真夏の昼の様にサンサンと照りつける太陽。その光をキラキラと反射する広く青い海。小さな数匹の蟹がチョコチョコ歩き回る白い砂浜。そして、その砂浜に日傘を差しながらぼんやりと海を眺める金髪の少女が立っていた。彼女はフゥ、と溜息をついて口を開く。
「・・・・・ここ、・・・・・・どこ?」
???side
うん、絶対におかしい。なんで私はこんな綺麗すぎる海を眺めているのかしら?ついさっきまで自分の部屋の布団で寝ていたはずなのに・・・誘拐?いや、無い無い。うちに人質に払う金どころか払ってくれる親も友人もいない。・・・・・あ、言ってて悲しくなってきた。
「と言うか、なんで17歳の女の子なんて誘拐する意味が・・・・ちょっと待って、なんで私の髪が金髪になってるの?」
ふと視界に入った綺麗な金髪に私は疑問を持った。私はごく普通の黒髪だった筈だ。しかもよく見たら服装や体つきも違う。私はこんなスラッとした容姿じゃないし、こんな服私の住んでた町では見た事がない。何よ八卦の萃と太極図を描いた中華風のドレス似の服・・・・・って・・・え?
私は綺麗に二度見した後身に付けているものを確認した。八卦の萃と太極図を描いた中華風のドレス似の服、ドアキャップに赤いリボンが付いたような帽子、そして手に持った日傘と探っている時に見つけた扇子が1つ。私は嫌な予感がしつつ、近くにあった水溜りを覗き込んで自分の容姿を確認した。そこには今の自分と同じ服を着た美しい金髪の少女が立っていた。そして、今の自分の姿に見覚えがあった。
「これって・・・・東方の八雲紫?」
自分の姿が八雲紫になっていて唖然としていると、私しかいない筈の砂浜に女性の声が響いた。
『もしもし?聞こえますか?』
「ッ!?誰!?どこに居るの!!?」
私は即座に周囲を見回し声の主を探した。しかしどこを探しても誰もいない。警戒して居ると今度はハッキリと聞こえてきた。
『落ち着いて下さい。これは念話と言う所謂テレパシーと言うやつです。今あなたの頭に直接話しかけているので探しても私はいませんよ?』
「・・・・確かにね。でも警戒ぐらいするわよ。いきなり知らない場所にゲームのキャラクターの姿にされて放り出されたのですもの。それで?貴女がこの状況を作り出した主犯かしら?」
『しゅ、主犯。まぁ間違ってはいませんが・・・・私は貴女方が言うところの神様ってやつです。実は予想外の事故によって貴女を転生させることにしたのです』
「貴女頭大丈夫?・・・って言いたいところだけど、今の状況的に本当の事なんでしょうね」
これはアレかしら?よく小説にある異世界転生・・この場合は憑依かしら?じゃあここは東方の世界?私幻想郷作るの?
顎手を当てて考え込んでいると、オドオドした声で神様が話し掛けてきた。
『・・・・あ、あの。・・・・怒らないんですか?事故とは言え殺しちゃったんですよ?』
「うん?あぁ、別に気にしなくていいわよ?事故ならしょうがないわ。悲しんでくれる親や友達なんて私にはいないし、精々新しい人生・・・妖生?を楽しませてもらうわ」
『ッ!!・・・本当にごめんなさい』
「もう、優しいのねぇ。それよりなんで八雲紫なの?私としては1番好きだったキャラクターだから嬉しいけど」
『貴女の記憶から生前好きだったものから新しく私が真似て作ったのです。元の体は既に火葬されてしまいましたし、その世界で生き抜くのにあの体ではすぐに死んでしまいますからね。ちゃんと能力も使えますし、東方とやらの世界のアイテムもサービスで渡してあります』
これ1から作られたの?神様ってやっぱり凄いわね。私あのスキマってやつ使ってみたいって思ってたのよね。でも生き抜くって・・・この世界そんなに物騒なの?
『あ、後言い忘れていましたがそこは東方とやらの世界ではありません。ONE PIECEと言う漫画の世界です』
よりによってONE PIECEの世界ときましたか・・・。あまり詳しく知らないのだけれど。
「まぁ、なんとかなるでしょう。せっかく転生したんですもの。ありがたくこの体を使わせてもらうわ。・・・・あ、私って能力持ってると言うことは泳げないの?」
『大丈夫です。悪魔の実と違ってちゃんと泳げますし能力が使えなくなる事もありません』
ふぅ、1番心配だったことも問題無いようで良かったわ。滑って海に落ちて死にましたじゃ流石に笑えないものね。
『さて、私はそろそろ仕事に戻ります。では良き人生を・・・』
「えぇ、ありがとう。・・・そう言えば貴女名前は?」
『・・・リーリエ。創造神のリーリエです』
「そう。ありがとうリーリエ。お仕事頑張ってね」
『ありがとうございます。・・・紫』
それからリーリエの声は聞こえなくなった。リーリエって創造神だったのね。私は苦笑いをしながら空を見上げた。
「さてと、新しく八雲紫として生きていくのはいいとして、まずはこの体の確認ね。どんなに強い武器があっても使う人がダメならただのガラクタだもの。まずは空でも飛びましょうか」
とは言ったものの?空ってどうやって飛ぶのかしら?今の私ってスキマ妖怪であり妖怪の賢者と呼ばれた八雲紫の体を持っているのだから飛べるとは思うけど・・・・・とりあえずジャンプしてみる。
ピョンッ!
「・・・・・・・うん、違うわね」
となると、イメージする感じかしら?今度は自分が空を自由に飛び回る姿をイメージして・・・・・・お?
「ふふふ♪成功ね」
下を見てみると足が地面から数メートル離れて飛んでいる。しばらくの間急上昇、急降下、低空飛行、ホバリング、アクロバットなどをしながら飛ぶ感覚を身に付ける。妖怪になったからかこれらはすぐに身に付いた。そして飛んでいるときに気が付いたのだが、私が今いるここは小さな無人島だった様だ。
「ふぅ、大体こんなものかしらね?さて次は身体能力ね」
地上に降りて近くにあった岩に拳をぶつける。私的には割れれば上々と思っていたけど・・・・・。
バガンッ!!!
「・・・・・・・・私の種族って鬼なのかしら?」
割れるどころか粉々に粉砕した。流石に自分より大きな岩を粉砕するとは思わなかった。それから蹴りやジャンプ力、握力に走る速度と試してみたが、どれもこれも凄まじかった。どうやらリーリエは私の体の身体能力を高めにしてくれたようだ。
「ま、まぁ無いよりかは有り難いけどね。・・・・・・いよいよ能力についての確認ね」
八雲紫の能力は『境界を操る程度の能力』。空間の境界を操り裂け目・・・スキマを作り、遠くの場所に移動したり、昼と夜の境界を操り夜を明けなくしたりなど。境界と名の付くものをほぼ操ることの出来る能力だ。
私はスキマを開くために、空間を裂くイメージをしながら指を動かした。すると目の前の空間が裂け、八雲紫が使っているスキマが出現した。ちゃんと両端にリボンが付き、裂け目の中には沢山の目が見える。
「おぉぉ〜♪これがスキマ!本当に不思議ね」
私は興奮しながらスキマに入ったり出たりし、スキマを使った空間移動をして能力の練習をしつつ、遊んでいた。
「あー楽しかった♪さて、次は弾幕ね。あとスペルカードについても試しましょう」
私は横に開いたスキマに腰掛けながら弾幕を撃つイメージをする。先ずは突き出した手から妖力の弾を放つようにイメージした。すると綺麗な色をした光の玉が出現し、真っ直ぐ飛んでいく。・・・成功だ。
「こんなに簡単に撃てる物なのね。まぁ弾幕については練習しましょう。次はスペルカードね。・・・・・廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!」
スペルを唱えると私のすぐ隣に大きめのスキマが開き、中からボロボロの電車が猛スピードで飛び出して行った。電車が地面にぶつかり、連結部が壊れて脱線した様になると電車そのものが爆発した。
「・・・・・楽しい」
それからしばらくの間、1人の妖怪が住む島にて色鮮やかな光の玉やレーザー、光でできた様な蝶やかなりの規模の爆発が起きた。
★
数時間後・・・・
「やってしまったわね。弾幕を撃つのがあんなにも楽しく、美しいとは思わなかったわ。つい我を忘れてしまったしね」
私の目の前には先ほどの様な綺麗な砂浜など跡形も無く。そこら中にクレーターが出来ていた。
「いえ、そんな事よりも問題はコレね。なんでコレが私のスキマの中にあったのかしら?」
私はスキマの中で見つけた八角形の黒い箱の様なものを観察する。コレには私も驚いた。
「どこからどう見てもミニ八卦炉よねコレ?他のキャラクターが使う物じゃないの。そういえばリーリエが東方のアイテムをサービスで渡しておくって言っていたけど・・・・使えるのかしらコレ?」
私はミニ八卦炉を構えて海に向ける。
「恋符!『マスタースパーク』!・・・な〜んちゃって・・へ?」
ドゴオォォォォォォォォォ!!!!!
ふざけてスペルを唱えてみるとミニ八卦炉から七色の極太レーザーが発射された。レーザーはそのまま海の彼方に消えて行き、私は目を見開いてミニ八卦炉とレーザーが飛んで行った方向を交互に見ていた。
「え?・・・・撃てちゃった。嘘、え?マスタースパーク・・・・あれ?」
撃ててしまったマスタースパークに驚愕し、前世でも今までなかった程混乱した。数分程混乱してすぐに他のことが頭をよぎった。
(これ・・・もしかして他のキャラクターのアイテムが入っていたりしない?)
私はすぐにスキマを開いて中を調べた。そしたら他にも2つだけ見つけた。出て来たのは紅葉型の団扇、金の懐中時計。団扇を扇ぐと通常じゃあり得ない風が起こり、懐中時計を使うと10秒ほど時間を止めることが出来た。
「ふむ・・・・流石に制限は掛かっているわね。ミニ八卦炉は1発撃つのに3分のチャージが必要。団扇はゲームみたいに竜巻は起こせない。懐中時計は10秒ほどしか止められない。ま、流石にホイホイ使えたら八雲紫になった意味はないしね」
私は団扇をスキマの中にしまい、懐中時計のチェーンを服に繋げて懐に入れた。この懐中時計、時間を見ることも出来るから便利ね。今の時間は午後3時54分。お腹が空かないのは妖怪になったからかしら?こういう無人島では有難いわ。
「あぁ〜、寝泊まりする所を確保するのを忘れていたわ。どうしようかしらね?最悪スキマの中で過ごしましょうか」
そう言いながら私は島にある森の中へ足を踏み入れた。
★
数百年後・・・・
え?時間が飛び過ぎですって?仕方ないじゃない。ちゃんとした理由があるのよ。私が八雲紫としてこの世界に来て約1週間ぐらいしたときに再びリーリエから連絡があったのよ。どうやらまた向こうの手違いで原作から数百年前の世界に転生させてしまったらしくてね。ひたすら念話で謝って来て大変だったわ。それで仕方なく衣服と食料を詫びとして提供して貰い、私はその数百年を無人島で修行をしながら暮らす事にしたのよ。住居は丁度いい大きな木があったから数日かけてツリーハウスを作ったわ。それで今最初に立っていた海岸に居るのだけれど・・・・。
「どうしてこうなってしまったのかしらねぇ?結界『夢と現の呪』」
スペルを唱えると2つの大玉が二手に分かれて飛び出し、片方が拡散弾を、もう片方がホーミング性が少しある弾幕を放つ。それらは今私の目の前にいる男達に向かって飛んで行く。
「ぎゃあああああ!!また来たぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちくしょう!!いったいあの女なんの実の能力者なんだ!?」
「いいから逃げろ!財宝なんざいらねぇ!まだ死にたグボォッ!!?」
手加減しているとはいえ、弾幕ごっこのルールが存在しないこの世界で使うスペルは人間には致命傷になり得る。
今私が蹂躙しているのは海賊だ。いつからだったか、海賊達が度々この島にやって来るようになり、襲いかかって来るから返り討ちにしたのよ。その際財宝が勿体無かったから回収して船だけぶっ壊して放置してたのよ。それを何度か繰り返していると海は破壊された海賊船だらけになっちゃって、それを見た他の海賊が船の財宝を手に入れようと更に来るようになったのよね。今では海賊達の間で『亡霊島』なんて呼ばれているわ。因みに亡霊は私らしいわ。何度来ても姿が変わらずに居るし、何十年も前から居るのに気が付いた奴がいたのよね。
「ふぅ、これで全部ね。さてと船の方は?・・・・あら、結構溜め込んでいるじゃない。回収、回収。船は・・・・スキマで適当な所に落とすか」
最後の1人を片付け、スキマを開いて先程の海賊達の船から財宝を回収し、船は舵が利かないようにして近くの海に捨てる。こうやっているから島の周りはゴーストシップの溜まり場になっているんでしょうけど。あ、海賊達の亡骸はスキマで片付けている。
「はぁ〜終わった。もう疲れちゃったわ。さっさと家に帰って寝ましょ」
私はググッと伸びをしてスキマを開き、手造りの我が家へ戻って行った。
★
「『亡霊島』?あの幽霊が財宝を守っているって噂の?」
「そうだ。同時に多くの海賊どもが消息不明になっている島でもある。今回お前達を呼んだのはその島の調査に行ってもらう為だ」
ここは、海軍本部マリンフォード。己が正義に順じ、海で暴れる海賊を捕らえ、海の平和を日々守っている。そこのとある一室にて、海軍でも指折りの実力を持ち、『正義』の二文字が書かれたマントを羽織る海兵達が集まってとある島の話をしていた。今回はなしに挙がっている島は通称『亡霊島』と海賊海軍一般市民問わず呼ばれている島の事である。曰く、「あそこには何百年も前から消息不明になった海賊達の財宝が眠っている」。曰く、「そこには日傘を差した女の亡霊が居て、財宝を守っている」。などなどの噂が絶えない島だ。最初は海軍達も「何を馬鹿な」と鼻で笑って居たが、最近になって突然消息不明になる億越えの海賊達が最後に向かったとされる島がその島だとわかり、この度調査をする事にしたのだ。
「何故突然そんな事を?確かに噂は気にはなりますが態々私や中将クラスを招集する必要があったんでしょうか?」
突然の調査任務に眼鏡をかけたアフロの男性・・・大将センゴクが目の前にいる海軍本部元帥のコング元帥に質問した。
「あぁ、最初は気にする事は無いと私も思って居たのだがな。最近特に億越えの賞金首が消息不明になっている。そして少し調べてみたのだが、そのほとんどが最後に向かったとされる島がそこなのだ。今は海賊だけしか消息不明になって居ないが、もし本当に亡霊とやらが居た場合・・・・」
「俺たち海軍にも被害が出る可能性がある・・・と言うことか」
コング元帥の話に紫の髪にサングラスをした海兵、海軍大将ゼファーが腕を組みながら言った。それを聞いて他の海兵達も真剣な表情になる。コング元帥はその場にいる全員を見回し、指示を出す。
「調査に行くのはこの中から2名!調査に向かう者は軍艦5隻を引き連れて4日後に亡霊島に向けて出航!誰が行くか今から決めるぞ」