あの子は女で、私は男で   作:ヘイ!タクシー!

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最近感想をちょくちょく貰い始めたのでまた復帰させました。








私は私の思うままに

「おはよう理央ちゃん! 昨日はゴタゴタしてたから言えなかったけど、理央ちゃんその服とってもかわいいわね!」

 

「……ありがとうございます」

 

午前9時の朝。私は異性の友人に衣服を褒められて、嬉しいのか男として悔しいのかよく分からない複雑な感情に支配される思春期男子特有のめんどくさい嫌な朝を迎えております。

日本語からしてもうカオスなのですがつまり私の感情がとてつもなく複雑でこんがらがっていると言うことです察してください。

 

そんな私の思いとは裏腹に、目の前で私に太陽のごとく輝く笑顔を向ける千棘さん。善意ある言葉の暴力ってこんなにも痛いんですね………

 

「千棘さんも今日はとてもオシャレですね。その服とても似合ってて魅力的です」

 

「ありがとー! やっぱり理央ちゃんはわかってるわね。そこのモヤシっ子と違って」

 

「悪かったな。女心のわからねーやつで」

 

今日は土曜日。つまり高校生にとって絶好のデート日、なのかは知りませんがそうらしいです。と言うわけであちらのビーハイブさん方がしなくても良いお膳立てを行い、千棘さんと若が仮初めのデートをしなくてはならなくなりました。

 

若は嫌がってましたが偽のカップルを演じると決めたのだからしなくてはなりません。と言うか千棘さんのような可愛い女の子とデート出来るんだからむしろ羨ましいです。爆発しろ。

 

私はまだ左手が痛むのでせっかくの休日なのですが屋敷で安静。フリで手を繋ぐ若と千棘さんを憎し全開の笑顔で見送りました。

 

さ、私は部屋に戻りますか。腕の怪我が治っていないせいで私は登校以外基本的に外出禁止ですからね。

若の護衛はウチの出歯亀根性丸出しな男達に任せましょう。二人の後を追うように尾行していきましたが………まあ無視無視。その中に自分の育て親も混ざってましたので軽蔑の目で見送って、あとは二度寝でもしましょう、うん。

 

…………あ。そう言えば成り行きで若はデートに行きましたが、あの人デート初めてでしたよね? 大丈夫でしょうか?

二人で遊びに行く時は若の好きにさせているので、私は若の本当に高校生かと疑うような好みを知っています。

映画は、まあ可愛いもの作品を見ることが多いので女子と行っても大丈夫でしょうが…………デートで見る恋愛物は若好きじゃないです。

カラオケはアウトですね。あの人、演歌しか歌えません。逆に演歌だけすごく上手いです。でも若い人向けじゃない。

食事は………そもそも外食するなら自分で作るスタイルの若が、オシャレなレストランを知っている筈がありませんが…………まあ、カフェとかなら若でも知ってる、か……?

 

…………うん。ここで考えていても無駄ですね。さっさと寝ましょ。

 

 

 

 

夕方辺りに帰って来た若は酷くご立腹のようでした。

なにやらデート中に若の意中の相手である小野寺小咲さんにばったり会ってしまったそうで。色々誤魔化そうとしていたようですが、若の様子を見るに芳しくなさそうです。

 

それはそうと、さっきからクラスメイトの方々からのライン通知が止まりません。あれは本当なの? とか、諦めちゃっていいの? とか。

あれ、とは若と千棘さんの件のことです。どうやら小咲さん以外にもクラスの知り合いから見られていたようですね。

 

若、残念ながら二人の関係はクラスの皆に情報共有されてますよ。でも良かったですね。こんなにも女子の方々から気にされるなんて大人気ですよ若。私が知らなかっただけで、若もモテてたんですね。

 

クラスの皆には、『ほんとですよー』とか、『諦めもなにも私、男なんですが笑笑』等々返信しておきました。最後に『皆さん、あの二人のことを暖かく見守ってあげてください。あの二人程お似合いの関係は無いので。私からのお願いです』と付け加えておきました。

若には悪いと思っていますが、此方も組と私の命が掛かっておりますので二人の関係を否定しません。

決して、千棘さんのような可愛い方と嘘でもお付き合い出来てるのが羨ましいとか嫉妬しているとかじゃありません。断じて。

 

 

 

…………ラブコメかよ、チッ

 

「え? 理央……さん? なんか今舌打ち…………」

 

「気のせいですよ若。食事中にそんな下品なことするわけ無いじゃないですか」

 

「あ、はい」

 

私も、恋をしてみたいです。

 

ヤクザという物騒なコミュニティに身を置いている時点でそんな事は出来る筈がありませんが、それでも人並みに恋をしてみたいと思うくらいは許して貰いたい。

こんな人間に恋されたところで迷惑でしょうし、仮に私の恋が実ったとしても相手に重荷を背負わせてしまいます。私が好きになった人にそんな重荷を背負わせたくありません。だから、私は恋をしてはいけない。

 

ああ……それでも思わずにはいられません。特に若と千棘さんの二人の様子を見ていると、なんだか青春しているなって思えて羨ましさが私の心を乱すのです。

 

私は若に告げていませんが、汚い事も平気でやってきた人間です。ヤクザに身を置いている時点で何を今更と言われても仕方がありませんが、私はいざとなれば人を平気で殺せます。こんな身でありふれた生活が許されるとは思っていません。本来なら学校に通う事すら烏滸がましい存在なのです。

 

それでも…………ああ。やはり私は恋をしてみたい。

どんな風にその人を想うのでしょうか。家族愛とは違うのでしょうか。忠誠心とも、忠義とも違うのでしょう。

若は良く私に小咲さんの話をします。何度も何度も馬鹿みたいに小咲さんの可愛らしさを報告してきます。

若が小咲さんの行動一つ一つに一喜一憂して頬を赤らめる姿は大変気持ち悪いですが…………それはとても楽しそうにしています。

 

だからそんな若を見ていると、私も恋をしてみたいと思ってしまうのです。

そう思わずにはいられなかったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな私は今、恋をしています。

 

「おひょー!! 眼福ですなー楽くん、理央くん!」

 

「ええ、三人とも可愛らしいです。目の保養ですね」

 

照りたく太陽! 弾ける水飛沫! 私は今、美少女の水着姿に猛烈に恋をしていまッす!!

 

 

 

二人のデート日から一週間程。次の日に盛大にクラスの皆から祝われ、クラス公認のカップルとなったあの事件からまあまあ日が経ちました。

若と千棘さんは私生活と学校両方に偽の恋人を演じ続けないといけなくなり、大分苦労しています。

 

そうして季節も移り変わり、暖かいとは言えまだまだ肌の露出も控え目な5月終わりを迎えたこの時期。

そんな時期にも関わらず、私は一足先に水着姿の美女達を拝むこと出来ています。

 

「ちょっとアンタ等、変な目で見ないでよね! 特にモヤシ!」

 

「み、見てねえよ!」

 

おっと、千棘さんから注意を受けてしまいました。流石に目線が露骨過ぎましたか…………

いや、それでもこれは仕方の無い事なんです。何故なら私は今、水着に恋をしているのだから!!(意味不)

 

学校指定のスク水と言えど、その破壊力はとんでもない。ぴっちりと肌に吸い付く布のお陰で体のラインはいつもよりはっきりと見え、ヒップに食い込む布の位置を直す仕草なんかハァー………。

 

しかも小咲さんとるりさんはスク水なんですが、千棘さんはまさかのビキニ!! 肌の露出が暴力的なまでに凄まじい。これを見るだけでも、わざわざ放課後に残ってプールに来たかいがあったと思いますね。

 

ヒョーッ! 生きててよかった! 

 

ちなみに何でまだ五月のこの時期に学校の屋内プールで水着になってるのかと言うと、千棘さんと小咲さんが今度ある水泳部の大会で助っ人に誘われたからです。ついでに泳げない小咲さんを若と千棘さんで教えると言うことに。何で泳げない小咲さんが助っ人に選ばれたかはるりさんにでも聞いてください。私は3人の水着姿を目に焼き付けるのに忙しいので。

 

あ、ちなみにですが私と集さんは完璧な野次馬です本当にありがとうございます。

 

「てか理央は水着に着替えねえーの?」

 

「実は怪我がまだ治っていないので………しばらく絶対安静です」

 

「ええー。新鮮だから理央の水着姿見てみたかったんだけどなー。もちろん男用の競泳水ギィッ!?」

 

「死ね。変態」

 

あ、集さんがるりさんに殴られてプールにダイブしました。大きな水柱は屋内の天井にまで届き、集さんはプールの底へと沈んで行ってしまいます。流石に目線が露骨過ぎて制裁を加えられましたか。

私もああならないよう気を付けないと。

 

「佐々木さん気を付けな。あいつ変態だから」

 

「え? あ、はい知ってますよ…………それにしても、泳がなくても私も水着着れば良かったですかね? もちろん、男性用のですが」

 

『絶対駄目!!』

 

おおう!? まさか全員から否定されてしまいました。え? そんなに駄目ですか? 男らしい体躯とは言えませんが、私も腹筋は割れている方なので身体には自信があるのですが………そうですか、駄目ですか。クスン……。

 

まあいいです、別に。男の裸なんて誰も見たくないでしょうし。それよりも今は千棘さんや小咲などなど、他の女子の水着姿を目に焼き付けましょう。

最近まで腕の怪我のせいで殆ど皆さんと遊べていませんでしたからね。学校が終わったら即帰宅………この間の勉強会すら参加させて貰えませんでした、グスンッ、グスンッ……。

 

今日も本来なら帰って安静に過ごす予定でしたが………私とて男です。クラスメイトの、それも美少女達が水着姿を晒してくれると言う機会に、腕に穴空けたくらいの怪我で逃す筈がありません。怪我の悪化が怖くてヤクザやってられるかって話です。ヤクザ関係ないけど。

 

流石に水に入って泳ぐのは辞めましたが。流石に腕への負荷がヤバいので。

ついでに明日の練習試合も見に行けません。若に止められました。自分だけ美少女の水着見ておいて私には見させないとかマジふざけーーーーーーいえ、なんでもありません。我儘は駄目ですね。それに今日見ることが出来たのだから儲け物でしょう。

 

…………………千棘さんのスク水姿も見たかったよクソッ。

 

ちなみになんか若が女子更衣室の鍵を盗もうとしていた疑いを掛けられていましたが助けませんでした。はたから見てても犯罪者のそれでしたし、明日の恨みもあります。

ただでさえ千棘さんと言う可愛い女の子と演技ですが付き合っているのに………自分だけいい思いとか私は許しません。

 

私は明日の若に強い憎しみを想いながら、今日の良き光景を一生思い出に残しておこうと心に誓い眠りに付くのでした。

 

 

 

 

そんな眼福であった日から数日経った日の事です。

いつものように登校した私達に、担任のキョーコ先生から転校生がまた来たとお達しがあり、私を含めたクラスメイト全員と顔を合わせたその日。

 

私は運命の人に出会いました。

 

 

「初めまして。鶫誠士郎と申します。どうぞよろしく」

 

こんなにも美しい人間がいるのかと、私は思いました。私と同じぐらいの身長なのに恐らく私より足の長いスラっとしたモデル体型。細身であるのにそれすら上回る顔の小ささ。加えてキリッとした瞳に整った顔立ち。

 

異性なら憧れ、同性なら嫉妬すること間違い無しでしょう。

 

私は図らずも彼ーーーー鶫誠士郎某に嫉妬しているであろうクラスメイトと同じ、強い嫉妬心が芽生えました。

何なのだこのイケメンはと。このイケメンに対する嫉妬心だけで人を殺せるんじゃないかと。男として生涯の敵だと定めたこの転校生が憎くて憎くて仕方がないと。

 

それを踏まえた上で、嫉妬する男子生徒の心を代弁する形で私がした事は一つだけです。

 

 

 

 

「ぶーぶー! イケメン反対!! イケメン反対!!」

 

腕を上げ下げして、怒りのシュプレッヒコールを一人で展開するのでした。

 

 

 

 




前書きでも言いましたが、この作品を待っていると感想を頂き舞い戻ってきました。
鶫が出るまで長くてこの作品書くの飽きてたのですが、なら全部のストーリー飛ばせば良いじゃないと思い、再び筆がのったので投稿です。

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