八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない   作:sinobun

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九校戦よりも深雪

その後レースの結果は危険走行により七高は失格。決勝進出は三高と九高に決まった。

そして一高は準決勝で敗れたもう一人の選手である小早川景子が三位決定戦にまわる事になった。

 

摩利はあの後直ぐに医務室に運ばれ、ろっ骨を骨折していた為治療魔法による応急処置を受けた。

そして軍の施設にある病院へと真由美の付き添いの元移され、暫くするとベッドの上で目を覚ました。

 

「摩利、気がついた?私の事わかる?」

 

「何を言ってるんだ真由美?そんな事・・・そうか私は・・ここは病院か?」

 

摩利は直ぐに現状を理解した。

 

「ええ、病院よ。良かった、意識ははっきりしているようね」

 

「私はどのくらい眠っていたんだ?それとあの後試合はどうなった?」

 

そこで真由美は試合結果と摩利の怪我の程度について説明した。

 

「そうか全治一週間か・・じゃあミラージ・バットも・・・」

 

「残念だけど棄権するしかないわね」

 

「これじゃあ昨日八幡が言っていた通りだな。予定通りには行かないか」

 

「でも貴方があそこで七高の選手を庇っていなかったら彼女は魔法師生命を絶たれていたかもしれないのよ?名誉の負傷ってやつね。まぁ、はち君がいなかったら摩利ももっと大怪我を負っていたかもしれないけどね」

 

その言葉に摩利は思い出した様に言う。

 

「そうだな。八幡が居なければ・・・って、そうだっ!アイツはいつの間にあそこに現れたんだ?」

 

「入学式の翌日に一年生が校門の所で揉めていたじゃない?たぶんその時はち君が使っていた魔法と同じだと思うわ。加速魔法ではないと思うけど・・あれはまるで瞬間移動みたいよね?」

 

「そうだった。確かにあの時も見たが結局分からず終いだったな」

 

「それに摩利達を受け止めた後、固まる係員に指示を出して迅速に医務室に運ばせたのもはち君よ?まぁ、周りの人達が固まって居たのは、はち君の魔法のせいなんだけどね。さらに言うなら医務室まで付き添って応急処置をしたのもはち君よ。さすがに女の子の摩利に対してはち君一人って言うわけじゃなかったけどね」

 

摩利はそれを聞き恥ずかしくなったのか若干顔を赤らめながら言う。

 

「くっ、それにしてもアイツには驚かされてばかりだな」

 

「でも気になる事があるのよね・・」

 

「気になる事?八幡についてか?」

 

「ええ。摩利が怪我したのははち君のせいじゃないのに・・・彼、応急処置をしながらまるで自分が悪いみたいに摩利に謝っていたのよね。自分がもっと気を付けて見て居れば、みたいな事を言っていたわ」

 

「なんだそれは?まるで何か起こるかもしれないと分かってたみたいじゃないか・・」

 

「そうなのよね・・聞いても詳しくは教えてくれないし。それはそうと摩利の目が覚めたら聞いてほしいとはち君と達也君に言われてる事があるの」

 

「あの二人に?何だ?」

 

「七高の選手を受け止める直前、魔法による妨害を受けなかった?あの時急に体勢を崩していたわよね?」

 

「確かに足元に不自然な揺らぎは感じたが、それが魔法によるものだったかどうかは分からないな」

 

「そう・・これははち君達も同意見なんだけど、あの時の摩利の足元の水面の動きは明らかに不自然だったわ。今達也君がさっきのレースの映像を大会委員から借りて検証しているところよ。水面の波動解析をすれば何か別の力が働いていたかどうか分かるそうよ」

 

「八幡といい達也君といい、アイツらは本当に高校一年生なのか?何故そんなスキルを持っているんだ」

 

「それは私も思ったわ。取り敢えず摩利も何か思い出したら教えてね?私はもう行くから今はとにかく休んでね」

 

そういい残し真由美は病室を出て行った。

残された摩利はベッドに横たわりながら一人呟く。

 

「一体何が起こっている・・八幡、お前は何か知っているのか?」

 

 

摩利が病院に運ばれた後八幡はホテルの自分の部屋に戻って来ていた。

 

「やっぱり無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の仕業なのか?どちらにしてもバスの件といい、今回の摩利さんの件といい一高が狙われている可能性が高いよな。母さんに調べて貰うか・・いざとなったら九校戦を抜けてでも俺が・・」

 

八幡がそんな事を一人考えているとドアをノックする音が聞こえた。

 

「誰だ?」

 

「八幡私よ?少しいいかしら?」

 

「深雪?ちょっと待ってくれ今ドアを開ける」

 

突然訪れた深雪に八幡が聞く。

 

「どうしたんだ?達也とレースの映像の解析をしていたんじゃないのか?」

 

「ええ。でも五十里先輩もおられたし、私が居ても出来ることはないから。それに八幡の事が心配だったから」

 

「心配?俺は別に普段通りだぞ?」

 

「それは嘘ね。貴方今ブランシュの事件の時に犯人を殺そうとしていた時と同じ顔をしているわよ?」

 

八幡は深雪にそう言われて何も言い返せない。

 

「今回の渡辺先輩の事も自分のせいとか考えているんでしょ?」

 

「それは・・・」

 

「いい八幡?貴方のせいなわけがないでしょ?いくらこの九校戦で何か起こるかもしれないと疑っていたからってそんなわけないじゃない。もしそうなら私とお兄様も同罪よね?それに八幡があそこで助けたからこそ渡辺先輩と七高の選手はあの程度の怪我で済んだのよ?」

 

八幡は深雪に自分の考えて居た事を見事に言い当てられて観念するしかなかった。

 

「参ったよ、降参だ。深雪の言った通りの事を確かに考えていた。でも今回は少し違う。俺はこの先お前まで何かに巻き込まれる前に犯人を見つけ出して消すつもりだ」

 

「そんな事・・相手が誰か分かっているの?」

 

「いや、まだだ。だから母さんの・・四葉の力を借りる」

 

「叔母様の・・」

 

八幡が母親で在り当主である真夜に力を借りる事など過去にはほとんどなかった。だからこそ八幡がいかに本気なのか深雪には分かった。そんな八幡を深雪は止められない。

 

「そう心配するな。相手が誰だろうと大丈夫だ。それに軍も何か情報を掴んでいるみたいだから直ぐに解決するかもしれないしな。だがいざとなったら俺は九校戦を途中で抜ける事も有り得る」

 

「そんな・・でも先輩達には何て言うの?」

 

「そのまま事実を言う。まぁ納得しなくても関係ないがな」

 

「八幡・・どうして貴方が一人でそこまでしないといけないのよ・・」

 

深雪の疑問に八幡は一瞬躊躇ったが答える。

 

「それを俺に聞くのか?・・・俺には九校戦なんかよりお前の方が大切だからな。お前を守る為なら何だってするさ」

 

深雪はその言葉を聞き嬉しさと悲しさが混じったような表情を見せる。

 

「ごめんなさい。八幡が『そう思ってしまう』のは知っていたはずなのに・・」

 

「そんな顔するな。俺が深雪と小町を大切にするのが悪い事みたいじゃないか」

 

「そんな事・・・いいえ。ありがとう八幡、いつも私を守ってくれて」

 

深雪が何かを吹っ切るように笑顔でそう言うと、それを見た八幡も深雪の頭を撫でてやる。

そしてその時またドアをノックする音がした。

 

「八幡、深雪も居るか?」

 

「達也か?」

 

「お兄様?」

 

八幡が直ぐにドアを開ける。

 

「どうしたんだ達也?」

 

「せっかく二人きりだったのに邪魔をして悪いな」

 

「にゃっ、にゃにそんな事を真面目な顔で言ってやがる」

 

「俺は真面目に言っているんだが・・・」

 

そこで深雪が耐えられなくなり達也に聞く。

 

「おっお兄様!それでどうなされたのですか?何か用事があったのではないのですか?」

 

「ああ、そうだったな。深雪、会長達が呼んでいるからお前を呼びに来たんだよ」

 

「七草会長が?一体どのような用なんでしょうか・・」

 

「それは行ってみなければ分からないな。八幡、お前も来るか?」

 

八幡は深雪が呼ばれた理由にピンと来て、自分がその場に居るのは良くないと思いそれを断る。

 

「いや・・俺はいい。深雪、早く行って来いよ」

 

「ええ。じゃあ行ってくるわね。八幡また後でね」

 

こうして深雪は達也と共に部屋を出た。

 

真由美達の待つミーティングルームに向かう途中、深雪はさっきまで八幡と話していた事を達也に話す。

 

「そうか、八幡がな。アイツがそういう行動にでるのは仕方がないな」

 

「私もそれは分かっているつもりです。ですが・・」

 

「そう心配するな。確かに軍も動いているからな。八幡が九校戦を抜ける事になる前に尻尾を掴むさ」

 

「はい、お兄様」

 

二人はミーティングルームに着いた為その話はそこで終わらせた。

 

真由美が深雪を呼んだ理由は、摩利の代わりにミラージ・バット本戦へ出て貰えないかと言う打診の為だった。

今回のアクシデントや男子競技の成績不振により、総合一位をキープしているとはいえ予定よりも獲得ポイントが少なく二位の三高との差が十分逆転可能な差である為、新人戦よりも獲得ポイントの多い本戦を優先しようと言う事になったのだ。

深雪を代役に指名した理由が深雪ならば優勝が狙えるとの言葉に、深雪よりも達也が自信満々にそれを肯定した為、深雪は断る事など出来るはずもなくこれを了承した。

八幡は自分がこの場に居れば更に深雪を目立たせ標的になる可能性が増える代役になる事など止めてしまうのが分かっていたので付いて来なかったのだ。いくら深雪の為を思っての事でも、深雪の行動を縛りたいとは思っていないのだ。




仕事が忙しく暫く不定期更新になりそうです。

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