八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない   作:sinobun

30 / 40
誤って削除したので再投稿です。すいません。
内容は変わってません。


九校戦へ向け出発

八幡が生徒会室を出て昇降口に向かっていると、目を抑えながら美月がどこかへ走って行くのが見えた。

 

(あれは美月か。如何したんだ?あっちは実験棟の方だな・・)

 

美月のそんな姿は珍しく八幡は心配になり後に付いて行くことにした。

 

後を追いかけ実験棟の階段を上ると、実験室の少し開いた扉から中を覗いてる美月を発見した。

 

(美月の奴なにを見てるんだ?・・・この気配・・・精霊魔法か?)

 

八幡は中の気配を探りながら美月に近づいていったのだが、丁度八幡が後ろに来たくらいの所で美月が中に居る者を呼んだ。

 

「吉田君?」

 

「誰だっ!?」

 

中で精霊魔法を行使していた者も、誰も来るはずの無い場所で声を掛けられ動揺したのか術が乱れてしまった。その為使役されている精霊が美月に襲い掛かる。それに気が付いた美月は恐怖のあまり目を瞑ってしゃがみ込む事しかできなかった。しかし美月の後ろからそれを見ていた八幡が術式解体で襲い掛かる精霊を消し飛ばした。

 

「美月の知り合いか?」

 

そこで美月は初めて八幡が居ることに気が付く。

 

「え?八幡さん?どうしてここに?」

 

「美月が珍しく焦ったようにここに向かってたから心配になって付いて来たんだ」

 

そこで中に居た者も美月だと分かった様で

 

「柴田さん?それと・・・」

 

「俺は四葉八幡だ」

 

「僕は吉田幹比古、柴田さんを守ってくれてありがとう」

 

「気にするな。それに今のは美月も悪いからな」

 

八幡にそう言われて美月も反省する。

 

「吉田君、急に声を掛けたりしてごめんなさい」

 

「いや、僕の方こそごめん」

 

そこにさらに別の声が聞こえる。

 

「何があったんだ?珍しい組み合わせだな」

 

三人が声がした方に振り向くと達也が立っていた。

 

「達也か」

 

「達也さん」

 

八幡は今起きたことを達也に説明する。

 

「なるほどな。それで幹比古、これは精霊なのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「俺には霊子(プシオン)の塊があるようにしか見えんが、美月には如何見えた?」

 

「私には青系統の光の玉があるとしか」

 

「色の違いが分かるのかい?」

 

幹比古はそう言うと急に美月の顔を覗き込むように接近する。その急な行動に美月は驚き固まってしまう。

そしてそれを見ていた八幡は

 

(何だコイツは?おとなしそうな顔をして結局リア充なのか?爆発しろ)などと的外れな事を考えていた。

 

しかし達也は幹比古の行動に対し

 

「同意の上なら席を外すがそうでなければ問題だぞ?精霊の色の違いが分かる美月に興味があるんだろうが少し落ち着け」

 

幹比古は達也の言葉に自分の行動を自覚して顔を赤くし美月から距離を取る。そして美月も顔を赤くして幹比古から顔を背ける。

 

落ち着きを取り戻した幹比古は

 

「一年前の僕なら力ずくでも柴田さんを手に入れようとしただろうけどね。今の僕にはそんな気力は無いよ」

 

「(力ずくだとっ!?じゃあコイツは一年前はもっとリア充だったのか・・いや、その前に犯罪者じゃねーか?)とりあえず爆発しろ・・・」

 

「何を言ってるんだお前は・・・」

 

「いや、こんなのを見せつけられたらしょうがないだろ?」

 

「お前がそれを言うのか・・・それよりも美月、もう待ち合わせの場所に全員揃ってるんだが」

 

「え?もうそんな時間ですかっ!?すいません」

 

今日は帰りにいつものメンバーでアイネブリーゼに寄る約束をしていたのだが、待ち合わせ場所に美月だけが居なかった為達也が探しに来たのだ。

 

「それじゃあな幹比古」

 

「うん、ありがとう達也。それに柴田さんも本当にごめんね。あと四葉君も」

 

そして三人は実験室を後にした。

ちなみにこの後八幡は一緒にと誘われたのだが、さっき生徒会室で調子に乗って色々言っていた事を深雪に攻められるのが怖くて一人で帰った。

 

 

八月一日、いよいよ九校戦へ出発する日なのだが八幡は寝坊した。

 

「べっー、やっべー。なんでよりによって小町と水波は今日朝早いんだよ」

 

こんな事を言っている八幡だが、昨夜二人に「絶対寝坊なんてしたらダメだからね(ですからね)」と散々言われていたのにも関わらず既に集合時間に一時間遅刻している。

 

「もうみんな出発してるんじゃないのか?でもそれなら達也か深雪から連絡が来てもよさそうだけどな。って端末の充電が切れてるな。とりあえず急ぐか・・・とは言え普通に向かったんじゃあと一時間は掛かるよな。しょうがない飛んで行くか」

 

達也は先月トーラス・シルバーの名前で例の飛行術式を既に発表していた。なので八幡は使っても大丈夫だろうと思ったのだが、世間一般的にはそれはまだ有り得ない事だった。

 

八幡が集合場所に向かっていると途中で見知った顔を発見した。

 

「あれは会長か?なんだよ会長自ら遅刻かよ。しょうがない・・見捨てるのもかわいそうだから連れて行ってやるか」

 

そして八幡は時間がないので飛行したままいきなり真由美をお姫様抱っこするとそのまま集合場所まで向かう。

いきなり抱えられた真由美は驚き

 

「きゃーーー!なっなっ何っ何なの?」

 

「真由美、落ち着け。俺だ」

 

「え?え?はち君?ってなんで飛んでるの?」

 

「飛行術式は先月発表されてただろ?」

 

「そうだけど・・なんでもうそれを使えるのよ・・・」

 

真由美は納得できないのか八幡になにかを探る様な疑いの目を向ける。

 

「なんでと言われてもな・・(あれ?これはミスったか?)」

 

八幡は誤魔化そうと悩んだがいい案が浮かばず

 

「気に食わないなら降ろすから歩いて行ってくれ」

 

「わー、待って待って!わかったから。これ以上は何も聞きません!だからこのままお願い」

 

「そうか、わかればいいんだよ。それにしても真由美も遅刻とはな。正直俺だけじゃなくて安心したぜ」

 

「そっそう?それはよかったわね(私は家の用事で遅れるって言ってあるから大丈夫なんだけどね。それを今言ったらまた降ろされそうだから黙ってましょう)」

 

 

 

そして集合場所に着き、移動に使うバスや作業者が停まっているのを確認すると八幡は地上に降りた。

バスの前で達也が暑い中一人で立っているのを発見した八幡は声を掛ける。

 

「おう達也。この暑い中何してるんだよ?」

 

「俺は点呼係でな、お前と会長が来るのを待ってたんだよ。そんな事よりも何でお前は会長を抱えて空からきたんだ?」

 

「ああ、それは・・・」

 

八幡が説明しようとすると真由美が割り込んでくる。

 

「達也君遅れてごめんね」

 

「会長は家の事情で遅れると連絡を頂いていたので問題ないですよ」

 

「それでもこの暑い中待たせちゃってごめんなさい。所でこの服どうかしら?」

 

真由美は夏らしいサマードレスを着ているのだが達也に見せるようにクルッと回る。

 

「とても良くお似合いですよ」

 

「そう?ありがとう」

 

真由美は満足したのか八幡を置いてバスの中へ入っていった。

 

そして八幡は一人うな垂れていた。

 

「騙された・・・」

 

「おい八幡、お前飛んで来るのはやり過ぎじゃないのか?」

 

「別に大丈夫だろ・・・そんな事より帰ってもいいか?」

 

「いいわけないだろ。諦めて早く中に入れ。既に大幅に遅れているからな」

 

「・・・分かった」

 

八幡がバスの中に入ってもどうやら飛んで来たことは殆どの生徒には見られていなかった様で、特にそれについて問いかけて来る者はいなかった。

一番前に既に腰を降ろしていた真由美が顔を青くした八幡に声を掛ける。

 

「はち君ごめんね?隣座る?」

 

「いえ・・・結構です・・・」

 

八幡は本当は真由美の隣に座りたかった。なぜなら後ろの方の席を見ると目の錯覚なのかそこだけ氷河期になっているのが見えたからだ。しかし八幡にそれを無視する勇気は無く、諦めて深雪の元へと向かった。

二人用座席の深雪の横は空いており、通路を挟んで雫とほのかが座っていた。

 

「八幡なんで遅刻したの?」

 

「ちょっと家の用事でな」

 

「中々来ないし電話も繋がらないから小町に確認したけど、そんなものはないわよね?」

 

「寝坊だ・・・」

 

「八幡さん、さっき飛行魔法を使ってませんでしたか?」

 

「なんの事だ?俺はここまで自転車で来たが?」

 

「じゃあ八幡は会長を抱えて自転車に乗ってきたのね・・・」

 

「飛んで来ました・・・」

 

八幡は言い訳をやめて素直に謝る事にした。

 

「悪かったよ。会長を抱えてたのは偶々途中で見かけて置いて行くのは可哀想だと思ったからだよ。他意はない」

 

「お兄様はこの炎天下の中ずっと外で待っていたというのに・・・八幡のバカ・・」

 

「達也にも後で謝っておく。そうだな・・今度何かある時は深雪が迎えに来てくれ」

 

「え?」

 

「だから小町と水波が居ない時は深雪が迎えに来てくれると助かる。こんな事頼めるのは深雪しかいないからな」

 

深雪が八幡の言葉を聞くとそれまで漂っていた冷気が消え周りの温度が上昇した。

 

「わっ分かったわ。全くしょうがないわね。でも私しかいないのならしょうがないわね」

 

深雪が自分の頬を両手で抑えながらそう言うのを聞いた八幡がホッとしたのも束の間

 

「イテテテテ。雫、脇腹をつねるな」

 

隣を見ると無表情で八幡をつねる雫と頬を膨らますほのかがいた。

 

なんとか深雪に許してもらい、その後は深雪に近づきたい男子生徒達に嫉妬の目を向けられながらもバスは目的地へと向かって動き出した。ほのかと雫に改めて飛行魔法について聞かれたのだが、特に隠すこともなく「使える」としか答えなかったのだが「「八幡(さん)なら有りだね(ですね)」」で納得した。

 

「そう言えば達也は違う車に乗ってるのか?」

 

八幡が言った言葉を聞くと雫とほのかがあからさまに顔を背けた。八幡は疑問に思い次に深雪を見るとその意味が直ぐに分かった。

 

「お兄様はこの炎天下で長時間立たされた挙句、窮屈な作業車に乗せられているわ。」

 

「そっそうか。でもあれだよな、達也は真面目で偉いよな。普通は少しくらい不満を漏らしてもおかしくないのにな。俺なら切れて帰るまである」

 

八幡がそう言うと深雪は機嫌が良くなり

 

「そうなのよね・・お兄様は真面目過ぎるのよね。でもそこがお兄様の良い所でもあるのよね」

 

八幡はそんな深雪を見てホッとするが

 

「八幡もお兄様を少しは見習いなさい。だいたい八幡は日頃から・・・」

 

また怒られるのかとうんざりした時だった。

 

「おいっ、あれヤバくないか?」

 

「危ないっ!」

 

その言葉に全員が対向車線側の窓へ目を向け外を見た。

すると対向車線を走る大型車が傾いた状態で路面に火花を散らしていた。それを見た誰かがパンクや脱輪じゃないかとそれぞれ口にするがその声に危機感はない。なぜなら対向車線と言っても道路としてはこちら側とは別々に作られており、さらには堅固なガード壁で仕切られているからだ。

しかし八幡だけはその事故に不自然さを感じていた。

 

「何かおかしいな・・・」

 

八幡がそう呟いた時だった。

 

今まで興味本位でそれを見ていた者達が悲鳴を漏らした。もちろん八幡も見ていたのでそれに直ぐに気がついた。事故を起こしていた大型車がいきなりスピンしたかと思うとガード壁をジャンプ台代わりにこちらへ飛んで来たのだ。

 

「まずはバスを止めるか・・これは・・・」

 

八幡が実行しようとした瞬間バスに急ブレーキがかかり停止した。しかし大型車は炎を上げながら滑って真っすぐバスに向かって来ていた。

 

「吹っ飛べ!」

 

「消えろ!」

 

「止まって!」

 

「っ!」

 

数人がこれに対処しようとほぼ同時に魔法を発動してしまった。

無秩序に発動された魔法が無秩序な事象改変を同一の対象物に働きかけ、結果的に全ての魔法が相克を起こし事故回避を妨げた。

 

「ばか、止めろ」

 

摩利がその事にすぐ気づき止めるが、パニック状態で魔法を発動している者達の耳には届かない。

この状況を何とかできるかもしれない克人を摩利が呼ぼうとした時だった。

 

「俺が相克を起こしてる魔法を吹き飛ばすから深雪は火を消せ!十文字先輩は車体を」

 

八幡がそう深雪と克人に指示を出す。

それに対し二人も

 

「わかったわ」

 

「了解した」

 

次の瞬間無秩序に発動されていた魔法式が全てかき消された。そして直ぐに深雪が火を消し、克人が車体を止めなんとか難を逃れることができた。

 

(さすが達也だな。俺の出番はなかったな)

 

八幡がそんな事を思っていると摩利が

 

「三人共助かったぞ。それに比べてお前は」

 

「痛ッ! 何するんですか摩利さん」

 

そう言って摩利に拳骨をくらったのは二年生の千代田花音。彼女は同じ二年生で今回の九校戦にもエンジニアとして参加している五十里啓とは許嫁同士である。どうやら先ほど魔法を発動してしまった内の一人の様だ。

他には例の森崎、そして服部は発動寸前になんとか止めた様だった。

そしてもう一人

 

「雫、そう落ち込むな。急な事態だったからしょうがないさ」

 

そう雫だった。八幡は落ち込む雫の頭に手を乗せ慰めるように言う。

 

「でも八幡は冷静に対処してた」

 

「俺は誰かが対処するだろうと最初は見てただけだからな。偶々だ」

 

「そうよ雫。結局八幡は指示をしただけだしね」

 

「ぐっ、深雪・・・やっぱり気づいてたか」

 

「当り前よ」

 

それを聞き雫と隣のほのかも疑問に思う。

 

「え?」

 

「どういう事ですか?」

 

「さっき魔法を吹き飛ばしたのは八幡じゃなくてお兄様よ」

 

「そうだったんだ・・・」

 

「達也さんが・・凄いです」

 

「まあそう言う事だ。だから俺は何もしてない」

 

「そんな事ない。でも八幡ありがとう」

 

雫は八幡の自分への気遣いが素直に嬉しく感謝した。

 

そこで真由美が

 

「はち君はさすがね。冷静な判断で指示を出してくれてありがとう。それに深雪さんも素晴らしかったわ! あんな状況で正確に魔法を展開出来るなんて、私たち三年生でも難しいわ」

 

これに対し八幡はさっきの仕返しとばかりに

 

「いえいえ、熟睡していた会長を起こすわけにはいかないのでこれ位はやりますよ」

 

「うっ、さっきは悪かったわよ!もう」

 

そして深雪は

 

「ありがとうございます。でも冷静で居られたのは市原先輩がバスを止めてくれたからです」

 

深雪の言葉に八幡も思い出したように親指を立てながら

 

「そうだった。リンちゃん先輩ナイスでした」

 

それに対し鈴音も親指を立てながら返す

 

「いえ、これくらい問題ないです」

 

そのやり取りを見た全員がさっきの事故よりも驚愕していた。

 

その後達也達技術スタッフによる運転手の救助活動(生存は絶望的だが)と警察の到着を待っての事情聴取などでさらに時間をロスしたが昼過ぎには目的地に到着した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。