「ねぇードラちゃんー。一つ聞きたいんだけどさー」
「ん?何かな?」
つーの質問に対し、僕はコガネシティ詳細のパンフレットから顔をつーに向ける。つーは虫取り大会の途中から機嫌を直してくれたみたいでいつも通りの表情だ。
「大会の時の萌えもん達はさー皆、戻って貰ったんだよねー?」
「うん。流石にあんなに連れていけないからね。一匹くらい捕まえとけば良かったなって思ってるけど」
虫取り大会中に仲良くなったキャタピー、ビードル達の中には付いていきたいという子が数十匹いたが申し訳ないが帰って貰った。
何人かの兄ちゃんと言って付いてきていた彼女達を思い出す。…妹が出来たみたいで可愛いかったなぁ。
「んー、じゃあさー」
「あの隠れてるつもりだろうけど、角出しながら付いてきてるあの萌えもんは何ー?」
そう言ってつーが指差す後ろの建物を見ると………建物の陰から角が出ていた。最初はその光景に驚いたが、角と同じ様に僅かながら見える腕の見覚えのある治療跡でその存在を思い出す。
その存在に覚えのある僕は建物の陰に近付きながら話しかける。その時角がピクッと動く。
「君はあの時はカイロスか!…もう怪我は大丈夫?」
「あ…う、うむ…」
カイロスはいきなり話し掛けた僕に対して少し戸惑いながらも目を伏せつつ答えてくれる。確かに見る限りでは傷は大丈夫そうだ。
「で、どうしたの?ここにいて大丈夫なのかい?」
「あっ、えっと、その…だな…」
「あららー、知り合いー?」
つーもこの萌えもんが知り合いだと知り、安心したのだろう。近寄って来る。
そして戸惑っていたカイロスが顔を上げ、いきなり僕の両手を握ってくる。そして…
「少年、私がお前を助けてやる!」
コガネシティ一帯に聞こえるんじゃないかと思えるような大声でそう言った。
~
「では本日はー、我らパーティに志望して頂きありがとうございますー。まず志望動機の方からお聞かせ下さいー」
あの後、僕とカイロスはつーに引っ張られながら萌えもんセンターの休憩所の一角まで来ていた。
そこでつーは何処から取り出したのか、眼鏡を付けながら椅子に座り、カイロスに問い掛ける。僕はその様子を隣から見ていた。
別に僕は仲間にしても良いんじゃないかと思うが、つーにそう言うと『ドラちゃんは黙って審査官の真似しててー』と言われたので仕方なく黙っている。
「な、何だ?これは…」
「…早く答えろー」
「…む、少年が余りにも情けないものだからな。私の力が必要だろうと思ったのだ」
答えを急かすつーに対しカイロスはそう答えた。確かに力を貸してくれるのは有り難いけど…
「………ほー、では次に貴女の特技をどうぞー」
「特技?…戦闘なら任せてくれ。これでも場数は踏んでいるつもりだ」
「技とかはー?」
「戦い方はこの角と腕力で捩じ伏せる。技は…主なものだと挟む、地球投げ、リベンジ、ハサミギロチンか」
「脳筋かー」
「…何だと?」
つーの言葉にカイロスが怒りを露にする。その様子に嫌な予感がした僕は仲裁に慌てて入る。
「つー、それは失礼じゃないか。…凄いねハサミギロチンとか。頼りになりそうじゃないか」
「むー、悪かったですよー」
「…ふん、見る目はあるようだな少年。しかも私のハサミギロチンは実戦用でな…」
彼女は角を動かしながら生き生きとそう僕に話すが…
「…はいはいー、では結果発表ですよー」
つーに遮られる。カイロスは角を止め、つーの方を渋々だが向き、それを確認したつーが言い放った。
「駄目。認めない」
「「え…?」」
つーらしくもない淡白な回答に思わず声が出る。…どうやらカイロスと同じ様に驚きの声を上げたようだ。
「つー、どうして…「ドラちゃん、もしこの子が嫌々力を貸すって言ってるならどうする?」
「それは…無理にとは言わないけど…」
「なっ、何を言うか!貴様!…」
カイロスが激昂している一方、つーは何時もののんびりした雰囲気ではなく冷たい感じがする。
「何が『力を貸してやる』だってー?つー達はそんなことお願いしてないんだけどー」
「っ…」
つーの言葉にカイロスは言葉が出ないようだ。僕はどうしていいのか分からず、二人を交互に見る。
カイロスが言葉に詰まってるのを見て、つーは息を吐く。
「…まぁ、わざわざここまで付いてきたでしょー?本音を話しなー」
「…っ、だがその…」
カイロスが僕の方を顔を赤くし角を動かしながらチラチラ見てくる。…どうしたのだろうか?
「………ドラちゃんー、ちょっと待っててねー」
「なっ…!」
つーがカイロスの腕を引っ張り外へと出ようとする。そしてそのまま僕を置いて外に出てしまった。
~
つーとカイロスが戻って来るまでどれくらいの時間が立っていたのだろうか。二人は大丈夫なのかという不安で一杯の僕には分からなかった。
そんな二人が戻って来た時に思わず僕は入口の二人へと駆け寄る。そこには目を赤く腫らしたカイロスと呆れ顔のつーがいた。
「つー、お前…何したんだ?」
「…何もー」
「少年…いや、主よ」
その状況に僕がつーに問い詰めているとカイロスが口を開いた。先程再会したように両手を握っている。
「君に私の力を貸そう。君の側にいさせてくれ」
「ん、いいよ」
「…む、随分あっさりだな。主よ」
「まぁ僕は別に仲間になりたいなら良いって思ってたしね。えーと、つーは…」
つーの方を向くと彼女もののんびりした表情でカイロスに了承の意を伝えている。話し方もいつもの感じだ。
「…今の言い方ならごーかく。後これからはつー様と呼ぶようにー」
「…了解した。つー殿」
「むむー、教育が足らんかー」
膨れてカイロスを軽く叩くつーに思わず笑ってしまう。良かった、つーも彼女のことを悪くは思ってなさそうだ。
「ハハハ…、んじゃ捕まえるよ。名前はさっきから考えてたんだ」
「おぉ!名前まで頂けるか。…嬉しいものだ」
カイロスの先程からは考えられない様な柔らかい微笑みに思わず目を逸らす。…そうしているとつーに小突かれる。早くしろってことだろうか。
「…ろすろす、これからよろしく」
僕は名前を呟き、ボールを彼女に当てる。
「…え?ちょ…」
彼女が光に包まれ、ボールが揺れる。…しばらくしてボールの揺れが止まったのを確認してボールを投げる。
「主…ろすろすとは…」
「え、駄目だった…かな?」
一応しっかり考えたんだけどなー、駄目だったかな?ろすろすの方を見ながら聞き返す。…すると彼女は角を動かしながら目を伏せた。
「…し、仕方ない。構わんぞ」
「んー。よろしく、ろすろすー」
つーがニヤニヤしながらろすろすに話す。
…これで僕のパーティに二体目の萌えもんが加わった。
~
「あ、ちょっと待ってねー…まぁ大丈夫…いや、一応チェックだなー」
つーはいきなりろすろすの胸の辺りを凝視する。…何をしているんだ。
「もう一度ろすろすお借りしますー。ドラちゃんはしばらく待っててねー」
そう言ってつーはろすろすを外へと引っ張り出す。先程とは違い、今の場所が入口付近だから外へと出るのもすぐだ。
…少しだけ二人の声が耳に届く。
「見せろー」「つー殿!?」………「これはー?」…「?普段はこうしてるが…」……………「あーこれはー、ろすろすの挟むってそういうことかー」「な…」………
…しばらくすると二人が戻ってくる。ろすろすは赤面しており、つーは飄々としている。そして僕にこう言った。
「ろすろすはやっぱり仲間にするの駄目ねー」
「ええっ!何で!?」
「…ふふー。冗談だよドラちゃんー」
驚く僕に対し、つーが悪戯っぽく笑う。…また一本取られた。僕はそう思った。
ろすろす(カイロス)
性格:意地っ張り
自然公園にて『傷だらけのカイロス』の渾名で有名だった萌えもん。堅物で芯の強い性格であるが、主であるドラへの忠誠心は強い。角に喜怒哀楽がよく出る。ビジュアルは茶髪のショートに角が生えており、体に傷が多く、服装も所々擦り切れた茶色の服。
…つー曰く角以外でも『挟む』が可能なようだ。