大海原に転生してスキマ妖怪   作:☆桜椛★

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スキマ妖怪の休暇兼妖怪探し

五老星に警告しに行った夜からちょうど2週間後、ようやく海軍本部から代わりの責任者がやって来た。一度挨拶をしたけどちゃんとした真面目な大佐さんだったわ。それから町の住民達に別れの挨拶を済ませて乗って来た補給船で海軍本部に戻って来たわ。別れる時に町の住民達から色々お土産を貰って、橙はお魚を貰って大喜びになって可愛かったわぁ♪

 

 

 

「ほぇ〜〜。ここが藍しゃま達がお仕事している海軍本部ですか?」

 

 

「あぁ、そうだぞ橙。そしてお前の新しい仕事場でもある。安心しろ、いきなり書類仕事なんかはさせない。まずは実力を磨かねばならないからな」

 

 

「まぁ橙は物覚えが良いからね。その内に大佐クラスは簡単に倒せるようになるわよ。じゃ、コング元帥の所に行きましょうか」

 

 

 

私と藍は基地をキョロキョロ見回して目を輝かせる橙に笑い掛けながらコング元帥の部屋に向かった。この時間帯ならば机に向かって終わりが見えない書類の山を整理している筈だわ。そして海軍本部でも橙の人気は高い様で、通り過ぎる海兵達が橙に向かって笑みを浮かべて手を振っていた。橙はそれに可愛らしく笑いながら敬礼で返しながら私と藍の後をトコトコ付いて来た。

 

 

 

「コング元帥〜?私だけど、今いいかしら?」

 

 

「む?その声は紫か?いいぞ。ちょうど一休みしようとした所だ」

 

 

 

目的地に到着し、紫はコング元帥の許可を得てから部屋の中に入った。中ではコング元帥がいつも通りに書類の山を机に置き、今は湯呑みのお茶を飲んでいる。

 

 

 

「今帰ったわ。また凄い量の書類ね?」

 

 

「今回は紫が居なかったからガープがこれ幸いと逃げまくったからな。ところで、紫と藍の後ろにいるその猫耳の女の子は誰だ?」

 

 

「今回はその件で来たのよ。橙、この人はコング元帥。立場上仕事場では私の上司よ。コング元帥、この子は橙。向こうに滞在している間に仲間にした藍の直属の部下よ」

 

 

 

橙は紫の紹介に表情を固くしながらも敬礼しながら挨拶した。仕事場での上司と聞いて慌てて態度を改めた様である。

 

 

 

「は、初めましてです!藍しゃまの式になった橙と申します!よろしくお願いします!!」

 

 

「ほぉ、初めましてだな。私はここ、海軍本部で元帥をしているコングだ。こちらこそよろしく。・・・・紫よ、本当にこんな小さな子が藍の部下になったのか?」

 

 

「実力としては大佐クラスかしらね?まぁまだまだ育つでしょう。それに彼女は貴方が思っているより数倍は年上よ?」

 

 

「・・・・・・それは彼女も『妖怪』と言う事か?」

 

 

 

コング元帥は橙を観察しながら紫に質問した。まだコング元帥には話していない筈だが、おそらく五老星から紫達の事を聞いたのだろう。

 

 

 

「五老星達から聞いたのね?正解よコング元帥」

 

 

「普通ならば動物系(ゾオン)の悪魔の実の能力者にしか見えないがなぁ?まぁそれは藍や紫にも言える事ではあるが・・・・おぉ!そうだ、紫。お前さんに伝える事があったんだった」

 

 

「私に?いったい何かしら?」

 

 

 

いつもならば『頼み事』なのに、『伝える事』があると言われて紫が首を傾げる。コング元帥は机の引き出しを開けて中から数枚の書類を取り出し、真面目そうな顔で口を開いた。

 

 

 

「八雲 紫中尉。貴女を今日から大佐に任命する。この書類を書いて後日私の所に持って来なさい」

 

 

「え?いきなり大佐?そんな事をして大丈夫なの?」

 

 

 

突然の昇格に紫は表には出していないが内心かなり驚いていた。しかし紫が海軍に来てから挙げてきた功績を考えると納得は出来る。ガープや未来の三大将を無傷で勝利し、頼めば渡した手配書の海賊を4つ程はその日の内に壊滅し、書類仕事も藍が来てから効率はかなり上がった。つい先日も海軍基地で新しく着任する大佐が来るまで基地の責任者として仕事を完璧にこなしていた。そのお陰か部下達からの信頼も多少集まり、コング元帥としても早く昇格させて仕事を手伝って欲しいと考えていた。

 

 

 

「もうお前さんは本部の海兵達にも認められておるし、ガープを無傷で勝利する実力者をいつまでも中尉止まりというのもな・・・・・それに早く大将クラスになって仕事を手伝って欲しいし」

 

 

「聞こえてるわよ?絶対最後のそれが一番の理由よね?」

 

 

 

最後にボソッと呟いたコング元帥の本音に紫は呆れた。

いや、まぁ気持ちは分かる。確かに私だってあんなに仕事をサボる上司は前世でも見た事がないし?最近胃薬を買っているところをスキマから偶々見つけたからそろそろ限界だったのかしらねぇ。それにちょうど頼みたい事あったし。

 

 

 

「仕方ないわねぇ・・・喜んで大佐にならせて頂きますわ。仕事が大変なら連絡をくれれば手伝ってあげるわ」

 

 

「本当かね!?いやぁ助かる。最近またガープの奴が逃げ出して仕事が溜まりまくっていてなぁ」

 

 

「でしょうね。ただ条件があるわ」

 

 

 

「条件?」と、コング元帥は紫の言葉に首を傾げる。紫は頷きながら藍と橙をチラリと見てから条件を言った。

 

 

 

「しばらくの間私と藍と橙に休暇をくれないかしら?」

 

 

「休暇を?別に構わないが・・・何か理由があるのかね?」

 

 

「ちょっと私が気に入る部下が欲しいから島々を巡ろうと思ってね。用があったら電伝虫で連絡しなさい」

 

 

「ふむ・・・・分かった。だが1週間にしてくれ、近々大きな仕事があるからな」

 

 

「大きな仕事ねぇ?了解したわ。じゃあねコング元帥。藍、橙、行くわよ」

 

 

「はい、分かりました。ではコング元帥。私達はこれで・・・」

 

 

「さよならです!コングのおじしゃま!」

 

 

 

紫達は紫が開いたスキマに入って部屋を出て行った。スキマに入る時橙がコング元帥に可愛らしい笑顔で手を振り、コング元帥はニコリと笑いながら手を振り返した。紫のスキマが閉じ、部屋に残されたコング元帥はフゥと息を吐き一言。

 

 

 

「・・・・・・可愛い」

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、紫達は仲間探しと言う名の旅行に行くための準備を終え、手始めに別名『水の都』と呼ばれる造船が盛んな島であるウォーターセブンにスキマを使って訪れていた。しかしまだ海列車と言う海の上にある線路を走る蒸気機関車がまだ開発されていない為、あまり活気が良いとは思えない。しかし橙は初めて見る物が多い為、紫と藍からあまり離れないように気を付けながらもあちこち走り回ったりしている。

 

 

 

「藍しゃま藍しゃま!ここがウォーターセブンですか?」

 

 

「そうだぞ橙。あぁ、あまり私と紫様から離れるんじゃないぞ?この島は入り組んでいるから迷子になってしまうぞ。一応すぐに見つけられるが迷子にならない方がいい」

 

 

「はい藍しゃま!・・・あ!あそこに変なお魚?みたいなのがボートを引いてますよ?あれはなんですか?」

 

 

 

橙は元気よく返事をしたが、偶々近くの水路を通った『ブル』を見つけて駆け寄って行った。紫と藍はやれやれと顔を見合わせて橙の後を追った。橙は馬の様な顔をしたブルを見つめて2本ある猫の尻尾を左右にフリフリ振っていた。

あらあら、橙ったらそんなにブルが珍しいのかしら・・・・いやこれはブルを獲物として見てるわね。目が獲物を狙う獣の目になってるし、ブルが橙を見てどんどん離れて行くもの。

 

 

 

「あ〜〜・・・お魚が行っちゃいました。美味しそうだったのに」

 

 

「橙、橙。あれは食べたらダメだ。あれはこの島の交通手段なのだ」

 

 

「交通手段ですか?確かに人を乗せていましたけど」

 

 

「この島にはあちこちに水路があって、その水路をあのブルが引くボートに乗って移動するのよ。後、食べるならあそこにあるみずみず肉にしなさい」

 

 

 

紫は軽く橙に説明しながら扇子を沢山の肉を吊るしている出店に向けた。橙は藍と一緒にその店に行き、みずみず肉を1つだけ買って戻って来た。紫は近くにあったベンチに座り、戻って来た橙は紫の右側。藍は左側に座った。橙は初めて見るみずみず肉をじっくり観察してからかぶり付き、その美味しさに目を輝かせていた。その間も紫は周囲を見渡しながら東方キャラらしき人物を探していた。しかし簡単に見つかる筈もなく、東方キャラどころか女性1人見当たらなかった。

 

 

 

「むぅ・・・やっぱりそう簡単には見つからないわねぇ。この島にいるかもあまり分からないから仕方ないけれど」

 

 

「紫様、本当に妖怪が13人程居るんですか?」

 

 

「えぇ、それは確かよ?ただ何の妖怪かは分からないけどね」

 

 

 

藍の質問に紫は日傘をクルクル回しながら答えた。東方projectのキャラクター達は皆珍しい服を着用しているから早く見つけられると思ったのだが、よくよく考えればこの世界はONE PIECEの世界である。珍しい服を着た住民はあちこちにいるから返って見つけ難い。地道に探すしかないかと紫がフゥと溜め息を吐いている間に橙はみずみず肉を完食してしまった。

 

 

 

「ふにゃ〜・・・柔らかくて美味しかったです〜♪」

 

 

「そうか、それは良かった。よし橙、今晩は紫様が教えて下さった寿司を食べさせてやろう」

 

 

「お寿司ですか!?ありがとうございます藍しゃま!!」

 

 

「藍、あまり甘くしたらダメよ?それに今回の休暇は私の部下集めだから忘れちゃダメよ?」

 

 

「わ、分かっていますよ。・・・・やはり式神にするのですか?」

 

 

 

藍が話を逸らそうとそんな事を聞いてきた。紫としては式神にする事は考えていない。理由は大きく分けて2つある。1つ目は東方projectのキャラクターとして自分・・・八雲 紫の式神は藍と橙のみにしたいと言う個人的な理由。2つ目は式神を顕現させられる数の上限である。原作はどうかは知らないが、この世界では力の強い式神を顕現させられる数は2人までなのだ。既に藍と橙を顕現させている為、今紫に出せるのは伝達用の小鳥の式神だけなのだ。しかし藍は能力でその制限が無い様なので、紫にそんな事を聞いたのだろう。紫は藍に理由を説明し、藍はそれを聞いて成る程と頷いた。

 

 

 

「成る程、私の能力はそういった欠点を無くせたのですね」

 

 

「式神関連のみだけどね。まぁ藍がその人達を式神にして顕現させるって手もあるけど、式神にするには対象以上の実力と妖力、または霊力か神力が必要だし、何より陣と対象の同意が必要だから出来る可能性は低いわ。流石に貴女の能力でも式神にする為の絶対条件は無くせないはずよ?」

 

 

「仕方ありませんね。しかしどうやって探しますか?式神を使うにしても容姿が分からなければ意味がありませんよ?」

 

 

「そうねぇ・・・・この島の噂を探りましょうか」

 

 

「噂・・・ですか?」

 

 

 

藍は眠くなってウトウトしている橙をおんぶしながら立ち上がって歩き始めた紫を追いつつ聞き返した。

 

 

 

「そう、噂よ。私達妖怪には人間には理解出来ない現象を起こす。どんなに上手く隠そうにも必ずどこかでバレる。自分の知らない内に能力を使ってしまったりすると尚更ね。だったら『この島に悪魔の実の能力者はいませんか?』なんて聞いたりすれば何かしらの返答はあるでしょう?」

 

 

「確かにそうですね。ではあそこで酒を飲んでいる者に聞きましょう」

 

 

 

藍が空いた片手で指差した先には道端に座り込んで大きな紙を見ながら酒をグビグビ飲む体の大きな魚人がいた。お腹が大きく出ていて、白い髭を生やしており、紙を見ながら難しい顔をしている。紫は悩んでいる様なのでやめておこうと藍に言おうとしたが、既に藍は彼に話しかけていた。

 

 

 

「すまない。少々聞きたい事があるのだがよろしいだろうか?」

 

 

「む?なんだ?道にでも迷ったのか?」

 

 

「いや違う。この辺りで悪魔の実の能力者の噂は何かないか?」

 

 

「噂ぁ?たっはっはっは!!妙な事を聞く嬢ちゃんだなぁ?よっしゃ、話してやるまぁ座れ」

 

 

 

何故か話が進んだ事に苦笑しながら魚人に言われた通り紫はスキマから椅子を2つ取り出して座った。魚人はスキマを見てギョッとしたがすぐに興味深い物を見たと眺めたりした。

 

 

 

「ほぉ〜?おもしれぇ能力だな。お前さんも能力者か?」

 

 

「えぇ、そうよ。それで?何か噂はないかしら?」

 

 

「おぉ!そうだった!悪魔の実の能力者の噂だったな?今この島には2人の能力者がいる。なんの実かは知らねぇがな。2人共女で、片方は緑の帽子に青い服を着てデカいリュックを背負っていて、残りは白い服と帽子に錨を背負った怪力女らしい。あった事はねぇがな!たっはははははは!!」

 

 

 

紫はその特徴に思い当たるキャラがいて内心ガッツポーズを取った。緑の帽子にリュックや白い服に錨とくれば自分が知っているのは2人しか知らない。

 

 

 

「その子達はどこにいるのかしら?」

 

 

「ん?確か街外れにある今は使われていない造船ドックだ。あそこで2人でいるのをよく見かけるらしい」

 

 

「そう。ありがとう親切な魚人さん。そう言えば貴方は何か悩みでもあるの?難しい顔をしていたけど?」

 

 

「あぁ、ちょいと新しい船の動力源をどうするかで行き詰まっててな」

 

 

 

魚人は先程見ていた紙を紫達に見せた。紙はどうやら設計図の様だが、建物でも船でもない全く別の物の設計図だった。藍は頭に疑問符を浮かべていたが、紫は少し驚きながら設計図を見ていた。

 

 

 

「驚いたわね。これ蒸気機関車の設計図じゃない?少し間違っている部分があるけれど」

 

 

「ッ!!?お、お前さん!これに似た設計図を知っとるのか!?しかも今『間違っている部分がある』と言っとったな!?頼む!その部分だけでも教えてくれんか!!?」

 

 

「え?え、えぇ。いいわよ?先ずはこの部分だけど・・・・」

 

 

 

紫はあまりの迫力に少し引きながらも、魚人に設計図で間違っている部分を教えて行った。蒸気機の知識なんかあまり無いが、八雲 紫の頭脳を持ってすれば間違い箇所は直ぐに分かる。全ての間違い箇所を教え、ついでに訂正し終わると魚人は大喜びで紫の手を握った。

 

 

 

「いや〜助かった!どおりで動かない訳だ。直ぐにでも作り直さにゃあ!ありがとうよ嬢ちゃん達!」

 

 

「教えてもらった礼よ。私は八雲 紫。寝ているのが橙で、背負っているのが藍よ。貴方の名前は?」

 

 

「おっと、うっかりしとった。儂は船大工のトムじゃ!悪いが早速これを作りたいから儂は帰る!本当にありがとうよ!」

 

 

 

魚人はトムと名乗ると手を振りながら走り去って行った。紫と藍はそれを見送り、トムの姿が見えなくなった頃に噂の造船ドックに向かった。

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