???side・・・
「・・・・うぅ・・・ん?こ、ここは?」
私はなんで寝て・・・そうだ。確か釣りをしに海岸に出たら海賊に見つかって。捕まりそうな時に足元に穴が出来て落ちたんだ。
「となると、この妙な空間はあの穴の中になるのか?」
「あら?目が覚めたのね。具合はどうかしら?」
私が慌てて起き上がり振り返るとそこには私と同い年位の金髪の綺麗な少女が微笑みながら座っていた。よく見ると私の体には包帯が巻かれており、布団の中で私は寝ていたようだ。
「お前が・・・助けてくれたのか?」
「正解よ。私は八雲 紫。貴女と同じ妖怪よ」
彼女はニッコリ笑いながら答えてくれた。しかし妖怪とはなんなのだ?私は確かに人間ではないが妖怪と言う単語は聞いた事がない。
「すまない。えっと・・・紫殿か?その妖怪とはなんなのだ?」
「あら?知らなかったの?妖怪って言うのは簡単に言えば不可思議な現象を起こす非科学的な存在の総称よ。貴女は『九尾』と呼ばれる狐の妖怪。私はスキマ妖怪よ」
「不可思議な現象を起こす存在?」
「貴女は分かるでしょう?普通の種族より遥かに長い寿命、悪魔の実とは違う能力、普通の人間とは違う力。私もこんな見た目だけど数百年生きた大妖怪よ?」
紫殿はそんな説明をしてくれた。私には思い当たる節があった。普通の人間より数十年生きても変わらない外見。海に浸かっても溺れず使える能力。尻尾が増える度に上がる妙な力。・・・と言うより紫殿は数百年も生きているのか!!?
「思い当たる節があったみたいね。実は貴女に話があるのよ」
紫殿の視線が鋭くなり、私の目を見る。その瞳からは真剣さを感じとれ、私は無意識のうちに背筋を伸ばしていた。
「今妖怪と呼ばれる種族はほとんど居ないのよ。私としては島で暮らして居て襲われた貴女をこのままにするのは心配なの。そこで提案なんだけど・・・貴女、私と来る気はないかしら?」
「え?・・・」
それはどう言う意味だろうか?私は上手く理解出来ずに聞き返した。
「分かりやすく言ったら貴女私の家族にならないかしら?と言う意味よ。悪くないと思うのだけれど嫌ならちゃんとあの島に返すし、その力の使い方を教えてあげるわ。どうする?貴女が決めなさい」
私は目を見開いて固まってしまった。
私は気付いたらあの島にいたのだ。最初は混乱したが直ぐに冷静になり、家や服を作ってはなんとか生活してきた。海賊に襲われてから強くなる為修行をし、自分の不思議な能力に気付いた。傷付いて家に帰っても私はあの島でずっと1人だった。何十年も生きて人にもあったが、私を見れば化け物と呼び、時には銃を撃ってきた。そんな私にこの方は『家族』にならないかと・・・ッ!!
「ちょ!ちょっと!?なんで泣いてるのよ!?そんなに嫌だったの!!?」
私は涙を流しながらいつのまにか紫殿に抱き付いて子供の様に泣いた。紫殿は驚いた顔をしたが直ぐに微笑み、私の頭を撫でてくれた。そのまま私は泣き疲れて眠ってしまった。
★
「スゥ・・スゥ・・スゥ・・」
「寝ちゃったのね?はぁ〜ビックリしたわ。この子が急に抱き付いてきて泣き始めるなんて思わなかったわ」
紫は未だに抱き付いたまま寝ている八雲 藍らしき九尾の少女の頭を撫でていた。撫でる度に彼女の狐耳がピクピク動いて可愛らしい。
それにしても普通見ず知らずの女性にこんな姿は見せないわよね。やっぱり数十年分の記憶があっても生まれたのはほんの少し前だから色々あったんでしょうねぇ。反応からして嫌じゃなかったみたい・・・となると私が家族にならないって言った事が原因かしらね?
紫が思考を巡らしていると少女が目を覚まし、今の状況を確認すると顔を真っ赤にしてあたふたし始めた。なんか可愛い。
「あ、あの!すみません!コレは別にそういう訳では・・・」
「えぇ、分かってるわ。それで?どうするのかしら?」
「・・・・私は島でずっと1人でした。島に来た人間は私を見ると化け物と呼び、武器を向けて来ました。あそこに戻る気はありません。私は貴女に付いて行きます。それが答えです」
「・・・・本当にいいの?自分で言っておいてなんだけど、私今海軍にいて仕事を手伝ってもらう事もあるわよ?」
「今更選択を変える気はありません。これからよろしくお願いします」
紫はその答えを聞いてニコリと笑い、早速式神にする為にスキマ内に陣を書く。紫の妖力を線のように配置する事でより強い陣にしていく。
「あの・・・何をしているのですか?」
「貴女を私の式神・・・ん〜分かりやすくすれば正式な部下にする為の陣よ」
「?それにどんな利点があるので?」
「離れていても会話が出来たり、居場所が分かるようになったり、まぁ詳しい事は後で話すわ」
紫は陣を書き終わり、少女を陣の中心に誘導した。紫は元の位置に戻り、陣に妖力を込めていく。少女に陣から通った紫の妖力が流れ込み、彼女の力が増幅していく。その事に少女が驚いていると、陣は眩い光を発した。
光が治ると、そこには札が沢山付いた2つの尖りがある帽子をかぶり、ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せた服装に変わっていた。
「ふふっ♪大成功ね。どうかしら?えっと・・・・ごめんなさい。貴女の名前を聞いてなかったわ」
「え?あ、名前はありません。出来れば貴女が付けてください。
「あら、名前無かったの?じゃぁ、藍!貴女は今から八雲
「畏まりました。これからよろしくお願いします。紫様」
こうして八雲 紫に新しく式神の八雲 藍と言う
★
「それじゃあ藍に今から式神になった利点を教えるわね」
紫は新しく自分の式神となった藍に式神になった際の利点を話し始めた。今もスキマの中におり、座布団を敷いてちゃぶ台を置き、座布団に座って話をしている。藍も紫を真似て正座している。
「式神になる時の利点は大きく分けて3つあるわ。先ずは離れた所から会話する念話。離れた場所にいても互いにどこにいるか分かる位置把握能力。そしてこれが1番の利点。主人の能力の一部を使用可能にする事よ」
「紫様の能力を・・・ですか?」
藍が不思議そうに首を傾げて紫に質問した。思ったより可愛らしい動作についつい紫も頰が緩む。
「そうよ。使えるのはこのスキマの力。分かりやすく言えば世界のどこにでも行ける空間移動能力よ」
「ッ!!?この空間全てが紫様の能力ですか!?」
「の、一部よ。私の能力を教えてあげる。誰にも言っちゃダメよ?私は『境界を操る程度の能力』を持っているの。昼と夜、生と死、現と幻、静と動、光と闇、色と空、あらゆる境界を操るの。スキマはその能力のおまけみたいなものよ」
藍は紫の能力を聞いて驚愕した。詳しい事はよく分からなかったが、直感的に紫の能力には勝てないと悟った。
「貴女にも能力はあるわよ?藍」
「?私の能力と言いますとこの青い火の玉ですか?」
藍は自分と紫の周囲に青白い宙に浮く炎の塊・・・所謂狐火を漂わせながら質問した。紫は狐火をチョンチョン指で突きながら首を振った。
「貴女の能力は『式神を操る程度の能力』よ。つまり強い力を持った部下を召喚して操る能力よ」
「それは・・・強いんでしょうか?いまいち分かりませんが」
「そうねぇ・・・海軍大将と互角以上の部下を操れると言ったら分かるかしら?」
サラッととんでもない事を言った紫に藍は驚愕の目を向けた。能力についてはおいおい教えていくわと紫は数枚のスペルカードを出現させて藍に見せた。
「紫様?そのカードはなんですか?」
「これはスペルカードと呼ばれる必殺技みたいなものよ。貴女にはこれからこれを幾つか作ってもらうわ。で、弾幕には数種類あって・・・・」
その後紫から妖力や妖術、弾幕などの説明を受けた藍は、紫の指導の下弾幕を使った戦い方やスペルカードの作成に勤しんだ。藍の物分かりはかなり良く、次々と紫の課題をマスターしていき、式神にしてたった数時間でかなり良い動きをするようになった。
「スペルカード!式輝『狐狸妖怪レーザー』!!」
「うんうん、いい感じね。飲み込みが早くて嬉しいわ」
紫は自分狙いに放たれた弾幕の軌跡上からほぼ真横に放たれる左右に飛んだレーザーを躱しながら藍を賞賛していた。
いやぁ、初めて弾幕を撃ってから数時間とは思えないわね。まだまだ弱いけど育てれば化けるわね狐だけに・・・・うん、これはないわ。
プルプルプルプル、プルプルプルプル、・・・・
「あら?電伝虫?何よ今いいところなのに・・・藍、休憩よ」
「はぁ、はぁ、当たらない・・・」
「そう簡単に当たる訳ないでしょう?・・・はいこちら八雲 紫少尉」
『おぉ、紫。すまないが来てくれないか?仕事が入ったがやれる奴がいなくてな』
電伝虫の相手はコング元帥だった。いつもなら引き受けているが今は藍の訓練中で出来ればこのまま一緒にいたい。しかし少尉と元帥じゃ断る訳にはいかない。紫は仕方なく引き受けることにした。紫は電伝虫を片付け藍を呼んだ。
「藍。これから海軍本部に仕事で戻るわ。こっち来なさい」
「ふぅ・・・分かりました。しかし私が行っても良いのですか?」
「まぁ大丈夫でしょう。いざとなれば私が暴れてでも私のそばに置くわ」
紫はニッコリ笑いながらコング元帥の部屋へスキマを開いた。
★
海軍本部がある島マリンフォード。その元帥であるコングの部屋はいつもより多い書類の山が出来ていた。コング元帥がペンや判子を使って書類を片付けていると、突然目の前の空間が裂け、中から海軍のコートを羽織った紫と、9本の狐の尻尾を生やし、紫の一歩後ろに佇んでいる藍が現れた。
「はぁい♪コング元帥来たわよ。今度はなんの仕事かしら?」
「あぁ紫か。実はまたガープが逃げたんだが急ぎの仕事があってな。それでガープの奴を連れて来て欲しいのだ。それが済めば後は自由にしていい。・・・・ところで紫の後ろの女性は誰だ?海兵ではないよな?」
「初めましてコング元帥殿。私は紫様の「娘の八雲 藍よ♪」ちょっと紫様!?何言ってるんですか!?」
「なんだそうか娘か・・娘ぇ?・・・!隠し子かぁ!!?」
紫の冗談にコング元帥は思わず立ち上がって藍を凝視する。藍は顔を真っ赤にしてあたふたし始め、紫はそんな2人の様子を見て口元を扇子で隠してクスクス笑った。
「冗談よコング元帥。彼女は八雲 藍。私の家族よ。今日偶々見つけた島で1人で暮らしていたところ海賊に襲われていたから助けてあげたのよ。私の八雲を名乗っているのは家族になったから。これから彼女には私の部下として海軍に入るわ」
「それはそれで大差ないと思うが・・・ふむ、しかし紫の部下にか?それは構わないが実力は?」
「それなら大丈夫よ。海軍中将1人なら楽勝で勝てるわよ?」
コング元帥は本当に大丈夫だろうかと不安ではあったが、紫に部下が出来る上仕事の効率が上がるのは有難い。流石にすぐ入れる訳にはいかず、訓練兵から始めてもらうが紫の専属の部下にする事には許可を出した。
「ありがとうコング元帥。それじゃガープ中将ね?・・・・はい」
「うわぁ!?ゆ、紫か!?何故儂の居場所がすぐバレるんじゃ!儂はこれから秘蔵の煎餅を食べようとしとったんじゃぞ!!」
紫が開いたスキマに片腕を突っ込んで引っ張ると中からガープ中将がジタバタ暴れながらも出てきた。コング元帥は頭に手を当て、藍はガープを珍獣を見るような目で見ている。
「あの・・・紫様?なんですかその珍獣は?」
「一応私の上司に当たるガープ中将よ。こんなんでも今の藍よりかは強いから注意してね」
「む?なんじゃその娘っ子は?紫程ではないが似たような力を感じるのう。どうじゃ!?儂と手合わせせんか!!?」
「ガープ!!その前にお前に渡した書類を全て終わらして貰うからな!!?」
それからすぐコング元帥とガープの喧嘩が始まり、紫は藍を連れて再びスキマに入り、そこで1日中弾幕ごっこで藍の実戦訓練をしていた。
★
藍が紫の式神になってから早1週間。訓練所にて海兵達相手に100人組手で無双している藍を見ている訓練教官のゼファーの隣にスキマから上半身を出した紫が現れた。
「どうかしら?うちの藍は?なかなか強いでしょう?」
「紫か?強いなんて物じゃない。正直もう100人組手じゃ訓練になっとらん。それに動物系悪魔の実の力かお前みたいな攻撃してきて海兵達がびびりまくってやがる。また鍛え直さなくちゃあな」
紫はその言葉に満足そうに頷いている。
そりゃあ私が直々に訓練の後鍛えているんですもの。これぐらい無双してもらわないと困る。
ちょうど藍が最後の1人を回し蹴りで吹き飛ばした時、紫の視線が険しくなったのをゼファーは見逃さなかった。しかし理由が分からない。先程の蹴りは自分でもいいと思えた一撃だった。戦闘面では藍は今完璧だった。
「あのガキ共・・・ごめんなさいね。悪いけど私はこれで失礼するわ」
紫はゼファーにそう言い残してスキマを開いてとある場所に移動した。そこは先程の訓練場からかなり離れた建物の屋上だ。ここからは双眼鏡を使えば訓練場を見渡せる。そして紫の目の前には黒スーツの男が1人必至になって双眼鏡で何かを探している。
「何を探しているのかしら?人間」
「ッ!!?」
黒スーツの男はバッと振り向き、紫の姿を見つけるとその姿が消えた。いや、消えたと錯覚する程の速度で移動したのだ。しかし紫から見たら欠伸が出る速度。直ぐに男に近付き日傘を叩きつける。男はそのまま吹き飛ばされ、壁にぶつかる前にスキマに呑み込まれた。
「そろそろ動き出すと思ったわ・・・・ねぇ?世界政府の役人さん?」