八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない 作:sinobun
バイアスロン部の見学を終えた八幡は達也と深雪を待つため校内にあるカフェで時間を潰した。
そして二人がそれぞれの仕事を終えて八幡も合流し三人は司波家へと帰って来た。
「お兄様、八幡、今紅茶を入れるから少し待っていて下さいね」
深雪は部屋着に着替えており、八幡は今日も当然その深雪に見惚れていた。
「(やっぱり深雪は可愛いよな。九校戦に出たらホントにファンクラブとか出来るんじゃねえか?かと言ってそれを阻止する事もできないしな・・・)はぁ・・」
「溜息なんてついて如何したんだ?」
「もう皆殺しにするしか・・・」
「おい八幡っ!何を物騒な事を言ってるんだ?」
「いや・・大した事じゃない」
「そうか・・(皆殺しが大した事じゃない?本当に大丈夫なのか?)」
その後深雪の入れた紅茶を飲んだ後八幡と達也は司波家の地下へと向かった。
地下には達也専用のラボが有り、その規模はとても一般家庭に設置されているとは思えない機材などが並んでいる。
八幡が今日ここに来た理由は、達也が既に完成目前までこぎつけている「常駐型重力制御魔法」を使った「飛行魔法」のテストに付き合う為である。
「テストと言ってももうほとんど完成してるんだろ?」
「まぁそうなんだが、八幡は唯一不可能とされている重力制御魔法のみでの飛行魔法が可能な人間だからな。二つを比べてどうなのか感想を聞きたい」
「分かった取り敢えずやってみるか。CADを使うのも久しぶりだな」
そして八幡は飛行魔法の起動式がインストールされているCADを使って飛んでみた。
「どうだった?何か問題はあったか?」
「いや、特に無いな。これを使っても使わなくても違和感がないからな」
「・・・・・・」
達也が無言でこちらを見つめている為八幡は疑問に思う。
「どうしたんだ?」
「いや・・今のおまえの発言がちょっとな・・」
「だからなんだ?」
「おまえは今違和感が無いと言ったが・・それはつまりこのCADと同じことをお前は自力で出来るという事だよな?いや、以前から出来たの方が正しいか」
「まぁそうだな・・・あっ!?」
「気が付いたか。そう言う事だ。お前が自力でやっていた事が実は「常駐型重力制御魔法」で、それをCADにインストールすれば飛行魔法はもっと早く完成していたと言う事だ」
八幡は少し気まずくなり言い訳を始める
「俺も飛行魔法を使う事なんてほとんどなかったからな。俺が使ってる起動式を達也が見て居たら気が付いたかもしれないが・・・でも自力でそれを開発するなんて凄いじゃないか。俺は感覚で使っていただけだからな」
「お前の方がよっぽど凄いんだがな・・まぁいい。後はこれを誰でも使えるかのテストだな」
そこでラボのドアをノックする音が聞こえた。
「お兄様、八幡、深雪です。入ってもよろしいでしょうか?」
「丁度良いな。深雪、早く入って来いよ」
八幡がそう促すと深雪が中に入って来る。そして深雪の姿に八幡はまた見惚れてしまう。
「どうでしょうか?お兄様、八幡」
その問いに、固まっている八幡より先に達也が先に答える。
「ああ、フェアリー・ダンスのコスチュームか」
深雪が出場する九校戦の花形競技ミラージ・バット、別名フェアリー・ダンス。深雪が着ていたのはそのコスチュームだった。
「とても可愛いよ。本当によく似合ってる。」
「ありがとうございます。それで・・その・・・八幡はどうなの?」
そう言う深雪の再度の問いかけに八幡はやっと再起動する。
「あっああ、よく似合ってるよ。可愛いと思うぞ・・・だけど・・・」
「だけど?」
「ちょっと下が短過ぎないか?大丈夫なのかそれ?ミラージ・バッドは空に飛び上がるし・・」
「大丈夫よ。素足なわけでもないし、ちゃんとそう言う事に配慮した作りになっているのよ」
「しかしな・・」
「もう、八幡は。そんな事言って他校の女子をそう言う目で見たらダメよ?」
なおも納得しない八幡に深雪はそう言う。
「バッバカ。見るわけねーだろ。俺はただ・・」
「深雪。八幡はな、お前が他の男にそう言う目で見られないか心配してるんだよ。」
「お兄様・・八幡そうなの?」
「・・・まっ、まーな。深雪はただでさえ目立つからな・・その上そんな恰好してたら嫌でも目を引くだろう」
「そっ、そう・・・その・・心配してくれてありがとう」
八幡の真意を知り深雪は嬉しかったようで頬を染めながら礼を言う。
そしてお互い恥ずかしくなり無言になる。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「邪魔なら俺は席を外すが?」
「たっ、たちゅやっ!にゃっにゃに言ってんだ!変な気を使うにゃ!」
「そっ、そうですよお兄さま!」
「ならいいんだが(気を使うというより俺がこの場に居たくないだけなんだがな・・)」
「それより丁度いいから深雪にテストを頼んだらどうだ?」
「そうだな」
「テストですか?」
深雪が疑問に思ってそう聞いた時だった。椅子に座って居た達也の体がそのままの体制で空中に浮きだした。そしてそのまま深雪の前まで水平移動するとやがて達也は地に足を着け着地した。
「深雪にもこのデバイス(飛行魔法専用CAD)のテストを頼みたかったんだ」
「飛行術式・・常駐型重力制御魔法が完成したんですね!」
感動している深雪を尻目に達也は八幡をジト目で見る。
「完成したというか・・既に完成していたというか・・」
「どういう事ですか?」
「深雪も俺が一応飛行魔法を使えたのは知っているだろう?どうやら俺が無意識で使っていたのが常駐型重力制御魔法だったみたいなんだ」
深雪はそれを聞き呆れた様に言う。
「まぁ今回は八幡が悪い訳ではないけど・・お兄様の苦労を考えると何とも言えないわね」
「八幡の異常性を改めて認識させられたな」
「誰が異常だ誰が!」
「異常(だろ)(よ)」
「ぐっ・・」
兄妹に揃ってそう言われ八幡は何も言い返せなかった。
その後行われた深雪によるデバイスのテストも問題なく終わり、それを見届けた八幡も帰る事にした。
達也はデバイスの最終調整の為ラボに残り、深雪が玄関まで八幡の見送りをする。
「それにしても八幡、よく九校戦に出る気になったわね。八幡の事だからめんどくさいからって適当な理由をつけて辞退するかと思ったわ」
「まぁ母さんにも出ろって言われたからな・・」
「叔母様が?あっ・・・もしかして私の為に・・」
深雪は八幡が九校戦に出る理由に気がつき顔を下に向けてしまう。
「深雪のせいじゃないさ。俺だってどうしても出たくない訳じゃなかったからな」
「八幡・・ありがとう」
「おう!それよりも俺は深雪よりも目立たないとダメなんだよな・・・気が重い」
「四葉八幡の力を他校の生徒にも見せつけてあげればいいじゃない。私は楽しみよ」
「俺は静かに暮らしたいんだよ。」
「母校の中学を一人でテロリストから救ったヒーローが今さらよね」
「・・・はぁ。取り敢えず今日はもう帰るな」
「ええ。明日はお兄様と一緒にFLTに行くからまた週明けに」
「おう。じゃあな」
こうして八幡は司波家を後にした。
翌日の朝八幡が教室に入るとすぐに雫、ほのか、雪乃が八幡の元にやって来た。
「八幡おはよう」
「おはようございます」
「八幡君おはよう」
「おう、おはよう」
「八幡は知ってたの?」
雫の急な問いかけに八幡は何の事かわからず聞き返す。
「何をだ?」
「達也さんのエンジニア入りです」
「今学校中がその話題で持ちきりよ」
八幡は登校中にもその手の話題が耳に入って来ていたので納得した。そして周りのクラスメイト達も現在進行形でそんな会話をしているのが聞こえてくる。
「まぁな。推薦したのは俺だからな」
「そうだったんだ。八幡グッジョブ」
「達也さんの腕を知っている私達としては、ぜひ達也さんに担当してほしいです」
「ただそれを知らない人達はおもしろくないのでしょうね・・・」
八幡も雪乃の言った事には気が付いていた。二科生が選ばれて一科生の自分達が選ばれていない事に納得できないのだろう。
「一科生のプライドか?くだらない・・」
「本番で達也さんの腕を見れば嫌でも納得するはず」
「そうですよ。それにしても達也さんなら選手としても行けそうですけどね」
「選手は試験の結果で選抜してるからさすがに選ぶ事は出来なかったのではないかしら?」
「そうだろうな(まぁ達也に関してはさすがに母さんも認めなかったかもしれないしな。達也が間違って実力を見せる事になったら誤魔化し切れないからな。力を隠して負けたりしても深雪が不機嫌になるのは目に見えてるし・・)」
「そういえば八幡はどの競技に出るの?」
「ん?俺はスピード・シューティングにアイス・ピラーズ・ブレイク、それにモノリス・コードだな」
「三つも出るんですかっ!?」
「会長が勝手に決めたんだよ。モノリス・コードに俺を選んだのはどうかと思うけどな」
八幡の言葉に雪乃が反応する。
「どういう事?」
「モノリス・コードのメンバーには森崎もいるんだ・・・」
「「「ああ・・・」」」
どうやら三人共納得したようだ。
「チームワームなんて皆無なんだが・・」
「でもモノリス・コードは一番ポイントが貰える競技だから八幡が選ばれないはずがない」
「八幡さんなら一人でも勝ち進みそうですよね」
「確かに八幡君なら一人でも十分ね」
八幡は森崎に聞かれていないか確認してからほのかと雪乃を止める。
「おい二人ともその辺にしとけ。ただでさえ俺はアイツに恨まれてそうなんだから、そんな事言ってるのを聞かれたらまためんどくさい事になりかねん」
「それもただの逆恨み」
「そうですよ。八幡さんは何も悪くありませんよ!」
「また八幡君に何か言ってくる様なら私が徹底的に論破してあげるわ」
八幡はそれを聞き苦笑いするしかなかった。
九校戦は八幡が居るので原作からの変更点が多々あります。