大海原に転生してスキマ妖怪   作:☆桜椛★

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スキマ妖怪、四皇に遭遇す

私は可愛らしく胸を張るこいしをしばらく撫で続けた後、少し離れた所で呆然とこちらを見ている幽香と勇儀に警戒を解くように言い、2人に彼女の説明をした。その時何故自分達がこいしに気付かなかったのかを幽香が質問して来たが、彼女の能力・・・『無意識を操る程度の能力』を説明すると「成る程ね」と頷きながら納得してくれた。後はこいしと私達は互いに自己紹介をしたわね。あぁ、それとその日は時間的に次の島には間に合わない為スキマからテントやハンモックなんかを取り寄せて島に泊まり、翌日の早朝に島を出たわ。で、そのこいしなのだけれど・・・

 

 

 

「フン♪フフン♪フフン♪フフ〜〜ン♪」

 

 

「あぁ、ちょっとこいし。あまり揺れないでちょうだい。そんなに揺れていると落としちゃうわよ?て言うかなんで私に負ぶさるのよ?」

 

 

「ん〜〜?なんとなく〜〜♪」

 

 

「あらあら、すっかり懐かれてるわね。紫?」

 

 

「あはははは♪まるで母親と娘の様だねぇ」

 

 

 

何故か私に滅茶苦茶懐いており、島を飛び立ってから私の背中に負ぶさって呑気に鼻歌を歌っているのよね。

自己紹介を終えた後、紫はいつも通り仲間にならないかと勧誘を行なったのだが、こいしは喜びながら承諾したのである。物凄く嬉しそうにしていた為気になって紫が何故そんなにも嬉しそうにしているのかと聞いてみると、紫が能力発動中に自分を見つけた初めての妖怪だったかららしい。

 

 

 

「ねぇ〜ねぇ〜紫お姉ちゃん。どこに向かっているの?」

 

 

「あぁ、ちょっと待ってちょうだい。えぇ〜〜っと次の島は・・・・『クライガナ島』って言う島ね」

 

 

「その島なら前に行った事があるわ。でもまるで戦場跡地みたいな場所だったわよ?街もボロボロになっていたし、死体とかも転がっていたわ。人間には1人も会わなかったわ。猿は居たけど」

 

 

「え?そうなの?大きな街らしいから料理とかちょっと期待してたのに・・・残念ねぇ」

 

 

 

幽香の話を聞いて紫はちょっとだけ残念そうな顔をした。こいしは紫の真似をして「ざんね〜ん♪」と楽しそうに言っている。勇儀も相変わらず酒を楽しみにしていたのかかなりションボリとしていた。

 

 

 

「ま、どの道クライガナ島には行くわよ。私の勘だけど、その島に1人は妖怪が住み着いていそうだわ」

 

 

「どうして?幽香お姉さんの話だととても住み着きそうにはないと思うけど」

 

 

「妖怪の中にはそう言った死体だらけの場所を好む者もいるのよ。死体を食べたり、その死体から出た魂を食べたりする妖怪もいるし、その死体の魂が怨霊などになったりもするのよ」

 

 

 

疑問を口にするこいしに紫は優しく説明する。こいしはどこぞの人喰い妖怪の様に「そ〜なのか〜」と気の抜ける様な返事をすると今度は紫達より上空にある雲をボーッと見つめ始めた。紫はどこでその話し方を覚えたのかちょっと気になっていると、幽香が話し掛けてきた。

 

 

 

「あら?ねぇ紫、勇儀どこに行ったか知らない?」

 

 

「え?そう言えばさっきからずっと黙っていたわね。どこに行ったのかしら?」

 

 

 

紫が後ろを振り向くと、そこには一緒に飛んでいた勇儀の姿はあらず、その場で滞空している幽香しか居なかった。

 

 

 

「全くもう。勇儀って方向音痴か何かだったかしら?ちょっと勇儀〜〜!!どこにいるの〜〜!!?」

 

 

「ふみゅ?勇儀お姉さん?それならあそこの船に向かって飛んで行ったよ」

 

 

「「船?」」

 

 

 

こいしは少し離れた場所に見える船を指差し、紫と幽香もその船を視認した。しかし視認した船を見て紫は思わず額に手を当てて天を仰ぎ、幽香はまるで獲物を見つけた猛獣の様な目付きをしながらニヤリと笑った。

 

 

 

「あのバカ鬼は・・・はぁ、仕方ないわねぇ」

 

 

 

こいしが指差した先にあった1隻の船。それは船首が白鯨を象っている海賊船だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【白ひげ】エドワード・ニューゲート。かつて【海賊王】ゴール・D・ロジャーと唯一互角に渡り合った世界最強の海賊である。更には四皇と呼ばれる海の皇帝の一角で、グラグラの実と呼ばれる悪魔の実を食べた振動人間だ。身長は常人の数倍はあり、まるで三日月の様な白い髭を生やした大男。そんな彼は現在、突然自身の海賊船、『モビー・ディック号』にやって来た女性と酒を飲んで居た。

 

 

 

「グラララララ!!まさか空から降って来るとは思わなかったぜ?勇儀ぃ」

 

 

「ゴクッゴクッゴクッ・・・ぷはぁ!!いや〜最近知り合った仲間に空を飛ぶ方法を教えてもらってねぇ♪ほんと、便利だよねぇ♪あっはっはっ!!」

 

 

「グラララララ!!・・・ん?どうした息子達。何武器構えてやがる。戦闘訓練か何かか?」

 

 

「「「「「いやなんでそこの化け物と仲良く酒飲んでんだよ親父ぃ!!?」」」」」

 

 

 

まるで久々に再会した親友と酒を交わしているかの様な2人の周り・・・主に勇儀の周りには銃や刀などを構えた白ひげ海賊団の海賊達がおり、呑気に笑っている白ひげに揃ってツッコミを入れた。白ひげは自分の仲間達を息子や娘と呼び、仲間達も皆親父と呼んで慕っている。仲間を本当の家族の様に思っている白ひげは、何よりも自分の仲間の死を許さない。もし仲間が海軍に捕らえられて処刑されそうになったり、海賊や賞金稼ぎに殺されたりすると、最悪その加害者がいる島が海図から消える。そんな白ひげの愛しの息子達の内の1人、何処と無くパイナップルを連想させる頭の男性、白ひげ海賊団1番隊隊長【不死鳥】マルコが勇儀を警戒しながら前に出た。

 

 

 

「おい勇儀って言ったかよい。お前、うちの親父になんの用だよい。まさか親父を殺そうなんてふざけた考えじゃあるめぇよい」

 

 

「殺すぅ〜?な〜に言ってんだい!私は偶々昔喧嘩した人間を見つけたから酒を一緒に飲もうと思って来ただけだよ♪」

 

 

「あの時は楽しかった。まさか俺が女に負けるたぁ思わなかった。しかも角みてぇな物が生えた人間にだ。久々に血が滾ったぜ。見ろ、オメェに貫かれた拳の跡。あの時はマジで死んだと思ったもんだ。グラララ♪」

 

 

 

白ひげは懐かしそうに勇儀と出会った時を思い出しながら笑った。新人の船員は自分達の親父が負けたと笑いながら言っている事に驚いていた。冗談だろと思った矢先に白ひげ自身が見せた腹にある大きな傷跡を見せた事で信じるしかなかった。

 

 

 

「あぁ、そうそう!私ねぇ、人間じゃなかったんだよぉ。鬼って言う喧嘩と酒が大好きで嘘を嫌う種族らしいよ」

 

 

「ホォ?あの馬鹿力は只の人間じゃねぇとは思っていたが、まさか本物の鬼に会えるたぁ、世界も狭いもんだ」

 

 

「ありゃ?鬼を知っているのかい?物知りな人間だねぇ♪あ〜はっはっはっブフォッ!!?」

 

 

「何勝手に居なくなって世界最強の海賊と酒飲んでんのよ貴女は!!」

 

 

 

勇儀が笑っていると彼女の背後にスキマが開き、上半身を出した紫が妖力を纏わせた日傘を脳天に叩き付けた。勇儀は口に含んでいた酒を吹き出し、叩かれた頭を抑えながら悶絶する。それを見て白ひげ海賊団の船員達は勿論、勇儀と酒を飲んでいた白ひげも目を細めた。

 

 

 

「おいおい、何者だオメェ?人が折角久々に再会した鬼と酒を飲んでる時に随分なご挨拶じゃねぇか」

 

 

「あらあら、それはごめんなさいねぇ。初めまして世界最強の海賊、【白ひげ】エドワード・ニューゲートさん。私は海軍で大佐をやっている八雲 紫と申します。以後お見知り置きを・・・あぁ、別に貴方方とやり合うつもりは全く無いわ。そこの酒飲みバカを引き取りに来ただけですもの」

 

 

 

紫が海軍大佐だと聞いて船員達は紫に武器を向けたが、紫自身は口元を扇子で隠しながらクスクス笑い、スキマの上に座って全く気にした様子はない。マルコや他の隊長達や船員達はその様子を見て一層警戒心を上げたが、それは勇儀に止められた。

 

 

 

「あ〜〜、止めときなお前さん達。私ともう1人の妖怪と喧嘩して勝利したんだ。エドワードならまだしもお前さん達は相手にならないよ」

 

 

「ホォ?見た瞬間から只の海兵じゃねぇと思ってはいたが、勇儀に勝つってこたぁ、俺でも勝てねぇかもしれねぇな」

 

 

「ふふふ♪四皇の一角にそう言って貰えるとは光栄ですわ。それともう一度言うけれど、今は休暇を貰っているから貴方方と戦う気は無いわ。だから武器を下ろしてくださる?・・・まぁ期待はしませんが」

 

 

 

紫は勇儀に勝ったと聞いて更に警戒心と緊張感を高めたマルコ達を見て武器を下ろしてもらう事を諦めた。そもそもスキマと言う得体の知れない物から出て来た海軍大佐を名乗る人物が戦う気は無いと言っても海賊が「はいそうですか」と警戒を解くのは少々無理がある。それが手練れの海賊ならば尚更だ。紫が腰掛けていたスキマからピョンッと降りたちょうどその時、少し遅れて幽香が降りて来た。

 

 

 

「ちょっと紫。貴女だけ先に行くなんて酷いじゃない。私、悲しみのあまり貴女にマスタースパークを撃ち込んでしまうかも知れないわよ?」

 

 

「お!幽香も来たね♪エドワード、こいつは幽香。私と紫と一緒に喧嘩した妖怪だよ!!」

 

 

「おいおい、オメェの喧嘩仲間ってのは化け物ばっかりなのか?」

 

 

「あら?貴方もしかして白ひげ?あぁ、あの海賊旗のマークどこかで見た事あると思ったら、白ひげ海賊団の旗印だったのね。初めまして、風見 幽香よ」

 

 

「あぁ、俺ァエドワード・ニューゲート。白ひげだぁ。勇儀と・・・紫って言ったな?その2人と喧嘩したんだって?よくやるなぁ、おい。グラララララララ♪」

 

 

 

幽香の挨拶に特徴的な笑い声を上げながら返す白ひげを見てマルコ達も警戒し続けるのがバカらしくなり、武器を収めた。

 

 

 

「はぁ・・・おい、紫と幽香だったな?お前等うちの親父に手を出したらただじゃおかねぇから覚えてろよい」

 

 

「大丈夫だよ!紫お姉ちゃんと幽香お姉さんはとっても優しいんだよ。今朝の朝ご飯のお菜私に分けてくれたもん!」

 

 

「だからって海軍の大佐とあの化け物と殺り合った奴だよい。警戒しない方が難しいよい」

 

 

「しかしとんでもねぇ女共が居たもんだなぁ!!おい!ゼハハハハハ!!」

 

 

 

黒い髭を生やして頭にバンダナを巻いた男・・・マーシャル・D・ティーチは紫と幽香、そして勇儀を見ながら愉快そうに笑った。

 

 

 

「プププッ!おかしな笑い方〜♪それにちょっと太ってる!ちゃんとダイエットしないとダメだよ?」

 

 

「うるせぇ!!笑い方は兎も角太ってるは余計だ!よくいるだろ!運動出来るけど腹筋割れてねぇ奴!!」

 

 

「いや、ティーチ。お前確かに数日前より腹出てるぞ?ちょいと食う量減らした方がいいんじゃねぇか?」

 

 

「オメェもかよサッチ隊長!!ったく2人揃って俺の腹をバカにしやが・・・っておい、最初に俺を笑ったのは誰だ?」

 

 

 

ティーチは茶色のリーゼントをした4番隊隊長のサッチに向かって怒りの声を上げるが、途中で疑問を口にした。それを聞いてマルコもさっき自分と会話した聞き覚えのない少女の声は誰のものかと気付いて手に青い炎を纏わせた。ティーチも鉤爪を手に装着し、サッチも2本の剣に手を掛けた。周囲の仲間達はいきなり戦闘態勢に入った3人に驚いて距離をとった。3人が声の主を探していると、紫が3人の方を見てクスリと笑いながら口を開いた。

 

 

 

「こらこら、こいし。いきなり人の頭の上に立っちゃダメよ?初対面の人に失礼じゃない」

 

 

「えぇ〜〜?私はちゃんと甲板に立ってるよ〜?・・・ってあれ?おじさんなんで私の下にいるの?そう言う趣味?」

 

 

「ん?オワァオイ!!?い、いつの間に俺の頭に乗ってヘブシッ!!?」

 

 

「もぉー!!女の子の下着を覗くのは・・・えっと、チキンなんだよ!」

 

 

「こいし、それはチキンじゃないわ。痴漢(ちかん)と言うのよ」

 

 

 

無意識の内にティーチの頭の上で両手を上に上げて片脚立ちをしていたこいしが上を向こうとしたティーチの頭を力一杯踏んで飛び降り、プンプンと可愛らしく怒りながら頭にタンコブが出来ているティーチに注意する。マルコ達は紫達が現れた時のように武器を向けようとしていたが、現れたのが可愛らしく怒っている少女だった為すぐにやめた。可愛いは正義である。

 

 

 

「あん?なんだその小娘。いつからそこにいやがった?」

 

 

「あぁ、あの子は古明地 こいし。彼女なら私がここに来た時に一緒に居たわよ」

 

 

「ッ!?全く気付かなかったな。今改めて見ると確かにそこに居るのに居ないような奴だ。俺の見聞色の覇気にも引っ掛からねぇってのは大したもんだ」

 

 

 

素直な感想を述べる白ひげにこいしは両手を腰に当てながら胸を張って「エッヘン!」と言っている。だが次の瞬間1人を除いたその場の全員がこいしを見失った。因みにその1人は紫。彼女は何故かは自分にも良く分かっていないが、初めてこいしを視認してからこいしを見失う事がなくなったのだ。今度はティーチの鉤爪を取って眺めているこいしを微笑ましく眺めてから紫は勇儀に向き直った。

 

 

 

「さて、勇儀。明後日には休暇を終えてまた仕事しないといけないんだから、早く次の島に行くわよ!文句は受け付けないわ」

 

 

「え゛ぇ゛!!?ままま待っておくれよ紫!!まだエドワードと酒を飲み始めて30分も経っちゃいないよ!?」

 

 

「ダメよ。それにさっきも言った通り、もう休暇が残り少ないのよ。だから早く島に着きたいのよ。それに白ひげに迷惑が掛かるでしょう?」

 

 

 

紫は白ひげの方を見ながらそう言う。紫の視線に気付いた白ひげは「気にしなくていい」と言って酒を煽る。

 

 

 

「ングッングッぷはぁ。別に迷惑じゃねぇよ。俺も久々に勇儀と酒を飲み合いたいのさ。なんなら迎えに来るまで船に置いてやってもいいぞ?グラララ♪」

 

 

「・・・・はぁ、仕方ないわねぇ。じゃあ勇儀。後で迎えに来るから迷惑掛けちゃダメよ?」

 

 

「分かってるよ紫!!エドワードもありがとね♪少しの間世話になるよ」

 

 

「グラララララララ♪気にするな。喧嘩し、酒を飲み会った仲だろう」

 

 

「じゃあ頼みますわ。白ひげさん。幽香、こいし、行くわよ」

 

 

「えぇ、分かったわ」

 

 

「は〜〜い!紫お姉ちゃん♪」

 

 

「おう、任せておけ。グラララ♪」

 

 

 

紫が声を掛けて空を飛ぶと少し遅れて幽香とこいしが追って来た。背後から聞こえて来る世界最強の海賊と鬼の笑い声を聞きながら、3人は次の島・・・クライガナ島を目指して飛んで行った。


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