大海原に転生してスキマ妖怪   作:☆桜椛★

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スキマ妖怪が海軍に勧誘?

「んで?なんで俺が一緒に行く羽目になっちまったんですか?」

 

 

新世界のとある海域、そこを真っ直ぐ進む海軍の軍艦5隻。その先頭を行く軍艦の甲板に海軍のマントを羽織った長身の男性・・・ヒエヒエの実の氷結人間であるクザン中将が怠そうに隣で煎餅をかじりながら愉快そうに笑う老兵・・・海軍の英雄と呼ばれる男、モンキー・D・ガープをジト目で問うも、ガープは気にした様子もなく笑う。

 

 

 

「ぶあっはっはっはっは!!気にするなクザン!儂は昔からあの島にいる亡霊に興味があったんじゃ!今からそこに行けるとなると楽しみじゃわい!!」

 

 

「そんなんだからセンゴクさん達にガープさんのお守りを任されたんでしょうねぇ・・・・言っときますけど、本当に亡霊って奴が島に居て、出会ったとしても、あった瞬間に殴りかからないで下さいよ?」

 

 

「えぇぇぇぇぇぇ〜〜〜・・・・・・」

 

 

「殴りかかること前提で調査希望したんですか?はぁ・・だから俺はガープさんのお守りを任されたんだなぁ」

 

 

 

これまでにない程残念そうな顔になるガープにクザンは溜息をついて頭をかいた。本当はコング元帥や他の海兵達もガープが行くのを渋っていたが、予定が空いているのはガープぐらいで、仕方なく許可を出したが、やはり心配だったからか仕事をサボる癖があるクザンにガープのお守りを命じたのである。

そんな2人の下に海兵が1人駆け寄って来て、敬礼をしてから報告する。

 

 

 

「ガープ中将!クザン中将!もう間も無く目的地である亡霊島に到着します!」

 

 

「あ?あぁ、ご苦労さん。ほらガープさん、もうすぐ着きますよ?」

 

 

「おぉ!いよいよか!?楽しみじゃのう!ぶあっはっはっはっは!!」

 

 

 

ガープの笑い声が響く中、5隻の軍艦は目的地である亡霊島を目指して海を渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ、マジかよこりゃぁ?」

 

 

「ほ〜れクザン!いよいよ亡霊が実在する線が出て来たぞ?」

 

 

 

亡霊島の海岸に軍艦を寄せて錨を下ろし、改めて周囲を見回しクザンは背中に嫌な汗が流れる。ここに来るまで数多の無人になった海賊船が並んでいたのだ。真新しい億越え海賊団の海賊旗を掲げた無人の海賊船から、まるで何百年も前から放置されているかの様にボロボロになっている海賊船もあった。更にその中にはまるで何かが貫通した様な跡があちこちにある海賊船や、何か鋭い刃物の様な物で切り裂いたかの様に細切れになっている海賊船、そして最早原型を留めていない程に大破している船まであった。部下の海兵達も不気味がり、手に持つ銃や剣を強く握りしめる。

 

 

 

「さぁて、噂の亡霊とやらはどんな奴なのかのう?血が滾るわい!ぶあっはっはっはっはっはっは!!!」

 

 

「滾らなくていいっスよ。本当に居るかもわからないんだから」

 

 

「そんな事は島を調べればいいじゃろう?ほれ!ボケっとしとると置いて行くぞ!?」

 

 

「ちょっと待って下さいよ!あんたの面倒見ないと俺がセンゴクさん達に怒られるんですよ!?」

 

 

 

いつもより一層愉快そうに笑いながら森の中を歩み続けるガープにクザンと部下の海兵達が慌てて追いかけて行った。森の中には錆びついた剣や刀、銃などの武器がそこら中に転がっており、ガープ以外の者は警戒するが、同時に死体や白骨死体が無いのにより一層不気味さを感じていた。

 

 

 

「なんで武器だけ放置してあって死体が無いんだ?」

 

 

「そりゃおめぇ、獣か亡霊が食っちまんたんじゃないか?」

 

 

「いやいやいや、そんな怖い事言わんで下さいよガープさん」

 

 

「そうよ。私を人間を好んで食べる人喰い妖怪なんかと一緒にしないでほしいわ」

 

 

「ほら、言われてますよガープさ・・・・ん?・・・・」

 

 

 

呆れ顔だったクザンどころか周りを警戒していた海兵達、更には先程まで豪快に笑っていたガープまでもが凍りついた様に固まった。自分達は部下を含めても決して女性海兵なんかいない。ならば今クザンに同意した声は・・・・いったい誰の声だったのだろうか?

 

 

 

「ガ、ガープさん?悪い冗談はやめて下さいよ?」

 

 

「いや、今のは儂じゃない。儂が女の声真似できると思うのか?」

 

 

 

見聞色の覇気で周囲を探っても人の気配どころか獣の気配すらない。部下の海兵達も周囲を見渡して居るが誰も居ない。ガープは拳を握りしめ、クザンはヒエヒエの実の能力をいつでも発動出来るように片腕に氷を纏わせる。すると今度はハッキリと女性の声が聞こえた。

 

 

 

「あら?悪魔の実の能力者だったのね?氷の能力だから・・・・ヒエヒエの実の氷結人間ってところかしら?」

 

 

「「「・・・・・・・・ッ!!?」」」

 

 

 

その場にいた誰もが声のする方を向いた。しかし、そこは普通ありえない場所だった。声がしたのは自分達が警戒していた方向の背後。つまり、海兵達のど真ん中から聞こえたのだ。全員が振り返るとそこには珍しい服を着て日傘を差した綺麗な容姿の少女だった。

 

 

 

「初めましてね。私は八雲 紫よ。よろしくね?」

 

 

 

彼女・・紫はクスクス笑いながら自己紹介をする。だが誰も自己紹介なんてしないだろう。こんな怪しい女に習って自己紹介するのは余程の能天気か・・・

 

 

 

「おぉ!儂はモンキー・D・ガープ!海兵じゃ!!」

 

 

「「「「中将ぉぉぉぉぉーー!!!?」」」」

 

 

 

海軍の英雄だった。紫はそんな海兵達やガープを見てクスクス笑いながら眺めている。

 

 

 

「あら、礼儀正しいのね?それで?海兵で中将である貴方達はこの島に何の用かしら?礼儀のなっていない連中と同じ事・・・・じゃないわよね?」

 

 

「実はのう、儂らは数百年前から海賊達が消息不明になっとるこの島を調べに来たんじゃ。それでお前さん・・・紫とか言ったか。その礼儀のなっていない連中とやらにこんな奴らはおらんかったか?」

 

 

 

ガープは懐から消息不明になった海賊達の手配書の束を取り出し、紫に手渡した。紫はそれを受け取りパラパラと確認して行く。普通の人間らしいその素ぶりに海兵達は少しだけ警戒を緩めた。

 

 

 

「あぁ、この人達よ。特にこの男、確か6日程前にこの島に来て財宝寄越せだの私を犯して奴隷として売り払うだの言い出していきなり襲いかかって来たからから全員返り討ちにしてやったわ。今頃海の底で魚の餌になっている筈よ」

 

 

 

前言撤回。もの凄く警戒した。『海の底で魚の餌になってるって何!?』とその場にいた海兵達は心の中で突っ込みを入れるが、ガープはそうかそうかと笑いながら返された手配書を放り捨てた。

 

 

 

「おぉそうじゃ!!1つ聞きたい事があった!噂の亡霊島で財宝を守っていると言われている亡霊ってお前さんの事か?」

 

 

「・・・・よく間違われているのだけれど確かにそれは私よ?でも財宝は持っていても守ってないし、私は亡霊じゃなくてスキマ妖怪よ」

 

 

「ん?ちょっと待ってくれ嬢ちゃん。噂はもう何百年も前からあるものだ。嬢ちゃんはその子孫って事でいいのか?」

 

 

 

今まで黙っていたクザンがおかしいと思って質問する。紫はどこから見ても人間の少女だ。それに『スキマ妖怪』と言う単語は聞いた事がなかった。だが紫は日傘をクルクル回しながらクザンの言葉を否定した。

 

 

 

「いいえ?数百年前からこの島にいるのは私1人よ。こんな見た目でも貴方達の何倍も生きているわ」

 

 

「ほう!やはりお前さんが噂の亡霊じゃったか!?どうじゃ!?いっちょ手合わせせんか!?」

 

 

唖然としているクザン達を差し置いてガープは嬉しそうに手合わせを求める。紫は少し考えてからクスリと笑う。

 

 

 

「えぇ、いいわよ?なんなら貴方達全員対私1人でも結構よ?」

 

 

「・・・・オイオイ嬢ちゃん。それは幾ら何でも無謀なんじゃないの?」

 

 

 

紫の言葉に少しクザンはムッとした。海軍の英雄ガープと自分を相手取るどころか、部下達も相手にすると言うのだ。ダラけた生活をしている自分にも海兵としてのプライドがある。そんなクザンの視線を紫はにっこりと笑いながら・・・

 

 

 

「えぇ・・・・・・何処からでも掛かってらっしゃい?」

 

 

「(ゾクッ!!)ッ!!?アイス(ブロック)両棘矛(パルチザン)!!」

 

 

 

クザンは覇王色の覇気や殺気とは何処か違う恐ろしい気配を感じ取り、反射的に能力で作った氷の両棘矛を5本紫に向けて放った。だがそれは紫に当たる直前に紫がスキマに入った事で地面に刺さった。

 

 

 

「ッ!?悪魔の実の能力者だったのか!?」

 

 

「残念。違うわよ?」

 

 

 

スキマに驚いているクザンの頭上から紫の声が聞こえクザンは上を見上げる。そこにはフワフワと宙に浮く紫が悪戯が成功した子供の様に口元を扇子で隠しながら笑っていた。

 

 

 

「私はスキマ妖怪。そんじょそこらの亡霊や海賊とは違うわよ?スペルカード!結界『夢と現の呪』!」

 

 

「なっ!?グハァッ!!?」

 

 

 

紫から放たれた弾幕に驚いているうちに1発だけクザンに命中する。だが同時に驚きもした。何故自然系(ロギア)の悪魔の実を食べた自分にダメージが入るのかと。武装色の覇気かと思ったが少し違う。クザンは慌てて氷の壁を作り身を守るが、部下の海兵達は何とか弾幕を躱そうとする奮闘するも、あまりの数に避けきれず命中してしまい、気を失っていた。

 

 

 

「なかなか妙な技を使うようじゃのう!クザンにダメージを与えるとは思わなかったわい!さぁて!今度はこっちから行くぞ!!」

 

 

 

ガープは上手く弾幕を避けながら紫に近付き自慢の武装色の覇気を纏わせた拳骨を喰らわせようとする。何とか紫に接近したガープを見てクザンは『決まった!』と自分達の勝利を確信した。山すら粉々にする海軍の英雄の放つ拳骨だ。数百年生きていようがスキマ妖怪とか言うものだろうが大ダメージは確実だと思った。

 

 

 

「あらあらあら。危ないわね。・・・・フッ!!!」

ドゴンッ!!!!

 

 

「なっ!!?」

 

 

「ほぉ!?まさかこれを防ぐとはのう!!」

 

 

 

だがガープの拳は紫の持っていた束ねられた日傘によって防がれてしまった。しばらく日傘とガープの拳骨との攻防が繰り広げられたが、最終的には空を飛んでいる紫がガープを吹っ飛ばした。しかしそんな事になりながらもガープは愉快そうに笑いながら紫にある提案をする。

 

 

 

「ぶあっはっはっはっは!!やるのう紫!会った時から只者ではないと思っとったが、儂の拳骨を防ぐとはのう!!どうじゃ?お前さん海軍に入らんか?」

 

 

「女性に日傘でぶたれて笑いながら海軍に勧誘するのはどうかと思うのだけれど・・・・そうねぇ?もうそろそろこの島に居るのも飽きてきたし・・その話、乗ってあげようかしら?」

 

 

「おぉ!!そりゃ良かったわい!!じゃが今更この勝負を投げ捨てるつもりはないぞ?おいクザン!いつまでボケッとしとるんじゃ!?早く勝負の続きをするぞ!!」

 

 

「ちょ!?マジで勘弁して下さいよガープさん!!ガープさんの拳骨を防いだ挙句ぶっ飛ばすような化け物とやりあいたくないっスよ!!」

 

 

「じゃ、お2人とも頑張ってね。後そこのモサモサ頭の能力者さん?死なないように頑張ってちょうだい?スペルカード!廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!」

 

 

 

それから数時間もの間、紫対ガープとクザンの戦闘は続き、最終的には日傘を差して口元を扇子で隠し、クスクス笑いながら立っている紫と、ボロボロになって気絶しているガープと頭に大量のたんこぶを作って倒れているクザンの姿があった。

 

 

「ふふふ♪なかなか楽しかったわよ?これからよろしくね?強い強い海兵さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

紫side・・・

 

 

 

私は今ガープ達が乗って来た軍艦の医務室にお邪魔してガープ達に回復術を掛けている。これは所謂妖術と呼ばれるものよ。最初は傷だらけのガープ達を見て船番していた海兵達にもの凄く警戒されたけど、私がガープに勧誘されて海軍に入る事を説明するとボガードと言う名の刀を持った海兵が『またか』と言った顔になり、他の海兵達に気絶しているガープ達を医務室に運ぶように命じた。しかし驚いたわ。もう原作知識は麦わら帽子の青年が海賊になる程度しか覚えていなかったけれど、ガープの名前を聞いて思い出したわ。隣にいた悪魔の実の能力者は将来の海軍大将『青雉』ね。あ、何で私がクザンにダメージを負わせられたかなのだけれど、実は私の妖力には武装色の覇気って呼ばれるものと同じ様な効果があるみたいなのよ。以前自然系(ロギア)悪魔の実を食べた能力者が島に来た時に初めて知ったのよね。

 

 

 

「・・・・む?ここはどこじゃ?」

 

 

「あら?思ったより早く起きたわね。ここは軍艦の医務室よ。そのまま自分の名前まで忘れていないかしら?」

 

 

「む!?おぉ!!紫か!?お前さんが軍艦に乗っとると言うことは海軍に入るんじゃな!!?」

 

 

「あれだけボロボロにして起きたばっかりなのによく元気ね?まぁそうよ。ちょうどあの島に居るのも飽きてきていたし。この際だから海軍に入ってみようと思ってね?」

 

 

 

私の話を聞いてガープは嬉しそうに笑う。因みにあの島にあった私の私物及び海賊達から没収した財宝の山は一部を除き全て海軍に寄付してあげたわ。残りの一部は私が頂いたわ。流石に無一文で居るのは嫌だったしね。

 

 

 

「・・・・グッ!イツツ・・・あらら、かなりやられちまったなぁ。こりゃぁ」

 

 

「あら、貴方も起きたのね。そのまま永眠しておけば良かったのに」

 

 

「なんで俺だけ当たりが強いんですかねぇ!!?」

 

 

「自分の胸に聞いてみなさいカチコチ男」

 

 

 

だってそうじゃない。確かに私はスキマ妖怪だけどあんな凶暴なゴリラを見た様な目で『化け物』って普通言う?妖怪でも前世から立派な女性なのよ?

その後私は傷だらけの海兵達に回復術を掛け、クザンのには故意で激痛が走る失敗作だった術を掛けてやったわ。ふふふ♪ざまぁ見なさい。


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