比企谷八幡は斯く語りき 作:今更だけどB.A.D.もっと流行れ
日常と非日常の境目は何処にでも転がっている。
一歩進んだ先には、深紅の世界が広がっているかもしれない。
聴こえてくる祭囃子は、狐からの招待状かもしれない。
そんな異常も、日常的に続けば安寧の内。
そんな不思議で残酷で醜悪で美しくて切ない世界を、描く事が出来たなら。
そんな思いの元、駄文製造機な作者は筆を取りました。
オリ主を出すには作者の想像力が足りなかったので八幡くんに出てもらいます。
比企谷八幡は斯く語りき
むかしむかしのそのまたむかし、ある所に、鬼と、鬼の家に棄てられた少女が居ました。
少女は怖くて怖くて仕方ありませんでした。
なにせ、少女は鬼とたった二人きりになってしまったのですから。
ですが、鬼は別に、少女をとって食おうなどとは考えていません。
だから、まずは少女と、仲良くなろうと考えたのです。
そして、そう考えて、鬼は途方に暮れました。
鬼にとって、少女が、初めて見た人間だったのですから。
けれど、何もしない事には、少女と仲良くなる事は出来ません。
鬼は頑張って、会話をしようと試みました。
最初のうちは、返事も返ってこなくて、むしろ、怯えられるだけでした。
けれど鬼は諦めません。
やがて、鬼と少女は、少しずつですが、お話をするようになりました。
鬼はそれが嬉しくて、毎日毎日、自分のこと、鬼が暮らす家の事、ずっと一人で寂しかったこと、他にもいろいろ話をしました。
少女も、嬉しそうに話す鬼を、少しずつ受け入れてくれました。
葉が落ちて、雪が積もり、新緑が芽生え、花が咲き、それが何度も何度も繰り返され、やがて、鬼と少女は家族となりました。
さてさて、ここまで来れば後は簡単。それがどんな駄作であれ名作であれもちろんお伽話であれ、いつかは終わりを迎えます。
そして、鬼には、鬼と呼ばれるだけの理由があり、少女にも、鬼の元に捨てられるだけの理由がありました。
けれど、鬼も少女も、そのことを忘れてしまっていたのです。
仲間がいる、家族がいる、ということが、何よりも嬉しかったから。辛い記憶に、蓋をしたのです。
そして、その理由のために、鬼と少女は人間に襲われました。
油断をしていた鬼は、あっさりと人間に捕まり、何とか逃がした少女も、結局は人間に捕まりました。
少女は喰われ、鬼も喰われた。
襲ってきた人間に、食べられてしまいました。
これでは、どちらが鬼か、分かったものじゃありません。
けれど、斯くして、鬼と少女は、死んでしまったのです。
めでたしめでたし。
なーんちゃって。
これは、むかーしむかしの、物語。
今尚続く、悲劇だよ。
Story 1-1
『やあ、久しぶりだね』
珍しくかかってきた電話に出てみれば、聴こえてきたのは甘い甘い、ともすれば残酷ささえ感じる少女の声だった。
「……こちらの電話番号は、現在から使われなくなります。ピーという発信音の後に続いて要件をお伝え下さったらぶん殴るので二度と掛けてこないでください」
『……なんでも良いけれどね、君たちの生活はボク達が支えていることを忘れないでくれたまえよ?』
「すみません。ごめんなさい。許してマッカン上げるから」
『……チョコレート味で手を打とう』
「あんた栄養欠乏で死ぬぞ」
『なら君は糖尿病だね』
「おっと盛大なブーメラン」
なんて軽口を言い合えるくらいには親しいが、生憎と無条件の信頼はしちゃならない。
俺が話しているのはそういう相手だ。
名を繭墨あざか。
繭墨家現当主にして生き神。兄妹どうしの近親相姦という禁忌を犯して産まれた子。そして、この世で誰よりも深く深淵に通ずる少女だ。
ただしその趣味は残酷に過ぎる。
人の死を娯楽とし、凄惨で陰惨で、残酷に美しい光景を好む異常者だ。
そして、俺と同じく鬼の血を引く異能者でもある。
「んで?お前が連絡を寄越すってことはなんかまた依頼か?」
『まあ、そうとも言えるかな』
「は?」
『まあいいさ。来れば分かる。待っているよ。ただでさえ、小田桐君がいなくなってから退屈なんだ。あまりボクを待たせないでくれたまえよ?』
そして、唐突に電話は切れた。
これも割といつもの事だ。やーんはっちゃん困っちゃう。
さて、繭墨が来いと言うのなら、例え火の中水の中、何処へでも行かなくちゃならない。
だってそういう約束なのだから。
「んじゃ行くか、小町」
『はーい!お兄ちゃんッ』
今日も小町は可愛いなぁ。
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