萌えもん~multi travel~   作:マクドール

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ここはヨシノシティ。花の香り漂う町。


理科系の女-3

 

…水面は揺らがない。

 

 

「釣れないなぁ…」

 

 

私はもう何度目だろうか。釣り糸を引き上げ針に餌を付けてまだ水面に落とす。釣りは今日が初めてだがこの動作にも慣れてしまった。

 

 

今というか…かなり前から私はここヨシノシティの小さな釣り場で釣りをしていた。こんなことをしているのには当然訳がある。

 

 

 

 

水タイプの萌えもんを手に入れたい。

 

 

そう思うようになったのはキキョウ道中の繋がりの洞窟でのイシツブテ戦が原因である。繋がりの洞窟はキキョウへ行くだけなら通る必要は無いが、負けっぱなしではいられない。………絶対倒してやる…!

 

 

…それに将来的にもエレ一匹で戦うのは厳しいものがある。その為エレの弱点である地面タイプに弱点を突くことが出来る水タイプ…と考えた。

 

 

計画が出来れば後は実行だ。私はヨシノの釣り場に赴いた。その際に釣りをしているおじさんがおり、良ければ萌えもんを何体か譲ってくれると言ってくれたが私はそれを拒否した。

 

 

自身の手で釣り上げて、ゲットする。

 

 

そうするべきと考えた。だから簡単な釣り道具を購入し、使い方をおじさんに教わり、釣りを始めた。そして何時間が経っただろうか…。少しおじさんの誘いを断ったのを後悔している。

 

 

「釣れないなぁ…」

 

 

「嬢さん、そう簡単に釣れるものじゃないですよ」

 

 

近くにいるピンク色の服に耳が付いたピンクの被り物をした少女…だろうか?が話しかけてくる。彼女は私と同じく釣糸を水面に垂らしている。この暇な時間の話し相手になってくれるのだろうか。…大歓迎だ。私も少女に言葉を返す。

 

 

「いや、コイキングすら釣れないってどーなのよ…。早く何でもいいから欲しいわー」

 

 

「釣りとは初心者には難しいのですぞ。私も坊主ですー」

 

 

そう言い彼女はこちらを向き微笑む。確かに彼女にも萌えもんが釣れた様な痕跡は無い。すると少女は先程私に釣りのやり方を教えてくれたおじさんを指差す。

 

 

「お嬢さん。欲しいだけならあそこのおじさんから頂けば、よろしいではないですか」

 

 

「…駄目よ。私の手で釣るの!エレもそれを待ってるわ」

 

 

…エレは今頃トレーニングでもしているのだろうか。最初は釣りを見ていたが暫くすると痺れを切らし何処かへ行ってしまった。…それほどに時間が経っているといえる。

 

 

「ほー、頑張って下さいな」

 

 

少女はそう言い視線を私から自身が垂らしている釣糸に戻した。それを見た私も釣糸に目を向けるが掛かってる様子は無い。

 

 

「釣れないなぁ…」

 

 

また引き上げ、餌を付け釣糸を垂らす。それを何回しただろうか。日も暮れてきた。

 

 

そうしているとエレが私の元にやってくる。流石にもう萌えもんセンターに戻った方が良いか。帰り仕度を始めないとね…

 

 

「マスター、どうでしたか?」

 

 

「駄目よ、全然だわ。ごめんなさいね」

 

 

「…大丈夫です!私も先程から練習を重ね瓦割り(仮)を未完成ですが会得しました。これからイシツブテ相手にも…」

 

 

…そう簡単に技が使える訳がない。それは前にエレが言っていたことだ。…今の言葉は私への慰めの言葉なのだろう。

 

 

私が帰り仕度を進める中、エレが釣りをしている少女の方を見てこう言った。

 

 

「ん?…マスター、一匹いるではありませんか。一緒に釣りをするとは随分と仲良く…」

 

 

「…え?」

 

 

「あらら、トレーナーさんの萌えもんさんは見る目がありますな」

 

 

隣の少女がそう話す。帰り支度をする私と違い、彼女は依然として釣糸を垂らしたままだ。エレが少女をじっと見て…呟いた。

 

 

「…恐らくヤドン…ですよね」

 

 

「正解ー。まぁ見れば分かりますな」

 

 

そう言い隣の彼女は笑う。え…?………え?萌えもんだったの?

 

 

「おっとトレーナーさん。坊主じゃ釣りは終えられないでしょ。如何です?」

 

 

頭の中の整理が付かない私に彼女は語りかけてくる。そして私の方に顔を向けて口を開く。

 

 

 

 

 

「丁度餌を欲しがる萌えもんがいますよ」

 

 

「ん?マスターまさかその子はまだ…」

 

 

「…え、えっと貴女はヤドンでえっと…その…ど、どうぞ」

 

 

エレが何か言っているが、私は気持ちの整理が付かないまま片付けた釣竿の釣糸に餌を付け彼女の前に出す。そして彼女がそれを口に入れた。

 

 

「お嬢さん、釣れましたな。いや、マスターと呼んだ方が宜しいかな?」

 

 

彼女は針を吐き出し、自身の釣竿を引き上げる。そこには針も餌も無かった。

 

 

「うちも釣れましたわ。生きの良いトレーナーさんがね」

 

 

彼女は釣り道具…といって竿と糸だけだがそれを素早く纏めていく。そして…

 

 

「では、よろしくー」

 

 

とてとてと彼女は私達の前を歩き、萌えもんセンターに向かう。私は嬉しさと驚きが混ざった表情をしており、エレは呆れと驚きだろうか…そんな表情だ。え、えっと…こういう時は確か…

 

 

「ヤ、ヤドンゲットだぜー!」

 

 

「…えぇ!?マスター、あれはゲットと呼べるのでしょうか!?」

 

 

こうして私はエレからのツッコミを受けながら、先を歩く彼女に追い付こうと釣り場を離れた。




ヤド(ヤドン)
性格:気まぐれ
セーレがヨシノシティにてゲット(?)した萌えもん。人を食ったようなおどけた話し方をする。釣りをしていたことからどうやら一般的なヤドンに比べて知能が高いようだ。ニックネームは萌えもんセンターに戻り、正式に捕獲された際に付けられた。ビジュアルとしてはピンク髪のピンクの服に耳が付いたピンクの被り物をしている。
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