八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない 作:sinobun
その日の昼も八幡は真由美に呼ばれ生徒会室で昼食を取る事になった。
しかし今日は達也と深雪が居ないので八幡はあまり乗り気ではなかった。
(今日は何の用何だ一体。俺はベストプレイスでゴロゴロしたいんだが)
そんな事を考えていると生徒会室に着いたのでノックする。
「四葉です」
「どうぞ~」
八幡が中に入ると真由美、摩利、鈴音、あずさのいつものメンバーが出迎えた。
八幡はまず真っ先にあずさの元へ行くと
「あーちゃんこれ飲みますか?」
「もう四葉君は、また先輩が抜けて・・これは・・」
八幡があずさに見せたのは勿論MAXコーヒー(マッ缶)である。
「良かったらどうぞ」
「いいんですか?」
「はい。俺は家にまだ大量にストックが有りますので」
「わーい、ありがとうございます~」
両手を挙げて喜ぶあずさの頭を八幡が撫でるが、当のあずさは余程この差し入れが嬉しかったのか何も言わない。
その光景を見て居た他の三人は
「もうはち君!ちょっとあーちゃんを甘やかし過ぎじゃない?」
「最早この光景にも違和感が無くなって来たな」
「はい。あの中条さんがあんなに心を許すとは正直驚きです」
「会長!あーちゃんを甘やかすのは俺の義務なんで」キリッ
「そんなキメ顔で言わなくたって良いわよ!」
それから八幡は昼食を取りながら今日自分が呼ばれた理由を聞く。
「で、今日はどうしたんですか?」
「実はね・・」
真由美がバツが悪そうな顔をして中々話さないので見兼ねた摩利が代わりに説明する。
「真由美は八幡が九校戦に出るのが嬉し過ぎてルールを忘れていたんだよ」
「ん?と言いますと?」
「八幡は三つの競技にエントリーされると聞いていただろ?」
「はい。会長にはそう聞いてます」
「九校戦のルールでは一人の選手が出場できるのは2種目までなんだよ」
摩利の言葉を聞き八幡を含め全員が真由美を見る。
「うう・・ごめんなさい。はち君最初は九校戦は選ばれても辞退するかもしれないって言っていたから出てくれるって聞いて嬉しかったのよ。それでルールの事をつい忘れてて・・」
八幡は当初真夜の許可が下りるかどうか分からなかった為真由美にその様に伝えていた。
「そうですか。俺は別に構いませんよ。むしろ一人で3種目も出たくなかったので。というわけでモノリス・コードは他の人でお願いします」
「それはダメよ(だ)」
出来れば森崎と関わりたくない八幡はここぞとばかりにそう言ったのだが二人に却下される。
そこに鈴音とあずさも加わり
「モノリス・コードは1番貰えるポイントが高いですからね。おそらく一年生の中でトップの実力を持つ四葉君は外せませんね」
「ですが俺と森崎が色々合ったことは先輩達も知ってますよね?」
「四葉君頑張って下さい。私も応援してます」
あずさの言葉を聞いた八幡は
「分かりました出ましょう!必ず優勝して見せます!」
即答した。
「何だか釈然としないけど・・はち君が出てくれるならまぁいいわ」
「で、もう一つはどっちの競技に出るんだ?」
「はち君が選んでくれて構わないわよ」
「そうですね・・じゃあもう一つはアイス・ピラーズ・ブレイクにします(深雪もアイス・ピラーズ・ブレイクに出るって言っていたし俺も同じ方がいいよな)」
「わかったわ。じゃあスピード・シューティングには森崎君をエントリーしておくわね」
そこで八幡はルールについてある事を思い出す。
「ルールと言えばCADを使用しないで出場するのは有りなんですよね?」
「「「「・・・・・」」」」
その質問に四人は無言になってしまう。
「あれ?ダメなんですか?」
「そもそも過去にそんな人はたぶん一人もいないのよね」
「ルール上は問題ないと思いますが・・・」
「前代未聞だよな。まあ前もって運営委員会に報告しておいた方がいいかもな」
「四葉君が変な誤解をされたらいやですしね・・・」
「確かにそれは有りそうね。なにか不正をして優勝したんじゃないのか?とか」
「いや・・さっきはああ言いましたがまだ優勝するとは決まってませんが・・」
八幡のその言葉は無視された。ここにいる全員が八幡に勝てる者が新人戦レベルではいないと思っているのだろう。実際は世界中探しても居るかどうかわからないのだが。
こうして改めて八幡の出場種目も決まり、あとは週明けの発足式を待つだけとなった。
そして翌週の午後、発足式が行われる講堂には既に多くの生徒達が集まっていた。
その舞台裏ではエンジニアとして参加する唯一の二科生である達也が深雪にせがまれて技術スタッフ用のユニフォームを着せられていた。このユニフォームには二科生の制服にはない例のエンブレムがある為、深雪はそれを羽織った達也を満足そうに見つめて言う。
「良くお似合いです、お兄様」
「深雪、お前は着替えないのか?」
制服のままの深雪を見て達也が聞く。
「私は進行役ですので。それよりも八幡の姿が見えないのですが・・」
深雪は八幡にも選手用のユニフォームを着せようと準備していたのだが当の本人が見当たらない。
しかし達也は知っている様で
(八幡の奴本当にサボる気みたいだな。どうなっても俺は知らないからな)
「お兄様?何か知っているのですか?」
既に若干不機嫌になりつつある深雪に達也は言う。
「いや、俺は何も知らないぞ。そろそろ来るだろう」
「そうですか・・全く八幡は・・・」
その頃八幡はというと
「発足式なんて出なくても別に問題ないよな。あんな大衆の前で見世物みたいにされるのはごめんだ」
実は講堂までは一度足を運んだのだが、あまりの人の多さに引き返したのだ。
そして今はベストプレイスに身を隠している。
(いよいよ九校戦だな。はたしてどこまで力を見せることになるか・・・まあ深雪次第なんだが。モノリス・コードについては森崎に好きにやらせるのが一番いいな。あ~、考えただけでめんどくせーな)
八幡がそんな事を考えていると人の気配を感じたのでそちらを見ると
「なんだ雪乃か。驚かすなよ、深雪が探しに来たかと思ったぞ」
「呆れた。発足式には出ないの?」
「面倒だからサボった。お前は?」
「貴方らしいわね。私は控えと言っても正式な選手では無いから。他の選手がケガか何かで出場できなくなったりしなければ出る事はまずないわ。だから発足式も観客側よ。それで講堂に向かっていたのだけれど途中でここに向かう貴方を見かけたのよ」
「そう言う事か」
八幡は丁度いいと思い気になっていた事を聞くことにした。
「よし雪乃少し付き合え。ちょっとこっちに来いよ」
雪乃は八幡のその言葉に自分の体を守る様に抱きしめる。
「私は雫みたいにこんな場所で添い寝なんてしないわよ?もししたいなら場所を変えて・・」
「なんでそーなる!添い寝なんてしねーよ!それに雫のあれは事故だ!ちょっと話をするだけだ」
「そう・・べっ別に残念なんて思ってないんだからね!」
八幡は雪乃を見て先日の真夜を思い出し頭が痛くなった。
「おまえもかよ・・・しかし雪乃は本当に変わったな」
言ってみたは良いものの、雪乃は少し恥ずかしくなり顔を赤くする。
「じょっ冗談はこれくらいにして・・・それで話ってなにかしら?」
「ああ、答えたくないなら構わないからな。俺が聞きたかったのは陽乃さんとの仲と実家についてだな」
「そう・・少しは心配してくれているのかしら?」
「そりゃな、俺はあんな形でお前の前から居なくなったからな」
「二度と会わないつもりだったくせに?」
「うっ・・すまん」
「ふふ、冗談よ。心配してくれて嬉しいわ。姉さんとは偶に会ってるし昔よりは仲が良いと思うわ。両親とは私が第一高校に進学すると伝えたら大反対されて大喧嘩したわ」
八幡はそれを聞き驚いた。八幡の知ってる雪乃は絶対両親には逆らえない女の子だったからだ。
「私は総武中学時代に魔法科クラスにも在籍してなかったから、両親もまさか私が一高に進学すると言い出すとは思ってなかったみたいなの」
「そうか、でもそれで良く許してくれたな?」
「たぶん私が反抗したのも初めてだし、姉さんが一緒に説得してくれた事が大きかったと思うわ」
「陽乃さんが?」
「ええ。最初は姉さんも私がまた姉さんの後を追って一高に行くと言い出したと思って反対してたけど、私が「自惚れないで頂戴。私はもう姉さんを追いかけるのはやめたの。私が追いかけてるのは比企谷君よ!」って言ったら大笑いして協力するって言ってくれたの。それからね、姉さんとの仲が良くなったのも」
「そんな事があったのか」
「ええ、だから姉さんとの仲が改善されたのは八幡君のおかげね」
「俺は別に何も・・でも良かったな」
「ええ・・」
丁度雪乃が話し終えた所で放送が鳴った。
「1-Aの四葉八幡君。大至急生徒会室まで来てください。繰り返します・・・」
八幡はそれを聞いて
「ヤバい・・今の深雪の声だよな?」
「そうだったわね。恐らくかなり怒っているわね」
「どうすっかな、このまま知らないフリして帰るかな」
「たぶんそれをやったら大変な事になるわよ?」
「ですよねー。雪乃、一緒に・・」
八幡が雪乃に助けを求めようとするが
「さて、私はこのあと結衣さんと用事があるからもう行くわね」
そう言うと一瞬で居なくなってしまった。
残された八幡は
「雪乃の奴いつの間に擬似瞬間移動を・・・はぁ・・行くか」
諦めて鬼の待つ生徒会室に向かった。
八幡が生徒会室の扉を開けると案の定深雪が仁王立ちで腕組をして八幡を待っていた。その迫力に耐え切れずあずさは震えて縮こまっている。
「よう深雪、怒ってる姿も美しいな」
八幡の言葉を聞き一瞬口元が緩んだのを達也だけは気付いていた。
「黙りなさい!八幡あなた発足式に来ないで一体何をしていたの?」
「世界平和についてちょっとな」
八幡がふざけた事を言うと深雪はさらに顔を赤くして怒る。
「は・ち・ま・ん〜〜〜」
「しゅっしゅまん冗談だ!大勢の前に出るのが嫌でサボった」
様子を見て居た真由美も
「はち君・・・本番はもっと観客が大勢いるのよ?」
「それはそれ。これはこれですよ」
そこで鈴音が
「会長、そろそろ選手と担当エンジニアの顔合わせの時間ですよ?」
「ですよねリンちゃん」
「リンちゃんっ!?」
今度は摩利が
「はっはっはっ、まさか市原も妹枠か?それよりまぁいいじゃないか。本番で結果さえ出してくれれば文句はないさ」
「さすがまりりん」
「誰がまりりんだ!お前は先輩を何だと思ってるんだ」
「嫌だな冗談ですよ。先輩たちの事は尊敬してますよ」
最後にあずさが
「四葉君私は・・・」
「あーちゃんは妹です」キッパリ
「うえ~ん、何で私だけ」
「そういうとこですよ」
一連の流れを見て居た深雪が
「八幡楽しそうね。随分先輩方と仲良しなのね?」
「しょっ、しょんな事ないぞ。」
「とにかく今後はこのような事がないようにしなさい」
「分かったよ・・」
一年女子の担当エンジニアになっている達也が時計を見て言う。
「じゃあ俺はそろそろ行きます。たぶん選手を待たせてると思うので。深雪も行くぞ」
「はいお兄様。八幡も早く行きなさいね」
そう言って二人は生徒会室を出て行った。
「会長、俺はCADを使わないので顔合わせはパスでいいですよね?」
「う~ん・・それもそうね。取り敢えず私達も行きましょうか」
「そうだな」
「私も急がないと」
真由美、摩利、あずさが出て行き、最後に鈴音が
「四葉君、ちゃんと先輩はつけるように」
そう言って出て行った。
「リンちゃんは有りなのか?」
八幡はこの先「リンちゃん」と呼び続けるか生徒会室に一人残り暫く考えて居た。