく考えるともしかして……。

 

「へ、へぇ。そうなんですか……」

 

 やべえめっちゃ引いてる。めっちゃ引いてるよ安室さん。俺も言ってて途中で変だと思ったよ。けど違うんです!

 

「いや、あのそういう奴じゃ……」

 

 俺の今後の名誉に関わる勘違いをしている安室さんから誤解を解くため、彼の両肩に手を置いてはっきりと彼の目を見る。

 

 しかし。

 

「すいません僕ノーマルなので!」

 

 そう言い残して彼は走ってどこかへ行ってしまった。

 

 オワタ。

 

 確実にナニカ大事なものを失った俺は完全に心が折れ、その場に膝から崩れ落ちた。

 

 

 

———————————————————————————

 

 

 

 

 —————犯人の目的はなんだ? 何故この病院に爆弾を仕掛けた?

 

 俺は今、患者に使われていない空きの病室で目暮警部達の臨時会議にさりげなく参加していた。

 メンバーは目暮警部、高木刑事、佐藤刑事、白鳥刑事、千葉刑事の五人だ。後からおっちゃんも合流するらしい。

 

 爆破予告が届いたのは今からちょうど一時間程前。病院の郵便受けに一通の手紙が届いたのを受付の人が見つけ、不審に思いつつ中を開けて見たら、新聞の文字を切り抜いて作られたメッセージが封入されていた。

 

『この病院に爆弾を仕掛けた。解除して欲しければ私が後にする要求を受け入れろ。要求を拒否したり警察が探し回っている事が分かったら直ちに爆発させる』

 

 因みにまだ犯人からの要求はない。それにどのような方法で要求をしてくるかも書いていない。手紙なのか電話なのか、それともスイッチを持った犯人が直接病院に乗り込んでくるのか。可能性としては同じように手紙で要求を送ってくるのが一番高い。

 

 そうなるとやはり—————、

 

「名探偵毛利小五郎ただいま到着しました!」

「おお毛利君、やっときたか」

 

 バンッとスライド式のドアを思いきり開いておっちゃんが現れた。昼間っから麻雀をしていたらしいが目暮警部の召集でやむなく中断して駆けつけてきたらしい。凄くヤニ臭い。

 まだ酒を飲んでなかったのが救いだ。

 

「警部殿、現状は?」

 

 おっちゃんの参戦でより本格的な会議が始まる。俺はそれを一歩離れたところから聞いている。

 

 やっぱりまず犯人からの要求がこないと始まらない。爆弾を探すにも手がかりが少なすぎる。犯人像を絞るにも犯行予告の手紙一枚だけだとどうしても難しい。この病院に恨みがある人物を片っ端から上げていくてもあるがそれだとキリがないし、犯人がどこかで見ているかもしれないから迂闊に警察も動けない。

 

 どうする。何か手はないのか。こちらが有利になる手を先に打っておきたい。

 

「—————なるほど。それで避難の方は?」

「パニックの恐れがあるのでまだ病院内の一部の人にしか伝えていません」

「でも広まるのも時間の問題じゃないですかね」

「うーむ。やはり犯人から要求が来ないとなんとも……」

 

 やはりおっちゃん達も同じような考えらしい。患者達がパニックになるのだけは絶対避けなくてはならない。

 

「で? なんでオメーはまたこんなトコにいんだよ」

「へ?」

 

 むんずっと後ろの首元の襟を誰かに掴まれ、俺の体は宙に持ち上げられる。手足をバタバタさせて抵抗するも虚しく、俺を掴み上げた人物—————小五郎のおっちゃんは俺を病室の外へ連れ出そうとドアに手をかける。

 

「え、あ、ちょっとおじさん!」

「うるせぇ。ガキは引っ込んでろ!」

 

 ポイっと廊下に放り出された俺は重力に従ってそのまま地面に落ちる。思いっきりドアを閉められてしまった。これは戻ったらまた面倒な目に合うな……。

 

 もう少し情報を集めておきたかったが仕方がない。こうなりゃ俺が爆弾を見つけてやる。犯人も俺みたいなガキがまさか爆弾を探し嗅ぎ回ってるとは思わないだろう。だから途中で爆弾が爆破される心配もないはずだ。

 けど、もし爆弾の作りがかなり複雑だった場合、俺の技術力じゃ多分解除は不可能だ。だからさっきあの人を呼んでおいた。博士から爆弾を仕掛けられていると聞いた時に咄嗟に電話をしたからもうすぐ病院に着くだろう。

 

 するとタイミングよく俺のズボンの右ポケットが小刻みに震えた。病院内にいるためしっかりマナーモードにされているから音は出ない。

 

 駆け足で携帯使用可能エリアに移動し、画面をつけ流れるように通話ボタンを押す。スピーカーの向こうで特徴的な男性の声がした。

 

『もしもし』

 

 

 

「あ、もしもし。安室さん?」

 

 

 

 

———————————————————————————

 

 

 

 

 空は抜けるように青く、細くかすれた雲がまるでペンキのためし塗りでもしたみたいに天頂にすうっと白くこびりついていた。

 

「無駄な抵抗はよせ! 人質を解放するんだ!」

 

 そんな空の下、怒号とは少し違う大きな声が響き渡った。

 緊張と焦り。その二つが混ざり合ったような顔をした高木刑事が俺の方へ銃口を向けている。

 

「うるせえ! こいつぶっ殺されたくなけりゃ大人しくしろ!」

 

 正確には俺の背後で俺の首元にナイフを突きつけている男に銃口を向けているのだが。

 米花中央病院の屋上、ニット帽とマスクとサングラスで顔を完全に隠している男に現在俺は人質に取られている。

 

 銃を構える高木刑事の背後には緊迫した表情のコナンと安室の姿もある。

 

 —————いや、どうしてこうなった。

 

 安室からひどい勘違いを受けた俺は思いの他心へのダメージが酷く、わりと長い時間ソファーで項垂れていた。そんなことしてないですぐにでも病院から出て家に帰ってれば良かったと今になって激しく後悔しているが、その時はそんな事など二の次で心のダメージのケアをする方が大事だったのだ。

 

 と、俺のやらかした話は取り敢えず置いておき。

 

 俺が安室と出逢った時、彼はコナンの元へ向かう最中だったらしい。なんでもコナンが病院内に仕掛けられている爆弾を見つけ、一応設置されていた場所からは引き剥がして待機していたのだ。そこで急いで安室がコナンのところへ向かい複雑な作りだった爆弾を見事に無事解除し、事件は八割方解決したかのように思えた。後は犯人を捕まえて一件落着。誰もがそう思っていたらしい。

 

 しかし犯人は爆弾が解除された事を元々爆弾に取り付けていたセンサーにより感知し逆上。自らの体に爆弾を巻き付け、この病院に乗り込んできたのだ。

 

 そこでたまたま出入り口に向かって歩いていた俺のことを人質に取り、高木刑事とコナンと安室の三人に見つかり屋上まで追い詰められ今に至るという訳だ。因みに単独犯。

 

 なんともまあついてない話だ。確かに病院でコナンに遭遇してこのまま無事に帰れるわけがないって心のどこかではわかってたんですけどね。いやけどまさか人質になるとは思ってもみなかったよ。人生何があるかわかんないよね。はっはっはー(ヤケクソ)

 

 つか、爆弾あるならわざわざ一人の人質を取る必要なくね? この病院内の人皆が人質みたいなもんじゃん。え、なんでわざわざナイフを俺の首元に突きつけてる訳? バカなの? アホなの?

 

 なんつーか、混乱しすぎて一周回ってむしろ冷静な俺がいる。

 

「そんな事をしてもムダだ! その人を離して大人しく降伏しろ!」

 

 俺の事を心配してくれるのはありがたいんだけどあんまり犯人を刺激するのはやめて下さい。犯人がキレてるの多分君のせいだから。いやコナンは頭いいからそんなことわかってるんだろうけどね。

 

「まさかガキを使って爆弾を集めるとは思わなかったナァ。ふざけた真似しやがって」

 

 どうせ警察が探してるのがわかったら爆弾を爆発させるとか予告文に書いてたんだろ? けど探し回ってたのはまさかの小学生でしたってオチ。そりゃあいくら病院内を監視してた犯人でも予測してなかっただろうし気がつかなかっただろうな。

 

「要求はなんだ? 爆弾を所持しているのに何故わざわざ人質を取る必要がある?」

「報復だよ。この病院に復讐してやるのさ。俺は用心深い性格でな、念には念を入れてだ」

 

 安室さんの問いに御丁寧にちゃんと答える犯人の男。

 

 それにしても復讐か。病院に爆弾仕掛けたくらいだしそんなもんだろうとは思ってたけど……。

 

「高木君!」

「な、人質!?」

 

 コナンの背後の階段からゾロゾロと人が上がってきた。目暮警部、千葉刑事、佐藤刑事、千葉刑事に毛利小五郎。ヘリのプロペラ音も聞こえてくるし特殊部隊も既に召集しているのだろう。

 

「それ以上近づくんじゃねえ! 人質がどうなっても良いのか!?」

 

 人が増えたことで犯人はより警戒心を強める。俺のことを押さえつける腕にも力が入り、ナイフの刃がより俺の首に近づいてくる。

 

「いてっ」

 

 スッとした痛みが首元に走り、ツーッと赤い鮮血が切り口から流れ出す。犯人は興奮しているのか刑事さんたちの方にばかり気を取られ俺の方を全く見ていない。

 

 こいつ俺の首に刃が当たっていることに気づいてない!?

 

 やばいやばいやばい。どんどん刃が食い込んできてる。

 

「痛い痛い痛い痛い! 刃、当たってる! 食い込んでる! 死ぬ! 死ぬ!」

「あ!? うるせえぞお前、少し黙れ!」

 

 それだけ言い放って全く刃を遠ざける気配がない。

 

「だから刃食い込んでるっつってんだろ!」

「その人からいますぐ手を離せ!」

 

 高木刑事が拳銃をしっかりと構え直す。もう良いですよ撃っちゃって下さい。

 

「うるっせぇ! テメェは黙って大人しく俺の人質になってれば良いんだよ!」

 

 カッチーン。

 

「黙って人質になれだと……?」

「あぁ!?」

 

 俺の耳元でそう喚く男に対して、俺は心の底からものすごい怒りが湧き上がってくるのを感じた。自分でもこんな場面でキャラでもないのになんでこんなにキレそうなのかよく分からないが、俺は気がついたら声を上げていた。

 

「ふざけんのも良い加減にしろよコラ。あぁ!? テメェ人質になったことあんのか!? 人質に選ばれた奴の気持ちわかんのか!? 俺病人なんだよ! つかさっきから刃ァ食い込んでるっつってんだろボケカス野郎! 血ぃ出てんだよ痛ぇんだよ!」

 

 俺の溜まりに溜まった怒りはこんなんじゃ止まらない。刑事陣は俺の急な変貌っぷりに驚きを隠せていない。

 

「さ、小々波さん!?」

「復讐とかふざけてんのか? 関係ない人巻き込んでんじゃねえよ! 良い迷惑なんだよ! 身に覚えないのになんで命の危機にさらされなくちゃならんのじゃボケェ! 復讐なんか下らないこと考えてんじゃねぇよ!」

「なんだとテメェ!?」

 

 男がナイフを持っている手を大きく振り上げた。このまま俺の喉を搔っ捌くつもりだろう。けど俺はそれを見つつも怯まずに止まらない。

 

「お前みたいなやつはなぁ!」

 

 ナイフの刃が迫り来る。

 

「とっとと地獄に堕ちろやゴラァ!」

 

 言い切った。言い切ったぞ俺は。何もかもがスローモーションで見える。ゆっくりと俺の首に向かってナイフの刃が迫り来るのがよく見える。

 今更になって後悔した。なんでこんなこと言ったんだ俺。あれ、死ぬ? 死ぬよねこれ。やっぱコナンの世界で生き残るなんて無理な話だったんだ。まだやりたいこといっぱいあったのにな。死んだら化けてコナンに取り憑いてやろう。取り敢えずコナンにガンを飛ばす。

 あ、なんか走馬灯みたいなの見えそう。お父さんお母さん、俺も今からそっちに行くっぽいです。

 

 覚悟を決めて目を瞑ろうとする。が、しかしものすごい轟音とともにこちらに向かって飛んでくるサッカーボールが目に入り、俺は助かることを確信した。

 

 キック力増強シューズでコナンの放った異次元シュートが見事に犯人の顔面に直撃し、その体を数メートル先まで吹っ飛ばした。

 

 

 

 

———————————————————————————

 

 

 

 

 

「確保ぉぉぉ!」

 

 目暮警部の合図で高木刑事と千葉刑事が犯人の体を抑えにかかる。気絶してるはずだから特になんの問題もなく身柄を取り押さえられるはずだ。それに体に巻いてある爆弾、アレは偽物だ。誤爆する心配もない。

 

「コナンくん、お手柄でしたね」

 

 安堵した表情で安室さんが話しかけてくる。

 

 今回俺が犯人の顔面にボールを打ち込むことができたのは小々波さんのお陰だ。彼が急に喋り出してくれたお陰で犯人の注意が完全に彼に移り、隙が生まれた。

 

 まさかあの状況で物怖じせずに犯人に立ち向かうことが出来るなんてものすごいメンタルの持ち主だ。俺たちから犯人の注意をそらすために自分の身の危険を顧みずあのように行動をできるとは。

 それに絶妙なタイミングでのあのアイコンタクト。アイコンタクトを送った相手が俺だったのには少し疑問が残るが、まあ結果そのお陰で犯人逮捕に繋がることができた。

 

 目を回し気を失っている小々波さんをおっちゃんが担ぎ上げている。

 

「それにしても、よく気絶するなぁこの人」

 

 小々波漣斗、やはり只者ではないな。

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