開会式の長ったらしい挨拶が終わり、周りのトレーナーが広場から草むらに向かっていく中、私はもう一度周りに目を凝らす。
………やはりいないか。
…彼とこの大会の開始前、開会式の際にも探したが私が求める姿は見つからない。
一方で私をここに連れて来た彼は広場のベンチに腰掛け、何かメモを取っている。
もう探し物には興味を失っている様子の彼に私は苛立ちを隠せず、彼の隣に座り後ろの首筋に手から発生させたサイコカッターを当てる。…するとメモを取る手を止めて私に謝罪をした。
「やー…悪かったって。まさか居ないとは思わなかった」
「ここまで付き合わせといてそれか。…他に当てはあるのか?」
へらへらと笑いながら謝罪する彼にこのまま手を前に動かしてやろうかと考えるが、それではお嬢への手掛りが無くなってしまう。私は自制し、彼に他のお嬢の居場所について問い掛ける。
「このイベントに居ないとなるとなぁ…もうコガネに行っちまったか?多分コガネシティだな、うん」
…コガネシティ。確かここから南の町だったか。彼の連れのアノプスがそう言っていたのを思い出す。とりあえず当てはあるみたいだ。
…どうやらまだ彼には利用価値はありそうだ。私は手を下げ、サイコカッターを納める。
「さて…ここではどうするんだ、ケイブ」
「…特に何も。離れすぎなければ適当に歩き回っていいぞ」
彼は再びメモを取りながら私にそう言った。
「…いいのか、虫萌えもんとやらは。その為の大会なのだろう?」
「別に大会には興味を無いしな。探し物の姫さんが居なかった時点で俺の大会は終わった様なもんだ。…それに虫タイプはあの馬鹿共で充分だ」
彼はペンをメモ帳に走らせながらそう言っている。彼の言う虫タイプの馬鹿とはアイツのことだろう。酷い言われようだ。
「…フッ、アノプスの奴が聞いたら泣くぞ?」
「…お前がそんな心配するようになるとはな、ドライ」
彼はメモを取る手を止め、心底驚いた顔でこちらを見てくる。失礼な奴だ。…このことに関しては心配というより哀れみなのだがな。
「確かに私はお前の手持ちを気遣うとはな。どうでもいいことか」
「…まぁやることが無いなら私もここに居よう、ゆっくりさせて貰うかな」
私はホロンからジョウト…そしてここまでの道を思い出す。…久し振りに体を休めるとするか。不服なのは隣にいるのがお嬢ではなく彼だということか。
~
暫く時間が立ち、虫取り大会の中頃だろうか。…私は席を立つ。
「ん?どうした?」
彼が立ち上がった私に話し掛ける。彼の手にはもう書き終わったのだろうか、メモ帳はなく、ベンチに両手を掛けて情けなくだらけている。
「何でも無い。…体が鈍りそうでな。少し歩き回ってくる」
そう彼に伝え、私は一角の草むらに向かう。
……………
………いい運動になった。私はベンチに戻り、大会終了まで体を休めるのであった。
~
…大会終了後、彼は愚痴を溢す。
「…一番下の参加賞でもトレーナーと萌えもんにモーモーミルクが貰えるんなら適当に何か捕まえれば良かったなぁ…。すまん」
「ケイブさんの馬鹿!何で捕まえないのさ!あーあ、飲みたかったなぁ…」
「………」
参加賞すら貰えない彼にアノプスは喚いているがリリーラはこの争いに我関せずといった感じあり、何故か私を睨み付けている。…私は悪くないぞ。彼が何もしなくて良いと言ったからだ。そう心の中で弁明する。
…それとも別の意味での視線なのだろうか。私にはよく分からない。…その視線を受けながら私は大会を振り返る。
…確か今大会で一番下の参加賞すら貰えないトレーナーは何もせずにいた彼と
ツボツボ連れの少年とエレブー連れの女性しか居なかったな。