「虫取り大会?」
「あぁ、そろそろ大会の時期だからね。いつもよりトレーナーも多いと思う」
私がコガネに向かう道中の自然公園内でバトルしたトレーナーさんがそう話す。
私は少し前からトレーナーが多いと思っており彼とのバトルが終わった後に聞いてみるとどうやら後数日後に虫取り大会というイベントがあるようだ。
「君は知らなかったのかい?」
「えぇ…どうもトレーナーの数が多いと思ってました。バトルはこれで何人目かしら…」
「まぁ…僕みたいにバトルや修行目的のトレーナーも来てるかもね」
彼はそう言って笑う。修行目的という点では私もその一人に入るのだろうか。ここ最近のバトルでツヴァイは経験を積み力量…レベルを上げている気がする。実際に修行にはなっているのだろう。
そんなツヴァイが今どうしているかなと思い私は付近の草むらに目を向ける。そこには彼の手持ちであるガーディに噛み付かれ涙目になってるツヴァイがいた。
「ね、ねーちゃん!助けて!」
「がう、がう」
私の視線に気がついたのかツヴァイはこちらに助けを求めてくる。その様子を見て相手のトレーナーは苦笑している。
「あれはあいつにとって友好の証みたいなものなんだ。気を悪くしないで欲しい」
「大丈夫です。さっきのバトルの様な本気の噛み付くとかじゃないみたいですし」
「…君の萌えもんの噛み付くの方が凄かったな。今は形勢逆転してるが」
本当にツヴァイの小柄さからの足回りの生かした引っ掻く、噛み付くでの機動戦で圧倒していた先程とは大きな違いだ。
ここに飛び道具である電気ショックが使えれば…と思うこともあるが、ツヴァイや私の詳細を隠す為だ。基本的に電気技は封印して戦っている。
「がう、がう、お前強い」
「わ、分かったから離してよー…」
彼のガーディはツヴァイに噛み付いたままだ。まぁ悪意は無いようだからいいのだがそろそろツヴァイが可哀想になってきた。
「こら、そろそろ離してやれ。…って今度は僕に噛み付くなよ…戻れ」
相手のトレーナーはガーディを離そうとするがそこからガーディは噛み付き相手を主人に変更。彼はすっと萌えもんボールにガーディを戻した。
「で、君は虫取り大会には出るのかい?」
彼は最初の話題へと話を戻す。そしてツヴァイは私の足元に抱き付いて来た。そんなツヴァイは撫でながら私は返事をする。
「いえ、コガネへ急ぐ旅なので出ないと思います」
「そっか、お互い頑張ろうな!」
彼は爽やかな笑顔でそう答える。こういう真っ直ぐさにエリートトレーナーの片鱗を感じられる。
「ありがとう。じゃ行くわよツヴァイ」
「…うん。あの…ガーディちゃんもバイバイ」
ツヴァイは彼の手の中にある萌えもんボールにそう挨拶した。それを聞いた彼は嬉しそうに笑っている。
「こいつには後で伝えとくよ。ありがとうな」
そして彼と別れ自然公園を後にしようとすると…
「お嬢さん、萌えもんバトルしようぜ!」
…他のトレーナーにまた絡まれる。やはりトレーナーが多いなと思いながら私はツヴァイを繰り出す。コガネへの道中は長そうだ。
~
「にしてもお前がワニノコ…水タイプになつくのは珍しいな」
「がう?」
「いつもは近付かないじゃないか」
「がう、違う」
「え?」
「 あの子、水使わない。だから多分違う」
「そりゃお前が手加減されてるだけだ。あの動きじゃ水技抜きでもボロ負けじゃないか」
「…がう!」
「わっ!悔しいからって僕に噛み付くな…」
~
…先程対戦した彼の悲鳴が聞こえた気がした。