[雑記メモ]
嫌な予感は当たるもんだ。常々そう思う。まぁ良いことより嫌なことの方が印象に残りやすいからそう思うのだろうか。チョウジの研究所に戻った俺に普段ならば自分に無縁な話が耳に入る。…ホロン地方における特殊な磁場の減少、それに伴うデルタ種の減少。今希少な存在になりつつあるデルタ種の保護計画…。…そして研究所の一角、一匹の萌えもんを囲む研究員達。それを見た俺は所長の部屋へと向かう。
[ケイブ]
コンコンコン…
「失礼します」
「…入りな」
俺は所長室のドアを開けて中に入る。中には俺にも見覚えのあるような研究道具、全く見覚えの無い研究道具…どちらも綺麗に整頓され置かれている。
そして室内の椅子に妙齢の白衣を着た女性………所長がいる。
「所長、本日はお話があって参りました…」
「ケイブ研究員、まずはその畏まった口調を止めな。反吐が出る」
俺が話を持ち出す前に所長は俺にそう毒づく。その言葉に俺は一息つき、改めて話を始める。
「そこまで言わなくて良いだろ。所長さん。カリカリし過ぎじゃないのか?」
「で、何の用?…ここに来たんだ。何かあるんだろう?」
俺が畏まった口調を止めたら彼女もいつもの話し方に戻る。俺の小言を無視する性格まで戻ったみたいだ。
「単刀直入に言おうか。今研究所にいる…恐らくデルタ種だろう。あの萌えもんを俺に譲って欲しい」
「…理由は?」
「面白そうなことが起こるからだ。これ以上の理由はいるか?」
「論外だ。それ以下の理由は聞いたこともない」
所長は顔を下げこちらに手を払う。帰れというアピールだろう。まぁこれで納得してもらえるとは微塵にも思ってない。俺は頭の硬い所長なら納得してもらえるだろう本命の話を切り出す。
「ホロン地方にあると言われてる幻の森…その森の一族にデルタ種を返還するためならば?」
「………本当ならば悪い話では無いね。本当なら」
「長い付き合いだろ………な?」
俺は頭をかきながら所長の顔をじっと見る。…それに対して所長は一瞬顔をしかめるが、すぐに普段の表情に戻る。
…こちらからは直接見えないが、机の引き出しを開ける音がする。その音から察するに何かを取り出しているのだろう。
「…ほれ」
彼女は萌えもんボールをこちらに荒っぽく投げてくる。その急な動作に戸惑いつつも俺は慌てて何とかそれを手にする。
「随分と鈍ったんじゃないか、ケイブ研究員」
その様子を見て彼女は笑う。…小馬鹿にしたような笑い方だ。
「それがあのデルタ種の萌えもんボールだ。持ってきな。後…」
彼女は椅子から立ち上りこちらに向かってくる。彼女は俺の前で立ち止まり、俺の胸ポケットに付いている研究員バッジを外した。
「これは預かっておく。この件はあんた個人でやるんだ。そっちの方が性に合ってるだろ?」
「…ああ」
元から研究員なんて柄じゃ無かったんだ。遺跡や洞窟…未知なるものを探る只のマニアなんだからな。
「さっ、行きな。一応健闘を祈るよ」
彼女はそうぶっきらぼうに言い、背を向ける。話は終わりということだろうか。俺が部屋から出ようとするその時…
このバッジは預かっただけだからね。そう言う所長の声が聞こえたのは気のせいだろうか。部屋から出た俺には分からず終いだ。