大海原に転生してスキマ妖怪   作:☆桜椛★

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スキマ妖怪の新たな家族と五老星への警告

「えっと・・・・藍?その猫どうしたの?」

 

 

 

紫は何故猫が化け猫なのかは置いておいて藍にその猫はどうしたのかを聞いた。猫はかなり藍に懐いているらしく、抱き直した藍に甘えている。

 

 

 

「実は初めてこの島の町に視察しに行った時に道端で怪我をして倒れていたこの子を見つけまして、放って置けなかった為回復術をかけて治療したんです。そしたら懐かれてしまって・・・」

 

 

「更に自分もその子を放って置けなくなって飼う許可を取りに私の所に来たのね?じゃああの時念話で話している時に様子がおかしかったのは・・・」

 

 

「ご察しの通り、私がこの子を連れて行こうと抱き抱えた時です」

 

 

 

成る程ねぇ?確かにそれなら納得いくわ。と言うかよく化け猫なんか見つけたわねぇ。

紫は藍に撫でられて気持ち良さそうにゴロゴロ鳴いている化け猫を眺めながらそう思った。藍も嬉しそうにしており、まるで母親の様な笑みを浮かべている。

 

 

 

「いいわよ飼っても。貴女がそんな風に私にお願いするなんて初めてですもの。いっそ貴女の式神にしなさい」

 

 

「あ、ありがとうございます!!しかし式神ですか?」

 

 

「えぇ、その子も私達と同じ妖怪なの。種族は化け猫。貴女の式にしたら迷子になっても見つけられるから式神にした方がメリットが多いわ」

 

 

「成る程・・・ではそうさせてもらいます」

 

 

「そうしなさい。式にする陣は私が書いてあげるわ。貴女はそれの中心にその子を置いて、陣に妖力を流しなさい」

 

 

 

紫は「はい!」と元気良く返事をする藍に笑い掛けながら部屋の中心に陣を書き出した。少しして陣は完成し、紫は藍に言って化け猫を陣の中心に置かせた。化け猫は陣に興味があるのか線を前足でテシテシ叩いている。しかし紫の妖力を線の様にして陣は書かれている為消えはしない。

 

 

 

「これでいいわ。藍、陣に自分の妖力を流しなさい。そうすればこの子は正式に貴女の式神になるわ」

 

 

「分かりました。では・・・いきます!」

 

 

 

藍は紫の指示通りに陣に手をついて魔力を流し始めた。段々陣が光を発していき、藍が紫の式神になった時の様に眩い光を発した。光が収まるとそこには先程の2本の尻尾を持った黒猫は居らず、猫耳の女の子がいた。白いシャツの上に黄色いリボンの付いた赤い中華風ベストの様な物を着て、白いラインが1本入った赤いスカートを履いている。頭には緑色のドアキャップの様な帽子をかぶり、髪は赤茶色に近いが、猫耳は黒色で、片方にリング状の耳飾りを着けている。腰辺りから生えた2本の尻尾も黒く、先端が白くなっている。彼女は自分の姿を見てオロオロしており、藍は黒猫が消えて猫耳の女の子がいる事に混乱していた。

 

 

 

「あれ!?あれ!?なんで私人間の姿になっているんですか!?」

 

 

「え?あの猫はどこへ?紫様?これはいったい?失敗したのですか?」

 

 

 

藍は猫が人間の姿になっている事が信じ切れずニコニコ笑っている紫に助けを求めた。

 

 

 

「ちゃんと成功しているわよ。その子がさっきの化け猫よ。式神にした事で人間の姿になったんでしょうね」

 

 

「そんな事があるのですか?いや、まぁ現在進行形で目の前で起きていますし紫様の言葉は信じられますが・・・・」

 

 

 

藍が人間の姿になった黒猫を見ていると、彼女と目が合った彼女は藍を見つけると途端に花が咲いた様な笑みを浮かべて抱きついた。

 

 

 

「あ!藍しゃま〜♪!!」

 

 

「え?わっ!!?」

 

 

 

藍は抱き付いてきた彼女をしっかりと受け止めた。彼女はスリスリと藍に頬擦りし、藍はそんな彼女を可愛く思って頭を撫でた。紫はその様子にクスリと笑いながら口を開いた。

 

 

 

「懐かれているわねぇ?ねぇ、貴女の名前はなんて言うの?」

 

 

「え?私に名前はありませんよ?」

 

 

「あら?そうなの?じゃあ藍、貴女がこの子に名前を付けてあげなさい」

 

 

「わ、私がですか!?私はこう言う類のものは苦手なのですが・・・紫様、何か良いなはありませんか?」

 

 

 

藍は全く良い名前が浮かばなかった様ですぐに紫に案を求めた。猫耳の女の子は自分に名前が貰えると理解して目をキラキラさせている。

 

 

 

「だったら(ちぇん)はどうかしら?」

 

 

「橙・・・橙かぁ。よし!お前の名前は今日から橙だ!私は八雲 藍。そちらにいらっしゃるのが私の主人である八雲 紫様だ」

 

 

「橙・・橙・・はい!分かりました!藍しゃまと、藍しゃまの主人の紫しゃまですね?私は橙です!これからよろしくお願いします!」

 

 

 

新たな式神、橙はここの海兵達を見て習ったのか可愛らしく敬礼しながら主人になった藍と紫に挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

橙が藍の式神になってから1週間程は、橙に戦い方、弾幕、妖力、座学、能力などに付いて紫と藍が共同で教えていた。今も海軍基地の隅にある訓練場で藍と一緒に弾幕の練習をしている。

 

 

 

「よし、だいたい弾幕は撃てるようになったな。次は私の弾幕を飛行しながら躱すんだ。弾幕とは言ってもコレはただの光の玉だからダメージは負わないから安心しろ」

 

 

「はい藍しゃま!頑張りますよ〜!!」

 

 

「いい返事だ!行くぞ橙!!」

 

 

 

今度は2人が空に飛び上がり、藍の放つ光の玉を橙が躱すという基本の練習を始めた。紫はスキマから取り寄せたソファーに座り、頑張っている2人を眺めながらまたガープがサボって飲もうとしていたお茶を取り寄せて飲んでいた。

うん、やっぱりいい茶葉を使っているわねぇ。藍は新しく式が出来て喜んでいるみたいだし、橙も今では藍の弾幕をギリギリ躱せる様になって来たわね。コレで2人目かぁ。リーリエの話だと後13人は居るらしいけれど・・・仕事がひと段落したらコング元帥に休暇を貰って藍と橙の2人と旅行がてら仲間集めに行ってみようかしらね。

 

 

 

「まぁ、気長にいきましょう。・・・・それにしてもあの子達はどうにかならないかしらねぇ?」

 

 

 

紫が呆れながら訓練場の端に目を向けると、そこには基地に居た善良な海兵達と連れて来た部下達が男女問わず藍と橙の2人を見て騒いでいた。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!!頑張れ橙ちゃん!!危ねぇしゃがめぇ!!」

 

 

「藍ねぇさんちょっとは手加減してやりなよ〜!?橙ちゃんはまだ子供だからなぁ〜!」

 

 

「きゃぁぁぁぁあ!!やっぱり橙ちゃん可愛い〜♪」

 

 

「藍お姉様もやっぱり綺麗でかっこいいなぁ。やっぱり藍お姉様と紫お姉様は女海兵達の憧れよね〜。私もあれ出来ないかな?」

 

 

 

私と藍が上司になってからあの子達はあんな感じになっちゃったのよねぇ。ちょっと前に橙を紹介したら女海兵達は歓喜しながら抱き付いたり頭を撫でたりして居たし、藍も海兵達に気を使って居るから人気があるし。でも私も憧れに入って居るのは初めて知ったわ。それ本当なの?

紫はそんな疑問を持ちながらもソファーから立ち上がって海兵達の所へ行く。

 

 

 

「こら貴方達、こんな所で騒いでないで自分の仕事に戻りなさい。まだまだやるべき仕事はあるでしょう?」

 

 

「あ、紫中尉。いいじゃないっすかちょっとぐらい。紫中尉も仕事やってないじゃないっすか?」

 

 

「私と藍は今日の仕事はもう済ましたわ。ほら早くしなさい。それとも私の遊び相手になる?死ぬかもだけど」

 

 

「よ〜し休憩終わり!じゃあ俺等自分の仕事やってくるんで失礼します!」

 

 

「「「「「失礼します!!!」」」」」

 

 

 

紫がニコリと笑いながら妖力を少し出すと海兵達は慌てて自分の仕事をやる為に散開して行った。紫は妖力を収めて再びソファーに座る。藍は弾幕を躱しきった橙を撫でてからおんぶして木陰に運んで休んで居た。今は藍の膝を枕にして橙がスゥスゥと寝息を立てて居る。

 

 

 

「ふふふ♪橙は可愛いわねぇ。藍があんな嬉しそうな顔になる気持ちが分かるわぁ。・・・・・・・・あら?また来たの?こんな場所まで大変ねぇ」

 

 

 

紫はそう呟くとスキマを開いて中に入った。再び開いたのは基地で1番高い屋根の上。そこには2人の黒いスーツを着た男が居た。

 

 

 

「こんな所までご苦労様ね。貴方達で何人目かしら?確か・・・45人目?」

 

 

「ッ!!?や、八雲 紫!?やはり情報通り瞬間移動の悪魔の実の能力者か!」

 

 

「私はそんな物は食べてないわよ。それで?貴方達ずっと私達を監視しまくって居るけど・・・何か用かしら?」

 

 

 

紫の問いに2人は沈黙を貫いた。実は最近ずっとこの様な連中に見張られて居るのだ。先週も3人程海軍本部で見張って居た。しばらく静かな時間が続いたが、2人の男達が動き出した。

 

 

 

「「(そる)!!!」」

 

 

 

一瞬にして彼等は地面を10回以上蹴って移動する。常人や一般の海兵達は消えた様に見えるだろうが、ただ単に目にも留まらぬ速さで走って居るだけなのである。しかし紫は妖怪と言う人外種族の上に、鬼の様な身体能力がある為寧ろ遅く見える。紫は走り続けて逃げる2人に追い付くどころか追い抜いて道を塞いだ。2人は驚愕した顔で紫を凝視する。

 

 

 

「六式・・・やっぱり貴方達も政府の人間ね?そろそろ話をつけようかしらねぇ?」

 

 

 

彼等は再び剃で高速移動して別の道に逃げる。紫はスキマを開いて日傘を取り出し、逃げる2人に追いついて妖力を纏った日傘を叩きつけた。2人は吹き飛ばされて壁に激突する前に他の者達同様にスキマに呑み込まれた。

 

 

 

「懲りないわねぇ。私をこんな連中に監視させるだけ無駄なのに」

 

 

 

紫はスキマに日傘を仕舞ってから別のスキマで藍達の下へ戻った。橙はまだ寝ており、藍は紫の姿を捉えると不機嫌そうな顔をした。

 

 

 

「また居たのですか?今日は何人で?」

 

 

「2人よ。貴女も気づく様になったわね。今度は新世界にある雷が降る島のど真ん中に捨ててやったわ」

 

 

「あの島ですか。それにしても最近多いですね?何故でしょうか?」

 

 

「そんな事は本人達に聞くのが1番よ。藍は橙の面倒を見ていなさい。今夜私は少し出かけるわ」

 

 

「畏まりました。紫様」

 

 

 

紫は藍とその後も少し話をしてから藍の隣に座り、藍と一緒にのんびりと昼寝を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「また向かわせた者達の連絡が途絶えた。これで45人目だ」

 

 

「むぅ、また別の者を向かわせたところで連絡が途絶えるだけだろう」

 

 

 

聖地マリージョアの中枢部の部屋にて、頭に痣のある白い口ひげを蓄えた男、黒い帽子を被った左目付近に傷のある巻き髪の男、長い白髪と長い白髭の男、坊主頭で眼鏡を掛け刀を持った白い着物姿の男、金色の髪と金色の髭の男の計5人の老人達が難しい顔をして話し合っていた。彼等は『五老星』、世界政府の最高権力者である。そんな彼等の悩みの種は中心にあるテーブルにある3枚の資料にあった。

 

 

 

「海軍本部中尉の八雲 紫、その直属の部下で少尉の八雲 藍。そして数日前に突如彼女達と一緒に居る様になった橙と呼ばれる少女・・・3人共何かの実の能力者で前2人は海軍本部でもズバ抜けた戦闘能力を持っていると、しかも何もかも不明とはな」

 

 

「しかし本当に悪魔の実の能力者なのかも疑問だ。資料によると八雲 紫と八雲 藍は普通に水泳訓練に出ている上成績も良いぞ?」

 

 

 

彼等は紫達の事をずっと探っていた。海軍本部の中将達を無傷で倒す実力、悪魔の実ではあり得ない様な能力、自然系(ロギア)の能力者にもダメージを与える不可思議な光の玉や光線など、それだけでも大問題だと言うのに報告書の人種の欄には自分達の知らない『スキマ妖怪』だの『九尾』だのと言う種族なのだ。だから自分達にとって危険か否かを調べようと『CP』と呼ばれる組織を使っているが、向かった全員が消息不明となっている。

 

 

 

「むむむ、少しでも情報を集めるにはどうしたものか・・・もう少し実力がある者を向かわせるか?」

 

 

「それはもうやめて欲しいわね。いちいち弱者の相手をするのは面倒なのよ?」

 

 

「「「「「ッ!!!??」」」」」

 

 

 

突如聞こえた女性の声に5人の老人達は振り向いた。そこには口元を扇子で隠し、5人の様子を見てクスクス笑っている紫がいた。いつから居たのかと5人が警戒しながらも疑問に思っていると、紫は綺麗に一礼した。

 

 

 

「初めまして『五老星』の皆様。海軍本部中尉のスキマ妖怪、八雲 紫よ」

 

 

「八雲 紫、いったい何をしに来た?」

 

 

「ちょっとお願いがあってね・・・・私達を監視するのを止めてくれないかしら?ハッキリ言って鬱陶しいのよ」

 

 

 

紫が先程の笑みを消して妖力を開放しながら睨み付けた。覇気とは違う気迫に五老星と呼ばれる5人は冷や汗を流した。

 

 

 

「もう45人目よ?いい加減このまま続けても意味が無いのを理解しないのかしら?聞きたい事があれば私に直接聞きなさい」

 

 

「・・・・分かった、手を引こう。今直接聞くとしよう。皆もそれで良いな?」

 

 

「仕方あるまい」

 

 

「異議なし」

 

 

「同じく」

 

 

「賛成だ」

 

 

 

頭に痣のある白い口ひげを蓄えた老人が聞くと他の4人は賛成した。もし今拒否したら何をされるか分からない。その後、紫は五老星に質問された事に答えられる範囲で答えた。弾幕やスペルカード、特に能力の事は教えなかった。種族は微妙な所ではあったが、少し誤魔化して説明した。

 

 

 

「最後の質問だ。君達の目的はいったい何かね?」

 

 

「目的?そんなものは無いわ。ただ私はガープに誘われたから入っただけ、私や藍達に危害を加えるようならばすぐに海軍を抜けて海賊にでもなるわ。これには世界政府や海軍、後は天竜人にも言えるから注意なさい」

 

 

 

それは五老星としても防ぎたい。紫が海賊になろうものならどれだけの被害が出るか分からないからだ。しかも天竜人も紫達に何かしたらアウトになるのだから要注意である。紫はしばらく警告した後、見張りを引かせるように釘を刺してからスキマへと消えて行った。残された五老星達は冷や汗を流しながら紫達には手を出さないように決定し、見張りをすぐに引かせた。

紫はスキマの中からその様子を見て満足そうにしていた。

 

 

 

「これで大丈夫ね。警告はしたし、彼等もバカではないから手は出さないでしょう・・・天竜人はどうかは知らないけれど、手を出して来たら手始めに天竜人を世界中に散り散りに送ってやるわ」

 

 

 

紫はスキマを開いて海軍基地にあった寝室のベッドに入り込み、眠りに就いた。




皆様どうも☆桜椛★です。
私用により2月28日辺りまで活動を休ませて頂きます。誠に勝手ですがお許し下さいませ。

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