大海原に転生してスキマ妖怪   作:☆桜椛★

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スキマ妖怪と河童と舟幽霊

トムと言う魚人と別れてから道行く人に噂の造船ドックの場所を聞きながらしばらく歩き続けていると、人気の無い古びた造船ドックに到着した。かなり広いドックで、海軍の軍艦を一気に2隻は並べて作る事が出来そうだ。しかしやはり設備は使われていないからかクレーンも錆びきっており、入り口にある立ち入り禁止の看板もボロボロになって時もロクに読めない。藍が道中親切なおばちゃんに描いてもらった地図を確認する。

 

 

 

「紫様。この造船ドックが噂の場所で間違い無い様です。しかしその2人の妖怪はいったい何故この様な場所にいるのでしょうか?」

 

 

「私にも流石に分からないわ。でも『水が有り得ない動きをしていた』、『白服の女が近くにいると水難事故が必ず起きる』、『島に突然砲弾を撃ってきた海賊船が女が手を向けると大渦巻きに呑まれて消えた』などの噂からして、相手は水を操る能力者と分かるわ。となると、誰も近寄らないこの場所で能力の練習をしているんじゃないかしら?」

 

 

 

紫は首を傾げる藍と背負われて寝ている橙を連れて造船ドックに足を踏み入れた。あちこちに廃材や鉄屑、更には穴が空いた小船、錆び付いた工具が散乱しているが、あまり歩き辛いわけではない。スピィ〜と寝息をたてる橙を背負った藍と日傘を差してクルクル回している紫は誰かいないかとキョロキョロ見回しながら造船ドックを進んで行く。しばらく歩いていると、金槌の音と2人の女性の声が聞こえて来た。紫と藍は顔を見合わせて頷き、声のする方へ近付いて行った。そこには噂の特徴を全て兼ね備えた2人の少女が楽しそうに話しをしていた。

 

 

 

「こんにちわ。貴女達がウォーターセブンの噂の2人組かしら?」

 

 

「ひゅい!?び、びっくりした。なんだ人間か・・・脅かさないでおくれよ。見ない顔だね?私は河城 にとり!発明家で舟大工だよ!」

 

 

 

紫が声を掛けると金槌を持った少女が個性的な悲鳴をあげて振り、ホッと息を吐きながらも自己紹介をした。ウェーブのかかった外ハネが特徴的な青髪を、赤い珠がいくつも付いた数珠のようなアクセサリーでもみあげ部分を垂らしたツインテールにして、緑のキャスケットを被っていて、 瞳の色は青色。白いブラウスに、肩の部分にポケットが付いている水色の半袖の上着、そして裾に大量のポケットが付いた濃い青色のスカートを着用している。 靴は長靴のようなものを履いており、胸元には紐で固定された鍵が付き、背中にはかなり巨大なリュックを背負っていた。彼女は河城 にとり。東方Projectのキャラクターで、光学迷彩やら発明出来るエンジニアの河童だ。

 

 

 

「初めまして。私は八雲 紫。海軍本部で大佐をしているわ。後ろにいるのは私の部下の八雲 藍。寝ているのは橙よ」

 

 

「へぇ〜?海軍本部の大佐かぁ。私は村沙 水蜜。もしかしてあんた達も世界政府から命令されて私達を捕らえに来たの?」

 

 

 

紫が海軍本部の大佐だと知ると、にとりはサササッと距離を取る。紫が引かれた事に少し傷付いていると、もう1人の少女が紫を睨みつけながら警戒しだした。ウェーブのかかった黒のショートヘアー。サイドヘアーの長さは耳が見えるくらい短く、目は青緑色の瞳。 服は半袖の水兵服で、下には水兵服に合わせたデザインの膝上までの穿き物を穿いており、その形はキュロットスカート。服装は、白の布地に青緑色の縁取りがされており、青緑の生地には各所それぞれに3本の白いラインが引かれている。 頭には、普通の帽子よりもかなり小さい船長帽を被っており、帽子の前面に黒色の錨マークがワンポイントにあしらわれている。後は腰辺りに底の抜けた柄杓を付け、身の丈以上もある大きな錨を軽々と持っている。彼女は村沙 水蜜。東方Projectのキャラクターで、『聖輦船』と呼ばれる船を操る舟幽霊である。

 

 

 

「捕らえる?いえ、私はこの島で貴女達の噂を聞いて仲間にしたいなぁと考えて会いに来ただけよ?」

 

 

「・・・・はぁ?あんた、海軍でしょ?いつもなら無理やり捕まえようとして来るじゃない」

 

 

「え?貴女達なんか犯罪じみたことやったの?」

 

 

「いや、してないけどさ・・・・ねぇ、あんた達世界政府から何か命令されたりした?」

 

 

 

紫が村沙の言葉に首を傾げていると、その様子を見て村沙が錨を地面に刺し、頭をポリポリ掻きながらそんなことを聞いてきた。紫は視線で藍に何か知っているかと尋ねるが、彼女も知らない為首を横に振った。

 

 

 

「いいえ。そんな命令は聞いた事ないわ。私達は休暇中で、観光ついでに同族探しをしに来たのよ。そしたら貴女達がいた訳。貴女達も自分が他の人間とは違うのを自覚しているわよね?例えば・・・・もう何百年も生きているとか、悪魔の実を食べていないのに能力を使えるとか」

 

 

「ッ!!?もしかして・・・・あんた達も人間じゃないの?」

 

 

「正解よ。ついでに言うと貴女達の本当の種族も知っているわ。立ち話もなんだし、お茶でも飲みながらお話をしましょうか」

 

 

 

紫はスキマを開いて海軍本部の自分達の執務室から椅子とテーブルを取り出し、ついでにガープが飲もうとしていたお茶が入った急須と湯飲みを人数分取り寄せた。突然空間が裂けてテーブルや椅子が出て来た事に村沙は驚愕し、にとりは何故かスキマを興味深く観察しだした。藍は自分で開いたスキマからソファーを取り寄せて橙を寝かし、自分は橙に膝枕をしてあげた。

 

 

 

「うわぁ!!何コレ何コレ!?目が沢山あるし、中から椅子やテーブルが出て来たよ!?村沙!見て見て!!」

 

 

「見たわよにとり。分かったから落ち着いて」

 

 

「ふふふ♪コレはスキマと言って私の能力の応用よ。こうやって遠くから物とかを取り寄せたり、別の場所に一瞬で移動出来るわ。さぁ、座って。お話をしましょう」

 

 

 

村沙はコクリと頷いてにとりを捕まえて椅子に座らせ。自分も椅子に座った。紫は湯呑みにお茶を入れてにとりと村沙に差し出した。2人は恐る恐るそれを飲んだが、特に何も入っていないのを確認すると普通に飲み始めた。

 

 

 

「さて、改めて自己紹介するわ。私は八雲 紫。こう見えて数百年生きているスキマ妖怪よ。ソファーに座っている狐の尻尾を9本生やしているのは九尾の藍。寝ているのが化け猫の橙よ。私達は妖怪と呼ばれる種族なの。そして、貴女達2人もね」

 

 

「ブッ!?す、数百年!?私でも120年ぐらいだよ!?」

 

 

「じゃあ私とにとりもその・・・妖怪?って種族なの?」

 

 

「えぇ、にとりは河童と呼ばれる妖怪で、貴女は舟幽霊って言う妖怪よ」

 

 

「じゃ、じゃあさ。私が水を思い通りに操れるのも私が河童?だからなの?」

 

 

「ッ!!私の周りで舟が転覆したり、人が溺れたりし続けるのも!!?」

 

 

 

にとりと村沙は自分の能力について聞き出した。紫は村沙の反応に疑問を持ちながらもコクリと頷いて答えた。

 

 

 

「そう。私達妖怪にはそれぞれ違う能力を持っているわ。にとりの能力は『水を操る程度の能力』。村沙の能力は『水難事故を引き起こす程度の能力』ね。貴女達2人の能力は能力者や海賊達の天敵ね」

 

 

「そうなんだ。・・・・ねぇ、私のその能力って操作出来ないの?」

 

 

「?さっきから妙な反応するわね。以前何かあったのかしら?」

 

 

 

紫の指摘に村沙はビクッと肩を震わせ、ポツリポツリと理由を話し始めた。村沙は120年以上前からこのウォーターセブンでひっそりと暮らしていたが、自分が近くにいると、海賊海軍一般市民問わず水路で溺れ死んだり舟が転覆するなどの水難事故が起きていたらしい。更にはつい1ヶ月前に海賊達が島に砲撃して来た為、島の住民を守ろうと海賊船に沈めと念じ、海賊船を大渦巻きに飲み込ませたが、多数の住民達にそれを目撃されてしまい、化け物と呼ばれるようになったようだ。更には世界政府が村沙の力を手に入れようと役人や海軍の大佐達がやって来た為、海軍大佐の紫達を警戒したとのこと。因みににとりとは100年以上の付き合いらしい。

 

 

 

「そう・・・・そう言う事だったの」

 

 

 

紫はコトリと手に持っていた湯呑みをテーブルに置いた。村沙は目に涙を溜めており、にとりはそんな村沙の背中をさすっていた。離れた場所にあるソファーに座りながら聞いていた藍も耳をシュンと垂れさせている。紫はそんな村沙に寄り添いながら元気付ける様に答えた。

 

 

 

「大丈夫よ。貴女の能力は貴女自身が意識する事で自由に操作出来る。船に乗って敵の船だけを沈める事が出来るし、自分が乗った船を水難事故に遭わせない事だって出来る筈よ」

 

 

「ほ、本当!?本当に出来るのか!?」

 

 

「えぇ、ただ練習は必須よ?貴女が本気でその力をモノにしようと考えているなら私達も協力するわ」

 

 

「良かったね村沙!!その能力をどうにか出来るなら村沙の好きな船に乗れるじゃん!!」

 

 

 

村沙はパァッと太陽の様な顔をして喜び、にとりは村沙に抱きついて自分の事の様にはしゃぎ始めた。

成る程、村沙は舟幽霊だけど船が好きなのね。今まで自分が無意識に能力を使っていたから好きな船に乗りたくても沈んでしまっていた訳か。確かに好きな事が出来る様になると分かればこんないい笑顔を見せるわね。

紫は喜ぶ2人を微笑ましく思いながら自分達の本来の目的を果たす為に口を開いた。

 

 

 

「ねぇ村沙・・・にとりもだけど、貴女達私達と来ないかしら?」

 

 

「?それって私達が海軍に入るって事?」

 

 

「まぁ結果的にはそうなるわね。ただ私が信頼出来る仲間として来て欲しいのよ。妖怪と言っても私達全員を含めて世界で16人程しかいないから」

 

 

「「え〝っ!!?」」

 

 

 

紫の言葉ににとりと村沙は石化した様に固まってしまった。別に紫がメロメロの実と言う悪魔の実を食べた訳ではない。単純に紫の言葉に驚愕したからだ。紫自身も説明するのを忘れていた為、妖怪とはなんなのかなどの説明をした。

 

 

 

「・・・・と、こう言う訳よ。理解出来たかしら?」

 

 

「世界に立った16人程度・・・・なんか絵本に出てくる勇者みたいだね」

 

 

「私としてはこの能力をどうにか出来ればそれでいいから仲間になってもいいよ。その代わりちゃんと私の能力を扱う練習に協力してよ?」

 

 

「もちろんよ♪にとりはどうするのかしら?」

 

 

「村沙が仲間になるなら私もなるよ!あ、そうだ。ねぇ、えっと・・・紫でいいかな?紫のあのスキマってやつも能力なんだよね?なんて能力なの?」

 

 

 

にとりが紫に興味津々な顔で聞いて来た。紫は一瞬どうしようかと悩んだ。しかし仲間になってくれると言ってくれているし、何よりこれから仲間になるのに自分の能力を隠して相手の能力だけ知っているのは人・・・人?として不公平に思った為、紫は自分の能力とついでに藍と橙の能力を説明した。藍と橙の能力は兎も角、紫の能力を聞いたにとりと村沙は化け物を見たかの様に数メートル程身を引いた。

酷くないかしら!!?

 

 

 

「それより紫様。いったいどうやって村沙の能力の練習をするのですか?」

 

 

「そんな事って・・・・・・まぁいいわ。練習に関してだけど、にとりが協力すればすぐに上達すると思うわ」

 

 

「え?私?」

 

 

 

いきなり呼ばれたにとりは自分を指差しながら首を傾げる。紫はその様子を見てクスクス笑う。

 

 

 

「ふふっ♪可愛い反応するのね。えぇ貴女よ。訓練方法は至って簡単。ただ船を沈めたりそのまま沈めなかったりを繰り返すのよ。能力は体で覚えた方が効率がいいから。でも一般の漁船などを使うわけにはいかないし、海賊船でしようにもそう都合よく海賊は見つからないわ」

 

 

「それと私となんの関係があるの?」

 

 

「大いにあるわ。要は船が沢山あればいいの。貴女の技術力ならこの造船ドックのガラクタを使って簡単なボートぐらい簡単に作れるでしょう?」

 

 

「あ、あぁ〜〜。成る程そう言う事か。うん!そう言う事なら任せて!・・・ッ!?ゴホッ!ゴホッ!・・・む、村沙の為に一肌脱ぐよ♪」

 

 

 

にとりはドンッと自分の胸を叩いて咳き込みながらニカッと笑った。村沙と紫と藍は苦しそうにしているにとりを心配するが、にとりは足早に近くの廃材の山に近付き、いったいどこから出したのかわからないが、両手に金槌と鋸を握りしめ、背負ったリュックから2本のマジックハンドが伸びて来た。にとりはニシシと笑いながら金槌を慣れた手つきでクルクル回しながら村沙に向かって「10分で作るからちょっと待っててね」と言ってから目にも留まらぬ速さで工具を操って船を作り始めた。その器用さは紫も目を見開く程だった。仕事柄海軍の新兵器の実験を見に行くガープの付き添い(と言う名のお守り)をする際、何十人もの人間がテキパキと作業をしているのを見た事があるが、これは次元が違う。しかも確かに小船だが、キチンとマストと大砲なんか積んでいる。あっという間に10分は過ぎ去り、フゥと息を吐くにとりの後ろには何百単位程の小船が列を成していた。紫と藍は口をポカンと開いて驚いており、村沙は相変わらずの友人の技術力に笑顔を引きつらせていた。

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