八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない 作:sinobun
八幡は目的地である九校戦の間滞在予定のホテルに到着しバスを降りると、深雪と共に直ぐに作業車から荷物を降ろしている達也の元へ向かった。
「達也、さっきの事故だがどうもきな臭くなかったか?」
「やはりお前は気づいたのか」
二人の会話の意味がわからず深雪が問う
「どういう事ですか?」
「深雪、さっきのあれは恐らく事故じゃないって事だ」
「誰かが人為的に事故を起こしたという事?」
「ああ、さっき救助活動をしている時に見えたんだが車内にわずかだが魔法の痕跡があった」
「自爆って事か?」
「或いは操られていた可能性も高いな」
「なんと卑劣なっ!」
「どちらにしても一高生が乗るバスを狙って居た事に変わりはないよな・・・」
「ああ、警戒はしておいた方が良さそうだな」
その話を聞き不安に顔を曇らす深雪に、八幡は頭を撫でてやりながら優しく言う。
「心配するな深雪。まだ何かあると決まった訳でもないしな。もし何かあっても俺と達也が居れば大丈夫だ。お前は試合の事だけ考えて居ればいいからな」
「八幡・・・。お兄様、何かあっても八幡が暴走しない様に見張っていて下さいね」
「ああ。任せておけ」
「不安の原因はそっちかよ!おまえらな・・・」
三人が話をそこでやめてホテルに入ると、ここにいるはずのない見知った顔を直ぐに発見した。
向こうもこちらに気付いた様で近くにやって来る。
「深雪!八幡に達也君も」
「エリカ?」
「ハイ深雪、一週間ぶりね」
そう言ってこちらにやって来たエリカの格好は、直視するには些か刺激的な恰好だった。
しかし感情の希薄な達也はその格好に特に反応は示さず、エンジニアとして仕事が有り先輩達を待たせる訳にもいかない為直ぐに行ってしまった。
そして八幡は
「エリカ、お前何て恰好してやがる」
「何よ、別に普通じゃない?」
エリカはそう言うが確かに八幡の反応は正しかった。周りを見るとさすがに直視はしないまでも、チラチラとエリカを見ている生徒達が多数見受けられた。
「ところで何でこんな場所にエリカが?」
「もちろん応援だけど? それに今夜は懇親会でしょ?」
「そうだけど、関係者以外は入れないわよ」
「大丈夫よ!」
自信満々にそう言うエリカの後ろから更に三人の知り合いがやって来た。
「エリカちゃん、これ部屋のキ・・って深雪さん?」
「えりりんお待たせー・・ってヒッキー?」
そう言ってこちらにやって来た美月と結衣、そして雪乃も後からやって来る。
結衣はともかく美月までもがそのイメージからは想像できない様な派手な格好をしていた為深雪は一言言う。
「美月、随分と派手ね。悪い事は言わないからTPOにあった服にした方が良いわよ」
「エリカちゃんに堅苦しいのは良く無いって言われたんですが、やっぱり深雪さんの言う通りかもしれませんね」
そこで八幡も直視するとある一点を見てしまう為、顔を背けながら二人に言う。
「結衣もだぞ。お前と美月は特にアレがアレ何だから・・その・・もっと気をつけろ」
「ヒッキー?アレがアレ?・・・あっ」
「八幡さん・・?アレ?・・・あっ」
結衣と美月はお互いの胸を見ながら八幡の言いたい事に気が付き顔を真っ赤にしてしまう。
そこで今まで黙っていた雪乃と深雪が口を開く。
「八幡君、さあ私も付き添うから警察に自首しに行くわよ」
「そうね、私も付き添うわ」
「待て待ておまえら!俺は注意しただけだ!やましい事は何もない」
そう言いながら今度は雪乃を見ると、さすがに雪乃は特に派手な格好ではなくお嬢様らしい清楚な恰好をしていた。
「雪乃の服装はその・・いいと思うぞ。似合ってる」
八幡にそう言われ、さっきまでの怒りは一瞬で何処かに行ってしまった雪乃は照れながら
「そうかしら・・?・・・ありがとう」
「ちょっと八幡!私の事も褒めなさいよ」
エリカがそう言ってきたのだが八幡はもう面倒くさくなり
「可愛い、可愛い。世界一可愛いぞ。それに綺麗な足だな。出来れば撫でまわしたいくらいだ。・・・・あっ」
八幡はこの場に深雪が居る事を思い出し自分の言った言葉を後悔する。
一方八幡の言葉を聞いたエリカは珍しく顔を赤くして黙り込んでしまった。
そして深雪はこの後、本当は問題なのだが自分の部屋まで八幡を引っ張って行き懇親会が始まる直前まで説教をしていた。因みに同室だったエイミィは部屋の中の異様な雰囲気を感じ取り、中を確認する事もせずに他の部屋へ避難していた。
深雪の説教からようやく解放された八幡は今懇親会の会場に向かっていた。九校戦前の懇親会は、選手だけでも三百六十人を超え、裏方も合わせると四百人くらいにはなる。まあ何かと理由をつけて欠席するものも居るので本当は八幡もサボろうと思っていたのだが
「実は朝から何にも食べてないんだよな・・・やっと何か食べれるな」
朝の寝坊、移動中のトラブル、そして深雪の説教と色々あった為、八幡はやっと食事にありつけるからという理由だけでここに来た。中に入ると隅の方で壁を背に立つ達也と何故かウエイトレスの様な恰好をしたエリカ、そして深雪、雫、ほのかが話しているのを直ぐに発見した。
八幡はさっきまで深雪に説教を食くらって居た事もありそちらへ行くのはやめ、取り敢えず何かを食べようと食べ物が置いてあるテーブルの方へと向かった。
「何かお飲み物は如何ですか?」
声のした方へ顔を向けると、エリカと同じようにウエイトレスの格好をした雪乃と結衣が笑みを浮かべ立っていた。
「おまえらまでどうしたんだその格好は」
「えへへ、どうヒッキー似合う?」
「この会場に入る為にエリカさんのコネで仕事を用意して貰ったのよ。もちろんちゃんとウエイトレスの仕事はしてるわよ?ちなみにホテルは雪ノ下家のコネで貴方達と同じところよ」
八幡はそれを聞き呆れながらも
「雪乃が実家のコネまで使うとはな・・それにしてもお前らのその格好を見てると前に奉仕部で行ったメイド喫茶を思い出すな。あの時も言ったけど・・その・・二人とも似合ってるよ」
「八幡君ありがとう。それじゃそろそろ仕事に戻るわね」
「えへ、ありがとうヒッキー。それじゃまたね」
そう言って雪乃と結衣は嬉しそうに仕事に戻った。
二人と別れようやく食べ物の置いてあるテーブルに辿り着いた八幡は、適当に並んでいる物をつまみながら周りを観察した。
(深雪はやっぱり注目を集めてるみたいだな・・)
八幡は深雪の事を遠巻きから見ている他校の、特に男子生徒の目に気が付くと若干不機嫌になる。
周りからはこんな声も聞こえて来た。
「おい、あそこにスゲー可愛い子が居るぜ」
「本当だな。話しかけてみるか?」
「止めとけ。お前じゃ相手にされないって」
(そうだ、やめとけやめとけ)
「ウルセェ! でも将輝ならいけるんじゃねぇ?」
「何て言ったって一条の御曹司だもんな」
(一条・・十師族か・・)
その言葉に八幡は反応しそちらを見ると第三高校の制服を着た数人の生徒達が居た。そしてその中に写真で見た事がある十師族、一条家の長男一条将輝の姿を直ぐに発見した。
さらに彼らの会話は続く
「将輝?」
「なぁジョージ、お前あの子の事知ってるか?」
「名前は司波深雪さん。見ての通り一高の生徒で、エントリーしてる競技はアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バッド。一高一年のエースらしいよ」
「才色兼備ってやつ? 神様ってのは不公平だな」
深雪に見惚れていた男子も、そこまで行くとそんな感想を漏らした。
「司波深雪か・・」
「珍しいね。将輝が女の子の事を聞いてくるなんて」
(あれがカーディナル・ジョージか?いやそれよりもあのイケメン・・一条め。アイツも深雪に見惚れてやがるな。まぁ深雪が誰であろうと相手にするとは思えないけどな・・・。でももしかしたら・・小町と水波も深雪だって年頃の女の子だって言っていたしな。・・・・・)
八幡が良く分からない危機感と不快感に気分を悪くしてる所に話しかける者が居た。
「あの、貴方は四葉八幡様で宜しいでしょうか?」
「あん?」
八幡がじゃっかんぶっきらぼうに声をかけられた方に振り向くと、三高の制服を着た何処かで見たような顔の女子生徒が立っていた。
「私は第三高校一年、一色愛梨と申します。急に声を掛けて申し訳ございません」
その丁寧な自己紹介に八幡も慌てて自己紹介をする。
「あっああ。俺は第一高校一年の四葉八幡だ。それと一色ってもしかして・・」
「はい、私は一色いろはの姉です。先日は妹を助けて頂きありがとうございました」
そう言うと愛梨は深々と頭を下げる。その様子は周りからするとまるで八幡が愛梨に対してそうさせて居る様にも見えた。
案の定周りからは
「ねえ、何あれ?」
「あれってうちの一色さんじゃないか?」
「相手の男は誰だよ?」
「何もこんな所であんな真似させなくてもいいんじゃないか?」
それを聞いた八幡はうんざりしながら愛梨に言う。
「一色さん、取り敢えず顔を上げてくれ。このままだと俺が悪役になっちまう」
そう言われた愛梨も周りの様子に気が付き慌てて顔を上げる。
「それとな、俺はあの時偶々千葉に居たのと、妹も総武中学に通っているから助けに行っただけで妹さんを助けたのは偶々だ。だからそんなに感謝する必要はない」
それを聞き愛梨は
「ふふふ、いろはの言っていた通りでした。私がお礼を言ってもきっと貴方は今言った様な事を言うだろうって」
「なっ、俺は本当に・・・」
「いいんです。私が一方的にお礼を言いたかっただけなので。改めて妹を救って頂きありがとうございました」
「そうか・・じゃあ・・・どういたしまして」
八幡がそう答えると愛梨は笑顔で
「はい」
八幡はそれを見て
「やっぱり姉妹だな。笑った顔が一色・・・アイツとそっくりだな」
「そうですか?それと一色では紛らわしいので私の事は愛梨とお呼び下さい」
「初対面でいきなり呼び捨ては・・・」
八幡がやんわり断ろうとすると愛梨は上目遣いで
「ダメですか?」
「うっ!分かったよ・・愛梨。これでいいか?」
「はい、私は八幡様と呼ばせて頂きますね」
「おいおい・・様って。しかしあざとい所もそっくりだな」
「何の事ですか?」
「いや、なんでもない(どうやら妹と違ってこっちは天然の様だな)」
愛梨との話もひと段落し八幡が食事の続きをしようとしたタイミングで急に辺りが静かになった。どうやら来賓の挨拶が始まるようで、それまで談笑していた生徒達も一斉に壇上へと目を向けた。
(おいおいこっちは腹ペコ何だから勘弁してくれよ・・)
入れ替わり立ち替わり壇上に現れるお偉いさんの話に八幡は一切興味がないので構わず食事を続けた。もちろんそんな事をしているのは八幡だけでかなり目立っていたのだが、本人は久しぶりの食事とそのあまりの美味しさに周りの目にも気付かず夢中で食べていた。
時々見兼ねた愛梨が止めようとするのだが
「八幡様、さすがに来賓の方々に失礼ですので食事は終わってからにしたほうが・・・」
「いいんだよ。どうせ全員同じようなテンプレじみた事しか言わないんだから。それより愛梨もコレ食ってみろよ。結構いけるぞ」
八幡とそんなやりとりをしていると、周りの生徒達の緊張感が高まった事に愛梨が気付き壇上を見る。
司会者の紹介で、どうやら次に挨拶をするのは「老師」と呼ばれる十師族の長老、九島烈の様だった。
愛梨も九島烈の名前は当然知っており、さすがにまずいと八幡を説得する。
「八幡様、次は九島閣下の挨拶の様です。さすがに失礼があっては問題になりかねないのでどうか手を止めて下さい」
「ん?九島閣下だと・・・?」
愛梨の言葉に八幡が壇上を見た。すると丁度そのタイミングで壇上にライトが当てられ誰もが九島烈の姿を確認しようとした。しかしそこに現れたのはパーティードレスに身を包んだ金髪の若い女性だった。
それを見た者たちは意味がわからず騒めき出す。
八幡の横に居た愛梨も
「どういう事でしょう?あの女性は一体・・。九島閣下は・・」
その呟きに八幡が手を上に掲げながら答える。
「ふん、くだらねーな。あのじーさんがやりそうな事だ。九島烈ならあの女性の後ろにいるぞ」
「え?」
八幡が手を上に掲げた瞬間会場全体から「パキン」と何かが割れる音が響き渡った。
愛梨が八幡の言葉に驚いていると烈が確かに女性の後ろから現れた。
「まずは悪ふざけをした事を謝罪する。今のはチョットした余興だ。しかしこの魔法に気がついたのは私が見たところ六人だけだった。つまりもし私がテロリストで君たち全員を殺そうとしたとしても、止めに動けたのは六人だけだと言う事だ」
その言葉を聞き会場は静寂に包まれる。
しかし烈の言葉には続きがあった。
「そして一人だけ見事に私の魔法を破った者がいる。のう?四葉八幡?」
烈のその言葉に会場中の視線が八幡に集まった。
愛梨のキャラが良く分からないので想像で書いてます。