魔法が存在する異世界。魔族によって滅亡を迎えた国。だが最後の希望が残されていた。古くから伝わりし儀式による勇者召喚である……。

1 / 1
この作品、私の別の作品を見ていないとイマイチかと


平凡なる異世界勇者召喚物(タイトル詐欺)

 剣と魔法が存在する地球とは全く別の世界『ウィクス』。人が立ち入らざる封印された大陸を取り囲むように六つの大陸が存在し、それぞれの大陸には一つずつ国が存在した。

 

 いや、存在していたと言うのが正しいだろう。何故ならば六つの国の中の一つサンデールは滅亡したからだ。封印されし大陸より現れた魔族を名乗る者共によって僅か半年で滅亡した王国。辛うじて生き残った数少ない民は何時訪れるか分からない襲撃に怯え、来るかどうかさえ分からない助けを待つばかり。

 

 その様な中、希望を捨てずに立ち向かおうとする者が二人。歴代きっての才能を持つ巫女姫シルヴァ、そして若くして騎士団に入隊した騎士アグラ。二人は応急の地下に隠された祭壇で王家に伝わる伝説に未来を託そうとしていた。

 

「……本当に大丈夫なのでしょうか」

 

 アグラは不安そうに呟くが、それは仕方のない事だ。伝説には封印された大陸から魔族が表れて世界に破壊と混沌を齎すと予言されていた。だが、異世界から世界を救う存在、勇者を召喚するなど眉唾物も良い所だ。それに伝説が記された古文書は劣化から虫食い部分が多く、儀式の方法や呪文は兎も角、伝説の内容の全容は分かっていないのだ。

 

 希望を託すにはあまりにもか細い蜘蛛の糸。だが、忠義溢れる騎士の弱音を聞いてもシルヴァの瞳には迷いが無い。

 

「駄目なら私達は滅びるだけです。確かに不安はありますが、何もしないのは悔しいじゃないですか。だから見せてあげましょう。助けて下さらない神様に私達人間の最後の足掻きを!」

 

「はい!」

 

 シルヴァの言葉にアグラは先程までの自分を恥じる。忠義を誓った相手がまだ希望を捨てないのなら、自分が弱音を吐いて良いはずがない。

 

(もしもの場合は貴女様だけでもお逃がし……いえ、民を放って逃げる方ではありません。きっと戦うのでしょう。ならば私も最後まで……)

 

「では、始めます。この絶望を覆す救世主の召還を……」

 

 シルヴァの口から呪文が紡がれると床に刻まれた魔法陣が輝き始める。今まで年に一度の祝いの日の時に儀式が行われても何一つ反応しなかったにも関わらずだ。僅かな希望が芽生え始めるのを感じながらアグラは虫食いだらけの伝説を思い返していた。

 

 

『闇の大陸の封印解かれる時 目覚めた魔族が世界を脅かすだろう。その時 伝わりし呪文を唱え勇者……を召喚せよ。その勇者……を破壊する……魔獣……倒し 世界……平穏…齎す……だろう』

 

 やがて呪文の最後の節が紡がれた時、凄まじい光の柱が天井まで立ち上る。アグラは何があっても良いようにと剣を抜こうとしたがシルヴァがそれを手で制して首を横に振る。

 

「大丈夫。勇者様を信じましょう」

 

 やがて光が晴れた時、そこに二本の足で立っていた存在にアグラの目は見開かれた。其処に居たのはなんと……。

 

 

 

 

 

「……パンダ?」

 

 そう。其処に居たのはこの世界にもいるパンダと呼ばれる熊の一種。見た目の愛くるしさから子供からお年寄りにまで人気の動物だ。これには先程までアグラの心を満たしていた決意も折られてしまった。

 

「いやいやいやっ!? パンダがどうして召喚されて……失敗?」

 

 アグラは希望が途絶えた事でガクリと肩を落とす。そんな彼にパンダは二本足でポテポテと近寄ると前足を優しく肩に乗せた。

 

 

 

 

「若禿だからって悩んだら駄目だよ? 植毛とか希望はあるんだからさ」

 

「いや、俺はそんな事で落ち込んでいるんじゃ……」

 

 アグラはパンダに抗議する為に顔を上げ、そこで固まる。その横ではシルヴァが両手で口を押えていた。

 

 

 

「アグラ、苦労を掛けてごめんなさい。その年で禿るなんて……」

 

「だから違いますっ! って、やっぱりこのパンダが喋って……」

 

 自分の気のせいでは無かったのだと理解したアグラに対し、シルヴァはキョトンとした顔になる。確かに今パンダが喋った前提の会話だったにも関わらずに何故そのような表情をするのか、あまりの事態の連続にアグラが混乱する中、シルヴァはパンダの首に何時の間にか下げられていたプレートを指さした。

 

 

「何を言っているのです? あそこに『喋るパンダ』と書かれているではないですか。……随分とお疲れなのですね。私が苦労を掛けるから……」

 

「あー。だから禿げたんだね」

 

 悲しそうだったシルヴァの顔がパンダの言葉で更に曇る。この時、完全にアグラが禿げているとシルヴァの中で決定してしまった。

 

 

「もう禿げてるとか禿げていないとかはどうでも良い」

 

「取り返しがつかないから?」

 

「ああ、親父や爺さんも若くして……って違うっ! おい、お前が勇者で間違いないのか?」

 

「勇者? なんか僕を呼んだから来てみたけど……成程、全てを理解したよ」

 

 ポンっと前足を打ち合わせて全てを飲み込んだ様子のパンダを見たアグラとシルヴァは理解する。このパンダが儀式で呼ばれたのは間違いないが、何故呼ばれたか理解した上で来た訳ではないのだと。

 

(喋る事は気にしないでおこう……)

 

 アグラがどうせ無駄だと理解する中、シルヴァはパンダの前に膝をつく。

 

「勇者様、どうか我々をお救い下さい」

 

「良いよー。どうせ暇だったし、この世界独自の料理にも興味あるしね。……あっ、でも彼の禿はどうにも出来ないかなぁ? 僕、植毛技術は持っているけど面倒臭いし」

 

「そうですか。彼の髪はもう二度と……」

 

 

 

 

「だから俺は禿げてねぇええええええええええええええええっ!!」

 

 アグラは心の底から絶叫する。それと同時に彼の胃がキリキリと痛み出したのだが、これはこれから彼を待つ苦難辛苦の物語の、ほんの序章にしか過ぎなかった……。

 

 

 

 

 

「そうそう。自己紹介がまだだったね。僕の名前はアンノウン。喋るのと全知全能なだけが取り柄の善良で清廉潔白なだけのパンダさ! 趣味は悪戯」

 

「お前、善良とか清廉潔白って文字の意味を調べろ」

 

「何を言っているのですか、アグラ! 勇者アンノウン様が下げたプレートに『善良で清廉潔白』と書かれているでしょう!」

 

「悪いの俺っ!?」

 

「……ふぅ。アグ君、少しは反省しなよ。シルちゃんもこれからヨロシクねー!」

 

「はい! よろしくお願いします」

 

 これから三人(人?)の旅が始まる。頑張れ、アグラ。胃薬飲んで耐えるんだ! 尚、世界が救われる頃にはこれは本当に禿げる。

 

 

 

 

 

 

 最後に王国に伝わりし伝説、その全容を明らかにしよう。

 

『闇の大陸の封印解かれる時 目覚めた魔族が世界を脅かすだろう。その時、伝わりし呪文を唱え勇者”ではなく性格最悪の魔獣”を召喚”せよ。その勇者”のつもりで召還した魔獣は好き勝手して目を付けた者の胃”を破壊する”だろうが耐えろ。頑張って耐えろ。抵抗しても無駄だから。”魔獣”はその者を弄り”倒し 世界”を好き勝手に手に旅し” 平穏を齎す”ただし玩具指定された者は凄く大変”だろう』




別作品(二次)の主人公だけどその作品の要素は無いから大丈夫でしょう・・・多分


感想お待ちしています


自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ も宜しく!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。