普段がどれ程か分からないが今日は普段以上の人がここにはいるのだろう。
その人々が作り出す人の流れに逆らいながら邪魔にならないように私は端の方を歩いていた。
もう流れから逆走する私に声をかけるトレーナーはいない。そろそろ虫取り大会が始まるのだろうか。私には好都合だった。
………その時後方から凄まじい何かが落ちた音が聞こえる。その音に周りがどよめくのが見ずとも伝わってきた。足元のツヴァイが私に掴まる感触がしたので私は彼女の頭を撫でる。
…その音の方向に私は目を向けるが目の届く範囲には先程から人の流れを形成している自然公園に向かう人混みしか見えない。…私は視線を戻し、ツヴァイに語りかける。
「大丈夫よ、近くじゃないみたい」
「…あ、うん!」
私の言葉にツヴァイはバッと掴んでいた手を慌てて離す。別に怖いなら掴まってていいのに…そう思うが私は口には出さず、別の話題を切り出す。
「そろそろコガネシティよ。着いたら萌えもんセンターで休みましょ」
「うん!」
ツヴァイは返事をしてくれる。コガネに着いて休んだらどうするのだったか…、エンジュで会った男性の話を思い出しながら考えていると町の入り口ゲートに辿り着く。
…ゲートの職員も少し落ち着きが無い様子だ。職員は私がゲート前まで来ると先程の音について聞いてきた。
「外で何かあったのかい?何か凄まじい音がしたけれど…」
落ち着きの無い理由はこれか。ここまで聞こえる音だったということだろう。
「すみません。私にもよく…。でも多分35番道路じゃ何も無いみたいですよ」
「そうか。…虫取り大会直前だからね、何かあったのかな…。一応あっちの警備員と連絡を取ってみるよ。……君はコガネシティに入る方だね。パンフレットはいるかい?」
「…一応お願いします」
そう伝えると職員は私にパンフレットを渡してくる。私はツヴァイにも見える様にしゃがみながら中を少し覗くと主な町の施設について書いてある。…パンフレットの一部にはイベント特集として今日の日付である虫取り大会の特集もある。
「わぁ…」
ツヴァイが目を輝かせながらパンフレットの中身を見ている。…町に着いて落ち着いたら観光もしてあげよう。
…イベント特集の欄を覗くと虫取り大会の数日後…私の目を引くイベントがある。
「あの、これは…」
私はその部分を指差し、職員に話を聞く。すると彼は私が指差した先を見るとこう答える。
「あぁ、虫取り大会の数日後だからね。恐らくこのイベントも多くの人が参加するだろうね。良かったらお嬢さんもどうだい?」
「…考えてみます。ありがとうございます」
私はパンフレットの先程と同じ場所を見る。
…コガネルーキーカップ。
…虫取り大会みたいなお遊びより私の腕試しにはぴったりだ。