見知らぬ大きな建物だ。
俺達はパンフレットを見ながらコガネシティ西側の萌えもんグローバルステーションという大きな建物の前まで足を延ばしていた。どうやらここがコガネルーキーカップの会場………そして目的のお嬢さんがいるであろう場所だ。
「…ここがコガネルーキーカップ会場かぁ。こんな所前来た時は無かったんだがなぁ」
「ケイブさん、それおっさんぽいぜ」
「実際、ぽいじゃなくておっさんだからな」
「…そんなことはどうでもいい。早くお嬢を探さねばな」
そんな他愛もない話をしていると俺の袖を引っ張る存在に気付く。…リリーラだ。
「………」
「お、どうした。…あっちか」
リリーラが見ている方向…大会の受付場前を目で追う。
…いた。
あの服に着られている様な華奢な少女と足元のワニノコが見覚えのある姿だ。…ホロンの姫さんだ。
「リリーラ、よくやったな。おーい、ドライ姫さんがいたぞ………」
俺はリリーラに感謝の言葉を述べながらドライの方を振り向くが………もういない。
ドライはもう姫さんの元に走り出していた。………俺達もそれに続く。
「お嬢!…ご無事で何よりです。ドライで御座います!」
ドライは姫さんの元に着くと膝を付き臣下の礼を取る。…一方、姫さんはその動作と言葉に振り向くと一瞬驚き、そしてドライを抱き締める。近くのワニノコもそれに続き、二人の側に寄る。
「ドライ!どうして…大丈夫だったの!?何でここに…」
「ドライねーちゃん!?…ううっ」
「おい、泣くなツヴァイ。お前もよくやってくれたな…。泣き虫なのは相変わらずか」
「だって………うぅ…」
…どうしようか。話に入れる雰囲気じゃない。少なくとも姫さんにはドライのボールは渡さないといけないんだが…
「…そうだ!お嬢!私のボールを…!おい!ケイブ!」
お、話に加われそうな機会をドライが作ってくれたようだ。俺達のことを考えて…では無さそうだが
俺はドライが入ってたボールを手にしつつ姫さんとその萌えもんの所へ向かう。…姫さんは俺の姿に見覚えがあるのだろう。驚いてはいたが、ドライを見た時よりは驚きが小さい。
「あ、あの貴方はエンジュの…えっと…」
「ケイブだ。只の各地を回ってるおじさんだ。今回は縁があってな…この子をお前さんに渡そうと来た訳だ」
「…ありがとうございます。私は…」
「ホロ。ホロン地方の幻の森の一族…何でこんな所にいるかは知らんがな」
彼女が名乗る前に俺は彼女の詳細を述べる。…そして彼女が何か言おうとする前にドライのボールを彼女の手に手渡す。
「あんたの目的は分からんが…俺の役割は終わりだ。じゃあな」
「えーっ!帰るのケイブさん!ゆっくりしてこーぜ!」
「………」
俺はその場を去ろうとするとアノプスから止められる。…リリーラもこちらを見ているようだ。リリーラは帰りたい側なのか帰りたくない側なのか分からない。
「あ、あの…待ってください!…ケイブさん!」
更に後ろから姫さんにも声を掛けられる。
「あの………私…強くなりたいんです!…よろしければ色々教えて下さい!」
姫さんは俺の正面に回り、深々とお辞儀してくる。…その際には潤んだ瞳も見えた。
………はぁ。
このまま帰るのは流石に大人して駄目な気がする…仕方無い。
「嬢さん、あんたリトルカップに出るんだろ?」
「は、はい。そのつもりです」
「…その間は会場で応援してやる。で、そのバトルを見たら適当に口出ししてやるよ」
「え、えっと…ありがとうございます!…ツヴァイ、ドライ申し込みに行きましょう。ドライ…貴方はバトル大丈夫かしら?」
彼女は俺の言葉に対し俺の気が変わらない内に申し込みに行くようだ。その急ぎっぷりが微笑ましい。
「大丈夫です。今後はお任せ下さい」
「…頼りにしてるわ」
「ドライねーちゃんがいれば大会申し込めるね!ツヴァイも頑張るよ!」
姫さんの二体目…正確には一体目なのか?ワニノコも気合充分のようだ。
そうして姫さんとその萌えもんは受付まで向かっていく。その様子を俺は見届けていた。…微笑ましいものだ。思わず顔が緩む。
「………」
「ケイブさん、じゃあ暫くはここにいるってことだよね!」
「まぁ、そうなるな」
「やりぃ!何食べようかなー」
アノプスはすっかり観光気分だ。少しだが小遣いでもやるか…
「………」
「リリーラもゆっくりしてていいぞ。ここまで急いできたからな、疲れただろ」
「………」
そう言うとリリーラは俺の側に寄りこちらを見上げてくる…どうしたのだろうか?
「ん?小遣いは少し出してやるぞ」
「………」
そう言うとリリーラに脛を蹴られた。………何故だ?